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横須賀総合医療センター心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

日本における急性大動脈解離の緊急手術の成績は世界一!?

2020-01-23 09:37:36 | 大動脈疾患
 European Journal of Cardiothoracic Surgery doi:10.1093/ejcts/ezz323
 Patient trends and outcomes of surgery for type A acute aortic dissection in Japan/-
によると、日本の心臓血管外科データベースを利用した2008年から2015年の8年間に手術を実施された急性大動脈解離11000例以上の解析結果が報告されています。
 これによると、11843例の解析を行い、上行大動脈置換術の30日死亡率は7.6%、弓部大動脈置換術のは9.5%といずれも10%を切っており、特に2008年から2009年の成績と2014年から2015年の成績を弓部大動脈置換術で比較すると12.7%から9.5%と有意に改善しております。上行大動脈置換術においてはこの年代による死亡率の差は8.4%と8.5%と差はありませんでした。
 海外のデータベースを利用した成績調査では15-20%の死亡率の報告があり、それに比較すると日本国内の成績がきわめて優秀といえます。これは日本の心臓血管外科医の技術が素晴らしい、ということもさることながら、日本の救急医療体制、CTの普及率など社会的な基盤が整備されていることも関係していると思います。

 この中で、80歳以上の患者さんが12%から20%と増加し、また特に腎障害(Cr>2)を有する患者さんが有意に増加しているにもかかわらず、成績が向上している点が素晴らしいと思います。
 オープンステントが商業ベースで使用できるようになったのが2014年なので、この研究対象期間の後の調査をすると更に成績が向上している可能性があります。

 ちなみに横須賀市立うわまち病院心臓血管外科における急性大動脈解離の手術死亡率は、この3年間においては3/30と3%となっております。

ドクターG:内科は診断学、外科は治療学

2020-01-23 09:22:54 | 心臓病の治療
 NHKの人気番組だったドクターG、録画してあったものを視聴しました。一つは、いろいろな愁訴の患者さんを身体所見、病歴から診断するまさに、総合医の診断能力が試されるような内容。腰痛で受診した患者さんが最終的に、パーキンソン病だったという結論。門外漢の外科医としては、最後の答えを聞いても全く理解できない、というか、納得できない内容でした。しかし、診断を突き詰めてようやく診断がつく得意なケースではあっても、そこまで執念深く診察することに内科医の醍醐味があるのだ、とも思いました。医師国家試験を受験して間もない研修医の頭の中にはまだフレッシュな知識がたくさん詰まっていて、二十年以上名前を聞いたことのない病名がたくさんぽんぽんと出てくるところにはさすがに年齢を感じました。
 さて、その次回は、三大疾患シリーズ、で不安定狭心症の症例に対して心臓外科医がナビゲーターとして出てきて解説する構図でした。内容は3年前の番組とはいえ、専門医から見ると最良とはいえないし間違いの多いものでしたが、唯一、正しいと思えたことは、その医師が「医師は診断して終わりではない、そこからどう治療していくかだ」「患者さんが家に帰って手術して良かったと思って初めて手術は成功したといえる」といい、そこからその患者さんの手術について詳しい解説をしていく、というものでした。最近の医療ドラマはかなり洗練されて専門医も楽しめるような内容になっているものばかりなので、NHKとしては、もうちょっとひねった内容の濃いものにしてもらいたかったです。

 内科医は診断名を当ててそれで終わり、そういう内容の番組が多いドクターGでしたが、珍しく治療の実際を魅せようとする姿勢は斬新ではあったと思います。
 内科は診断学、外科医は治療学。学生時代は診断するプロセスをあまり考えないですぐ手術をしようとする外科のことを低く見るような大学教育を受けましたが、その患者さんによって微妙な調整を必要とする外科はまさに治療学なんだということは、外科医になって初めてわかったことでした。