「お父さん、娘さんを僕にください」
「お前なんかにお父さんと呼ばれる筋合いはない!」
なんて事は言わなかった、今日の「ご挨拶」の儀式。ついに我が家にもこういう日が来てしまったのだ。
彼は、きっと一生懸命練習したんだろうなあ......
スーツ姿の彼は、こちらまで緊張してしまいそうなくらい緊張して、ぎこちなく手土産を渡し、決して大きくない声で、「お約束」の台詞を頑張ってしゃべってくれた。
うん、もうそれだけでイイよ。許すも何も最初から許してるから。
後は二人で力を合わせて、まわりに流されることなく、身の丈に合った生き方をしてくれれば、私は何も言うことはない。