米朝会談は、予想通りキャンセルとなりましたね。最初の北朝鮮の揺さぶりに一時トランプが前のめりになったのも予想通りでしたが、トランプのブレーン達が今回は良く手綱を引いてトランプをなだめたと思います。
今回の『金正恩劇場』では、盛んに韓国の文大統領が祭り上げられ、それに比較して「安倍日本蚊帳の外」的な報道が国内で盛んにされましたが、蓋を開けてみれば「韓国が単なるピエロ役、沈黙を守っていた安倍日本が結果的には正解!」というものでした。
さて皆さん、『ニクソン・ショック』という言葉を覚えていらっしゃいますでしょうか? これは、1971年当時アメリカ大統領だったリチャード・ニクソンが世界経済を震撼させた政策の発表だったのですが、その内容は「ドルと金の兌換を一時停止する」というものでした。それまでの世界経済は基本的に『金本位制』であって、「基軸通貨はその国の金保有量と連動し、その担保がなければならない」というのが原則でした。ですから、この『ニクソン・ショック』以前は、「世界市場において金と交換できるのはドルだけ」という「アメリカ金本位制」だったのであり、このことがドルが世界の基軸通貨であることの前提条件でした。
この、ニクソンによる「ドルと金の兌換を一時停止」の発表は、アメリカが「金本位制を廃止する」と宣言したのも同様のことであり、その後の世界経済に大きな影響を及ぼした大事件でしたが、これは、「アメリカ国内の金保有量が、世界に流通するドルと交換するだけの量が無くなってしまった」ということを世界に宣言したのと同じことで、それまでのスーパー・パワーであったアメリカの経済的凋落を内外に晒してしまう事態となった訳です。(ちなみに、アメリカ政府の金を保管する大金庫は、フォートノックスという場所にあります。昔々、007の映画ゴールド・フィンガーの舞台にもなりました)
しかし・・・、金本位制を捨てたドルは、今現在も基軸通貨として世界経済に君臨しております。それはなぜでしょう? 皆さん、その点を考えたことありますか・・・? それは、ドルが金に代わる物質を担保にしているからなのです。その物質とは『原油』です。現在の市場経済では、「原油決済できるのはドルだけ」なのです。唯一、そのことがドルを基軸通貨としている要因なのです。
イラクのフセインは「大量破壊兵器の保有」、リビアのカダフィは「体制派と反体制派の内乱」という表向きの理由で、その政権が欧米の手によって破壊されました。その政権破壊の理由はあくまでも表向きであって、本当の理由は別にあったと云われています。イラクのフセインは、原油の決済をユーロで行おうとしていました。また、カダフィにいたっては、自国が産油国であり、その豊富な資金と金の保有量によって、「リビアの通貨ディナールによる原油決済」を目論見、それだけではなくアフリカ共通通貨の発行を目論んでドルやユーロに対抗しようとしていたと云われています。
この、中東の独裁者と云われたフセインやカダフィが殺されたただ一つの原因は、「原油ドル決済」の原則に手を付けて、それを壊そうとしたからではないかと云われています。まあ、たしかに、現在の、ドルの基軸通貨を担保しているものは「1バレル=何ドル」という『ドル原油本位制』しかないのですから、その仕組みを壊そうとする者は徹底的に潰していかなければ、ドルの価値と地位は保てません。その仕組みが壊れたらドルはあっと言う間にただの紙屑になってしまうのです。ちなみに、日本でも田中角栄が総理になるまでは、原油はアメリカの石油メジャーに大きく依存していたのですが、中東戦争によって石油危機となった日本で当時の田中首相が独自のエネルギー外交を展開し、原油のアメリカ依存から脱却しようとしたのですが、それがアメリカの石油メジャー、それを動かすロックフェラーの逆鱗に触れ、後のロッキード事件による失脚の原因となった云われています。
そして・・・、現在、金を国内に大量に保有し、その金の担保によって自国通貨を世界の基軸通貨としたい国があるようですね。
中国は現在、国内に金を公的に4000トン、個人や企業で15000トン保有しているそうですが、中国はこの膨大な金保有量を担保に、人民元を国際通貨として認めさせ、ゆくゆくは「原油人民元決済」を実現させ、人民元をドルに対抗できる基軸通貨にしたいという野望を持っているのではないか? その野望が背景になった、中東までの「一帯一路」なのではないか? という見方があります。
これは、充分に現実味のある話で、日本ではあまり報道されていませんが、最近アメリカが中国に仕掛けた経済制裁の熾烈さは、「人民元による中国の野望は許さない!」というアメリカの強い姿勢であると思われます。それについて、これも日本ではあまり報道されていないのですが、中国の通信会社ZTEに対する、アメリカの制裁などはその典型です。(今日は時間が無いので、興味ある方はZTE制裁で検索してください)
で、今回、北朝鮮が二回目の訪中の後に急に態度がでかくなったのは、前回の記事にも書いたことですが、アメリカ側はそれを「習近平の指金」と見ているようです。となれば、「人民元の基軸通貨の野望」を持っている中国の指金で動いている北朝鮮との会談など、こっちからお断りだ! という姿勢を見せることは、北朝鮮よりも中国に対するアメリカの強烈なメッセージなのだろうと私は見ています。