ぐだぐだくらぶ

ぐだぐだと日常を過ごす同級生たちによる
目的はないが夢はあるかもしれない雑記
「ぐだぐだ写真館」、始めました

英語のレポート用の小話

2014年05月18日 15時35分24秒 | 小説
ある企業が、テーマパークを建設するため、木が生い茂る森林地帯の土地を購入しようとしていた。

しかし、林業を営むその土地の所有者は、適正価格の数割増の値段を提示してきたため、企業は交渉に頭を抱えていた。

そこで、ある開発担当の社員が良いアイデアを思いついた。

その社員は、一台のチェーンソーを手に、林の所有者にこう提案した。

「これは、弊社の子会社が技術を集結して開発した、次世代のチェーンソーです。

切れ味、出力もさることながら、特筆すべきは、絶対に壊れる心配がないということです。

このチェーンソーを無償で差し上げますので、土地の売値を何割か下げてもらえないでしょうか」

林の所有者は、怪しんで言った。

「絶対に壊れないというのは、どうも信用ならないな」

「そうおっしゃるなら、試してもらっても構いません。もし故障するようなことがあれば、あなたの提示なさっている通りの金額で、土地を購入させていただきましょう」

その日から、林の所有者は毎日のように、受け取ったチェーンソーを手に林に入っていった。

確かに、木を切れども切れども、チェーンソーは故障しなかった。

それでも、林の所有者は信用していなかった。

「こんな見え透いた嘘に騙されてたまるか。いつか壊れるに決まってる」

そうして約一年が経ち、所有者が林に残された最後の一本の木を切ろうとした時、ついにチェーンソーが煙を上げて動かなくなった。

林の所有者は得意顔で、故障したチェーンソーを企業の社員に見せた。

「見ろ、やっぱり嘘だった。それじゃ、約束通りこちらが提示した値段で買ってくれ」

社員は、ニッコリ笑って言った。

「分かりました、その値段で手を打ちましょう。あなたは、土地の整備にこれだけ協力して下さったのですから」


EVE×30

2013年12月01日 00時00分17秒 | 小説
長い階段を何とか昇りきった。顔を上げると、カラフルな光に目が眩む。

広場のサイズには不釣り合いな程背の高いモミの木が、

派手なライトと飾りをこれでもかと纏って、得意気にふんぞり返っている。


周りを見渡すと、ここ数日で一番の冷え込みにも関わらず、大勢の人がツリーを囲んでいる。

ある者は立ったまま白い息を吐き、ある者は階段に座り込み、

その多くは、各々隣に異性を侍らせ……

ゆったりとした人の挙動とは裏腹に、風は慌ただしく吹き荒び、照明はせわしなく点滅する。

街は、いつでもせっかちだ。



ツリーの前に立ってみる。

綺麗、なのだろうか。まあ、素直に受け止めれば、そうなのだろう。

広場の幅と同じ高さはあろうかというツリーは、根元から見上げる俺など気にもとめてない様子で、

広場の観衆に豪奢な光をぶちまけている。

その観衆はというと、好んでツリーを取り囲んでいる割には、

謙虚さとは無縁な、ツリーのド派手なアピールにはすでに関心を捨てているように見える。


ツリーは、そんな彼らのことすらお構いなしに、相変わらず大袈裟に輝く。

まるでステージの上で自分に酔っている、品の無いダンサーを見ているようだ。

その衣装を剥げば、所詮は黒ずんだ地味なモミの木に過ぎないじゃないか。

分不相応、とでも言おうか。いや、違うな。

無様だ。吐き気がする程に。


派手な光を冷静に眺めると、他にも何か違和感がある。

……いや、時期、というのは別問題として、だ。

小さい。この木、あまりに小さい。

広場が狭いせいで錯覚させられるが、この程度の木、自然に生えていても何の注目も置きはしない。

地面から真っ直ぐ生えたその立ち姿は、なるほど林に群れる同胞達とは一線を画している。

だが、葉に覆われた部分の幹は、微妙に傾いている。

三角形に整ったシルエットも、人の手で切り揃えられた結果だろう。

まあ……それは、この木に限った話ではないが。


この木は、どこから運ばれて来たのだろうか。

作り物のツリーを飾る選択もある中、生木を取り寄せたというのは、何らかのこだわりがあってのことか。

しかし、まだ12月にもならないという時期からステージをこしらえてしまうとは、

毎年のことながら、広告会社の焦りすら感じる。

もちろん、人間は非日常が無ければ生きていけないだろうが、

かと言って、イベントが無ければ死んでしまうのか? まさか。


もはや、この下品な木にすら同情の念が湧いてきた。

まだ秋が終わるかといった季節に、まるで前座のように人前に引っ張り出されて、

彼女は本番とも言える「その日」、満足に輝けるのか?

……思わず「彼女」と言ってしまったが、モミの木に性別などあるのか?

どうでもいいか、そんなことは。



寒い。そろそろ、道草を食うのは終わりにしよう。

ツリーに背を向け、階段を少し降りた所で、振り返った。

やはりツリーは、人目を憚らず堂々と立っている。


折角だ。1ヶ月後の事を、少し考えてみようか。

その夜、鐘の音と共に、街に雪が降り出す。

そして空から、ソリに乗ったサンタが颯爽と現れるんだ。

この小さなツリーは、自らの惨めさと虚しさに気付き、

恨み言のように光を瞬かせて、巨大なトナカイの角で倒されてしまうだろう。


サンタは穏やかな笑顔で、プレゼントの箱をばら撒く。

プレゼントは爆発して、大人しく眠ろうとしないビルを吹き飛ばしてしまう。

欲に塗れた愚かな大人達は、みんな爆弾の餌食だ。

そうしてまっさらになった聖夜に、この街を覆う程の、バカでっかいモミの木がその広場から生えてきて、

その枝の間から、無垢な子供達にプレゼントを落としていく。



そんな下らない事を考えていたら、思わず顔がにやけていた。

階段を降りる前にもう一度、ツリーのてっぺんに輝く星型の飾りを見上げた。

広場に立つパフォーマーの象徴ともいえるその星に、

親指を下に向け、思い切りブーイングを送ってやった。



今日は11月25日。

クリスマスまで、あとちょうど30日だ。




ぐだぐだ小説 目次

2012年11月07日 07時07分07秒 | 小説
小説の記事一覧<投稿日時順>

リレー小説『じじいクエスト』

『幸せの宅急便』

ライの小説

『ナイトスクール』

『未来人の遊び』

『夏の軌跡』

『荒野の塔』

『ある日の話』

『これから最後の話をしよう』

『大長編予告』

『相談室』

『幽霊のパラドックス』

『キル・バレンタイン』

『新作大長編発表』
まさかの本編

『狂蛾』

『灰色の鶴』

『兵よ、前へ』

『天井の幸福理論』

『Parallel』



NOW WRITING・・・

ブラック☆ヒストリー

2011年04月01日 23時59分59秒 | 小説
おっす俺の名前は地味委

皆からはジミーって呼ばれてることにしといてくれ

変換が面倒だから

これはこの前おこった不思議な現象を書き記したものだ

なぜ残すことにしたかというと誰にでも、どこででも、そしていつでも起こりえることだからだ

断じてノリノリだとかじゃあないぞ

それにこの現象は一度だけでなく何度でも起こりえるものだ

笑い話では済まされない



それじゃあとりあえず最初にこの現象に見舞われたとき……ではなく最初にこの現象を理解したときのことを話していこう


そうそれは小学生のときだ

あの頃は夢と希望と無気力でいっぱいいっぱいだった

その日もいつもどおり朝起きるととりあえず朝ごはんを食べた

もちろん迎えに来てくれる女の幼馴染はなぞいない

というか私立の学校で毎朝幼馴染が起こしにくるとかそれもうストーカーじゃん

でも幼馴染だとしたら家が隣か

電車にのって一回降りて……とかだと確かに怖いが家が隣なら別に……

いや、よっぽど早い時間じゃないと電車に乗れないか

逆に考えるんだ電車に乗る必要の無い、近くの私立の学校だと

そうかいつも電車で通学してたから歩いて通学は盲点だった……

でもこれだと私立の必要性がなくなってしまう

待てよ親の方針で片方が私立に行ってもう片方が違う学校に行けばいいのか

しかも私立行ってる側をエリートにして劣等感を煽れば完璧じゃね?

ただそれだと中学生でやったほうがやりやすいかな?

微妙なラインだ



朝といえば兄弟、姉妹が起こしに来るというのがあるがそんなのはない

というか兄しかいない

一度妹がいる夢を小学生のときに見たがアレはすごいインパクトに残ってる

まず家にちゃんと新しい部屋ができていた

そして妹がいないということを夢だと思わせるというつじつまの合わせ方

人間の脳ってよくできてるよ、本当に

ちなみにその夢の中の妹がどんな顔だったかはプライバシーに関わるため公表を差し控えさせていただきます

まぁ小学生のときの夢なんでまぁ割と良くあることなんじゃないかな

見たくともみれない子供の気持ちを忘れない大人にはうらやましいことだっただろうし

まぁ良い思い出だよ



そして朝ごはんを食べると夜の間に準備を済ませておいたランドセルを背負って駅へと向う

もちろんそこには同じ学校の女子もいる

一応班長という低学年を引率する仕事もあった

正直もうちゃんとやってたか覚えてないけど

学校にチェックされることもあったし優等生扱いされるくらいはやってたと思う

そして毎朝気まずかった

だって友達というか男子がいなかったんだもん

電車来るまでさびしすぎるよ

電車を次の奴にすればよかったけどまぁ電車内で友達と待ち合わせたりするから

そうも行かなかったんだよう

ちなみにほとんどが今も家の近くにすんでるんだろうけど

小学校を卒業してから誰も見てません

みかけても声かけません

その程度です


















































飽きたから終わり

新作大長編発表

2011年04月01日 00時00分01秒 | 小説
コウジュン、大長編予告、などを手掛けた一味違う男、ジミーの最新作

「ブラック☆ヒストリー」

近日公開予定未定

内容をここだけに特別に公開だ




物語は現代の日本の地方都市に住むごく普通の少年

「地味委」を中心とし

彼の周りで起こる不可解な現象を彼や彼の友人が理由を解き明かす

ミステリーとなっている

最初の現象は主人公が一部の人間から存在を認識されなくなるというものだ

主人公がどのように乗り越えるか気になるところだが公開したときのお楽しみである



またヒロインも魅力的だと言えるだろう

なんとメインヒロインが画面の中から出て来ないという斬新さ
読者の期待を膨らませる設定だ


また物語は1年に1章進み、30章からなる為終了予定は30年後となる

いつかゴールデンタイムに放送される日がくるかもしれない

びっくりだね



そんな期待作、ブラック☆ヒストリーのこれからの情報をおたのしみに!


この記事は2012年4月1日に書かれた物です

灰色の鶴 1章:魔法使い

2011年03月08日 23時40分42秒 | 小説
11月も半ば。

街路樹の葉もほとんど落ちて、歩く人の服装も厚着になってきた。
季節はもうすぐ冬を迎える。

有希(あき)は家へ続く歩道を歩いていた。
歩道の端には、踏みつけられた落葉がきれいに集められている。
近所の潔癖症のおばさんがやったに違いない。
そんなことを思いながら歩き続ける。

落葉の山を散らせながら、突然前に黒猫が走りこんで来た。
目の前で立ち止まると、こちらをじっと見つめてくる。

―――・・・何よ。

有希が思ったと同時に、黒猫は走って逃げて行った。
誰も居なくなった道を、家へと急ぐ。



「ただいまー」
有希はいつも通りに家のドアを開けた。
そのままリビングを素通りし、自分の部屋に鞄を下ろす。

「ちょっと、ただいまくらい言ったらどうなの」
「・・・言ったじゃん」
「あ、そう?聞こえなかったの」
いつもこの調子なのは、嫌味のつもりなのだろうか?
有希はそろそろ呆れ始めていた。
「もう高校3年生なんだから、もう少し・・・」
ドアを閉めた。関わるのが面倒だ。

有希は親に反抗的な態度をとっているつもりはないが、
自分の親には少なからず落ち度があると考えている。
父親は前から子供には我関せずといった状態。
母親は母親で、自分が昔遊び呆けていたのを後悔しているからか
有希にしつこく勉強を押しつけ、しっかりとした大学にまで入れようとしている。
有希自身は、短大でもかまわないと思っているのだが・・・

有希は部屋に座り込んだ。
このまま親の勧めるまま、人生を歩んでいくのだろうか。

窓の外を見た。庭の木には、まだ枯れ葉が何枚かついている。
どうせならすっかり落ちてしまえばいいのに。
とうとう秋も終わってしまう。

有希は今の季節が一番嫌だった。
今年は受験が近付いているという緊張もあったのかもしれないが、
何よりテレビで「もうすぐ秋も終わりですね」と言っているのが、
「『有希』が終わり」と聞こえるのがどうにも不愉快だったのだ。



しばらくして、玄関のドアが開く音がした。
この時間に父親が帰ってくるはずはない。航大だろうか?
姉の有希よりも帰りが遅いのは珍しいことだ。

突然ドアが開いて、弟の航大が駆け込んできた。
航大と有希はずいぶん年が離れている。
航大は小学3年生ながら、どうも姉に遠慮が無いところがある。

有希は少し強い口調でたしなめた。
「ちょっと、驚かさないでよ」
「姉貴、これ見てよ」
弟はいつになく子供っぽい笑顔を浮かべている。
左手には何かを持っていた。

有希は差し出されたものを受け取ると呟いた。
「・・・何これ」

有希の右手には、白い折り紙の鶴。
その鶴には、頭と尻尾が3本ずつ付いていた。

「・・・気持ち悪い、これ航大が作ったの?」
「ううん、公園で魔法使いの人にもらった」
「魔法使い?そう言ってたの?」
「うん」
・・・何だそれは。どう考えても怪しい。

「気をつけなさいよ、世の中変な人も多いから」
「ちぇっ、もうちょっと驚くと思ってたのになー」
航大は鶴をひったくると部屋を出て行った。冷たく当たるとすぐこれだ。

有希はまた部屋に座り込んだ。
「公園か・・・」
この辺りで公園といえば、街路樹のある歩道沿いの広場のことだろう。
「・・・・・・。」
有希はあの鶴のことが無性に気になっていた。




翌日の帰り道、有希は例の歩道の辺りに差しかかった。
昨日はそれなりにまとめられていた落葉が、すっかり元の通り散らかっている。
どこからかカラスの鳴き声がする。カラスの仕業だろうか。

鳴き声のする方を見ると、公園にカラスが群がっているのが見えた。
公園と言っても、何か遊具があるわけではなく、
広場の周りにベンチと東屋があるくらいだ。
普段なら近所の小学生が遊んでいることが多いのだが、
今日は広場には一人も姿が見えない。
代わりに、何十羽というカラスが木や電線にとまっている。

見ると、広場の端にある東屋に子供たちが集まっている。
もしかして、昨日航大が言っていたのはあれか。
有希は広場の外から回りこんで、東屋の近くへ行った。

輪の中から、「すっげー」「何これー」という声が聞こえる。
有希は遠くから背伸びをして覗き込んだ。
輪の中心には、灰色の大きなフードをかぶった男が座っていた。
フードの付いた上着はくすんでいて、
明らかに怪しい雰囲気を醸し出している。
なるほど、この風貌なら魔法使いと言ってもおかしくない。

有希は携帯電話を取り出した。
こんな時は、こうするのが一番だろう。
有希は番号を入力すると、話し始めた。

「あの、広場に不審な人がいるんですけど・・・」




数日が経った。
このまま気温が下がって冬が訪れると思われていたが、
9月並みの陽気が戻り、人々は振り回されるばかりだった。
ただ、ここ2日の強い風で街路樹はすっかり枝だけになってしまった。

有希はいつも通り街路樹のある歩道を歩いていた。
少し前まで幅を利かせていたカラスの群れもどこかへ行ってしまい、
枯れ葉も風に飛ばされて散り散りになっている。
あのフード男もあれから一度も見ていない。

この道は車の通りもそれほどないにもかかわらず、
景観を良くするためにと数年前にこんな歩道まで作られた。
当時は無駄ではないかと叩かれたものだったが、
今では枯れ葉が飛んでくること以外には近所から苦情が出ることはない。
有希はふと、学校の生徒でこの辺りに家があるのは
自分だけだということに今更ながら気付いた。


そんなことをぼんやりと考える有希の前に、黒猫が飛び出してきた。
何日か前、この歩道で見た黒猫だ。
またこちらをじっと見て動こうとしない。
黒猫が横切ると幸運だとか不幸だとか聞いたことがあるけれども、
結局どちらが正しいんだっけ?

黒猫に気を取られていたその時、
突然どこからともなく無数のカラスが有希の周りに集まってきた。
「な、何?」
けたたましい鳴き声を上げるカラスを振り払うと、
灰色のフードをかぶった男が目の前に立っていた。

「あなたですか、私を警察に突き出したのは」
有希は身の危険を感じ、鞄を前に抱え込んだ。
「見てたの?」
「こいつらが見てたそうで」
フードの男は有希の周りのカラス達を指差した。
「何それ?」
「カラスって結構頭いいんですよ」
「答えになってませんけど」
男の足元に、さっきの黒猫が寄り添っていた。
この猫も、フード男の猫なのか。

どこからともなく鋭い鳴き声が聞こえ、カラス達は落ち着きを取り戻した。
しばらくすると、近くの電線から白い鳥が飛んできて、
フードの男の頭に止まった。

「コノ女ダゼ、コソコソ電話シテヤガッタノハ」
フード男ではない誰かの声に、有希は辺りを見回した。
「俺ダッテンダヨ、耳イカレテンノカ?」
フード男の頭の上の鳥が嘴をパクパクさせている。
やけに大きい鳥だな、と思ってよく見ると、姿形はカラスそのものだった。
ただ他のカラスと決定的に違うのは、、全身真っ白で、目が真っ赤なことだ。

「・・・喋ってる?」
「あ、こいつですか。どうにも口が悪くて」
「口ガ悪イノハ仕方無イッテ言ッテルジャネエカ、ぐれーサンヨ」
「わかってる、わかってるからそこから下りてくれ、重い」
白いカラスは羽を広げ、フード男の頭から飛び降りた。
話すだけでなく、人間の言葉も理解しているかのようだ。


フードの男は、有希に視線を戻すと呆れた様子で溜息をついた。
「全く、あなたのおかげで面倒なことになりましたよ。
何とか言いくるめたから良かったものの、拘留一歩手前ですよ」
「・・・はあ」
「ナンダソノ反応、謝ルッテコトモデキネーノカ」
「・・・すいません」
カラスに怒られる人間なんて、他に居るのだろうか。
フード男の足元の黒猫も、こちらを睨んでいるかのように感じる。

「いいんですよ、子供に囲まれて浮き足立った自分も悪いんですから」
フード男は肩を落とした。ちらりと見えた目は、寂しそうに見えた。
この人は自分が思うような不審者ではないと、有希は確信した。

「あのー・・・あなたはどういう方で?」
抱えた鞄を下ろしながら、有希は恐る恐る訊いた。
「どういう、というと?」
「いや、どういうことをしてる方なのかな、と思って・・・」
電柱に止まったカラスの一匹が鳴き声を上げた。有希はビクッとして固まった。
フード男は困ったように口元を歪ませた。
「何をしてると訊かれると、答えにくいですね。警察にも言われましたけれども」
有希は気まずくなって下を向いた。
「いや、嫌味のつもりで言ったわけではないですよ。
そうですね、今はこの辺りを徘徊してる、というところでしょうか。
仕事についておっしゃっているなら、無職みたいなものです」
黒猫がこちらに寄ってきた。意味ありげにこちらを見上げてくる。
フードの男の口元がニヤッとした。悪意というよりも、自虐からきたものだろうか。
「平たく言えば、ホームレスですよ。しがない乞食です」
その割にはこざっぱりして、愛想がいいように見える。
「子供達は、魔法使い、なんて呼んでくれますけどね。こんな格好だからなのか」
男はフードを指でぴんと弾いた。初めて顔がはっきりと見えた。
声は落ち着いてはいるが、顔を見る限りかなり若いらしい。

「名前は?」
有希は再び口を開いた。緊張感はほとんど消えていた。
灰色フードの男は、また困った顔をした。
「名前・・・ですか。また答えにくい質問ですね」
「フルネームがダメなら、苗字だけでも」
「そうですねえ・・・グレイ、と呼んでいただければ結構です」
「グレイ?英語でいう灰色の、あれですか?」
「ええ。一応その名前で通っているので、そう呼んでいただくのが一番やりやすいです」
ホームレスの間での通り名みたいなものだろうか。
そう考えると、目の前の男がまた得体の知れない者に見えてきた。

有希が不安そうな顔をしていると、グレイは有希の足元を指差した。
「その猫、私の連れです。ケイって呼んでます」
「ケー・・・アルファベットのKですか?」
「いや、ケ・イ、です。ちなみにメスです」
ケイと呼ばれた黒猫は、有希と目を合わせたまま動こうとしない。
猫の目が帯びた不思議な威圧感に、有希は思わず目を逸らした。
「結構図太いですから、付き合いにくいかもしれないですね」
グレイの言葉を合図にしたように、猫はベンチの下へ走っていった。

ケイがもぐりこんだベンチの上で、あの白いカラスがグレイと有希を交互に見ている。
「コノ流レデ自己紹介シロ、ッテカ?」
カラスはまた喋り出した。普通のカラスの騒がしい声と違って、
まるで活発な子供が喋っているかのような、甲高くてはきはきした声だ。
子供にしては、可愛げの無い口調ではあるが。
「このやかましいのがQっていいます」
「キュー?」
「こっちはアルファベットのQです。ややこしくてすみません」
「何デ謝ル、何カ悪イコトデモシタッテノカ?
ヤヤコシイノハオマエガけーナンテ名前付ケタセイダロウガ」
ベンチの下にいたケイが立ち上がってQを見上げた。
「このカラス・・・Qは、日本語が喋れるんですか?」
有希はずっと気になっていたことを口にした。
「Qサン、ト呼ベ」
「・・・Qさんは、人間の言葉が分かるんですかね?」
「そうですね、小学生程度の会話はできます。
カラスも九官鳥みたいに声真似は出来るそうですからね」
「カラスって、そんなに頭いいんですか?」
「ソコラノ野良猫ヨリカハイイト思ウゼ」
ケイがQを見上げながらニャーと呻いた。
調子になるな、とでも言いたげな鋭い目つきに、
ずっときょろきょろしていたQの動きがピタリと止まった。
「・・・チェッ」
猫と鳥という立場上、ケイには頭が上がらないということだろうか。


「ところで、あなたは?」
「え?」
有希は、自分が名前を尋ねられているということにすぐには気付かなかった。
「あ・・・アキ、です。有名の有に、希望の希」
「有希さん、ですか。覚えておきます。
しばらくはこの辺りにいるつもりので、また顔を合わせるかと思います。
子供をたぶらかす様な怪しい者ではございませんので、
また通報することの無きよう、くれぐれもよろしくお願いします。
その事をお伝えしておきたかっただけです。失礼しました」
「あ、あのー」
踵を返して立ち去ろうとするグレイを呼び止めた。
「何か?」
「あんなに子供を集めて、何をしてたんですか?」
「ああ、これのことですか?」
グレイは、灰色の上着のポケットから何かを取り出した。
航大が持っていた、あの頭と尻尾が3本ある折り紙の鶴だ。
「よろしければ、差し上げましょうか?」
「あ、いや・・・いいです」
有希ははぐらかすように引きつった笑みを浮かべた。この不気味な鶴はどうにも苦手だ。
「女性はあまり好まないでしょうね。それなら、こちらはどうです?」
グレイは、上着の内側に手を入れ、前に差し出した。
男の手のひらに置かれたものを、有希はまじまじと見つめた。

それは、今まで見たこともないほどに凛々しくしなやかな姿をした、
灰色の紙で折られた鶴だった。




2章へ続く

あとがき  てきな

2010年06月12日 19時57分59秒 | 小説
ライです。
小説いかがだったでしょうか?

小説をやろうと思いたってから、だいぶたってまともな長さの小説が書けました。

小説やろっかな~と思ってからいろいろな人にアドバイスみたいなものをほんの少々参考にしました。(ほとんど俺一人)

ちなみに、「できてから少し切り取って手直ししてからアップ」みたいなやり方をしました。
この方がコメントの意見の影響を受けないと思ってです。
さすがに二章のコメントを見たときは迷いましたが……

今回の作品は僕の好きないわゆる「あれ」です。
ああいうのを見てるとどうしても自分で妄想してしまうんですよね~
こんなんかっこいいんじゃないかとか、あんなのはどうかとか・・・・
今回はそういうのを現実のかたちにしてさらに表に出しました。

まぁそういう意味では満足です。

話の内容にふれると

主人公(登場人物こいつだけ)は高校生ということでライの設定と同じにしました。
そっちのほうが書きやすいんでね

意外性を狙ったわけではないので二章でだいたいの予想がつくことは仕方ないです。
ただ、みんな黙っとこうぜ

小説として
今回注目して欲しいのがバトルパートです。
別に自信があるっていうわけではありません。
というより一番自信がありません。
実際に見せるわけではないのでどういう動きだとかどんな見た目だとか説明しなければなりませんでした。
わかりやすかったかどうか心配です。

あと、全文に句点をあえてつけませんでした。
一人称の小説だったのでいらないかなぁと思って。
ただし読点は読みにくそうだったのでつけました。


このストーリーは続きそうな終わり方を意識しましたが、続ける気はあまりありません。
ただし、人気があったらやるかも


次回は長めのロボットものをするつもりです。
完成がいつになるかわかりませんが、絶対やりきろうと思います。
ガンダムさんが絵を描いてくれるそうなのでね


これであとがき終了にしたいと思います。

読んでいただきありがとうございます。

終章 変わらない世界変わる未来

2010年06月12日 18時12分27秒 | 小説
最後です。
だいたい終わりが見えてきましたが、最後まで付き合っていただけたら幸いです。

全体を通した感想、文章の良し悪し、ストーリーのわかりやすさなどコメント欄へ
次回の執筆の参考とします。



こちらに気づいたなにか
どうやら肉と骨は残らず腹の中へ収まったようだ


無我夢中で落ちていたなにかを腰に巻きつける

そのとき、不安もあった
しかし、おれにもできるという根拠のない自信もあった

光の壁が現れる
暗い夜道に光るそれは明るいなにかが自分が近づいてくるように思えた

光がおれを包む
不思議と違和感がない
温かく自分を包む服のような

「おれならできる!」
今までの不安が消え、おれは自信に満ち溢れた

冷静に辺りを見渡す

ひとけはない

人でないものとおれの自転車がひとつずつあるだけ

こちらになにかが向かってくる
単純な直線的な動き
簡単によけることができた

なにかがこちらを振り向く

なにかを注意深く観察する
頭らしきところからはホースのようなものが何本も生え地面まで垂れている
体は人に比べると大きい
手のようなものが2本あり、長い爪がある
足は2本、短い尾が生えている
そして体全体にはいくつものトゲ

そしてこんどは自分の体を確認する
体全体を鎧のようなものが包み、
顔にはヘルメット
しかし視界はいつもと変わらない

またやつが攻撃を仕掛けてくる
またも同じ、頭からの突進

「わかりやすいんだよ!!」こんどは迎えうつ
突っ込んでくる頭に右ストレート
硬いアタマだった
しかし痛くはない
どうやら鎧は衝撃を吸収してくれるようだ

敵が後ろにこける

起き上がろうとしているところに蹴りをいれる

敵が距離をとった
どうやらダメージはちゃんと受けているようだ

やり方はすべて知ってくる
いや、光の壁がおれを包みこんだときに情報がすべて入ってきたようだ

太ももにあるホルスターから拳銃を引き抜き、撃つ
みごと着弾した
この鎧のおかげかもしれない
そのまま撃ち続ける

敵がひるむ

隙を狙い拳銃を変形させ右足に取り付け、さらに肩についていた棒状の剣をそこに取り付ける

巻きつけた装置のボタンを押す
エネルギーが右足にためられる
カウントが始まった


敵がこちらに向かってくる
しかしダメージが相当深いようだ


おれは動かない


敵は動かないことを挑発と思ったようだ


やっと距離が縮まってきた
銃の乱射で結構後退していたようだ


距離が縮まる
さすがに俺も構える


回し蹴り
しかしただの回し蹴りではない
カウント0と同時に足に取り付けていた剣の刃の部分が伸び、相手を切り裂く

一瞬の静けさ

なにかは燃えて灰になった


もとのひとけのない暗い夜道


ふと気づいた、オレはヒーローだと
幼いころのヒーローになりたいという夢が叶った
あの悪と戦う正義のヒーローに

そう思うと無意識に笑いがこみ上げた



次の日朝、あの道を通るとなにも残っていなかった
どうやら灰は風で飛んでいったようだ

いつものひとけのない道がそこにはあった

変わらない景色、変わらない毎日

しかし、その日からおれは確実に変わった


to be finished

全三章終了

いかがだったでしょうか?

二章思考と反射本能と理性

2010年06月11日 21時43分38秒 | 小説
続けてどうぞ
ちなみにとよくろさんに小説書いたって言ったらどういうオチかあてられました
たぶんこの章でだいたいオチがわかるでしょうが


学校で授業中二回ほど当てられた
わからなかったので答えられなかった
周りの人たちはわかっていたようだ


宿題を忘れたので学校に残された
家に帰ってもやることがないのでそんなに気にならない

案の定、帰りが遅くなった
家が近ければと思いながら帰る

たまたまいつも通らない道を通った
いわゆる近道
いつも周りにひとけがないのであまり通らないが急いで帰りたかったのでなんとなく通った

この選択が後の自分の人生に大きな影響を及ぼすとは知らずに


ひとけがないので少し自転車のペダルを速く回す暗い夜道に自転車の音だけがひびく
いくら高校生でもひとけのない暗い夜道はこわい

しばらく進むとなにかが道の真ん中にあった
少しペダルの回転が遅くなる

さらに行くとはっきりわかるようになってきた

どうやら人のようだ

勇気を振り絞り自転車をとめ駆け寄る

「大丈夫ですか?」
近づいて気づいたが手から血がでている
暗い夜道がおれの不安を煽る

「に、逃げろ」
倒れている人が、かすかな、だがはっきりと聞き取れる声を出した

とたんにパニック状態に陥り、慌てて辺りを見渡す

それは確かにそこにあった

高さは人間と同じくらい
だが明らかに違う

人間にわずかに残っている生物的本能が全力で全身に危険を知らせる

しかし、危険の少ない生活に慣れている体は動くことができない

倒れていた人がおれを突き飛ばし、立った。

そのときその人がしていた表情をおれは今でも覚えている、いや忘れることができない

言葉で表現することはできないが、ただ自分が今まで見てきた人の表情、今までの生活の中では見ることのできない表情だったことを


そして倒れていた人が動く

手に持っていたなにかを腰に巻きつける

聞き慣れない電子音のあと人を挟むように2つの光の壁が現れ、その人を包み込んだ

そこから人が消えた

正確に言えば何かが現れた

今まで見たこともないもの

高さは人と同じ

しかし人工的であった

その後のことは覚えていない
気がつくと倒れていた人が持っていたものが自分の側に落ち、倒れていた人が肉と骨の塊となって危険ななにかの餌になっていた

そこからは鮮明に覚えている


二章終了

序章始まりはとつぜんに

2010年06月11日 01時04分19秒 | 小説
どーも、ライです。
小説できました。
ルーイさんと違いショートショートではなく、そこそこ長めです。

全3章
暗いですが、我慢して読んで欲しいです。
感想、その他はコメント欄に
誤字脱字は許してください


また1日が始まるのか

おれは高校生
そこそこの高校に受かったものの、成績はそこのほう

これと言って夢もなければ、趣味と言えることもない
ぐだぐだしながら過ごしている

もちろん彼女もいない
欲しくないと言ったら嘘になるが、だからといってなにかするのも面倒だ

毎日の学校生活が苦痛な訳ではない
そのため学校を休んだこともあまりない
友達は多いほうではないが、別に気にしていない

布団から起き出す
家族は4人
父親、母親、それに弟

学校が遠いのでおれの朝は早い
そのせいで母親も起きている
父親、弟はまだ寝ている父親はいつもは早いがどうやら徹夜したらしい

急いで着替える

朝はどれだけ寝れるかがポイントだ

なので間に合うギリギリに起きる

母親が作った朝食を食べる

母親が話かけてきた

どうやら進路についてのようだ
ここ最近その話ばかりだやはり高校生になったからか
それを聞き流し朝食を食べ終わる

歯を磨き、学校へ行く

駅までは自転車で行く

自転車置き場で蜘蛛の巣に引っかかった
いつものことだ


家から学校への道はどうでもいいことを考えながら移動する

学校では友達と当たり障りのないことを話す

けど、ときどき本当にこれでいいのかと思う
友達と話すときは本当に楽しんで話してない気がする

そんなとき思う
もっと幼かったころに戻りたいと
別に過去をやり直したいわけじゃない
幼かったころの自分は毎日ただ楽しんでいたと思う
それは何も考えず、ただ好き勝手やってただけ
周りに迷惑をかけていただけ
でも将来に悩んだり、友達との関係に悩んでいる自分からは眩しく見える
これは傲慢でただの甘えだとはわかっているつもりだ
だからこそ、自分を変えられない、度胸のない自分がいやになる

自殺を考えたこともある
けど自分にはそんな度胸さえなかった
それに言い訳になるが自殺はただの逃げだと思っている
現実から逃げるために死ぬ
そんな死に方はしたくない


学校が終わるとタラタラ帰る

家に帰ってもうちこむことがないのでタラタラ勉強する

そして朝起きられる程度の時間に寝る

そんな1日が始まるのか

学校へ行く途中、カラスの死骸を見た
カラスは最後なにを思って死んだのか考えながら学校へ行く


序章終了