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繰り返し利用可能な、新しい光硬化性接着剤を開発

2018-03-05 | 科学・技術
 産業技術総合研究所(産総研)機能化学研究部門スマート材料グループ 秋山陽久主任研究員は、接着と脱着を制御でき、繰り返し使える光硬化性接着剤を開発した。2018年2月14日東京ビッグサイトで開催されるnano tech 2018 第17回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議で発表された。
 この接着剤は、枝分れした構造の糖アルコールと、光に応答してお互いに結合する複数のアントラセンを組み合わせた透明な液状物質を用いている。液状物質は糖アルコール(D-ソルビトールなど)に導入した構造で、室温で液体であり基材へ容易に塗布できる。塗布後の膜に、吸収端の波長にあたる400~420 nmの光を照射すると、分子間でアントラセン基の2量化による架橋反応が起こって硬化し、着色も生じないで透明の硬化膜となる。
 せん断接着強度は、アゾベンゼン系の約5倍で、ガラス基板の破断強度に達した(>5 MPa)。接着状態は、100℃でも安定に保たれたが、150℃以上に加熱すると、架橋部分の熱解離により液化し、容易に脱着できた。液体状態に戻った化合物に再び光照射を行うと再接着も可能であり、この光硬化(接着)、熱液化(脱着)のプロセスは、少なくとも5回以上繰り返すことができた。
 この接着剤の利用で、接着のやり直しや接着後の材料の再利用などが可能になり、新しい複合材料プロセスの実現が期待される。
 ◆糖アルコール
 糖アルコールの誘導体、水酸基(OH基)を複数個もつ。
 水酸基(OH基)の個数や立体構造によって名前が変わる。ソルビトールの化学構造は、6つの水酸基をもつ。
 ◆アントラセン
 多環芳香族化合物の名称。光を吸収すると、別のアントランセンと結合する。
 2つのアントランセンが結合(2量化)してできる新たな分子を2量体と呼ぶ。形成した2量体は、室温で安定であるが、温度を高くすると、分子をつなぐ結合が選択的に切れて(解離)、元のアントランセンに戻る。
 ◆アゾベンゼン系
 室温で光による液化-固化を繰り返す材料、化学構造は割愛
 ◆エステル結合
 分子をつなぐ結合のひとつで、糖アルコールの水酸基(OH基)とカルボン酸(COOH基)から水が脱離し、化学結合したときの結合部分の名称。

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