去年6月に公開されたようですが、知りませんでした。
本当に下書きなしで一気に作品を仕上げていく様子が録画されています。
こんなCM動画見たら、拡散(宣伝)せざるを得ません(笑)(その割には、今まで見たことなかったのですが…)
さすが、世界のTOYOTAがつくるCMは、レベルが違う!
コレを見て「トヨタのプリウスって凄い!」と驚かせるのではなく、プリウスをネタに、スゴイ日本人が、スゴイ技を見せ、世界を驚かせ、感動させようとしていることに、驚きます(笑)
弱肉強食の世界の中で、生産台数ついに世界一!と思った途端、叩かれ、叩かれ、挙句の果てに自動車産業全体の斜陽化も見え始めた中で、「世界のTOYOTA」が「日本人のカミワザ」を紹介するCMを作ったのは、トヨタ自身が日本企業の誇りにかけて更なるカミワザ(奇跡的成長)に挑戦して行きたいという意気込みの表れ…でもあるでしょうし、世界のリードカンパニーとしての誇りと覚悟が伝わってきます。(ただ、私も今トヨタに乗ってますが、車検は他でしています。自動車会社の良し悪しは車の性能だけでは決まりませんもんね)
ともあれ…やっぱ、スゴイね。TOYOTAも、日本人も!
欧米型弱肉強食の商業主義とは一味違います。
この日本的、云わば「ゲイジュツ的感動型商業主義」の結晶が、新型プリウスだというなら、「どこが違うの?」とちょっと興味がわいてきます。
やっぱり、うまい広告です。
http://toyota.jp/lifestyle/1_ozeki/
【神業】世界的切り絵アーティスト・尾関幹人が切るプリウスがとんでもないクオリティ…… Inspired by car #001
公開日 2016.6.13
人間が理解できる情報量を超えた、独特な造形物
- 今回、プリウスをモチーフに切り絵で作品をつくっていただいたのですが、振り返ってみていかがでしょうか?
- 実は、17~18年ぐらい前に、「商業的に作品を作っていくのだったら、例えばクルマが好きな人にターゲットを絞ってはどうか」とアイデアをもらったことがあるんです。例えば高級車に乗っている方に向けて「あなたの愛車の切り絵をつくりますよ」というような。でもクルマが好きな方は、好きであればあるほどそのフォルムやラインへのこだわりが強い。ちょっとそこで勝負するのはやめておこうかなと、その時は挑戦しなかったんです。
その判断はある意味正しかったかもしれないけど、同時に逃げたような気持ちもありました。なので今回は、クルマを作ることに対峙して最後まで作れたという、ひとつの挑戦を乗り越えた喜びがあります。
- 今回は挑戦してみようと思われたのは、ご自身の中で何か変化があった?
- そうですね。あれから時間が経って色々と経験を積んできましたし、今ならやってみたいなと。それに、4代目のプリウスのデザインが大きく変わった、という発表会のニュースは気になっていました。その最新のデザインを自分なりに表現することに対しては、挑戦したいという意欲が強かったですね。
- そもそも、クルマというのはモチーフとしては難しいものなのでしょうか。
- もしかすると、究極に難しいかもしれないですね。クルマというのはとにかく複雑なラインをしていて、工業製品の最たるものだと僕は考えています。人間が理解できる情報量を超えた、独特な造形物だと。特に最近の造りは、隆起したラインが別のラインに落ち込んで、さらに見る角度によって全く見た目が変わってしまう。そういう複雑な立体物を前に、平面作品に落とし込む難しさがありました。
- すでにデザインとして完成されてしまっている。
- そうです。あのデザインそのままの作品をつくるなら、僕が切り絵をする意味がない。やはりそこは僕なりの癖みたいなものを入れ込んで作品に仕上げなければいけないなと。そこの折り合いの付け方は、いろいろと頭の中で格闘がありました。
- その点を打破するために、どういうことを行ったんですか?
- まずプリウスの試乗車が置いてある販売店に行って実車を見せてもらって、パンフレットやカタログをもらって色々調べました。最近のカタログって、雑誌みたいなんですよね。とても情報が充実していて。
- ファッションカタログのような構成ですよね。
- そういうビジュアルをたくさん見てしまったが故に、余計に情報との戦いもありましたね(笑)。ただ、実際のプリウスを見た上で制作しないといけませんから、そこはきちんとおさえました。
下絵を描いた自分と、それに沿って切る自分の間に主従関係を感じていた
- 実際にカタログをご覧になったということですが、いつも作品をつくる際にも下調べをするんですか?
- いえ、通常の制作では事前にほとんどリサーチをしませんし、下絵も描きません。切り絵をはじめた時に、「情報のないまっさらなところからストレートに作品をつくる」という自分なりの方法論を確立したいと思い、あえてそのスタイルでつくってきました。だから今回はすごく珍しい体験でしたね。
- いきなり作り始めるよりも、下絵があったほうが安心感もあって落ち着いて切り絵に集中できるような気もしますが……。
- もちろん、数年間は下絵を必要とする時期がありました。1997年の秋から作品を作り始めて、2002年くらいまではなかなかうまくいかなかった。すごく悶々としましたね。
下絵を必要としていた頃は、下絵を描いた自分と、それに沿って切る自分の間に主従関係を感じていたんです。切り絵をつくる以上、切るほうの自分が重要なはずなのに、なんだか下絵を描いた自分の下請けみたいな気持ちになってしまって……。
- 切る工程を、単なる作業のように感じてしまっていたんですね。
- そうです。「じゃあ、これ切っといてね」って自分から設計図をパスされるようなイメージ。なので、反抗して線からちょっとずらして切ったりして(笑)。それくらいしか自由がないことが辛かったですね。
初期の代表作『BIG BODY1』(2008年)。
『C10』(2015年)。近年はカラーの作品にも挑戦している。
- それが変わったのはどんなきっかけがあったんでしょうか。
- 2002年にあるオーディオメーカーから「音楽をテーマにして切り絵で何か表現してほしい」という依頼をいただいたんです。それで、音楽に合わせて即興で切り絵をつくり、完成したものをショーウィンドウの中に飾る企画を考えました。4時間ぶっ通しで切ったんですが、そのときに覚醒したんです。「下絵がなくても即興で切れる!」という手応えを感じて、そこからは下絵なしでつくるようになりました。
- ライブペインティングの経験が生きたんですね。
自由度が高くて決定的な答えが導き出せないからこそ、面白味がある
- プリウスをモチーフに作品をつくってみて、気づいたことはありましたか?
- 普段、作品をつくる時、具象的でありながらも、結局はあやふやな抽象的なものを現しているように感じることがあって。それはちょっとクルマのフォルムとも似ているなと感じました。
クルマという具体的なモノを前にしても、そのフォルムを見て人はいろんな解釈をしますよね。「丸い」という人もいれば、「鋭敏だ」という人もいる。そうやっていろんなデザインを汲みとって、人はそれぞれに解釈をするんです。
絵もクルマも、結局は人間がなんらかの設定をしてつくったもの。それに対していろんな解釈が生まれる。自由度が高くて決定的な答えが導き出せないからこそ、面白味があるんじゃないかな、という気がしたんですよね。
- なるほど。今回はプリウスという具象性のあるモチーフだと思うんですけど、その中でもどういうことを表現しようとしたんでしょうか。
- 僕がプリウスをつくったらどういうものが生まれるか、ですね。なので、クルマ以外の具象性はあまり入れませんでした。特に今回のプリウスはいちばんデザインが独特だと思ったので。
- もともとのデザインを残しつつ、尾関さんの持ち味を活かしていく必要があったと。確かに、実際に作品を拝見して理解できたような気がしました。存在感があって、良い意味でクルマっぽくないというか……。
- そうですね、キャラクター的というか、ちょっと人格が備わったようなところがあると思いましたね。そのあたりはプリウス本来が持つ味として、切り絵のなかに活かしてあります。
切り絵は、別の世界に行ける窓のような存在
- 切り絵と向き合い続けて、表現方法も次第に変わってきていると思うのですが、今後はどういう形で活動を続けていこうと思っていますか?
- 切り絵にこだわっているわけではないのですが、切ることで表現を拡張できる可能性があるかもしれないと自分自身に絶えず期待しているんです。なので、今後も国内外問わず、発表を続けていきたいなと。
- 表現を拡張できる、というと?
- 以前、切り絵のアニメーションを作らないかという話をもらったことがあるんです。そのとき、アニメーションのほうがいろんな表現ができそうではあるけれど、僕は静止画のほうに可能性を感じたんですよね。静止画は止まっていて1枚の絵でしかない。でも、それだけで世界が完結しているから、別の世界に行ける窓のような存在になり得るんじゃないかと。アニメーションだと要素が多いぶん、特定の落としどころに落ち込んでしまう気がしたんです。
- なので、僕には静止画、つまり平面の切り絵がメインなのかなと思います。やっぱり、世界の一部を切り取ったその1枚で、自分の表現するものが完結できるほうがいい。僕はそこに挑戦したい気持ちがあります。
- 切り絵という表現にはこだわりつつも、今回のプリウスのような、本来の制作工程とは少し違ったアウトプットにも挑んでいくということですよね。
- そうです。特に最近は業界的にもいろいろ試されることが当たり前になってきているので、いろいろ挑戦していこうという気持ちが強いです。「やらない」という選択肢もひとつの選択だとは思います。ただやっぱり、僕はもともと独学で試行錯誤しながら活動を続けているので。ひとつずつ、自分で選びとりながら前に進んでいきたいなと思いますね。
尾関幹人切り絵アーティスト
1976年愛知県名古屋市生まれ。1997年以降、カッターを用いて下書きをすることなく即興的に素材を切る技法で作品制作を行う。国内外の個展やグループ展への参加の他に、音楽家やテクノロジー集団とのコラボレーションなど多様な表現を展開し続けている。