はーちゃんの気晴らし日記

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イナゴの思い出

2013年09月25日 | 回顧録
娘は、2歳の時から保育園へ通っていましたが、園での生活の一環としてこの季節になると毎日のように田んぼへ行って、イナゴ捕りをしたようです。
園児が捕ったイナゴを担任の先生のお母さんが佃煮にして給食の時に出してくれたという話を娘から聞いていました。
カルシウムが一杯で、かなり栄養価が高いと聞きました。
娘は、美味しいと言っていましたが、私は食べたことはありませんでした。
佃煮屋さんへ行くと、イナゴの佃煮を売っているのは見ましたが、買って食べる勇気はありません。

私の子供たちが小学生の頃、私たち一家は、夏になると毎年旅行しました。
4泊から5泊くらいの旅行です。
行く場所とその年の予算によって、宿泊日数は変わりました。
岩手、山形、宮城、石川、福井、岐阜、などへ行きました。
金沢へは二度行きました。
何泊もするので、国民宿舎やカンポの宿を予約しました。
旅行の3ヶ月前の予約開始日になると、電話の前に陣取り、つながるのを待って予約の電話をしました。
そして、最終日の1泊だけは、それなりの旅館やホテルに泊まるようにしました。

あれは、福井に行った帰りだったと思います。
最後の1泊に福島の旅館に泊まりました。
土湯温泉というところです。

福島には、主人の妹がいるので妹の家に寄りました。
私の子供たちは、義妹の子供との久しぶりの再会に大喜びでした。
その日の夜は、義妹の連れ合いが知っている旅館を予約してくれていました。
それが土湯温泉でした。
旅館はまだ改装したばかりらしく、部屋も露天風呂も広くてきれいで快適でした。
義妹一家も一緒に来て談笑後、お風呂に入って帰って行きました。

義妹たちが帰った後、私たちもお風呂に入り、そろそろ食事が始まるという頃、突然雲行きが怪しくなり、どーっと雨が降ってきました。
雷も鳴りはじめ、雨足は強いままでした。
目の前にある川はゴーっと音を立てて流れ、今にもあふれてきそうでした。
昼間は部屋から見える渓谷の素晴らしさと流れる川の音が耳に心地よかったのに、その川が一変して恐ろしいほどの流れになりました。

食事が運ばれ、私たちの目の前にお膳が並べられた頃、突然停電になりました。
その頃は、すでに外は真っ暗で、当然部屋の中も真っ暗です。
運ばれたお膳は暗くて、よく見えません。
少し様子を見ましたが、いくら待っても電気がつく様子はありませんでした。

そのうち旅館の人が、各部屋を回って、ろうそくを数本配って歩きました。
私たちは、そのろうそくの明かりを頼りに食事をしました。
電気がついているうちに見た食事は、結構豪華だったと思います。
ただ、ろうそくの明かりには限界があり、家族四人分の食事すべてを照らすまでの明かるさはなく、実際自分が口に運んでいるものの正体がよくわからないものもいくつかありました。

料理は目でも食べるものというのを実感しました。
せっかくの料理なのに、美味しさは多少損なわれた気がします。
その中で、1つだけ添えられていたある黒っぽい小さなものを口に入れたとき、香ばしくて美味しいなと思ったものがありました。
それが何だったのかよくわかりませんでしたが、ただ香ばしかったと思いました。

その後も電気はつかず、真っ暗な中で何ができるわけでもなく、私たちは食事の後、寝るしかありませんでした。

翌朝になり、電気は回復していましたが、私たちはすぐに帰り支度にかかりました。
せっかくの旅行なので、あちこち観光をしたいと思い、早めに旅館を出ることにしていました。

フロントへ行くと、男性のお客さんが会計をしているところでした。
「ずっと停電だったのに、そのままの料金を取るの?こっちは、真っ暗で何もできなかったんだから、その分、値引いてくれても良いんじゃないの?」
と、半ば怒ったような声でフロントの人に言っていました。
フロントの人は、
「申し訳ありません」
と言っていましたが、男性の言い分を聞く様子はなく、その男性はしぶしぶ請求された料金を払っていました。
私は、
「そうか~、そういう考え方もあるのか~」
と思いましたが、旅館にしてみれば不可抗力だし、自分たちのせいではないので、そのために料金を値引きするという考えはなかったんだろうと思いました。

旅館を出て、次の目的地に向かう途中、私は、前日の夕飯に食べたあの黒いものの正体を考えました。
車の中で、
「あの黒い小さなものは、何だったんだろう?」
と私が言うと、娘が
「あれは、イナゴだよ。」
と。
娘は保育園でイナゴを食べていたので、イナゴの味がわかったようです。
ひぇ~でした。
明るいところで姿を見ていたら、たぶん私はイナゴは口に入れなかったと思います。

「香ばしくって美味しい」
確かにそう感じましたが、その後も私はイナゴの佃煮を見ても、買う気にはなれないでいます。
本当に、美味しかったのかどうか自信が持てなくなっているからです。
暗闇で食べたから美味しいと感じたのかもしれないと思ったりもします。
やはり、料理は目でも食べるものだと改めて思います。


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