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有害赤潮ラフィド藻シャットネラの遺伝子配列を解読

2019-10-25 | 科学・技術
 水産研究・教育機構瀬戸内海区水産研究所の紫加田知幸主任研究員らは、自然科学研究機構基礎生物学研究所の内山郁夫助教らと共同で、有害赤潮ラフィド藻シャットネラ・アンティーカからRNAを抽出し、次世代シーケンサーを用いて大量の遺伝子配列を解読することに成功した(10月16日発表)。独自に開発した遺伝子解析プログラムなどを用いて、赤潮の発達・衰退に影響する光合成、光受容、栄養塩の取り込み、活性酸素産生などに関与する遺伝子の配列を明らかにした。得られた情報は、遺伝子の発現量を指標として赤潮藻の生理状態を診断し、赤潮の発達・衰退を予測する技術開発の基礎となる。本成果は、令和元年7月31日に”Frontiers in Microbiology”誌より公表された。
 研究の背景
 西日本の沿岸域を中心に赤潮が頻発しており、養殖業に甚大な被害が発生している。長年、世界中で赤潮藻を直接駆除する方法が検討されてきたが、未だ実用的な技術は開発されていない。赤潮の発生予測に関する研究開発も長年進められてきたが、実用レベルには到達していない。赤潮の発達を予測するには、赤潮藻の増殖や遊泳力を知る必要があるが、これらを常時物理的かく乱のある現場において簡便に計測する技術はいまだ確立されていない。また、赤潮藻の増殖や遊泳力には長期的な環境履歴が大きく影響すると考えられるため、水温や栄養塩濃度などの外部環境だけからこれらを正確に推察することも困難である。このため、赤潮藻の増殖や遊泳力を推定する新しい技術を開発することが課題となっている。
 研究の成果
 瀬戸内海区水産研究所・有害有毒藻類グループは、赤潮藻シャットネラ・アンティーカの遺伝子配列を次世代シーケンサーによって網羅的に解読した。大量のデータを用いることにより、他の赤潮藻を対象として行われた先行研究と比べて、完成度の高いデータを得ることができた。また、これらの遺伝子の中から、シャットネラの赤潮発生に関連する遺伝子の候補を探索した。これまでの研究によりシャットネラの赤潮発生に重要と考えられている生理特性として、窒素やリンが豊富な環境で活発に増殖すること、特定の波長の光を感知して日周鉛直移動を行うことで昼間は表層で光合成を行い、夜間は底層の栄養塩を吸収することができること、活性酸素を大量に産生して他の微生物の増殖を抑制することが知られている。本研究により、窒素やリンの取り込みや代謝、光シグナルの受容、光合成、活性酸素の産生などに関わる遺伝子配列を同定した。
 さらに、それらの遺伝子配列を他の藻類を含む様々な生物と比較することにより、シャットネラ遺伝子固有の特徴を持つかどうかを検討した。その結果、いくつかの興味深い遺伝子を見いだすことができた。その代表的な成果として、シャットネラの魚毒性に関与すると考えられている活性酸素を産生する酵素NADPHオキシダーゼ(NOX)が挙げられる。シャットネラで同定されたNOX遺伝子群は、他の生物における相同遺伝子とは区別されるグループを形成し、酸素分子を還元する膜貫通領域を多数有していた。同様の特徴は、同じく赤潮を形成して魚をへい死させる別系統の藻類(渦鞭毛藻)であるカレニア・ミキモトイのNOXにおいても認められた。
 今後の展望
 今回得られた情報は、遺伝子の発現量を指標として赤潮藻の増殖、遊泳力および魚毒性を推察する技術開発の基礎となる。今後、生理状態の指標となる可能性のある遺伝子について、異なる環境条件下で分裂速度、遊泳の速度や方向および曝露した魚の致死量と同時に発現量を計測することなどにより、検証および絞り込みの作業を進めていく。また、取得データは専用のwebサイトを開設して、バイオインフォマティクスの専門家ではない研究者でも簡単に閲覧・検索できる形式で公開した。これによりたくさんの研究者がシャットネラについて様々な角度・視点で解析を行い、本生物の理解が深化することが期待される。
 ◆用語解説
 〇シャットネラ・アンティーカ
 シャットネラとは、海水中に生息し、赤潮の原因となる植物性プランクトンのこと。海産ミドリムシや、ホルネリアとも言われていた。光合成によって海の栄養素を吸収し、通常1日1回分裂して増殖している。
 条件がそろって大量発生することで赤潮を引き起こし、高密度のシャットネラが鰓に影響を与えた結果、呼吸機能が低下して窒息死させる。ブリやシマアジ、ハマチなどの生息を脅かし、例年6月~9月ごろに魚類養殖業に度々大きな被害を与えている。水温が20℃以上になると活発に活動し、八代海や有明海、播磨灘などでシャットネラによる赤潮が発生。漁業被害は数十億円にのぼることもある。
 現在の赤潮発生予測は、海水中のシャットネラの増減で判断し、一定水準を超えると警報を発令しているが、最近発見された、シャットネラが発芽する前段階である種細胞(シスト)の海底分布状況の監視を続ければ、赤潮が発生しそうな海域を特定できる可能性があると期待している。事前に養殖業者などに早期出荷を呼び掛ければ漁業被害を軽減できる可能性もある。
 〇次世代シーケンサー
 ランダムに切断された大量のDNA断片の塩基配列を同時並行的に決定することができる機器。
 本研究ではシャットネラから抽出したRNAをcDNAに変換後、基礎生物学研究所の次世代シーケンサーIllumina Hi-seq 2000を用いて解読した。
 〇活性酸素
 酸素分子がより反応性の高い化合物に変化したものの総称。スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素、一重項酸素などが含まれます。シャットネラは活性酸素を大量に産生する能力を持っており、魚毒性にも関与すると考えられている。
 〇NADPHオキシダーゼ
 細胞膜や食胞膜上に存在し、酸素分子を還元して活性酸素の一種であるスーパーオキシドを産生する酵素。

 今日の天気は曇り。こちらはまだ雨が降っていない・・夕方から強い雨の予想。
 梅田川沿いの堤防が散歩道。川岸の堤防・道路に”セイタカアワダチソウ”が密集し、花が咲き始めている。昨年に見た場所から少し移動したようだ。良く繁茂している。
 ”セイタカアワダチソウ”は明治末期に渡来した北アメリカ原産の帰化植物である。多年草で種子や地下茎で増える。地下茎から種子発芽を抑制するアレロパシー物質を分泌するので、純群落を形成して繁茂する。この物質は他種も、自らの種も、発芽も抑制するので、他種植物の侵入も、自己の連作も、困難となる。
 急速に広がったのは第二次世界大戦後で、養蜂業者の蜜源植物として種子の散布説がある・・どこからでたのか不明。花粉症の元凶かと言われた時期があったが、その後関係は薄いと嫌疑は晴れたが悪いイメージは残っている。
 セイタカアワダチソウ(背高泡立草)
 学名:Solidago altissima
 キク科アキノキリンソウ属
 多年草、種子や地下茎で増える
 北アメリカ原産、明治末期に渡来した帰化植物
 河原・埋立地などの荒れ地で見る
 丈は1.0m~2.5m
 開花時期は10月~11月
 花は茎上部に多数集まって付く、花径は数mmと小さい



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