日々あらたに

3/11の大震災以降、数多くの変化が起きています。その変化をとらえ、新しい時代について観察を続けていきます。

スズキの選択

2011年09月22日 | 日記

スズキとVW(フォルクスワーゲン)の提携解消が話題になっている。ただし、なぜ?というマスコミ報道が多く、実際のところの真相はまだつかめていないらしい。

 

日経新聞(憶測記事?)によると、

 日経:9/14

・・VWの実力者のピエヒ会長の逆鱗に触れたのが、VWの最大のライバルである伊フィアットからスズキがディーゼルエンジンの調達を決めたこと。・・・提携当初、VWは出遅れたインド市場の開拓や軽自動車で培った低コスト技術の獲得を期待していた。・・・だが、スズキ抜きでの成長に目算が立ちつつあるのも事実だ。・・・両社とも「憶測だ」と否定したが、VWが提携解消後をにらんだ戦略再構築に動き始めたとの見方もある・・・。

 

 日経:9/16

・・・VWとの提携でスズキは徹頭徹尾「対等」にこだわった。09年の提携発表会見。スズキは多額の出資を受け入れる立場ながら東京での開催を強く求めたとされる。「傘下入りではない」と社内外に訴えるためだ。・・・

・・・スズキの思いとは裏腹に、VWは今年3月発行の年次報告書でスズキを持ち分法適用会社と表記した。・・・日米欧の有力企業が地域ごとにすみわける時代は終わり、新興国で競う。自社の技術やノウハウを供与する協力関係に踏み込むなら、資本の論理で相手を抑え込む。VWの戦略は異例ではない。VWは巧みなM&Aで最も勢いのある自動車メーカーとなった。

・・・それでも、自主独立は「どうしても曲げられない経営哲学」(鈴木会長)だった。「勝ち組連合」とされた両社の同床異夢・・・。

 

スズキの社長は、あの有名な鈴木修さん。

スズキは、連結売上約2兆6,000億円、従業員約14,000人の堂々たる大企業である。でも、鈴木さんのお顔を拝見すると、確かに中小企業のおやじ・・・といわれても全く違和感はない。(失礼しました)

それはさておき、新聞報道では、スズキ側の“自主独立は曲げられない経営哲学”というところと、VW側の“強者による資本の論理”という部分で、基本的な意思疎通がうまくいかず、提携解消の最大の原因となった。

・・・という感じでと書かれているが、実際のところどうなんだろう?

 

鈴木さんのこの本の中では、“自主独立は曲げられない経営哲学”という直接的な言葉はでてこないが、まあ、近い表現としては、

 

(GMがまだ巨大な力を持っていたときの)GMとの提携談話の中で

・・・多くの記者から「スズキは、GMに飲み込まれてしまうのではないか」という質問を受けました。確かに規模が違います。当時世界一だった自動車メーカーと日本の最後尾にいた自動車メーカーとの提携です。・・・

その時、私はこう答えました。

「GMは大きな鯨です。一方、スズキは、メダカよりも小さな蚊です。メダカなら鯨に飲み込まれてしまうかもしれませんが、小さな蚊なら、いざというときには空高く舞い上がり、飛んでいくことができます。・・・(ここまで引用 俺は中小企業のおやじ:日経新聞社)

 

・・・という表現で書いている。

 

 ここから、私の勝手な感想と言うか、まあ、色々感じたこと。

本当のところは、この経営哲学にまで言及されるような場面を、鈴木さんは、作り出したくなかったのではないだろうか?

鈴木さんに対する私の勝手な先入観では、自己主張がかなり強そうな方(これまでのマスコミ報道による印象)だと思っていたが、この本を読んで見ると、ガラッと印象が変わった。

相当、冷静かつ客観的な方ではないかと思う。

・・・であるならば、自動車を取り巻く時代の流れ、スズキという企業の置かれている立場、あるいは、VWという(この業界での)超大企業の力、それらを、冷静かつ客観的につかんだ上で、できれば、生き残りのために提携解消は、避けたかったに違いない。

競争的な、あるいはガチンコ的な状況ではなく、できればフワッと身をかわせるような状況に持っていきたかったのではないかと思う。(小さな蚊のたとえのように)

そのためには、できれば経営哲学を前面に押し出すような場面(押し出さざるを得ない場面)になるのはできるだけ避けたかったはずである。

 

・・・でも、資本の論理は、待ってくれなかった。(あるいは、待つ余裕もなくなってしまった)

覆水盆に返らず・・・じゃないけど、たぶん、これから、資本の論理による様々な攻勢が始まるだろう。

さしずめ、スズキの独擅場であるインド市場に対し、VWがどういう攻勢をかけてくるか?スズキの得意とする市場あるいは、製品開発力(特に低コストでの開発技術、ノウハウ)にどう圧力をかけてくるか?

それに対し、スズキ側が新たな提携も含め、どういう合従連衡で対抗するか?その時、これまでの経営哲学をどこまで守り続けられるのか?・・・資本の論理との戦いにどう対抗していくのか?

 

マスコミ的に言えば、資本の論理 VS 経営哲学

 

中小企業のオヤジさんのような鈴木さんを応援しつつも、スズキの次世代を担う若い新戦力の方々にも、ぜひ、がんばって頂きたい。(まったくの部外者ですが、陰ながらエールを送りたい)

 

その他参照:

日本メーカー主要な資本・業務提携関係(日本自動車工業会)

主要国の四輪車販売台数推移(日本自動車工業会)

主要国の四輪車普及率(日本自動車工業会)

四輪車生産台数の推移(日本自動車工業会)



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