みなさま、いかがお過ごしでしょうか?新年、あけましておめでとうございます。
昨年の交換日記では、旧日本軍が使用した毒ガス弾の製造場であった広島県大久野島へ行ったという話、新潟県長岡の空襲を題材とした映画の話など、日本各地に残る戦跡の話が多かったので、自分も日本の戦跡に関する文献を探してみました。それで、たまたま海南島と京都が関係する興味深い本があったので紹介します。
この本は京都府西陣出身の著者が、「中西精錬」という精錬業を営む自分の家族の歴史を辿ること、具体的には1930年代の「総動員体制」と軍需物資不足から金属供出が開始され、自分の家のボイラーが遠い中国・海南島へ運ばれていたことを知ります。京都を含めた関西周辺の各企業や人々がどのように戦争に関わっていったのが書かれています。その一方で西陣空襲や馬町空襲といった京都府内の空襲被害、京都市内はもちろん、舞鶴市といった軍事施設・軍需工場にある家屋を移転させる「建物疎開」、著者の家族が辿った歴史を事例に戦後の国民生活や街並みの再建状況などが描かれています。
特に自分が興味深かったのは、日本の中国・東南アジアへの侵攻に伴い、京都も含め、その周辺にある三重県で生まれた石原産業や日本窒素株式会社といった各企業による海南島進出のことが分かりやすく書かれていた部分です。このような点から京都・三重県・朝鮮半島・海南島が1本につながり、如何に企業が広範囲になっていたということを改めて感じました。正直、A級戦犯である石原産業の社長が戦犯を免除され、また戦前に存在していた企業が戦後、水俣病や四つ日市ぜんそくといった不祥事を起こし、未だ存在しているなどという状況には何だかなあと思いました。また、戦時中、金属供出が一般家庭だけでなく、清水寺などといった寺社にまで及んでいたことや、空襲の軽減を目的に「建物疎開」が行われていたという事実は知らなかったのでとても興味深かったです。
最後に自分の家族の歴史を辿ることから戦争の実態はもちろん、各地域における戦中・戦後の状況を考えるという大切さを感じました。 また、戦争に関係した企業が戦後、公害問題を起こしている事実から日本の在り方自体を考える上でも重要だと改めて感じた1冊でした。正直、京都市内における戦跡はもちろんのこと、紀州鉱山のある三重県などにも行きたくなりました。少し古いですが、おすすめの1冊です。
次の方、よろしくお願いします。
Y.C
☆『戦争のなかの京都』(岩波ジュニア新書)
著者: 中西宏次
出版社: 岩波書店
価格: 819円
発売日: 2009年12月18日
ISBN: 978-400500-644-1
http://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/qsearch
昨年の交換日記では、旧日本軍が使用した毒ガス弾の製造場であった広島県大久野島へ行ったという話、新潟県長岡の空襲を題材とした映画の話など、日本各地に残る戦跡の話が多かったので、自分も日本の戦跡に関する文献を探してみました。それで、たまたま海南島と京都が関係する興味深い本があったので紹介します。
この本は京都府西陣出身の著者が、「中西精錬」という精錬業を営む自分の家族の歴史を辿ること、具体的には1930年代の「総動員体制」と軍需物資不足から金属供出が開始され、自分の家のボイラーが遠い中国・海南島へ運ばれていたことを知ります。京都を含めた関西周辺の各企業や人々がどのように戦争に関わっていったのが書かれています。その一方で西陣空襲や馬町空襲といった京都府内の空襲被害、京都市内はもちろん、舞鶴市といった軍事施設・軍需工場にある家屋を移転させる「建物疎開」、著者の家族が辿った歴史を事例に戦後の国民生活や街並みの再建状況などが描かれています。
特に自分が興味深かったのは、日本の中国・東南アジアへの侵攻に伴い、京都も含め、その周辺にある三重県で生まれた石原産業や日本窒素株式会社といった各企業による海南島進出のことが分かりやすく書かれていた部分です。このような点から京都・三重県・朝鮮半島・海南島が1本につながり、如何に企業が広範囲になっていたということを改めて感じました。正直、A級戦犯である石原産業の社長が戦犯を免除され、また戦前に存在していた企業が戦後、水俣病や四つ日市ぜんそくといった不祥事を起こし、未だ存在しているなどという状況には何だかなあと思いました。また、戦時中、金属供出が一般家庭だけでなく、清水寺などといった寺社にまで及んでいたことや、空襲の軽減を目的に「建物疎開」が行われていたという事実は知らなかったのでとても興味深かったです。
最後に自分の家族の歴史を辿ることから戦争の実態はもちろん、各地域における戦中・戦後の状況を考えるという大切さを感じました。 また、戦争に関係した企業が戦後、公害問題を起こしている事実から日本の在り方自体を考える上でも重要だと改めて感じた1冊でした。正直、京都市内における戦跡はもちろんのこと、紀州鉱山のある三重県などにも行きたくなりました。少し古いですが、おすすめの1冊です。
次の方、よろしくお願いします。
Y.C
☆『戦争のなかの京都』(岩波ジュニア新書)
著者: 中西宏次
出版社: 岩波書店
価格: 819円
発売日: 2009年12月18日
ISBN: 978-400500-644-1
http://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/qsearch