横須賀うわまち病院心臓血管外科

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回旋枝領域の急性心筋梗塞はPunched Out様の左室心筋断裂によるBlowout破裂しやすい

2020-01-13 09:43:56 | 心臓病の治療
 急性心筋梗塞後に発症する左室破裂は未だに死亡率の高い病態で、救命のための緊急手術の死亡率は全国統計でも50%近くに上ります。
 特に左室破裂にはじわじわ出血するWoozing Typeと、拍動性に出血するBlowout Typeがあり、特に止血に難渋したり死亡率が高いのはBlowout Typeと考えられます。
 これはまだ一般には知られていないかもしれませんが、支配する冠動脈領域によって破裂の仕方が違う場合が多く、特に回旋枝領域の急性心筋梗塞、その中でも#11の閉塞により側壁が広範囲に梗塞を起こした症例では、Blowout破裂が多い現実があります。この特徴的なエコー所見として、すり鉢状の深掘れの心筋の欠損・断裂所見を認め、ほとんど心外膜一枚で塞がれているような所見では、Blowout破裂が発生します。前壁梗塞による広範囲なThiningとは違い、深堀れ潰瘍の周辺の心筋の壁厚は保存されていることが多くなっています。こうしたBlowout破裂の外科手術は、前壁梗塞のWoozing破裂とは全く違い、タコシールなど貼付して圧迫するなどの姑息的な手術では再破裂のリスクがあるので、基本的に左室形成のLinear Closureのような潰瘍部閉鎖する手術が必要です。
 筆者は幸い今までのBlowout破裂の手術症例はほぼ全例救命できていますが、手術中の出血の対処などその場の判断が救命を左右するような重症の症例が多いのも事実です。
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