いよいよ参議院選挙も投票日まであと1週間となった。ここで投票方法について説明しておこう。日本の選挙制度はどうもわかりにくいようで、いまだに、この比例代表・非拘束名簿式という投票方法を理解していない人がたくさんいるようだ。自分が当選させたい候補者の名前を書いても良いし、政党名を書いても良いという「とてもあいまいな制度」なのである。
比例区はずっと以前は参議院選挙区に対し全国区と呼ばれ、候補者は政党に関係なく日本全国から票を集めることができた。無所属でいたい著名人にとっては、とても立候補しやすい制度だったが、一方で日本全国にポスターを張り巡らせたり、選挙カーを走らせたりするために、とても経費のかかる選挙といわれた。
でも有権者の立場からはもっとも判りやすい選挙だった。好きな候補者の個人名を書けば、そのまま当落に反映されたからだ。ところが、政党の存在感がどんどん薄れていくので、1983年に思い切り政党の締め付けの強い比例代表・拘束名簿式が導入された。
これは比例区では政党名しか書けない投票方式である。候補者は政党が順位をつけて並べ、名簿上位にならなければ著名な候補者でも当選できないという制度である。○○党には自分の大好きな××さんがいるので・・と投票しても、××さんが名簿下位だと当選せず、ほかの名簿上位の人の当選を助けるということになる。
政党などに投票したくない有権者は選挙離れをしてしまうし、政党内では名簿上位を勝ち取るために、候補者同士の熾烈な戦いも繰り広げられる。すこぶる不評で、1998年にそれではと現在の比例代表・非拘束名簿式が登場する。
政党名など書きたくない有権者のために「個人名」で投票する選択権も与え、政党側は拘束名簿を作成しなくてもよく、それぞれの候補者の得票数で順位を決めることができるようにした。候補者は頑張れば、順位で1位にもなる可能性があるぞということになり、選挙運動に打ち込むインセンティブにもなる。
ところが一方で「政党名」も書いていいよ、拘束名簿を作りたい政党はそうしてもいいよ・・と、何でも認めてしまったために、投票する有権者はいったい何を書けばよいのかわからないという制度になってしまった。
今回「平和への結集をめざす市民の風」が提案しているのは、この投票方法を逆手にとって、所属政党を無視して、個人名だけを書こう・・というものである。
「市民の風」の9条改憲を阻む「お勧めリスト」には共産党、社民党、9条ネットの候補者の名前が並んでいる。この中の、自分の好きな一人を選ぼう・・という提案である。
9条護憲派の統一会派はできなかったが、この候補者の総得票数が「市民の風」の得票数になる。日本版オリーブの木とか「オリーブの風」とか「平和の風」とか関係者は勝手に命名していて、いわば9条護憲の「擬似政党」とみなしている。実はイタリアの本家オリーブの木も、政党を合体させたわけではなく、これとほとんど同じ仕組みだったようである。
私個人としては、このリストの中に民主党の改憲反対派議員も入れたかったが、「市民の風」メンバーの中に抵抗が強く、ありきたりの3会派だけになった。この9条が危ないときに、護憲勢力の票が1票でも民主党に流れるのはイヤ・・という理由なのだが、どうだろう。
この選挙が改憲阻止の選挙でなく、与野党逆転の選挙だというところに重点を置いている人は、多少憲法問題に目をつぶっても民主党に入れるのではないか。民主党内も一枚岩ではなくまだら模様で、その「違い」が明らかになっていた方が、与野党逆転で改憲阻止の人も「安心して」投票できるし、「市民の風」の得票数も俄然多くなるだろうと私は判断したのだが・・。
どうしても、これ(民主党内の色分け)が知りたい人は、これもちゃんと「市民の風」ブログにHさんがさまざまなデータをもとにリスト化をしてくれているので参考になるはずである。
ともかくも、比例区投票で「民主党」と書く、主体性のなさだけはやめよう。
選挙区での投票は、1人区はよほどの悪質候補者でないかぎり民主党候補、2人区以上の選挙区では、あえて民主党ではなく、他の野党の最有力候補に投票を集中させよう・・というのが、これまでご紹介してきた方法である。
この手法で、いよいよ、明日にでも東京選挙区を占ってみよう。
でも同時に、民主党の中で護憲派を増やすということも、選択肢としてあると思うのです。
民主党の中で改憲派が増えるということは、とりわけ二大政党制になりつつある現状を考えると、かえってこわいかもしれません。
でもまあ、比例区はやはり、人物で選ぶということは大切だし、だから地方の1人区以外では民主党に票を集中させるべきだとも思いません。