横須賀うわまち病院心臓血管外科

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胸骨部分切開による小開胸の低侵襲大動脈弁置換術

2020-01-09 21:59:07 | 弁膜症
 大動脈弁置換術において横須賀市立うわまち病院心臓血管外科では、右小側方開胸によるアプローチを標準術式として採用し、約8cmの皮膚切開で右前腋窩線を中心において心膜ごと心臓を右胸壁に引き寄せるストーンヘンジ法で行っています。
 しかしながら、右側方開胸ができない症例や上行大動脈の評価が不十分である為、安全にこのストーンヘンジ法が実施できない症例においては胸骨正中切開による従来のアプローチを採用します。
 胸骨正中切開が必要な症例で、大動脈弁単独の手術の場合は可能な限り創を小さくするために、胸骨部分切開によるアプローチとすることで、側方開胸と同じく約8cmの皮膚切開で行うことが可能です。基本的に側方開胸しない単弁置換の場合は、当院ではこの胸骨部分切開を採用しています。胸骨部分切開では、胸骨の上部を逆L字で切開するUpper Partial Sternotomyと、胸骨の下部を逆さL字に切開するLower Partial Sternotomyの二つの切開方があり、CTでどちらが確実に大動脈遮断、大動脈切開、大動脈弁置換が可能かを判断してアプローチを決定しています。
 日本人の場合は体形的にLower Partial Sternotomyのほうがやりやすい患者さんが多く、当院でも多くの症例はLower Partial Sternotomyを採用しています。Lower Partial Sternotomyの場合は、心膜の折り返し地点、腕頭動脈付着部あたりまで胸骨を正中切開し、またUpper Partial Sternotomyの場合は、大動脈弁の位置まで胸骨を切開することになり、どちらが手術操作に有利かによって決定します。
 右側方開胸に比べて胸骨を切開する分、骨髄からの出血が持続しやすいこと、閉胸に時間がかかる、内胸動脈を損傷、出血させるリスクがあるなどの違いがありますが、基本的に大動脈弁の見え方は側方開胸とほぼ同じであり、また、大動脈切開はFullSternotomyと比較して、出血した場合にあとで止血がしやすいような位置、範囲を選択する必要があり、これも側方開胸と同じです。Lower Partial SternotomyではDCパドルが小児用であれば挿入可能なのでDCパッドを事前に貼付する必要はありませんが、Upper Partial SternotomyではDCパドルが入らない可能性が高いので側方開胸と同様にDCパッドを事前に貼付する必要があります。
 上行大動脈置換や冠動脈バイパス術の併施、大動脈基部再建術の場合は、こうした小切開による低侵襲アプローチは採用しておらず、基本的にFull Sternotomyとしています。
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