富士山は、不思議な存在です。美しく輝く富士山を見ると、なぜか得をした気分になる。(あとがきから)
富士山をテーマにした4話からなる「オール讀物」初出の連作『富士山』。富士山に登るのは最後の「ひかりの子」だけでいわゆる登山ものではないのですが、富士山の持っている独特の雰囲気が感じられる作品。もともと、田口ランディが好きで小説・エッセーを読んでいるのですが、初期の作品を思わせる語り口で私的にはツボでした。
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最初の「青い峰」は富士山麓の宗教団体にいたことのあるコンビニのチーフとリストカットをする店員こずえの話。自分のいるコンビニは「無機質」でいなければいけないのだと考えるチーフに共感。たしかに近所のおばさんと仲良く挨拶しているレジには違和感が・・・。コンビニ店員の言葉はマニュアルどおりで渇いている方が好きです。
ほかに「樹海」「ジャミラ」。中学生が樹海キャンプにでかけて自殺者に出くわす話(子供たちの精神性に驚かされた)とごみ屋敷の老婆に共感した市職員の話。