昭和初期の大阪 三十
金谷点柱(こんたにてんちゅう) 十八
小雨だったのでぼくはウメちゃんちの物置小屋で竹削りをした。
チヨンチュおんちゃんが箸の半分ほどの長さの薄くそいだ竹を二枚つくってくれた。
かたほうづつ飛行機のプロペラのように薄くけづってロウソクの火でりょう端をあぶって互いに逆方向にねじ曲げてつくるのである。
竹プロペラの真ん中にキリで穴を開け竹ヒゴを差し込んで動かぬようにするとできあがりである。
穴と互いのりょう端の長さが少しでもくるうと竹トンボは妙な回転になって屋根まで飛ばない。
竹のまんなかに小刀の刃をあててぴったりうごかなくなると良いプロペラの出来上がりになる。
ウメちゃんは吃りなのに小刀の使い方がうまかった。ウメちゃんの作った竹トンボは空高く舞い上がった。
チョンチュおんちゃんも外へ出てきて両手でくるくる凄い速さで回転させてさっと上へ投げると屋根を越えてむこうの裏まで飛んでいった。
ぼくのは屋根のひさしまで舞うのがせいいっぱいやった。
ウメちゃんのトンボをとって真横から見るとぜんぜんくるいがなかったがぼくのは少し狂っていたのでチョンチュおんちゃんが手で少しひねって飛ばしたら屋根を越えて裏まで飛んでいった。 小雨はいつのまにかあがって空があかるくなった。
ぼくはウメちゃんと阿倍野ケ原へ飛ばしに行った。
沼の近くの葦にシオカラトンボが時々首をひねって僕らを見ている。
尻が濃い青のオスラポが近くまで飛んで来てシオカラのそばを飛び過ぎようとしたらシオカラはさっと舞い上がってラポを追った。
するとラポは慌てて沼の向こうへ逃げていった。
…ウメちゃん!チビシオカラは強いもんや!体が二倍もあるラポが逃げてもうた!…。 …そ、そ、そ、ーや!ぼ、ぼ、ぼ、くーシオーカラや!…
ウメちゃんは竹トンボをにぎったまま胸をそらして言った。
金谷点柱(こんたにてんちゅう) 十八
小雨だったのでぼくはウメちゃんちの物置小屋で竹削りをした。
チヨンチュおんちゃんが箸の半分ほどの長さの薄くそいだ竹を二枚つくってくれた。
かたほうづつ飛行機のプロペラのように薄くけづってロウソクの火でりょう端をあぶって互いに逆方向にねじ曲げてつくるのである。
竹プロペラの真ん中にキリで穴を開け竹ヒゴを差し込んで動かぬようにするとできあがりである。
穴と互いのりょう端の長さが少しでもくるうと竹トンボは妙な回転になって屋根まで飛ばない。
竹のまんなかに小刀の刃をあててぴったりうごかなくなると良いプロペラの出来上がりになる。
ウメちゃんは吃りなのに小刀の使い方がうまかった。ウメちゃんの作った竹トンボは空高く舞い上がった。
チョンチュおんちゃんも外へ出てきて両手でくるくる凄い速さで回転させてさっと上へ投げると屋根を越えてむこうの裏まで飛んでいった。
ぼくのは屋根のひさしまで舞うのがせいいっぱいやった。
ウメちゃんのトンボをとって真横から見るとぜんぜんくるいがなかったがぼくのは少し狂っていたのでチョンチュおんちゃんが手で少しひねって飛ばしたら屋根を越えて裏まで飛んでいった。 小雨はいつのまにかあがって空があかるくなった。
ぼくはウメちゃんと阿倍野ケ原へ飛ばしに行った。
沼の近くの葦にシオカラトンボが時々首をひねって僕らを見ている。
尻が濃い青のオスラポが近くまで飛んで来てシオカラのそばを飛び過ぎようとしたらシオカラはさっと舞い上がってラポを追った。
するとラポは慌てて沼の向こうへ逃げていった。
…ウメちゃん!チビシオカラは強いもんや!体が二倍もあるラポが逃げてもうた!…。 …そ、そ、そ、ーや!ぼ、ぼ、ぼ、くーシオーカラや!…
ウメちゃんは竹トンボをにぎったまま胸をそらして言った。