吉松ひろむの日記

高麗陶磁器並びに李朝朝鮮、現代韓国に詳しい吉松ひろむの日記です。大正生まれ、大正ロマンのブログです。

昭和初期の大阪 三十四

2006年09月28日 02時36分02秒 | 玄界灘を越えて
昭和初期の大阪  三十四

 金谷点柱(こんたにてんちゅう)
 …ウメゃん阪和鉄橋のむこうの空がまっかや…でェ!
 …い、い、いくいく!…
 今日のウメちゃんはよいしゃべりやった。
 阿倍野ケ原の向こうは葦がはえた沼である。ここらには沼が仰山あってゲンゴロウの多い沼、蛙がいつもゲロゲロ鳴く沼、ラポがよくタマゴ生みに飛んで来る沼、メダカの大群が泳ぐ沼、緑色のこども亀が葦にへばりついてる沼などがあった。  
 鉄橋の手前の沼は桃ケ沼とゲンちゃんから聞いていた。
 真っ赤になった雲が横にながくのびて鉄橋の黒いヒシ形の線がたがいに入り組んでいるむこうに見えた。
 遠くでフェーン、フエーンと吠える音が聞こえるとまもなくゴーとレールの上を走る電車が姿を現した。
 沼もあかくなって小さい波がそよいでいた。
 ゲンゴロウたちも天井がまっかにそまったのでねる時間がきたと思って葦のくきにしがみついてうごかない。                               ぼくは家のツボから見た四国の吉野川渓谷を思い出した。
 はるか谷底を玩具のような機関車がおおげさに警笛をなんどもなんども鳴らして這っていた。
 でも景色は阪神和電車の方が綺麗やった。
 あのむこうには絵本でみた竜宮はんがいてるわ…と思った。
 サンダンの鉄玉を糸で結んでとばしてメスラポをとるのはあしたにしょうとおもうとふだんよりよけいにつぎからつぎとメスラポが低空で飛んで来た。
 …ウメちゃん!メスラポは明日や!…
 ぼくはウメちゃんの顔をのぞいて叫んだ。

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