うさぎ歯科 blog NEXT

内外行動日記です。blog復帰しました^ ^

ラバーダム防湿法2 ( う窩処置 )

2009-11-03 02:21:18 | 歯科臨床
前回記載したラバーダム防湿法ですが、その応用例を1例紹介します。
今回はむし歯の除去方法について記載したいと思います。
歯医者さんにとって最も基本であることですが、基本すぎるゆえに軽視されている分野でもあります。

写真は5番(下顎右側第二小臼歯)の遠心隣接面のカリエス(むし歯)です。
ラバーダム防湿を行うことのメリットは
・術野が明確になる
・唾液による窩洞の汚染を防ぐ
ことです。

歯は構造上、『エナメル質』→『象牙質』→『歯髄』の順です。
           C1       C2     C3
エナメル質のカリエスが C1
象牙質のカリエスが   C2
歯髄に達するカリエスが C3
と、歯科検診では構造上の分類でむし歯を診断することが多いです。
今回は象牙質のカリエス(C2)が対象になります。

エナメル質は人体でも最も硬い組織です。この組織はいわゆる『バリア』なのです。ですのでC1はあまり氣にはなりません。
しかし、エナメル質と象牙質の境い目『エナメル象牙境』よりむし歯は急激に広がりを持つのです。


エナメル質は硬い組織で痛みもほとんど感じませんのでタービンで除去します。
問題が『象牙質』です。
象牙質のむし歯は
・多菌層
・寡菌層
・先駆菌層
ここまでが『う蝕象牙質第一層』
・混濁層
・透明層
・生活反応層
ここまでが『う蝕象牙質第二層』
とあります。
第一層は細菌感染しており、第二層は細菌感染がなく、痛みを感じる
そのため学術的には第一層(多菌層、寡菌層、先駆菌層)
までを除去する必要があります。

私のやり方は、以前はADゲルでカリエスを軟化し、手用のスプーンエキスカでみみかきのようにカリカリと削る方法を行っていました。
エキスカはすぐ切れなくなります。
切れないエキスカは使っても全く削れず、余分な力が加わり患者さんが苦痛を訴えやすくなります。
そういう時、エキスカの刃部を茶色のシリコンポイントで研磨するのです。
するとエキスカは再び切れ味を取り戻し、虫歯の除去が容易になります。
これは、スケーラーのシャープニングと同じ要領です。

現在では、エキスカよりも、PMTC用のハンディコントラを用いて新鮮な良く切れるラウンドバーを用い、超低速回転で(回転が目で見えるくらい)トルクをコントロールしながらむし歯を取っています。80%以上の方が無麻酔です。
むし歯の処置方法は色々と行ってきましたが、この方法が私の中では最も術中、術後の苦痛が少なく、かつむし歯の取り残しが少ないと思っています。

このむし歯を取る治療こそが、歯医者さんの基本中の基本であり、かつ最も難しい治療のひとつだと考えています。
私の治療で時間の計算が立てにくいのがこのむし歯を取る治療です。
麻酔を行い、タービンで除去してしまえば20秒で終わるような処置です。
しかし、長期的予後を考え歯髄を保護し、歯の切削を最小限に、かつ苦痛を与えないように行うことは至難なことなのです。
上記のやり方で10~20分近くはかけないと、むし歯を取り除き、予後を安定させることは難しいと思います。

冒頭で、基本中の基本ゆえに軽視されていると述べましたが、今の歯科雑誌でむし歯の処置方法を記載している歯医者さんが本当に少ないのです。

歯周外科、再生療法、インプラント、矯正、審美、
歯科の分野は華やかな分野が多数存在します。
が、その前に何よりもこの『むし歯』の治療を基本から徹底的に学び、技術を習得する必要があるのです。
若手歯科医師は、専門分野だの言う前に、しっかりと基本を抑えなくてはいけないのです。

コメント (3)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 生物学的幅径(Biologic Width) | トップ | TOKYO DENTAL SHOW 2009 »
最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
大事なことだと思います (ブレスデザイナー)
2009-11-27 01:52:07
良い記事ですね、参考になりました。
「基本に忠実に」って、大事ですよね(^^)

ラバーは付けちゃうと、後が楽ですよね。
では!!
返信する
まんまる (Unknown)
2010-02-11 21:46:48
吉岡先生
いつもコメントありがとうございます。
返信が遅くなってしまいすみませんです。

経験を積むごとに基本的な治療が難しく感じるようになってきます。
治療って奥が深いですね(^^)
返信する
Unknown (まんまる)
2010-02-11 21:52:04
ブレスデザイナー先生
いつもコメントありがとうございます。
返信が遅くなってしまいすみませんです。

経験を積むごとに、基本的な治療が難しく感じるようになってきています。
治療って奥が深いですよね(^^)

返信する

コメントを投稿

歯科臨床」カテゴリの最新記事