詩はここにある(櫻井洋司の観劇日記)

日々、観た舞台の感想。ときにはエッセイなども。

十二月国立劇場 『通し狂言 増補双級巴―石川五右衛門―』

2018-12-27 10:22:45 | 日記
先月の歌舞伎座夜の部で吉右衛門が石川五右衛門、菊五郎が久吉で『楼門五三桐』を演じたばかりなのに、今度は国立劇場で二つの五右衛門が主人公の芝居を通し狂言として見せた。

『楼門五三桐』の相手役を菊之助に替えて世話物にして演じる趣向や葛籠抜けの宙乗りなど五右衛門ものの集大成のような芝居だけれど実はがあって吉右衛門の魅力なくしては成立しない芝居でした。

『増補双級巴』発端・序幕。吉右衛門の五右衛門の大きさ立派さに驚くばかり。実際に巨体なのだろうけれど出世の秘密を知って天下を狙うに至る内面の変化が伝わってくる。理屈を言ったら成り立たない七十年ぶりの「壬生村」は吉右衛門と歌六の芝居巧者の存在あってこそ。米吉が可憐で薄幸の娘役だった。

『増補双級巴』二幕目・三幕目。葛籠抜けの宙乗りまで演じておきながら「夢」と「洒落ていやがる」という台詞で解決する斜め上をいく展開。先月の楼門と呼応する世話場の五右衛門と久吉の対面。菊五郎から菊之助に替わったのが洒落ている。吉右衛門の力量と奮闘で最後は大いに盛り上がった。

『増補双級巴』大詰。雀右衛門の継子苛めがあって実は理由があったという展開。我が子を思う五右衛門の心根を吉右衛門が見事に描いて芝居として見応えがある。最後は大立ち回りまで演じて大活躍。師走を飾るに相応しい舞台となった。菊之助も華を添えての幕切れに満足した観客が多かったと思う。

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