ハーベスト・タイム『収穫の時』

毎月発行の月刊紙『収穫のとき』掲載の聖書のお話など。

メダルよりも大切なこと

2006-09-19 | 番組ゲストのお話
◆9月号◆パラリンピックメダリスト、鍼灸師 高田 晃一氏(8月2週放映)

《プロフィール》高校2年の時、寸止め空手の試合中に顔面に突きを受け、その治療中薬物投与の副作用によって視覚障害となる。その後、本格的に陸上競技を始め、1992年バルセロナパラリンピック走り幅跳び銅メダル(現日本記録)、2000年シドニーパラリンピック400mリレー銀メダル(現日本記録)。再びカラテ(極真館千葉県支部所属)にもチャレンジし、昨年の全日本空手道選手権では棒術の演舞で特別賞を受賞。39歳の今も現役で活躍中。


ハーベスト・タイム(以下HT):先日は、番組に出演くださりありがとうございました。視聴者のみなさんは、こういうクリスチャンもいたのかと、大変励まされたようです。

高田:最初に言っておきますが私は型破りのクリスチャンです(笑)。新聞等で私のことを「史上初の快挙!視覚障害でパラリンピックメダリスト&極真カラテ黒帯の武士道アスリート」と紹介していただいておりますが、私がなぜ快挙を達成できたのかといいますと…それは秘密です(笑)。冗談はさておき、私は今の視覚障害の状態をラッキーだとさえ感じているのです。ただ極真カラテを創りました大山倍達総裁が言われていたように「極意というのは周りが与えるものではなく、自分で掴み取るものだ!」と…私が証しをする時もそれと同じです。ヒントは言うが答えは言わない…私の証しから答えを掴み取っていただければ幸いです。超美味しいお店というのは、なかなか皆には教えないでしょう?そんな感覚ですね(笑)。

HT:では、極意を掴み取りたいと思いますが、どうして「史上初の快挙」を達成できたのですか。

高田:そうですね、それは私が「人のやらないことをやるのが大好きだから」だと思います。ここで、勘違いしないでいただきたいのは、「人のやれないこと」ではなく、「人のやらないこと」ですからね。私は目が悪くなってから陸上やカラテを本格的に始めましたし、ピアノも弾けるようになりました。そしてメダルや黒帯まで獲得することができました。これはできないと思っている心を打破したいというチャレンジからです。その精神はどこから来るのか、それは感謝の心からです。入院した時様々な苦難を体感し身体を動かせることの有り難さを知り、そこからチャレンジが始まりました。「何も咲かない寒い日は下へ下へと根を伸ばせ、やがて大きな花が咲く」。周りから快挙と呼ばれる花を咲かせるまでは根を伸ばす行程のなんと険しいことか…そんな中で私は自分の弱さを知り、受け入れ、いつの日か神様を感じ、信じるようになっていました。そして「苦しい時が強くなる時」ということを知ったのです。またこのクリスチャン精神と武士道精神がよくマッチするんですね。武士道精神にこういう言葉があります。「頭は低く、目は高く、口慎んで心広く、孝を原点として他を益す」…なかなかマッチするのではないでしょうか。

HT:欧米では、クリスチャンのアスリートがたくさんいると聞いていますが、それが刺激になったということはありますか。

高田:そうですね。陸上や格闘技のトップ選手にクリスチャンがたくさんいます。私のカラテの恩師は稽古の時に「リンクして観なさい」と言われます。すなわち「点や線で見る」のではなく「円や球で観る」ということ、枝だけを見るのではなく根っこまで観るということです。ここで「観る」を使ったのは「観の目強く、見の目弱く」だからです。そうやって観ていった時に、外国人の強さは決して筋肉の強さだけでなく、本当はメンタルの強さなのだということに気付かされます。ですから私が観ているのはスタート前やリングに上がる前なのです。

HT:ところで高田さんがクリスチャンになられたきっかけは、失明後いろいろな宗教から勧誘されたことにあるそうですね。

高田:失明した後、いろいろな宗教から「これをやると目が治る」と勧誘されました。「拝めば治る」「治らないのは拝み方が足りない」などという宗教があまりにも多かったので、本物があるのではないかと思い、「本当の神様はどこにいるのか」と自分の方から探しましたね。そしてマレーシアの宣教師の説教を聞いた時、自分の思いとマッチしました。人間はみんな罪人で、神様が天から見ていればどんな人も同じに見える。偉いか偉くないか、金持ちかそうでないかでなく、みんな平等だという感覚に同意できた。そしてみな平等に神様から愛をいただいていることを感じました。心の広い神様の愛を素直に受け取ればいい、私の信仰は非常にシンプルで、子どもがジャングルジムからお父さんに向かって、何の疑いもなく飛び降りるように、信じ受け入れました。
 クリスチャンになって最初の祈りは、「このレースで勝てますように」、「標準記録を越えられますように」というものでした。試合がある日は「天気がよくなりますように」というように、お願いごとだったのです。最初の内はよかったのですが、二十年も競技生活を続けていると、祈ったにもかかわらず、どしゃ降りの日もあります。そして御利益を求める祈りから「御心のままに」という祈りにチェンジしていきました。すると、悪天候でも記録がよくなったのです。それまでは、晴れますようにと祈ってそうならないと、いやだなと思って走るので当然記録が伸びません。「御心のままに」と神様に委ねて走ることで、悪い天候も受け入れることができ、そうすると結果もよいものが返ってきたのです。

HT:今後の抱負は?

高田:今は、九月に世界選手権、十月に兵庫国体、十一月にはアジア大会がありますので、それに向けてトレーニングしています。北京パラリンピックにも、行きたいとかメダルを取りたいという気持ちではなく、委ねて自分がやれるところまでやる、という感覚です。