吉松ひろむの日記

高麗陶磁器並びに李朝朝鮮、現代韓国に詳しい吉松ひろむの日記です。大正生まれ、大正ロマンのブログです。

カウライ男の随想 九

2005年10月27日 14時46分43秒 | Weblog
カウライ男の随想 九

 西峰には時々火玉が飛ぶという話をガンさんがする。
 火玉と人魂とちがうんやろ!私は訊ねた。
…たかで大違いよ!火玉はしょう早いぞ!…ガンさんは真顔で言った。
…見たかよ…でっしら見ちゅうぞね…平家の亡霊じゃろうか…そんがなこと知らんぜや…知らんのになんで見ちゅうぞ!西峰の火玉は火事のもとじゃけんのう、イネさんよ!…。
 西峰では火玉が飛んでも屋根に落ちなければなんちゅうこともない…で通っている。
 それでは火玉に熱でもあるかよ!科学的にりくつがあわん!。
 私は火玉の存在を信じない。
 けたばんし(山の上の州)の言い寄るがァじゃけん、理屈じゃ!イネが答えた。
 けたばんしは土居、野々屋、沖である。そこから河野、大畑井戸、蔭はしたに見える。すると火玉はしたから上には飛ばんのかい?…しよぅ軽いけにのう…。
 さっぱり分からぬ問答だ。ともあれ今夜はまだこんまいアマゴがドブのおかずだった。囲炉裏に串刺しのアマゴが十数匹もならんで反り返っている。ガンさんが投網したのだ。
…投網じゃろ?…そうよ、猪岩から渕に五回もうてばぎょうさん取れるぞ!と言うガンさんの額はてかてかだ。
…先生!茶たべるかね?…イネが言った。茶たべるとは御飯をたべるこの地の方言だ。
…わしもめっそう話しよってもいくまい、いぬるとしようか…ガンさんがのっそり立ち上がって草履をつっ掛けた。
 その時、生徒の声がしてツボ(庭)に眼をやると今夜は柚ノ木の平石俊夫と八木幸男の二人が月夜なので提灯なしにドブぶら下げてやってきた。

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