道楽人日乗

ツイッターのまとめ。本と映画の感想文。
いいたい放題、自分のための備忘録。
本読むのが遅く、すぐ忘れてしまうので。

「エクソシスト2」

2016-02-29 00:51:55 | 映画感想
The Exorcist 2 Trailer HD


Blu-rayソフトで映画「エクソシスト2」を見る。ジョン・ブアマン監督。1977年米。
今までこのシリーズは三作とも傑作という映画史上希有な例だと思っていた。
いわく、一作目はドキュメンタリータッチで時代を画した傑作。二作目は一転して土着的呪術的作風。三作目はサイコスリラーの先駆けの傑作(犯人は悪魔だが)。
久しぶりに「2」を見て考えを改めました。2作目は珍作でした。

前作の4年後、ラモント神父はメリン神父による壮絶な悪魔払いの顛末を調査するようバチカンより命じられる。ラモント神父は、最初は拒絶していたものの、少女リーガンに合い、その素直な人間性にふれ、いつしか調査にのめり込む。

リーガンは金髪美人のタスキン博士による、近代的?な明滅する光源をつかった心理療法をうけていた。頭に電極をつけ、明滅する光源を共にみつめることによって、ラモント神父はリーガンの心に何故かシンクロし、彼女の記憶のビジョンを見る。そしていまだ潜んでいた悪霊パズズと遭遇する!

パズズはかつて若きメリン神父とともに自らを撃退した、特殊能力者であるアフリカの少年コクモをどういうわけか親切に見せてくれる。ラモン神父はバチカンが「もうそのへんでよか」というのも聞かず自腹でアフリカに旅立つ!

なぜリーガンは「選ばれたのか?」という新たな視点から、おそらくキリスト教的悪魔払いを超えた地平へとおよぶ壮大なテーマを描こうとしたらしい。……としても、都合の良い展開が目立ち、なんだかアメコミみたいだ。

僕の記憶では主にアフリカパートでの呪術的印象が強かったのだけれど、改めて鑑賞すると、前半パートの都会的印象も同じくらいの比重で、どっちつかず。後半現れるパズズにより与えられたビジョン、イナゴ視点がよほど強烈だったのか。
それと、リーガンはこんなに裕福だったっけ?

ラモン神父はリーガンを救うことができるか?クライマックスはあの家で上を下への大騒ぎ。こんなんなって3作目とどうつながる?(つながらない?)のか。


リーガンに託された「よいイナゴ」としての生物的特徴? 彼女たちはもともと「とくべつな存在」だったのだ。
(第一作の誰にでも降りかかるかも知れない恐怖というコンセプトは否定されたわけ?)

この映画のリーガンのテーマが、タランティーノ「ヘイトフルエイト」の冒頭になぜか流れる。モリコーネだからなのかしら。
Regan's Theme

「ジュラシック・ワールド」

2016-02-25 18:14:17 | 映画感想
映画『ジュラシック・ワールド』第1弾日本版予告編

コリン・トレボロウ監督

大勢の観光客で賑わう恐竜施設の孤島。遺伝子操作で新たに生み出されたハイブリッド恐竜インドミナスが恐るべき知能を発揮し脱走。島は恐竜大パニックに!翼竜もおるでよ! 責任者が職場放棄し身内ばかり守ろうとするのは「カリフォルニア・ダウン」を思い出すけど、米パニック物の新定番なのかしらん? いけすかないなあ。

主役の少年二人は、パークの責任者クレアからVIP待遇で迎えられたセレブ。喰われちゃえ。クレアも人死にがでる大騒ぎの最中、早々職場放棄して身内の二人のみ助けに行く。しかも恐竜の専門家の彼氏を連れてっちゃう。おいおい! そして社長マスラニはヘリでブンブン飛ぶ! 恐竜は兵士になるじゃんと強弁するおデブさんも登場。登場人物の愚かな行動が事態を悪化させ映画を引っ張るのはわかるけどここまでアホばかりで面白いか?

少年二人のお守りを命ぜられた秘書ザラの身を誰一人案じない。クレアの行動を見てると、人間は家族と使用人と敵の3種類と言った人を思い出すよ。
大勢の観光客が逃げ惑い命を落とす場面がむしろコミカルに演出される。お約束の場面ということか。施設の責任者は勝手な事ばかりしてないで救助誘導せえよ。それと明かした一夜は省略されてるけど非難してた人たちに惨劇がいろいろあったのでは? そんな心配は野暮なのか?
”特別な存在”以外の群衆はどうでもいいというお話の構造があからさますぎてあっけにとられます。

「オデッセイ」

2016-02-24 16:02:50 | 映画感想
映画『オデッセイ』予告編

リドリー・スコット監督

火星に一人取り残されたマーク。植物学者としての専門知識を生かしサバイバル、地球に連絡をとることにも成功するが…。絶望的な状況のなか、困難を打開すればさらに大きな困難にみまわれ、犠牲もともなう起死回生の危険な策に全てをかけるという、まさに王道をゆくエンタメ。

他の乗組員を生かす為、マークは死んだと判断をしたメリッサ船長。後に再会し命がけで救出活動をする二人には恋愛ドラマが仕組まれておらず、プロとして認め合うドライな関係。そこがいい。邦画ならべたべたの愁嘆場か。一人と六人どっちを生かすか?サンデル教授の設問みたい。

マークの孤独を癒やすのはメリッサが残した流行遅れのディスコミュージック。小説と違って映画は実際に聞けるのが利点。どのくらい未来なのかわからないが、会話するコンピューターは当然存在しているだろうに、そういうものはちらりとも出てこない。作り手がそう選択したのはわかるが、Siriに毛が生えたくらいの程度でいいから、コンピュータの相棒がいたらそれはそれで(HALとは違った)面白い展開もあったかもしれない。

途中で急に中国に救援を求める場面があると聞いていたが、それほど気にならなかった。助けてもらっておいて米側は「まだこんなの使ってるの」なんて上から目線。中国の観客も気分が悪いだろう。それより、結果的に食料コンテナの打ち上げだけになったので、これなら種子島からだって可能だったんじゃないかしらん。

それともうひとつ、世界中で戦争を起こして人を死に至らしめているアメリカが、たった一人のアメリカ人を救うドラマを高らかに謳うのはあんまり非対称じゃないの?という意見があった。その意見を頭の片隅におきつつ映画を見たが、僕はこう思う。

絶望の火星で一人生き延びていた英雄の救出の瞬間は、TVの中継またはラジオの音声、あるいは夜空の赤い星を、世界中の人々が息を呑み見つめた筈だ。この一瞬だけ地球上に敵も味方も無かったのではないか。もしそんな瞬間が信じられたならそれはそれでいいじゃないだろうか。



吹き替え2Dで鑑賞。吹き替えは悪くなかったと思う。



「エンジェルメイカー」

2016-02-21 17:55:56 | 読書感想

ニック・ハーカウェイ著。早川書房

やっと読み終わった…。早川ポケミス二段組みで700ページ越え。本読むの遅い僕にはきつかったー。シンプルな話だけど初読では細部がよくわからず誰の何の話だっけと何度も振り返ったり。

オタクな作者が自分の読書体験を掘り起こして、好きなガジェットを並べて針と糸でひと繋がりに仕立てたような作品。それでいて「どこかでみたような」という否定的な連想を呼び起こさないのは、それぞれの要素のズラし方、アレンジの仕方がうまいのか。こういうオタク総決算が出来てしまう才能を持った人はうらやましい。さぞかしスッキリしたことだろう。
ミステリの扱いだけど、内容的にはスチーム・パンクという感じ。物語上の罠とかないストレートな冒険譚なのだと思う。それなりに面白かった。描写や台詞がこってりしていて、シナリオのト書きに毛が生えたような描写の最近のSFなどに慣れてしまったのか、読むのにとにかくひと苦労。けれどこういうのがむしろ小説らしい文体なんだろう。

それしても、結局蜂は何をするのか?女流天才博士は第二次大戦中?に「量子論的認識の魔法」を作っちゃったの…?



作中の主要アイテムである「本」は、パンチカードのあつまりみたいで、くしくもこの前みたばかりのアニメ「屍者の帝国」で出てくる「本」が同じ設定で、こんな感じなのかと参考になってたすかった。

「ナイトクローラー」

2016-02-21 17:43:04 | 映画感想
映画『ナイトクローラー』予告編

ダン・ギルロイ監督

ロサンゼルス。窃盗で命をつないでいたルイスは、自動車事故の映像をTV局に売り報酬を得るカメラマンを目撃。「金になる」と直感して、手探りかつ強引に他人の不幸をネタにする世界に身を投じてゆく。
僕としては、意外とあっけなく、連続ドラマの冒頭3話くらいで終わってしまったような印象。

ルイスがやったのは非道な脱法的行為だが、物語としは、まだ「創業者の狂気」におさまる範囲のような気がする。
犯罪自体をでっち上げ大勢の命を奪い、大金を巻き上げるが居場所をうしない、行きずりの浮浪者に喉かっ切られて果てるみたいな展開を、心のどこかで期待していたのかなー。

「モナドの領域」

2016-02-21 17:31:39 | 読書感想

筒井康隆著。新潮社
女性の片腕片足が見つかるという冒頭の事件はGODなる存在の登場をへて途方もない真相へ。ジャンルの拘束を越え、作者が生の思考を開示するという感じから黒澤監督の「夢」を連想した。遺言のようでもある。この小説が最後なのかなあでも黒澤作品には次があった…。

結末近く「時をかける少女」みたいだなあ、と思っていたら作者がちゃんと言及するので笑った。

「ジョン・ウィック」

2016-02-21 17:21:50 | 映画感想
キアヌ・リーヴス復活!『ジョン・ウィック』本予告編

チャド・スタエルスキー監督

ロシアマフィア親分の息子が、ある男の車を奪って飼い犬を殺した。
その男はジョン・ウィックだ! → 全員死亡。
というマンガみたいなお話。
途中で出てくる「殺さずの掟」ホテルという設定が面白かった。どういう上部組織?なのだろう。なんだか仕置人とかの世界のようだ。
キアヌ・リーブスは、どこかなよっとしていて「でもこういう奴がこわいんだよ」という感じの説得力はそれほどなかったような気がする。

アクションがメインの映画なのだけど、ガン=カタのアップデートと期待したガン=フーはいまひとつ。やっぱ「リベリオン」は偉大だなあ。

「屍者の帝国」アニメ版

2016-02-21 16:12:53 | アニメ感想
「屍者の帝国」劇場本予告

伊藤計劃/円城塔 原作 牧原亮太郎監督

19世紀末、英国。フランケンシュタイン博士によって一度は成し遂げられた、魂も含めた死者の蘇生。博士と共にその技術は失われ、ただ一人の蘇生体「ザ・ワン」は行方不明。未完成の蘇生技術から生まれた意思をもたない屍者たちが奴隷として生者と共存している、そんな世界。

医学生ワトソンは、夭逝した研究仲間にして親友フライデーを蘇生させようと、禁じられている個人による蘇生術を試みる。魂は還らずうつろな目をして甦ったフライデー。なだれ込んでくる官憲。ワトソンの前に現れた「M」なる人物は、ワトソンにアフガニスタンへと赴き、そこで屍者の王国を築き上げたカラマーゾフなる男を調査せよという命令をくだす。

アフガニスタンから、日本へ。ワトソンとフライデーの旅は続き、ワトソンは懸命に魂のありかを探そうとするが果たせない。再び英国へ。Mは、全ての生者の意思を奪い争いの無い静的な世界を実現しようともくろむ。ロンドン塔から発せられる怪音波。現れたザ・ワン。
ワトソンはMとザ・ワンのたくらみを防ぐことが出来るのか。フライデーに魂は還るのか?


多分こんな感じの話だったと思うのだけど、原作を読んでいないので、所々わからない。特に、一番最後、ワトソンが自傷的行為の果てに、なぜあんな風になってしまったのかさっぱりわからないー。フライデーもどうなったのか。多元世界ってこと? それにしては相棒たちが事情を知っているし。わからない。描写が不親切すぎる。

M、そしてザ・ワンとの戦いは、二つの価値観の戦いというていでもあるのだけど、なにがなんで闘ってるんだっけ?と、いつもの大団円の戦いねって感じで、ここら辺のテーマ的なものはどうでもよくなってくる。
そもそもフランケンシュタインの怪物が、なんで蓬髪のおじいさんの格好なんだろう。

それから、原作にはない、映画版としての脚色なのだそうだけど、親友フライデーを甦らそうという執念とも愛情ともいうべきワトソンの苦闘。法を犯しても、大勢の人に迷惑をかけても、なんとしても魂のありかをつきとめようとするさまは映画を引っ張るには良い改変だと思う。原作を読んだ人は、そんな話じゃ無いと怒っていた。いいじゃないの。

「21グラムの魂」のありかを懸命に求める行為は、亡くなった作家の小説を書き継ぐいう原作小説の成り立ちの二重写しのようでぐっときたのだけれど。「21グラムの魂」とはあたかも亡くなった作家が小説に込めた精神のようでもあって、そのありかを探し求めると言うことがすなわち小説を書き継ぐということなのか、と思えた。
ちがうのかしら。