カウライ男の随想 四十四
カウライ男の随想 四十五
三重県の松坂出身のご両親で、父は宗洞宗中学をでてすぐ永平寺で三年の修行したのち東京府下、西多摩の海林寺という大きい古刹に住職として赴任するはずだったのにねこのような山寺にだまされて来たのよ…とU先生の母は挨拶のあとに言った。
庫裏のに続く離れの裏は竹林だった。離れから本堂に渡り廊下が続いている。
軸はまんまるい模様の墨書で円窓と言うそうだ。
円は宇宙を表わし、宇宙即禅の悟りとなるらしい。
床に、桔梗の紫花がいけてある。これは学校でU先生から教わってしっていた。
まい床の間の軸をみて、生けた花に一礼して正座した。
すぐ隣はU先生だ。
香の匂いがしたがU先生ではなく、部屋全体の匂いで、伽羅(キャラ)という香木の王様をたいたと言う。
最初に出てきたのは最中だった。戦時中ではもはや珍しい生菓子である。 そしてつぎに筒茶碗のそこに粥状の抹茶がでた。
…どうぞそのまま召し上がれ!…。
言われるままに口をつけて吸った。
苦さの中に香ばしい抹茶の香りがした。
紀州、松坂から取り寄せた銘茶で青の露と言う銘でございます…。
私は思わず…ヘヘェとなった。
生まれて十八才、初めていただく茶の湯の抹茶である。
…この茶入れは古瀬戸の肩衝で、母の寺にふるくから伝来したものでございます…。
歴史にあった織田信長が論功行賞に土地の代わりに与えたと言う茶入れが脳裏をよぎった。こんな小さな入れ物のどこにそんな値打ちがあるのだろうか…。
カウライ男の随想 四十五
三重県の松坂出身のご両親で、父は宗洞宗中学をでてすぐ永平寺で三年の修行したのち東京府下、西多摩の海林寺という大きい古刹に住職として赴任するはずだったのにねこのような山寺にだまされて来たのよ…とU先生の母は挨拶のあとに言った。
庫裏のに続く離れの裏は竹林だった。離れから本堂に渡り廊下が続いている。
軸はまんまるい模様の墨書で円窓と言うそうだ。
円は宇宙を表わし、宇宙即禅の悟りとなるらしい。
床に、桔梗の紫花がいけてある。これは学校でU先生から教わってしっていた。
まい床の間の軸をみて、生けた花に一礼して正座した。
すぐ隣はU先生だ。
香の匂いがしたがU先生ではなく、部屋全体の匂いで、伽羅(キャラ)という香木の王様をたいたと言う。
最初に出てきたのは最中だった。戦時中ではもはや珍しい生菓子である。 そしてつぎに筒茶碗のそこに粥状の抹茶がでた。
…どうぞそのまま召し上がれ!…。
言われるままに口をつけて吸った。
苦さの中に香ばしい抹茶の香りがした。
紀州、松坂から取り寄せた銘茶で青の露と言う銘でございます…。
私は思わず…ヘヘェとなった。
生まれて十八才、初めていただく茶の湯の抹茶である。
…この茶入れは古瀬戸の肩衝で、母の寺にふるくから伝来したものでございます…。
歴史にあった織田信長が論功行賞に土地の代わりに与えたと言う茶入れが脳裏をよぎった。こんな小さな入れ物のどこにそんな値打ちがあるのだろうか…。