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道楽人日乗

ツイッターのまとめ。本と映画の感想文。
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本読むのが遅く、すぐ忘れてしまうので。

映画「コクソン」 その3

2017-03-22 19:26:11 | 映画感想
ひきつづきネタバレです。
(その2追記の解釈を暫定最終解釈?にします)


第4の解釈 邪教蔓延
3番目の解釈は、なんだかんだで作品にちりばめられた罠にいちいちひっかかってしまったようだ。そこで、もっと素直にもう一度考えてみることにした。ここ数日、道を歩きながら、車を運転しながらもずっとこの映画のことを考えている。他の映画を見ることができない。いや、正直に告白する。二度目を見てきた。14日に初見、感想書いていたらわけがわからなくなって18日に再見。普段買わないパンフレットも買った。それからさらに4日たってこの文を書いている。またしても細部や前後関係を忘れてしまったが、いずれDVDで見返す事ができるまでは今のまま頑張るほかはないのだ。

今回の方針
登場人物にはすべからく二重性があり、正邪が判別しにくい。そこで物語の中の出来事=ファクトに注目しそこに原点を置くことにした。
そんなこと言いながらも、まず注目したのはこれ。
祈祷師の示した瓶の中にカラスの死体。

1.祈祷師が現れ「この家は悪霊に憑かれておる。ほれソコを見てみい」なんて言いカラスの死体が出てきたりしたら、典型的イカサマ師という宣言みたいなものだ。加えてこの祈祷師は目の前で本当の驚異を起こす力はないことを示している。小者だ。そして仕込みを行った協力者がいる。

2.下手人体内からキノコ成分が検出されたというのは、幻覚云々ではなく警察発表の事実だ。この地に幻覚キノコを蔓延させている奴、奴等がいる。目的は何か。村落なのでテロ活動とは思えない。宗教活動ではないか? 次々続く家庭内大量死は何のため? 脱会・裏切りは死ということなのか?

見たまま素直に考えれば國村も邪教の徒である。映画で祈祷師と國村は直接顔を合わせていない。
祈祷師はジョングからの「怪しい日本人」という伝聞だけで國村という人間を特定し、あまつさえ「殺」まで送れるのか。國村の所持物すら持っていないのだ。
故に祈祷師の派手な祈祷フェスティバルは、デタラメもしくは別の目的があったのだ。
祈祷師が履いていたふんどしも、デビル國村と共通する。
國村と祈祷師はグルなのか? なにかあれば、毎回どこかのおばあさんが出てきて祈祷師に頼めという。すでにこの地の村人達の中、主婦やおばあさん達の間に、キノコの幻覚を利用した邪教がはびこっているのではないだろうか。國村は呪術担当である。

3.赤目(ふんどし)のデビル國村の登場場面は3カ所しかない。
1.ジビエ肉屋が山で見た。
2.ジョングがムミョンに導かれ焼け跡で見た。
3.助祭イサムが洞窟で見た。
2.は悪夢だったことが示される。1.肉屋は山で滑落・気絶の後、デビル國村を目撃するが具体的被害をうけていない。これも悪夢のようだ。
3.のイサムが見た最凶悪なデビル國村も悪夢の可能性がある。病床に伏していたイサムの状況は、1・2と共通性がある。

4.白い服の女=ムミョンとは何者か。ラストの鶏三度の場でギョングを止められず、悲しく叫ぶムミョンの目が青く光っていた。人間じゃないのかしら。
第2の焼け跡現場で、ムミョンはジョングに「刺されて死んでゆくおばあさんを私は見ていた」(僕の記憶あいまい)と語りかけていた。ジョングは「目撃者」だと思い込むが、目撃者というより「当事者」と言うべきだろう。彼女は事件現場にいた。そして無傷である。彼女は亡者、霊なのか。
霊なら何故ギョングに向かって石を投げることが出来たのか? これもギョングの夢の起点がムミョンの登場からだとすれば問題ない。同席していた同僚は早々聞き込みに追いやられ排除されている。
ジョングの悪夢にかぎってムミョンという異なる存在が「混在」していることになる。ムミョンがジョングに見せた夢ということ?

主な三人の関係はこうなる。國村(邪教の徒)、祈祷師(邪教の徒)、ムミョン=白服の女(対立する存在)

第1の事件は、商売の上手くいかない朝鮮人参売りの夫婦がコロされた。この事件だけ他と様相が異なる。被害者夫が離れた納屋でコロされ油紙に包まれた後、妻のいる家に運ばれ、そこで妻もコロされた。家ではなく納屋の方に呪いの枯れ草(キンギョソウ ドクロで検索)が置かれていた。(はじめ稲穂かと思った)

毒キノコ健康食品によってヤク中にさせられた男が、旦那を呼びだし殺害(だったっけ?)。遺体を油紙に包む迄の意識はあったわけだ。旦那包みを担いで彼の家へ行き妻もサツガイ。発見された時は瘡まみれで意識をなくしていた。口封じだ。この間でなにかあった? 納屋にあった鳥かごみたいな物はまだよくわからない。

第2の事件
は「おばあさんが、祈祷師を呼ぼうとしたら、それをいやがって事件が起きた」と誰かが言っていた(僕の記憶あいまい)。第1の事件が及ぼした恐怖が、毒キノコ健康食品を使用する他の家に破滅をもたらした。火災が起き周囲が停電。夜の警察に自首しようとしたオカミさんをジョングが目撃。オカミさんは、邪教の徒に吊された。(キノコ呪法をかける余裕がなかった)
ムミョンはこの事件の火災で死んだ娘?コロされた被害者の一人で、巫女体質をもっていた娘が霊となって邪なる徒を滅ぼそうとしていた、のかしら。

そもそも、ジョングの娘はただの病気で苦しんでいたのをジョングが早とちりしたのではないかと思う。思春期にさしかかり父親に反抗していただけなのを悪霊の仕業と誤解、おばあの勧めにしたがって悪の祈祷師を引き入れてしまったのだ。娘を信じてやれなかった。
初めに味覚が変わって嫌いだった魚を食いだしたのは(そういうことがあるのか知らないが)ホルモンバランスの変化のため。暗黒落書きは父親ジョングの疑心暗鬼、あるいは國村の呪結界に影響された心が生んだ妄想ではないかと思う。

派手な祈祷スタイルは、祈祷師はそもそも呪術担当じゃない小者なので、國村とちがって専門じゃないから。それでも一度目の祈祷で娘に恐怖をうえつけ、二度目の祈祷で心を壊した。ジョングの娘は國村ではなく祈祷師が担当したのだ(靴は別人の物)。真相をかぎまわるジョングをいずれ排除する為だろう。結末場面、ムミョンの攻撃でゲロした祈祷師が去った跡に髪飾りが落ちていたのは無論、祈祷師が落としたもの。祈祷フェスティバルの時、呪いに使ったのだ。祈祷師は呪いを急ぎ完結させようとしていたのか。
ラストシーンで祈祷師が現場の写真を撮り始めたのは、國村が死んでしまったことを関知したうえで自分が引き継ぐという意味。彼の車に娘の写真が多数あったのは呪術のためというよりロリコンだったのでは。

さかのぼって、祈祷師が空をみつめて「愚かな、エサを腹に入れたのか」と言う場面。祈祷師は憑かれた娘を家に入れたジョングに言っていると思ったが、これは國村に対して言った言葉だった。どういう事か?

山道を歩いていた國村が、車に乗って死亡していた第4の事件?の下手人(死体)を見ておびえる場面があった。何者かがキノコ死者を操り國村のもとに迫ろうとしている。國村は敵対者に、一世一代の呪術で死人返し(適当に命名)を行うことを決意。ニワトリ買ってきて水ごりして挑んだ必殺の呪法。
映画では祈祷フェスティバルと同時期に進行するので誤解するが、國村がいきなり苦しんだのは、彼自身の呪いがムミョンから返された為。息を吹き返し床に伏せ目を閉じる國村。開け放たれた戸口の外に、ムミョンが静かに現れた。見つけた。この男だ。
死人返しは失敗、蘇生した死人は翌朝、國村の所に来てしまう。國村をコロしにだ。ところが殴り込みに来たジョング一味と鉢合わせになり、こいつらと死闘に。が、突然死人は突然活動限界を迎える。罪のないジョング一味を殺そうとしたので、ムミョンが引導を渡したのかも知れない。

一部始終をおびえて見ていた國村は、ムミョンの姿を見(國村としては初対面)、正体を知らずに追いかけるが、断崖に誘導され道路に落下、ジョングの車に当たり、死亡。ジョングは國村を助ける気も葬る気もなく彼を谷底に捨てる。

「おろかな…」と言った祈祷師は、このとき来ていたおばちゃん二人(信者)から、逃げ帰った者どもの顛末を報告され、國村の命運を知ったのだ。(前後関係が間違ってるかも知れない)


台詞の向けられた対象を勘違いする。それはもう一つあって、時をさかのぼるが、
病院内で、落雷を受けたジビエ肉屋の病床脇で彼の妻が「漢方薬を飲んでいたから助かった」というのは落雷のことを言ったのかと思うと笑うが、そうではなくて毒キノコ健康食品に頼らずに済んだ、あるいは毒素にやられずにすんだとしみじみ言った言葉だったのだ。
ジョングが焼き肉屋での食事の翌朝、体が麻痺して起きられないのはキノコを盛られたのか。店には首筋にキノコ腫れのある女がいた。この後ジョングは漢方による治療をうけている。

ジョングの治療と同時刻、彼の娘がとなりのおばあさんを刺したのは、夢に現れる男と同一視してしまった錯乱によるもの。あるいは、隣のばあさまもキノコ講の一味で、娘に何か怪しい呪法をかけようとしたのだろうか。

このお話では実に多くの人が、恐ろしい幻に翻弄される。人々に恐怖を与え狂わせる邪教徒の呪力がこの村で猛威をふるっていたのか。しかし前にも書いたが赤目のデビル國村が画面上に映像で現れるのは3度。しかもどれも「妄想夢」と思われる。3番目に登場した國村がとりわけこってり邪悪なのは、助祭イサムが信仰に疑念を持っていた反動であると思う(前の二人より物を考える人だった)。ジョングのように「はっ」と目をさまし、夢だったのかという場面が省略されているのだ。
デビル國村は死なず本当の魔人になったのだと言う解釈もじゅうぶんありえる(その場合鹿喰いデビル國村も実在? 魔力充実故の行為?)。
だが、今のところ僕は國村は激突事故で死んだと思っている。
他の人の夢に出た恐ろしい男の幻が、すべてデビル國村であったとは限らない可能性も指摘しておきたい。ただし、ジョングの同僚は山の家で惨劇写真を見ている。事件を起こす前にデビル國村を見たかも知れない。錯乱し、奥さんがデビル國村に見えたので刺したのだろう。

ジョング達が初めて國村の住む山の家を捜索した時みつけた彼の持ち物「能面」「図鑑」「和綴じの春画」などの目くらましの馬鹿馬鹿しさに、呪い部屋にあった縛られた悪魔像、床に放置された十字架、そして鴨居の上の老夫婦?の写真なども見過ごしてしまうが、高々と掲げられている二人は教祖ということを示している。悪魔崇拝の淫祠邪教の徒なのだ。

ムミョンが最期に仕掛けた鶏三度の罠とはなんだったのだろうか。
おびえて車でソウルに逃げようとしていた祈祷師の逃走を諦めさせた。地図で見るとソウルは韓国の上と下くら離れている。カラスの糞?攻撃で祈祷師は車をを止めたが、攻撃は止んだ。祈祷師の命が奪われることはなかった。ジョングの娘がムミョンの念を止めたのだ。娘は家の周囲をまわって呪いを妨害する者へ念を発していた(髪飾りはこの時落ちた?)。つまり祈祷師の呪いの発現は迫っている。祈祷師は携帯電話で、ジョングを娘の元にいてやれと説得する。邪魔なジョングの死を願う故だ。

ムミョンはそんなジョングに鶏が三度鳴くまで入ってはいけない、家族コロしが起きる、と警告する。

以下の解釈は、まだ不満足なのだが、こういことなんだろうか?
家の中にいたのは、娘、母、祖母の三人だ。鶏は二度まで鳴いて、母と祖母が死んだことを伝えた。三番目に鳴くとき、娘によってコロされるのは戻ってきた祈祷師の筈だった。祖母と母すでに死んでしまっていたが、ジョングだけでも救おうとしたということなのか?

ギョングの家の門に吊された髑髏姿の種子になったキンギョソウは、呪いの完結を祈祷師に伝え、ムミョンの力が及ばなかった事を確信した祈祷師はジョングの家に入っていく。



●ジョングの娘が見た男とは誰だったのか? まだよくわからない。「壁から男の人が現れる」と初めて娘が言って泣くとき、一瞬、障子を背景にシルエットの人物が写る。これが誰なのかよくわからなかった。気になるから、DVDがレンタルされたら要確認か……。もっとシンプルな解釈を思いつくだろうか。そういえば、本稿ではムミョンは霊であり物理的接触が出来ない前提だが、ラストでジョングの手を握っていたよな……あれどういうことなのかしら。む、む、むむむ矛盾か。もう疲れた(憑かれた)よ。


●パンフレットから得られたヒントは、とりあえずキンギョソウだけ。キゾー先生の文章は教会神父の言に真実があるような意味かと取れたが、僕の中でそれ以上生かせなかった。監督インタビューでナ・ホンジンは「エンディングから慰めを感じてもらいたい」と言っている。なんのこっちゃである。
ネットで調べたところコクソンは「昔、韓国のキリスト教徒への迫害を本格的に加え始めた震源地」なのだそうだ。谷城(コクソン)旅行~谷城の隠れ名所「メタセコイア並木道」~ http://ameblo.jp/jnkorea/entry-12205558464.html
なぜ、この地なのかという理由なのかもしれない。

●韓国語はわからないが、カットされた結末らしい。(一分五十秒程から)
https://youtu.be/62bt5ZdRJ7w  これからすると國村は明確に復活したのだから、魔人決定。祈祷師は仕える者。ムミョンは地元の守り神?精霊?犠牲者の魂?ということがあきらか。これはなら悩むことはなかった。映画がぐんとこじんまりしてしまう。カットして正解だ。この映像から逆算して、この項を作り直せば正解ということになるのか? それじゃむなしいよ。

●エガちゃんが、この映画を10回見た上で、こんな解釈をするのはオレくらいだ! と言ってあげた黒幕の名前が、監督がインタビューで答えた名前だったそうだ。誰だろう。刺された隣のオバアか? そもそも監督ってインタビューでこんな事ずばり答えるのか?(「映画秘宝」当該記事を読みました。エガちゃんは祈祷師を意外な黒幕としてあげていた。なんだ、つまらん)

コクソン その1
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