道楽人日乗

ツイッターのまとめ。本と映画の感想文。
いいたい放題、自分のための備忘録。
本読むのが遅く、すぐ忘れてしまうので。

映画「スリー・ビルボード」

2018-02-04 11:33:24 | 映画感想

マーティン・マクドナー監督

米南部の片田舎。娘が惨サツされた事件の捜査が一向に進まぬ事に業を煮やした母が、自宅前田舎道の寂れた看板に、警察署長に呼びかける広告をうつ…。アタシ流フェアネス?を押し通す母の孤独な戦いと、かかわる人々の多様な側面、それぞれの想い。傑作でした。

あの「ファーゴ」のおば…、お姉さんフランシス・マクドーマンド主演。もう還暦なのか。田舎の未解決事件というなんだか見たことあるような物語に配置された類型的な人物達が、思いもかけぬ別の面を見せて、お話もあらぬ方へ転がってゆく。そこがとてもおもしろい。辛辣でもあり無残でもありユーモアもある。人間だものなあ。素晴らしい脚本の冴え。

これは容易に他国に置き換えのきかない、アメリカならではのお話ななのかも、とも思う。ラストは「え、ここで終わるの」と思ったものの、家路を辿りつつ考えるならば「ああやはりあれでいい」と納得しました。

「十二人の怒れる男」で登場人物それぞれが、劇が進むにつれて冒頭の登場時とは逆の側面・人格が浮き彫りになり、ラストではカードを裏返すように変わってしまう、本作はそこまで極端じゃないけれどそれに近い感じがありました。それと、鑑賞しながらほんのちょっとだけ「秋菊打官司」を思い出したり。

スパイラルドット+(プラス)

2018-02-04 11:29:30 | 雑感
Eイヤに注文していたスパイラルドット+ Mサイズが案外早く届く。「小さいなあ」という印象。さわってすぐわかるほど柔らかく、付け心地が改善され、低音に若干ふるえる様な躍動感が加わった感じ? 実際にはあり得ないだろうが、柔らかいゴムで耳道に浮いているイヤホン本体がブルブル躍動する感じがする。 音はシリコンで一番好きだが、音の出口が直下に露出しすぎてゴミ入りが不安。クリスタルチップはさらに低音が増すが装着に手間がかかる。僕の耳だと収まりが悪く、ぽろぽろ落ちてしまうので興ざめするしつぶして装着するのも面倒くさい。単にぐりぐり耳に押し込むだけでOKのスパイラルドットはありがたい。

並べた写真は左側が+で、装着したものはR側が+。通常版の砲弾型に比べてそろばんの珠的な形状? 従来型と混ざっても、形状と特に手触り(新はキクラゲ的やわらかさ)とが違うのでやっかいだが区別はつきそう。余談だが、Andromedaを経験したあとも愛好するファイナルのHeven-sについているイヤーピースがやっぱりキクラゲみたいで、最近買った高いイヤーピースを色々付け替えてみたが、結局元からついてるキクラゲが一番良かった。キクラゲのポテンシャルは高い。
それにしてもスパイラルドット+は、Andromedaだと音の出口がすぐそこ。旧も新も、何もふさがず柔らかいゴムボールをまわりに巻いたという感じだ。




写真で見比べると大した違いじゃなさそうで、何をこだわっているんだろう、とは思います。

追記
気になっていたイヤーピース
○AZLA SednaEarfit
○final earpiece E type(ファイナルのE)
を購入してしまった。

ファイナルのEは若干高音がおさえられ、すこし狭い空間で聞いているような印象。ちりちりノイズが気になっていた録音がさほど気にならなくなる。音がアレンジされているということだろう。低音の押しも意外とあると思うけれど、音によっては壁一つ向こう側に行ってしまったような感じもする。つくりものっぽい感じだ。穴もスパイラルドットに比べるとだいぶ小さい。穴の芯の素材も固めなので、Andromedaに装着出来るのか?と思ったが楽では無いがつけられました。

AZLAは、袋から出して手にした瞬間からイヤーチップの素材の若干かための安っぽい手触りが気になる。通販でMサイズを買ったのだが、耳に装着するとちょっといたい。音はファイナルEのようなこもり感はなく、比べれば素直な感じ。サイズ選びが悪かったのかも知れないが、装着感が悪くて、これ以上あえて使う気がしなくて袋に戻してしまった。(袋戻しは油くさいSONYのトリプルコンフォート以来二度目)

散財したが、スパイラルドットは、イヤホンの音をスポイルせず、という感じを再確認した。Andromedaの広い空間と点在する音の粒立ちがよく感じられる。耳穴への装着が容易。
低音の迫力をもうちょっと増したいときはクリスタルチップ。きちんとはまれば高域もさほどスポイルせず……もしかしたらこれが一番いい音かしらん?

映画「あゝ、荒野」前編・後編

2018-02-04 11:08:27 | 映画感想

寺山修司原作・岸善幸監督 2017年

2021年の新宿、不幸な生い立ちをもつ二人の青年、荒くれ者の新次と、どもりで内気な建二がボクシングを通じて成長し、やがて闘うまで。場末のジムといい隻眼のトレーナーといい、昭和の気配が濃厚だが、社会情勢が今より不安定らしい近未来という時代設定が違和感無くはまっている。

原作は未読。更生したとはいえ、老人を騙して財産を巻き上げていた新次には、あまり共感が出来なかった。前編では本筋と別に自殺防止活動をしている大学生とその仲間が出てくるパートがあるのだが、彼等の活動、とくに中盤の「自殺防止フェスティバル」は荒唐無稽すぎてドッチラケである。このあたりの頭でっかちなエピソードは原作にあろうが丸ごといらないと僕は思う。
生活の為オーナーの経営する老人ホームで働く事になった新次が、老人達と向き合う場面をもっと厚みをもって描いてほしかった。

震災時の電話応対を苦にしている30代くらいの電力会社社員という人物にも違和感がある。年齢的にはあり得なくは内かもしれないが、彼は20年も震災後の辛い応対を引きずっていたのだろうか。主要登場人物の過去そのものの肉親達が新宿の狭いエリアに集まってきて互いに関係を持つのも、いくら物語とはいえ不可解でもある。(ロバート・アルトマン的な演出、アルトマン・システムのつもりだったのだろうか)

文句ばかり言ったけれど、あの「息もできない」の監督、ヤン・イクチュンが健二役で主演していて、その存在感に圧倒された。すごくないか? もう一方の主演、菅田将暉演じる新次とのボクシング場面は有無を言わさぬ迫力の名場面だ。
けれどボクシングについて僕は知らないが、あの終盤のありさまは「試合」なのだろうか?どうしてああなるのか。

試合終盤の木村多江の絶叫「コロせ!」でドッチラケ。昭和を引きずっている訳では無いと思うのだけれど、それにしてもどうして毎度ああいう結末になるものか。唖然としてがっかりしました。





ヤン・イクチュン監督・主演 「息もできない」 2010年韓国

映画「殺人者の記憶法」

2018-02-04 10:55:24 | 映画感想

ウォン・シニョン監督

大事故で脳に障害(健忘症)をおったビョンスは、娘を誘惑する男テジュがシリアルキラーだと気づき、彼と闘う。ビョンスもかつて同じサツ人者だった。原作は未読。映画は記憶の錯誤からくる叙述的迷宮感よりサスペンスに重点をおいた作り。良かったような物足りないような。

いつもの良くできた韓国映画で、記憶を失ったサツ人者という設定から「信頼できない語り手」的な演出を期待していたのだけれど、そのへんはストレートで、去年見た「コクソン」の様に後々まで心掻き乱す作品ではありませんでした。
事故が遠因というものの、映画で描かれていたビョンスの混乱(幻覚)はアルツハイマーの症状なのかと素人ながら疑問。他にもビョンスはどうやって各被害者に接点をもったのか?ボイスレコーダーが残されていたのは何故か?等々疑問に思うところがありました。





ネタバレ警報



映画の冒頭と、結末の場面は、現実の場面ともとれるし幻覚ともとれるバランスとして設定された「絵」で、それほど破壊的な意味は無いと僕は思います。
●ビョンスが介護施設を脱走して、現実には死んでしまったテジュの幻を追いかけていると解釈。この場合は、ビョンスの「生きる意思」を現しています。
●逆にビョンスは、死線を彷徨っていて、黄泉の世界のとばぐちで、先を行くテジュを追いかけていると解釈。この場合は、トンネルという絵柄が象徴的な意味を持っていることになります。(臨死体験で有名なイメージ)
上記のどっちでもいいんじゃないか、と僕は思いました。

作品内の現実としてテジュが生き延びていて、ビョンスが追いかけている、また繰り返すのかという解釈は僕はとりません。

映画「バーフバリ 王の凱旋」

2018-02-04 10:37:53 | 映画感想

S・S・ラージャマウリ監督

長い長い回想場面が続き、先王と現王を同じ役者が演じていたり、船がいきなり空飛んだりと奇想天外、荒唐無稽の釣瓶打ち。
圧倒的な映像と音楽の力で、理屈を越えた楽しさに満ちている。
内容に着目すれば、これはまさに本編というべき。陰謀と裏切り、取り返しのつかぬ錯誤と慚愧の果て、25年の時を経て成就する無慈悲な復讐という、壮大なギリシャ悲劇ならぬインド悲劇?なのだ(因果応報の関係性は意外ときっちり出来ている)。
こんな馬鹿馬鹿しく無茶苦茶なのに面白い映画を前に言葉を失う。シナリオや映画の本などでやってはいけない事例として書かれていた演出、自分が映画鑑賞人生でこだわるようになっていた整合性などおかまいなしに吹っ飛ばす勢い、それでいて面白い。前編「伝説誕生」もたいがいだったが「王の凱旋」は本編としての貫禄。なんだか今まで知らなかった途方もなく凄いものを見たなあ。

仮にバーフバリ3があったとして、それが宇宙人襲来でも、氷河期到来でも、恐竜復活でも巨大隕石落下でもゴジラ上陸でも銀河の衝突でも、王バーフバリがいるかぎりインドは安泰だ。


アイチューンストアでダウンロード購入して、ZX300とAndromedaでしばらくこればかり聞いていた。日本でCDとしては出ていないらしく残念だ。

上野の森美術館の「生頼範義展」を見る。(2018.1.15)

2018-02-04 09:29:35 | 雑感
(2018年2月4日に終了しました)

月曜の11時で並ばず、展示も楽に見ることが出来た。子供の頃から本屋さんで見ていた絵を間近にみられて感激。原画が行方不明というSWのポスターは下絵が展示されていた。凄い絵ばかりでくらくらします。絵画も含めて写真撮影可のコーナーが所々ありました。

すっごい細かい繊細なアクリル画???!!!でびっくりしました。それでいて絵の具の層は薄く、描き直しや迷いなど無い?!感じ。
点描や線画のモノクロ人物画はホワイト殆ど使っていないんですね。


「生頼タワー」と名付けられた、書籍ごと表紙絵を展示するスペース。


ゴジラ関係の絵画も多数。


元絵が紛失?した(どうして??)というSWのポスターは、撮影禁止区域に下絵(それでも凄い迫力)が展示されていました。


作家のアトリエ。


「減摩大戦」のイラストを参考に寺田克也が再デザインし、造形作家・竹谷隆之が立体化した立像。


運慶展で見た仏像のようなたたずまいです。


こういうタッチの絵もあったのか。


下絵と並べて展示されている絵も多数ありました。


「DAK TO 1967(ベトナム)」


大作「我々の所産」


7年をかけたという超大作「破壊される人間」。

写真にしか見えない点描も多数。軍艦や拳銃の絵も。
凄いとしかいいようのない作品群でした。