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回顧と展望

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HBOS前会長爵位返上

2013年04月10日 13時49分42秒 | 日記

金融機関の不祥事には慣れている英国で、今回、国会調査委員会の発表した報告書ほど、口を極めて前経営陣の無能ぶりを強調した懲罰的なものはなかった。

これを受けて、経営者失格・無能として真っ先にやり玉に挙げられていたHBOS(Halifax Bank Of Scotland)前会長James Cosby卿がナイトの爵位をはく奪することおよび自らの謝罪を受け入れてくれるように、と公に表明した。また、HBOSの前身のHalifax住宅組合時代からの契約で受け取りの権利を有している同人の終身年金58万ポンド(8700万円)の30%の返上、さらに自身がTrusteeをつとめている癌研究協会からの辞任することも発表した。英国内閣府によればこれまで爵位の剥奪を求めてきた例はなく、James Cosby氏が初めてだという。英国人、それもいわば功成り名を挙げた人間にとって、自ら爵位を剥奪を要求するとは、何らかの責任を認めたことにもなり、末代まで汚名を着せることになるため、これまでのケースでは最後まで抵抗し、仮に爵位がはく奪されても、いつの時代かあるいは汚名をそぐ機会が訪れるのではないかと期待する精神構造からすれば、今回の報告書にはJames Cosby氏としてよほど腹を据えかねたのだろう。

納税者の負担による公的資金によって救済されたHBOSであり、爵位剥奪としても爵位授与に関与したキャメロン首相および与党保守党議員の責任問題にもなりかねず、現政権は対応に苦慮するところだろう。2008年以降の英国での銀行救済では爵位剥奪の前例もあり、たとえばRBSのトップだったFred Goodwin氏の場合には十分な弁明の機会もないまま爵位が強引にはく奪された。今回も正当な手続きが踏まれていないことで英国実業界からの批判も多い。事業が順調な時には爵位を連発し、ひとたび事態が悪化すれば十分な弁明の機会も与えられずに剥奪されるのであれば、いわば授与者責任が問われないことにもなり、不公平感が残るのであろう。一旦終息したかに見えた英国金融機関救済劇だったが、後味の悪さののこる今回の展開である。

英国はいまだに貴族院があるなど、形式と格式が強く残っており爵位制度もその一つであるが、今回のような事例をみると強欲資本主義の現代においては、数百年に亘って綿々と続いてきた英国の爵位制度に対する疑念や不信が生まれてくるかもしれない。

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