道楽人日乗

ツイッターのまとめ。本と映画の感想文。
いいたい放題、自分のための備忘録。
本読むのが遅く、すぐ忘れてしまうので。

Campfire Audio solaris (イヤホン) 感想

2018-10-28 19:41:40 | 雑感

ヘッドフォン祭りにて

発売前のCampfire Audio新作イヤホンSolarisが評判なので、気になってしかたない。これだけでも試聴できればという覚悟で中野へ。Andromeda S買ったばかりなのに何やってるんだろう。へたに興味をもって欲しくなったら大変ではないか。ああ、やはり沼なのか。

solaris
筐体は軽い! 耳に差し込む管の張り出しが長い! 外側の金色もあって装着時の外見はフランケンシュタインのおでこの出っ張りみたいになるかも?
ただし軽いのでいったんうまく耳にはまると落ちない。外側の金色は太陽のイメージなのだろうか。金色が好きな中国を意識したのか? 僕としては棚田のようなふしぎな筐体の凹凸に、むりくりにでも「ソラリスの海」を感じてしまうのだけど。

シングルBAばかり聞いていた一年前の僕はAndromedaを初めて試聴して音場の広さとスケール感に「映画館みたい!」と驚いたが、Solarisはさらに広大。もはやスペクタクル!? という感じ。ただし、音空間になにか紗がかかったような?薄い壁一枚隔てて聞いているような? あれ、ものすごいけどクリヤ感いまいち?という第一印象。
映画館でいえば新宿ミラノ座(今は無い)や、有楽座(今は無い)などでかい映画館で一番後ろの席で鑑賞しているような、施設がでかくて音量もすごいが、音のつやがいまいちでスピーカーが古いのかしら?という感じ。僕はそう感じました。

比べてみようと、ノーマルのAndromedaを試聴させてもらう。やっぱりこちらは空気が澄んでるような、金属のきらめきが際立つような音の輪郭がある。(比喩としての)映画館施設としてはSolarisより少し小さくなるが、それでも十分空間はひろがり、良い音響のスピーカーが近くにあるという感じ。Solarisにこのきらめきがあれば最強なのに! Solarisさわった後だとAndromedaがほんと小さく感じるなあ。

Atlasも試聴させてもらう。ああ「比喩としての映画館」はうんと小さくなったが、音響、とくに重低音が売りの映画館、立川シネマシティのような感じ。Atlasの金属的きらめきとともにある輪郭の確かな太い低音は、音源によっては足下に深い奈落が口を開けたような畏怖感を軽く感じる。それと音圧のアタック感。うーん、脳内シェイク。これはこれで面白い。耳の収まりもそんなに悪くない。某イヤホンショップで試聴させてもらったときは、イヤピースががたがたしていてちゃんと聞けなかったが、静かな環境でじっくり聞けば面白いイヤホンなんだなあとあらためて気づく。高いけどねえ。

再度Solarisを試聴させてもらう。同じ印象を深める。Andromedaは頭蓋の周りに一回り大きい半球型のシェルがあってその周りから音が鳴るように感じる時があるのだけど、Solarisはそのシェルすら取っ払われて、ほんとに広大な空間だ。音の分離もある。低音はアタック感ではなくてスケール感。ただAndromedaAtlasにあった清明な空気感が、今ひとつ薄い。発売されるころには変化があるだろうか。

CASCADEも試聴させてもらう。両耳にハウジングをはめると無音室の扉を閉めたような、プしゅっと空気の出入りが止まるようなそんな感じ。でも不快では無い。リスニングの期待が高まる。けれど頭に当たるベルトがいたいいたい。ちゃんと調整してないからだろうけれど。
とても面白いヘッドフォンだという評判だったが、まあイヤホンよりはヘッドフォンのほうが有利だと思うけれど、短い試聴ではそれ程のワンダーを感じなかった。

Campfire Audio ANDROMEDA S (イヤホン)を衝動買い!

2018-10-27 13:38:58 | 雑感
こ、これがオーディオ沼というものなのか。


後ろAndromeda CK(ノーマルと表面処理が異なる限定版)
手前Andromeda S(ステンレススチールの限定版、中音域に独自のチューニングが施されている)


AndromedaCKを買った時は、これ最高のイヤホンだけど低音がちょっと残念とさんざ書いた。Andromeda Sを手にして、低域がちょっと盛られるとこんな風になるのか、と感慨深い。

24日4時予約受付開始で今日27日でもう売り切れ??の様子。
かつてCK購入の時、出遅れたにもかかわらずヨドバシには全国で3つ残っていたが、今回はもう売り切れている。
CKの倍の400個はけるにはそれなりに時間がかかるだろうとブログで予想している人がいたが、ほとんど瞬殺。前回CK購入時は迷ったけれど、Andromeda Sをじっくり聞くことができなかったら絶対後悔すると確信があったので、今回は初日の5時には予約をいれました。高価なイヤホンなので、ホントは試聴してから買いたいとこころだった。異常な事態だよなあ。

箱出しで聞いた印象としては、
ANDROMEDA Sは中低域にフォーカスが寄って、音空間が濃い感じがする。きらめきのAndromedaに対して原色のAndromeda Sというふう。
低域はアタック感ではなくスケール感が増した印象。

ほんとに初めてSを聞いたときCKに慣れた耳には「低音がボワついている?」と思えて一瞬焦りました。(Andromedaにそれは許されないこと)
何度か聞いて、イヤービースを換えて、その印象はかわり、CKの「粒立ちのある高音が右に左に移動するような音表現」とは違うが、これはこれで中音域、ヴォーカルなどに実在感があるつやのある音と思えます。

比べればCKの方がすっきり見通しがよい音、アルミ製は軽いなあと再認識。スタンダードモデルでアルミが選択されたのには意味があったのだと思う。Sをいじった後だと、CKは紙かプラスチックで出来てるのかと錯覚するほど軽いです。
Sの光る筐体を前にしてCKがみすぼらしく見えるかと危惧したけれどそんなことはなかった。現物を見ると、S はよく例えられているジュエリー的高級感というよりはモノ感的(道具的機能美・存在感)だとおもう。Sは重量が少し増したため、耳から落ちやすい。

Sの誕生で基本モデルが全て乗り越えられたという印象では無かった。何かを得れば何かを手放すようで、高域の繊細さは少し遠のいたように(今のところ)思える。ぼちぼち聞き比べて楽しもうと思います(音楽を聴くということとは違う気がするが)。
いずれにしても、Sは開封したばかり。エイジングとやらで変わるだろうか?

もしも初めて出会ったのがAndromeda Sだったら、心かき乱される出会いになったのだろうか、と自問中。


追記
曲によって(音源によって)AndromedaSは、深い低音をスケール感をもって表現することがあると知って驚いた。たとえば(CK)でさんざ聞いた「ブレードランナー2049 サントラ」の一曲目「2049」だが、

2049 (Blade Runner 2049 Soundtrack) CDからFLAC録音・ZX300で聞く
AndromedaSでなにげに聞いていて、広い広い音場に地響きのようにどーーんと鳴り渡る音!…にたまげた。CKに付け替えて聞き直すと、さきほど聞いたような低音の厚みとスケールは感じられない。
CKでは聞こえていた繊細な高音がAndromedaSでは感じ取りにくいとは、よく言われていて僕もそう思っていたが、逆にCKでは聞けない低音の成分がAndromedaSでは表現される、ということなんだろうか。すでに書いたギラつくような音の濃さもありAndromedaSは、これはこれで魅力的だとあらためて見直しました。低音も面白いなあ。


銀と黒でホントに音が違う、NW-ZX300。

2018-09-12 19:47:14 | 雑感
今まで使っていたパソコン(VAIO-L)がハードディスクから壊れてしまった。
電話応対もなくなっていて、チャットで問いかけると、メーカーでの修理も終了ということなので新しいパソコンを買うことに。
いろいろ考えて次は一体型ではなくデスクトップ型にしようかと。で、購入検討の順番的には変だが外付けスピーカーとして興味をもったSONYのCAS-1実機を見られるかしらとソニーストア銀座に行く。



思いがけず試聴までさせてもらえた。しめ縄みたいなすごいケーブルで接続してくれた。うーん、さすがにいい音だなあ。
お店の人にほんの冗談のつもりで「CAS-1って白と黒の色違いで音が違いますか」と聞いてみた。
「いやあ、それは違いませんよ」
試聴に使っていた自分のウォークマンZX300(黒)を見てお店の人に「そうですよね、これ銀と黒で音が違うという話を思い出しまして」と言うと「それはホントです。わかりやすいサンプルがありますが聞きますか」と言われた。ええっ!



わかりやすいサンプル曲とは絢香「サクラ」だった。
同じ曲が入っているお店の銀と黒のZX300と、お店のイヤホンXBA-N3を借りて交互に聞き比べ。



出だしの伴奏のところだけで、ええっと驚いた。ホントだホントに違う!
いろいろ聞き比べて見つけた曲なのだそうで、まったく違いがわからない曲も多々あるとのこと。

端的に銀は音の輪郭が掴みやすいしゃきしゃきした元気な音。黒はやわらかく響きの豊かなまったりした感じ。
はじめに銀を聞いてから黒に換えると、音が出た瞬間から、しっとりした感じがある。なんとなくそういう気がするとか程度の違いじゃありませんよ。
ちょっと大げさ?で乱暴なたとえだけど、ファイナルのイヤホンによくある同型素材違いで、アルミバージョンとそれ以外の(真鍮とか)違いみたいな感じ?

ホントに違います。表面の処理が違うだけなのに。

開発者のインタビウ記事などに音が違うと書いてあったけれど、なにか高級な冗談か、聴覚プロフェッショナル?じゃないと分からない世界なのかと思っていた。僕みたいなド素人にも分かるほどの違いです。たまげたなあ。良い経験をさせて頂きました。感謝。

「SONY NW-ZX300開発者にインタビューしてみた!」11.35あたり)

ZX-300を買うときにはデザイン的に銀を買う気満々だったのだけど、本体裏側の黒い合皮が貼り付けてある部分が、ボディ銀では海苔弁みたいに悪目立ちしていて、一体感のある黒をえらびました。銀の方がよかったかな、と買った後でも迷ったけど、音の違いからどっちがいいのかと考えると、響きのやさしい黒の方でよかったのかな…。

スパイラルドット+(プラス)

2018-02-04 11:29:30 | 雑感
Eイヤに注文していたスパイラルドット+ Mサイズが案外早く届く。「小さいなあ」という印象。さわってすぐわかるほど柔らかく、付け心地が改善され、低音に若干ふるえる様な躍動感が加わった感じ? 実際にはあり得ないだろうが、柔らかいゴムで耳道に浮いているイヤホン本体がブルブル躍動する感じがする。 音はシリコンで一番好きだが、音の出口が直下に露出しすぎてゴミ入りが不安。クリスタルチップはさらに低音が増すが装着に手間がかかる。僕の耳だと収まりが悪く、ぽろぽろ落ちてしまうので興ざめするしつぶして装着するのも面倒くさい。単にぐりぐり耳に押し込むだけでOKのスパイラルドットはありがたい。

並べた写真は左側が+で、装着したものはR側が+。通常版の砲弾型に比べてそろばんの珠的な形状? 従来型と混ざっても、形状と特に手触り(新はキクラゲ的やわらかさ)とが違うのでやっかいだが区別はつきそう。余談だが、Andromedaを経験したあとも愛好するファイナルのHeven-sについているイヤーピースがやっぱりキクラゲみたいで、最近買った高いイヤーピースを色々付け替えてみたが、結局元からついてるキクラゲが一番良かった。キクラゲのポテンシャルは高い。
それにしてもスパイラルドット+は、Andromedaだと音の出口がすぐそこ。旧も新も、何もふさがず柔らかいゴムボールをまわりに巻いたという感じだ。




写真で見比べると大した違いじゃなさそうで、何をこだわっているんだろう、とは思います。

追記
気になっていたイヤーピース
○AZLA SednaEarfit
○final earpiece E type(ファイナルのE)
を購入してしまった。

ファイナルのEは若干高音がおさえられ、すこし狭い空間で聞いているような印象。ちりちりノイズが気になっていた録音がさほど気にならなくなる。音がアレンジされているということだろう。低音の押しも意外とあると思うけれど、音によっては壁一つ向こう側に行ってしまったような感じもする。つくりものっぽい感じだ。穴もスパイラルドットに比べるとだいぶ小さい。穴の芯の素材も固めなので、Andromedaに装着出来るのか?と思ったが楽では無いがつけられました。

AZLAは、袋から出して手にした瞬間からイヤーチップの素材の若干かための安っぽい手触りが気になる。通販でMサイズを買ったのだが、耳に装着するとちょっといたい。音はファイナルEのようなこもり感はなく、比べれば素直な感じ。サイズ選びが悪かったのかも知れないが、装着感が悪くて、これ以上あえて使う気がしなくて袋に戻してしまった。(袋戻しは油くさいSONYのトリプルコンフォート以来二度目)

散財したが、スパイラルドットは、イヤホンの音をスポイルせず、という感じを再確認した。Andromedaの広い空間と点在する音の粒立ちがよく感じられる。耳穴への装着が容易。
低音の迫力をもうちょっと増したいときはクリスタルチップ。きちんとはまれば高域もさほどスポイルせず……もしかしたらこれが一番いい音かしらん?

上野の森美術館の「生頼範義展」を見る。(2018.1.15)

2018-02-04 09:29:35 | 雑感
(2018年2月4日に終了しました)

月曜の11時で並ばず、展示も楽に見ることが出来た。子供の頃から本屋さんで見ていた絵を間近にみられて感激。原画が行方不明というSWのポスターは下絵が展示されていた。凄い絵ばかりでくらくらします。絵画も含めて写真撮影可のコーナーが所々ありました。

すっごい細かい繊細なアクリル画???!!!でびっくりしました。それでいて絵の具の層は薄く、描き直しや迷いなど無い?!感じ。
点描や線画のモノクロ人物画はホワイト殆ど使っていないんですね。


「生頼タワー」と名付けられた、書籍ごと表紙絵を展示するスペース。


ゴジラ関係の絵画も多数。


元絵が紛失?した(どうして??)というSWのポスターは、撮影禁止区域に下絵(それでも凄い迫力)が展示されていました。


作家のアトリエ。


「減摩大戦」のイラストを参考に寺田克也が再デザインし、造形作家・竹谷隆之が立体化した立像。


運慶展で見た仏像のようなたたずまいです。


こういうタッチの絵もあったのか。


下絵と並べて展示されている絵も多数ありました。


「DAK TO 1967(ベトナム)」


大作「我々の所産」


7年をかけたという超大作「破壊される人間」。

写真にしか見えない点描も多数。軍艦や拳銃の絵も。
凄いとしかいいようのない作品群でした。

裏切りのアンドロメダ!

2017-12-17 21:34:31 | 雑感
Campfire Audio ANDROMEDA CKの購入記その3。

Andromedaをはじめて外に持ち出し、これまで他のイヤホンでしてきたように電車読書のおともに音楽を聴く……のだが、あまりに綺麗な響き、分離の面白さ、情感をゆさぶる音に心かき乱され、読書どころではない感じだ。

しかしAndromedaにこれほど感動しておきながら、もっと低音に特化したイヤホンが気になり始めた…。
他がすごいのに低音の押し出しがやっぱりお上品だ。音は出ているがアタック感は無いという感じ。ホウ・シャオシェン監督「非情城市」のサントラ一曲目、電子楽器のドラム音?が、どーんと鳴るところがポーンという感じに聞こえる。これじゃちょっと情けない。



低音が強烈に聞こえるイヤホンはあるのだろうか……。

いけない、いけない。
これが「スパイラル」とか「沼」とか言われる落とし穴か


しかし、日を置かずして僕はイヤホン専門店にいた。愚かな、とは思うもののわき上がる好奇心を抑えきれない。
「Astell&Kern T8iE MkII」と「beyerdynamic XELENTO REMOTE」という兄弟?機種をネットで見当付けて、お店で聞き比べてみた。
「Astell&Kern T8iE MkII」

「beyerdynamic XELENTO REMOTE」

しかし、僕にはあの環境で違いが分からなかった。ヨドバシではリケーブル迄あわせて聞き比べさせていただいた。感謝。ほんとつい先日Andromedaを買ったときに親切に応対してくれた店員さんじゃなくて、ちょっとほっとする。(もう目移りしちゃったんですか? と思われているんじゃないかと想像するだけでもはずかしい)
でも違いは分からない…。わからないのなら安い方でいいように思う。t8iEが響きがあり輪郭が甘いような気もしたが、前知識でそう感じてしまうのかもしれない。僕は音の輪郭が見えた方が好きだ。

その点、Campfire Audioが出している「VEGA」は流石に極低音の輪郭がかっちりしてしかも音圧が強烈だ。zx-300につないで初めてその凄みがわかった。いかんせん本体の耳への収まりが悪い。きっちり収まればさぞかし凄いだろうとは思うけれど。値段も高いし(Andromedaより高価!)縁が無かったと思うことに。もしも出会いが「VEGA」だけだったなら、僕は衝動買いには至らなかっただろう。
それにしてもこの三機種、低音の振動が、自分の喉元まで響いてくる。こんな小さいイヤホンなのに驚き!
「Campfire Audio VEGA」

T8iE MkIIとXELENTO REMOTEの低音も魅力だ。先述の「非情城市」のサントラを聞き、くるぞくるぞと思っていると爆弾のようにどーん!とえぐりこむような一撃。スリルだ! それでいて高音がスポイルされるわけで無い。ただ全体の鳴り方は既知のもの(聞き慣れた感じの延長)で、Andromedaのような独立した音が右へ左へ飛び交う、そういう立体感はあまり感じられない……。音の繋がりが良いとはこういう聞こえ方を言うのだろうか?

クラシックの古い録音、ZX-300に入れたフルトヴェングラーのベートーベン7番をAndromedaで聴くと、得意の立体感は発揮されずお上品で迫力に欠ける感じ。こういうのはT8iEとかで聴いた方がたぶん面白く聴けるのではないかと思える。


逆に電車の中で「ララランド」のサントラをAndromedaで聴いていると、音の立体感もさることながら、美しい余韻、周囲からわき上がるようなエモーショナルな響きに圧倒される、映画の記憶も呼び起こされ涙がちょちょぎれてしまった。イヤホンなのに頭を取り囲むように音が聞こえる。演奏のただ中に迷い込む感じだ。


そうこうしているうちに、ZX300とAndromedaの使用が50時間を越え、エイジングの効果なのか、あれっ?と驚くくらい低音がたっぷり鳴る日を迎えた。低音が弱いなあと思っていたのに。勿論上記三つのダイナミック型とは比較にならないが、それでもこれくらい下が鳴るならAndromedaだけでいいじゃんとも思えた。どっとはらい。

ところがまたしても日を置かず、映画の日に映画も見ず、僕は、買う気満々で秋葉原にいた。T8iE MkIIとXELENTO REMOTEを再度聞き比べる。10万越えと8万程の売価の製品だ。Andromedaを買ってからわずか2週間。まったく、僕の頭はどうかしていた。これは修羅道である。

専門店は人が少ない時間帯だったのでT8iEからじっくり聞いた。XELENTOに移ったとたん「あ、広い」楽器の輪郭も明確じゃないか。今度は違いがわかった。XELENTOの方が断然好み、4万円の価格差は痛いが選ぶならXELENTOだ。

さらに聞く…高性能だがAndromedaにあったような強烈な音の分離感はやはり無い。低音のアタック感は魅力だが、Andromedaで惚れ込んだ際立つ音の輪郭は感じられず、前にも書いたが、これは普通のいい音なのだろうと思った。つくづく僕はバランスド・アーマチュア型の音が好きなのだろう。解像感をうたう他の高級機も聞くが、30万、40万という超々高級機(64 オーディオ 64AUDIO tia Fourte)以外は「あの感じ」に近いものは無かった。

Andromedaはよほど特殊な鳴り方をするのだろうか?僕がXELENTOを買った場合、低音が聞きたい曲だけイヤホンを付け替えて「おおすげえ」というのか。なんだかそれもばからしい気がして急ブレーキがかかった。

たとえそれが特殊でも、惚れてしまったので仕方ない。Andromedaで出来ることを工夫しよう。


その後、使用100時間を越えて、雰囲気がまた変わってきた。僕の耳が慣れたのかも知れないけれど、過剰なまでの分離はいささか落ち着いて(残念)、低音が、圧はあまりないが空気のしなるように震える雰囲気を醸し出すようになった気がする。安手の重低音イヤホンのように音圧はあるが輪郭がぼんやり滲んでしまう様なことは無く、低音個々の存在感はきちんとある。この空気のしなりは、ドキドキするようなAndromedaのまた別の表情だ。
200時間を越えて、ZX-300のメーカー指定の?エイジング時間が終わるころには、また違う世界をみせてくれるだろうか。
Andromedaを裏切ったのは僕のほうだった。

アンドロメダ!アンドロメダ!

2017-12-17 19:50:15 | 雑感
おお、Andromedaよ、そなたはアルミより生まれし宝石。深く広大な響きを内に秘めたいにしえの翡翠の輝き。だが、僕のそれは氷の冷たさに鎖されているのだ…。


Campfire Audio ANDROMEDA CKの購入記その2。

というわけでヨドバシでAndromedaを購入して帰宅、アイスキューブと名付けられたAndromedaCKの現物をこのとき初めて見た。悪くは無いが、かといってエモーショナルな感慨をもたらすまでも無い妙に常識的な外観だ。日本限定特別仕様とのことで、米国の作り手達は、ハイテク=日本というイメージをこの色彩に込めたのだろうか?
「緑の方が良かったかな…」と正直思ったけれど、緑を買えば買ったで「CKでタイトになった低音」の噂が終始脳裏につきまとっただろう。これでいいのだ。

「Campfire Audio ケン・ボール氏インタビュー」という記事を読むと、緑は「アルミニウムのアノダイズ処理で安定した発色を出しにくく、同じように処理しても毎回、微妙にですが色合いが違ってしまう」とのこと。上下パーツ合わせにおいて職人さんが色の近いものを選んで組み付けているらしい。緑には作り手の強いこだわりがあった。くらべて2トーンカラーは歩留まりの良い(色合わせの手間がない)構成といえるということか。

(引用元)
https://www.phileweb.com/interview/article/201712/08/514.html

ともあれ、開封。AndromedaとZX-300をバランスケーブルでつなぎ、持ってる音源聞き直し感動している。ZX300+バランス接続の威力も凄いのかも。空間表現と音の分解はんぱない臨場感だ。いまのところ低音はお上品だが以前スタックスsr-407を使っていたので違和感ない。
とにかくその分離感たるや、ipod tochで今まで何度も聞いてきた曲を新しい機器で聴いていて、床になにか落ちる音がした(現実に)かなと思ったら音源に隠れてた音?だったので驚いた。Andromeda………宇宙ヤバイとはこのことか。

ハイレゾでダウンロードして聞いてみたメイドインアビスの曲「Hanezeve Caradhina」の終わりの方にドアチャイムみたいな音が入っていて、それが生々しく聞こえるものだから、一瞬現実音と区別がつかず、こんな時間にどなたですか!と飛び上がる思いだった。


ファイナルの「Heaven-S」でも若干感じた感覚---イヤホンなのに装着した両耳の外側から音が響いてくる感じ……。Andromedaは、頭蓋より一回り大きなシェルが音場で満たされるような印象。ヘッドフォンのような、と評する人がいるのも頷ける。二つの音響装置を耳に差し込んでいる状態でどうしてこういう聞こえ方をするのだろう。ほんと不思議だ。
聞けばすぐわかる、ipod touchで聞いていた時とまったく違う、音がことごとく分離分解されて聞こえる感覚が面白いし、これはマニアの人が言う「音の繋がりが悪い」という状況なのだろうか? 僕はこういう聞こえ方に情感が刺激される。それでいて聞こえる空間は広い。面白くてしょうがない。

ずいぶん前だが、10proと呼ばれるイヤホンを勧めてくれたお店の人が「とにかくこんな面白いイヤホンはないよ」と言っていたのを思い出した(10proは装着感が悪くて買わなかった)。
右に左に音が移動する楽曲の場合、きらめく音の筋道の交差は、遊園地を鳥観しているような感じだ。楽器群のレイヤーの影に今まで気づかなかった(知らなかった)控えめな音がひょっこり現れる。こんな音が潜んでいたのか君、と驚いていると、別の楽器群が主題をもって頭上から降りてくる。さらにまた別の音群が背の低い噴水の盛り上がりのようにあちこちに現れる。
面白い面白い。それでいて、空間に溶けてゆく余韻は驚くほど繊細だ。
ああ、凄い…。

イヤホン一つでこんなに驚異に打たれ、なおかつ楽しめるのだからオーディオの世界とはなんと広大で深く、恐ろしいものなのだろう…。

Campfire Audio ANDROMEDA CK (イヤホン)を衝動買い!

2017-12-15 21:45:55 | 雑感


久しぶりに、秋葉原のイヤホン・ヘッドフォン専門店をのぞいてみて、何気に手にとって試聴した緑のイヤホンにひとみみ惚れしてしまった。

Campfire Audio ANDROMEDA

いつもイヤホンはipod touch直ざし、Final Audioの「heaven-s」(現在廃番)と、オルトフォンの「e-Q8」を使っている(手前の二つ)。

(好みの傾向は迫力よりも響き重視なんだなと思う)

初めてAndromedaを聞いたのもipod touch直ざしなのだが、その響きは凄かった。この前ブログでちょっと言及した「Edgar Rothermichのブレードランナーカバーアルバム」の曲が映画館で聞いてる様な壮大なスケールで聞こえたのでぶったまげた。


なんだこれは。分離した音が飛び交い、いままで一度も感じなかった地響きのようなうなる低音がする。こんな音が入っていたのか?!こんなに音は粒立ち動いていたのか?
それでいて響きは澄み、余韻は美しい……。

これが米国、Campfire Audio キャンプファイヤーオーディオというメーカーの「ANDROMEDA」アンドロメダ通常モデルだった(変なメーカー名に変な商品名)。同メーカーの他の製品も並んでいたが、ipod直ざしでは音量が取れず、聞くに堪えない感じ。Andromedaだけしばし聞き入り、他の機種試聴もそこそこに、なかば呆然としてお店を出た。まさに岡惚れ。


僕はオーディオの知識も無く、音楽も大して聞かない。「そんなことは自分のブログにでも書け」とでも言われそうなことを(そう言われたわけでは無いが)これから書いていきます。ご寛恕ください。
1枚目の写真、実際購入したイヤホンが何故緑じゃないのかというと、名前末尾にCKとつく、わずか200セットのみ売り出された日本限定モデルなのだ。
3万円程度のイヤホンしか使ったことが無いのだから売価13万もするイヤホンに躊躇するのは無理からぬこと。限定モデルはそれより2万も高い。家路をたどりながら、あの緑のイヤホンが気になってしょうがない。で、ネットを見たら運良くか運悪くか、限定モデル発表・発売とのこと。通常モデルより低音が増してるような気がすると言う人もいる。2万の違いは大きいし、愛らしさからいうと緑だ。しかし緑は色が剥げやすいとも聞く。限定版は実物を見ていない。


心の中で行ったり来たりを繰り返しているうちに2週間がたった。今まで10万越しイヤホン「final audio design FI-BA-SS」や「AKG K3003」などに出会い、特にK3003はスゲえ壮大!と感動したが買うには至らなかった。それなのにお前はAndromedaなら買うのか!?と自問する。

ああしかし惚れた弱み。買うしかないか。
限定版はもう無いだろう、ネットの専門店は皆売り切れだ。ところが11月15日の段階でヨドバシには東京と関西合わせてまだ3つ残っていた!通常版より2万円高い限定版相場のさらに2万円ほど高い売価なので残っていたのだろう。しかし一割のポイント還元を考えれば専門店とそう大きく変わらない。ああ、買うか買わないか買う買わない買う買わない買わないけど買うかも買わないでも買う
と言うわけで注文。しかし、ホントに残っていたのか?何かの手違いで表示されていたのではないか?購入ページは翌朝売り切れと表示されている。メールの案内もくる。ああ、ホントだったんだ。

折良くSONYからウォークマンの新型ZX-300が発売されて評判もいい。バランス接続もある。Andromedaと合わせて買って、ポイントを「ALO-5041 Litz Wire Earphone Cable-MMCX-4.4mm」というメーカーをそろえたバランスケーブル購入にあてることにした。(Campfire Audioはもともとケーブルメーカーであるとのこと)


それでこんな具合に。僕の生活基準からすれば、えらい散財になった。(11月17日)
(項をあらためて、もうちょっとだらだら書きます)

「いつも何度でも」千と千尋の神隠し主題歌に思う

2017-12-11 09:42:39 | 雑感
「いつも何度でも」涙がちょちょぎれるなあ。僕にはこの歌詞は、死の床にある人が窓から青空を見ながら、いっそさばさばと、これまでの人生の苦と楽と、この世界が在ることの不思議をたたえているように聞こえる。それでいて「終わり」ではなく「はじまりの朝」なのだ。

木村弓 - いつも何度でも

国立新美術館「安藤忠雄展」を見る

2017-10-15 13:03:54 | 雑感
開催日9月27日~12月18日

9月27日
国立新美術館「安藤忠雄展」を見る。模型とモニタの映像、図面と写真で世界各国の業績を展示。短文の解説を読み、音声解説を聞く。充実の展示だが、やっぱり実際の建築が見たいなあ。
コンクリート打ちっ放しの、思いっきりモダンで蟻ながら、同時に謎の遺跡のような建築。

木と紙で作られた精巧な模型は進むにつれて大きくなり…圧巻はなんと原寸大「光の教会」!



実際の建築は防寒の為、十文字の隙間にはガラスがはめられたが、こちらは理想どおり隙間のみ。右と後ろにも大きな縦の隙間があり独特な空気感。ずっと見たかったのでレプリカでも感激。
混んでくると十字の隙間に顔を押しつけるオヤジが現れ、外側から見てる時びっくりした。
十字は西向きだそうです。

東京国立博物館 「運慶展」を見る

2017-10-15 12:40:41 | 雑感
東京国立博物館 9月26日~11月26日

9月27日
2時半頃到着し待ち時間なし。それなりに混んではいるがじっくり見ることは充分可能。阿修羅像展の時の混雑を思うと大変有り難い。
如来像、仏頭のあと、運慶の父康慶作の像が並び、その生きてるような表情も素晴らしいが、さらに進み、運慶作・毘沙門天立像が現れると空気が変わるよう。
身に纏う鎧の輪郭も鮮やかで、モダンな印象。
陰翳を濃く見せる照明が絶妙で、像の表情がくっきり浮き出て、それぞれの像に込められた「物語」があふれ出すようだ。
この空気感は、現物の像の前に立たねば分からないものだと納得。

図録がとても充実していた。


ああ、こういうことだったのかしら? 2 (クリス・エンジェルの手品を見て思う)

2016-12-30 14:57:45 | 雑感
刺激の強い手品なので閲覧注意としてください。
Criss Angel: Trick'd Up - In Half with Paige VanZant | A&E



下半身は、メカではなく人が演じていたらもっとばたばたしてみせるでしょう。「え、男の足?」と思ってしまうほど様相が変わっています。

あくまで素人の勝手な想像にすぎません。

ああ、こういうことだったのかしら? 1


ああ、こういうことだったのかしら?。(クリス・エンジェルの手品を見て思う)

2016-12-30 10:52:06 | 雑感
刺激の強い手品なので閲覧注意としてください。
Criss Angel Separate Body w/out covering

↑ ちょうどこの静止場面、黒い大きなスカートに、下半身役の頭と背中のラインが見えるような。


カット割りと、演技込みのエキストラで成り立っていて、
手品というよりは、特撮映画のような感じなんでしょうか。
あくまでも素人の勝手な想像にすぎません。
絵が下手ですまぬ…。

第一弾が、上記の演出。
第二弾が、 https://www.youtube.com/watch?v=i5gK2MxGR0M&t=13s
第三弾が、次項目のもの。
---------------------------
第一弾これって下半身役は大きなスカートに隠れてるの?
第二弾、スカートに隠れるのをやめてダミー下半身を二体用意。
    男の足は靴を履いているので指が見えずごまかしやすい。
    ぶらぶら動くのはおそらくヒモとかの単純な仕組み。
    女の方はダミーの指先を画面に出していない。
    動かなくて不自然が無いように足組している。
    第一弾のように下半身が起き上がる演出は出来ない。
    男の役者さんは入れ替わりを紛らわす大きなサングラス。
    これって障害を持つ二人の役者さんが演じているの?
第三弾それならばと、有名人?
    (ということでしょうか?)を演者に起用。
    いまココ。
    
ああ、こういうことだったのかしら? 2

皇帝ダリア日記

2016-11-24 19:44:00 | 雑感
6月28日
前の庭に二本、縁側下に2本、皇帝ダリアを植えた。それが根付いて大きくなってきた。成長すると3mから4mくらいになるという。たのしみだなあ。



8月2日
前の庭の威勢のいい方が、朝みると折れていた。何が原因なのか。日々様子を見ていたのに。切断面はかさかさに乾いていた。


8月22日
縁側わきにうえたほうの皇帝ダリア2本とも、今日の風雨で傾いてた! 折れてはいなかったので、どしゃ降りの中、添え棒を増やす。
虫にやられて? 根元で折れちゃった前の庭の一本には、小さな葉っぱがでていた。



8月26日
前の庭の折れてしまった方は、残った茎から若葉が出て喜んだけれど、結局育たなかった。葉がしおれ、根元は腐ってしまった感じだ。

9月16日
皇帝ダリアの根元に今度はキノコが生えてきた!なんだろうこれ。
取ったほうがいいのかな。



調べてみたら「コガネキヌカラカサタケ」というものらしい。取らなくても害はないようだ。

9月18日
キノコは一晩ちょっとで枯れてしまう。すぐわきに米粒くらいの小さいのが出てきて、それがすぐ大きくなり、枯れてしまう。

10月4日
屋根のひさしをこえて成長した。



10月6日
皇帝ダリアに中指大芋虫2匹発見。茶色と緑、芋虫大嫌い、こわいこわい!丸々太ってかわいそうだが、葉ごと落とし踏みつぶす。足裏にチーズかまぼこみたいな弾力。2匹目の緑、びちゃ! 汁が大量に壁と左足にかかる。家の壁にはこぶし大の緑の染み!まるで緑の目玉! うぎゃー!大声出てしまった。このとき短パンで素足、ズボンを駄目にする事はなくてそれは幸いだが。

(緑はメンガタスズメ、茶色はクロメンガタスズメの幼虫らしい)

(幼虫の写真を撮り忘れたので絵を描いた)

11月14日
縁側に植えた2本は4メートルくらいの高さになって、花芽をいっぱいつけている。



11月22日
皇帝ダリアの花が咲き始めた。まだ花芽がいくつも残っている。屋根より高い花束。まだ11月なのに、あさって雪が降るとの天気予報。枯れちゃうんだろうか。もったいないなあ。



11月23日
曇天の今日、雪を予感しているかのように、いっせいに咲き始めた皇帝ダリアの花。
基本的に霜が降りると枯れてしまうのだそうだ。



いいのかわるいのかわからないけど、とりあえず皇帝ダリアの根元にビニールをかけておいた。雪は明け方降るらしい。

11月24日
皇帝ダリアは育った3本のうち2本が倒れてしまった。特に前の庭の枝分かれの一本はもうだめだろう。雪はまだ積もるようだ。悲しいけど花のところだけ切り取ることにした。11月に降った54年ぶりの初雪が、初めてこの花を植えた年にあたるとは残念だ。







食卓が、大きな大きなピンクの花々でいっぱいになった。
雪を払い、3つの花瓶に振り分けたところ、花はピンと張ってしばし元気を取り戻したようだ。
足腰の弱った母が、絵に描きたいと喜んでいる。

若冲展が見られなかったよ→若冲展行列SF

2016-05-24 14:53:12 | 雑感


朝5時半に起きて上野へ。到着し立ち食い蕎麦を食って若冲展に向かう。既に大混雑。拡声機で案内している係の人に聞くと現段階で開場から4時間半待ちくらいとのこと。僕は券を持っていなかったので別の列で発券開始を1時間待ち購入後最後尾に並び直すと聞き、もう断念。列はどんどん長くなっていく。

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あまりの行列のすごさにあきらめる人も多く、行列を皮肉ってツイッターに「#若冲展SF」というタグが生まれ、若冲展待機列SFというまとめサイトも出来た。
で、それに便乗。(一日二日遅かったようですが)

#若冲展SF

その壱
随分歩き最後尾に並んだつもりが、遠くから「横入りはやめて」と注意された。通り向こうに看板持ちと、背後遙かに続く行列が。(中略)…どれだけ歩いたろう。いつか霧深い樹林に至るも列はまだ続く。伏せる婦人に聞く「後端は何処でござるか」「ええ存じませぬ」ああ猿もならんでいる。

その弐
四年に一度、四月から五月。上野の森が濃い霧に覆われる或一日に幻の行列が現れるという。今日はその日、孫に支えられ私はその時を待った。かげろうの如き影の列、青白い人物を見つけ言う「兄さん、俺だ」兄は若いままの姿だ「若冲展はもう終わった!」今年の兄はかすかに笑ってくれた。

その参
立ちくらみ。視界が暗くなるも持ちこたえた。行列に並びもう何日か。おや、春牡丹が美しい。小鳥の囀りが楽しげだ。白い子犬が沢山走りゆく。賑やかなのは黒鶏の群れか。「大丈夫ですか?」心配そうに声をかけてくれた方が文殊菩薩のように笑う。私は大きな白鳳凰の背に乗り天に昇った。

その肆
昔、昔のことだげな。たった一月のジャクチュウテンてなものに大勢人が並びよった。列の脇には市が立ちそれは賑わった。右と左に村が出来、土産物のことで諍いが起る。領主様が現れ戦じゃ。天変地異の後、長い月日が流れた。その行列かい?そうじゃな、ほれ、まだそこに並んでおるわい。

その伍
「私死ぬわ」「そうか死ぬか」「若冲展なんて…」路傍に妻を埋葬すると木が生えて青葉が茂った。白犬が現れまといつくので抱き上げ行列をゆく。妻の木はもう見えない。か細い流星の光がやがて雨となった。果てに待っていたのは弥勒である。56億7千万年が過ぎたのか。感慨深く思った。

その陸
番頭さん、表の行列は何だかわかったかい?なに与太郎が並んでる御隠居に聞いてきた?若冲展?若冲は私でございますがな。動植綵絵?まだ描いてませんよ。寝ぼけたことをお言いで無い。量子のもつれ?多元宇宙にひも理論?SF黄草紙なんて読むからそうなるんです。全員晩飯ぬきだよ!