大阪大学 太陽エネルギー化学研究センターの白石康浩准教授、平井隆之教授らの研究グループは、太陽光照射下、水と酸素(O2)を原料とする非常に高いH2O2合成活性を示す新規光触媒として、レゾルシノール-ホルムアルデヒド(RF)光触媒樹脂を開発した(7月2日)。本研究成果は、英国科学誌「Nature Materials」のオンライン版にて7月1日16時(日本時間7月2日0時)に公開。
ポイント
〇過酸化水素(H2O2)は漂白剤や消毒剤として重要な化学物質であり、燃料電池発電の燃料となるエネルギーキャリアとしても有望視されているが、水素ガス(H2)を原料とするエネルギー多消費型のプロセスにより合成されており、地球上に豊富に存在する原料から再生可能エネルギーを用いて合成する方法が期待されていた。
〇今回、塗料や接着剤として用いられる汎用のレゾルシノール-ホルムアルデヒド(RF)樹脂(絶縁体であるため、これまで半導体光触媒には用いられてこなかった)を、独自の高温水熱法により合成することにより、太陽光エネルギーを用いて水と酸素(O2)からH2O2を最大効率で生成するRF光触媒樹脂の開発に成功した。
〇開発した光触媒樹脂は1μm程度の球状粒子であり、取り扱いも容易なため、さまざまな加工により社会実装が期待できる。H2O2をオンデマンドで生成する抗菌・殺菌デバイスの実現、並びにH2O2をエネルギーキャリアとする新エネルギー社会の実現に向けての社会実装が期待できる。
研究の背景
H2O2は漂白剤や消毒剤として不可欠な化学物質である。またH2O2は燃料電池発電のための燃料として使えるため、近年、再生可能エネルギーの貯蔵・輸送を担うエネルギーキャリアとして注目されている。しかし、従来のH2O2合成は、H2とO2を多段階で反応させるエネルギー多消費型のプロセスにより行われている。
これに対して光触媒では、太陽光エネルギーにより水とO2からH2O2を製造する(H2O+1/2O2→H2O2)ことが原理的には可能であり、省エネルギープロセスとして期待されている。しかし、通常の光触媒では、水の四電子酸化(2H2O→O2+4H++4e?)と、O2の選択的な二電子還元(O2+2H++2e?→H2O2)を同時に進めることは困難である。また、通常、光触媒として用いられる金属酸化物半導体では生成したH2O2が分解してしまう。そのため、新しい光触媒の開発が求められていた。
研究の内容
RF樹脂は、レゾルシノールとホルムアルデヒドが縮合した汎用の合成高分子であり、塗料、接着剤、鋳型として幅広く利用されている。この樹脂を一般的な合成温度(~100℃)よりも高い温度(>200℃)で水熱合成することによってRF光触媒樹脂を開発した。開発した触媒は、600nmを超える長波長の光を吸収し、太陽エネルギー変換効率で0.5%以上という、一般植物による天然光合成(~0.1%)を大幅に上回る非常に高い効率でH2O2を合成することができる。光触媒による太陽エネルギー変換では、水分解による水素製造(H2O→H2+1/2O2)などが古くから研究されているが、この0.5%という変換効率は、これまでに報告された粉末光触媒による太陽エネルギー変換反応としては最大の効率である。
さらに、RF樹脂の光触媒活性が高温水熱合成により飛躍的に向上する原因を明らかにした。高温水熱法では、レゾルシノールのベンゼノイド体(電子ドナー)とキノイド体(電子アクセプター)が連結したドナーアクセプター(DA)対が形成され、これらが積み重なることにより半導体バンド構造を形成する。光触媒樹脂の価電子帯および伝導帯バンド準位は、それぞれ、水の酸化(2H2O→O2+4H++4e?)と、O2の還元(O2+2H+2e?→H2O2)に適切な準位であるほか、有機高分子であるため、生成したH2O2の分解には低活性である。これらの特徴により、非常に高いH2O2合成活性が実現されることが明らかになった。
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
太陽エネルギーの化学エネルギーへの変換は古くから研究されているが、貴金属の使用が不可欠であった。本光触媒樹脂は、汎用高分子であるRF樹脂を“簡便な高温水熱法により処理するだけ”で合成できる。金属は一切含まれず、汎用の原料から高活性な半導体光触媒を調製することができる。樹脂を水に懸濁させて空気存在下で太陽光を照射するだけの簡便な操作により液体燃料を製造できる特徴は、太陽エネルギー変換に対する考え方を革新する新材料となるはずである。また、今回の光触媒設計を応用することで、さらに高活性なH2O2合成触媒を創製できると期待できる。開発した光触媒樹脂は、1μm程度の球状粒子であるほか取り扱いも容易なため、さまざまな加工により社会実装が期待できます。現在、企業と連携しながら、(1)生活環境における高機能材料やデバイス(抗菌殺菌機能を持つ塗料や容器など)、(2)エネルギーキャリアとしてのH2O2の製造・貯蔵・輸送による水素エネルギー社会の構築に向けて社会実装を進めている。
研究者のコメント
RF樹脂は、本来、“絶縁体”であるため半導体光触媒の候補として考えられたことはなかった。今回の「常識はずれ」な発見は、汎用の材料を半導体光触媒として、太陽光、水、空気から液体燃料を製造できる可能性を示すものであり、太陽エネルギーの化学エネルギーへの変換に対する新しい考え方を導くものと考えている。産官学の力を集結し、エネルギー製造技術の革新を進めることができれば幸いです。
◆用語解説
注1)エネルギーキャリア
エネルギーの輸送・貯蔵のための化学物質。特に、アンモニアや有機ハイドライド、ギ酸、H2O2など、海外など再生可能エネルギーが豊富な地域で得た電気エネルギーを化学的に変換して消費地まで貯蔵・輸送するのに用いられる化学物質を指す。
注2)光触媒
光を吸収することにより生ずる正孔と励起電子により、それぞれ酸化・還元作用を示す物質。代表的な光触媒として、二酸化チタン(TiO2)が知られている。本研究で開発したRF光触媒樹脂は、正孔による水の酸化(2H2O→O2+4H++4e?)と励起電子によるO2の還元(O2+2H++2e?→H2O2)によりH2O2を生成している。
注3)レゾルシノール-ホルムアルデヒド(RF)樹脂
レゾルシノールとホルムアルデヒドを、室温~100℃程度の温度で縮合させて合成する合成高分子。1989年に初めて合成され、現在でも接着剤、塗料、鋳型として幅広く利用されている。
注4)高温水熱法
密閉容器内での熱水中により行われる化合物の反応。通常の水熱反応は~100℃の温度で行われるが、本合成法では200℃以上の温度で行うことを特徴としている。
注5)太陽エネルギー変換効率
太陽光または疑似太陽光により照射した光エネルギーのうち、化学エネルギーに変換された割合。
注6)半導体バンド構造
半導体において、電子で占有されたバンドを価電子帯、空のバンドを伝導帯といい、それぞれのエネルギー準位が物質を酸化、還元するために重要である。なお、価電子帯と伝導帯の幅の大きさをバンドギャップという。
天気は雲が多い晴れ。早朝にパラパラと小雨があった。気温は、最高気温18℃、最低気温13℃とこの季節としては暖かい。
早朝の散歩で、空き地の”イヌホオズキ”を見つけた。花が咲いており、実も付いている。実はまだ青く、黒く熟していない。
”イヌホオズキ”には、これに似た”アメリカイヌホオズキ””テリミノイヌホオズキ””オオイヌホオズキ”があり、これらの区別はとても難しい。花・葉・果実の付き方・果実の照りなどで区分するが何れも微妙なのだ。私は果実の付き方で区分する。”イヌホオズキ”の実は房になり、果柄が少しずつずれて付いている。
名(イヌホウズキ:犬酸漿)の由来は、”ホウズキ”に似ているが液果は黒く、これを包む赤橙色の萼がなく、使い道がないからと言う。別名でバカナスと呼ばれる。因みに、全草にソラニン(ナス科の植物に含まれるステロイドアルカロイドの1種)を含むので食べられない。
イヌホウズキ(犬酸漿、犬鬼灯)
別名:バカナス(馬鹿茄子)
学名:Solanum nigrum
ナス科ナス属
1年草
史前帰化植物だと考えられている
(史前帰化植物とは稲と随伴して渡来し、帰化した植物)
開花時期は7月~10月
花は径6mm位、5裂して裂辺は尖る
果実は未熟な場合には青く、小さいトマト様
熟すと径7mm~10mmの黒色の果実となる
果実には光沢がない
ポイント
〇過酸化水素(H2O2)は漂白剤や消毒剤として重要な化学物質であり、燃料電池発電の燃料となるエネルギーキャリアとしても有望視されているが、水素ガス(H2)を原料とするエネルギー多消費型のプロセスにより合成されており、地球上に豊富に存在する原料から再生可能エネルギーを用いて合成する方法が期待されていた。
〇今回、塗料や接着剤として用いられる汎用のレゾルシノール-ホルムアルデヒド(RF)樹脂(絶縁体であるため、これまで半導体光触媒には用いられてこなかった)を、独自の高温水熱法により合成することにより、太陽光エネルギーを用いて水と酸素(O2)からH2O2を最大効率で生成するRF光触媒樹脂の開発に成功した。
〇開発した光触媒樹脂は1μm程度の球状粒子であり、取り扱いも容易なため、さまざまな加工により社会実装が期待できる。H2O2をオンデマンドで生成する抗菌・殺菌デバイスの実現、並びにH2O2をエネルギーキャリアとする新エネルギー社会の実現に向けての社会実装が期待できる。
研究の背景
H2O2は漂白剤や消毒剤として不可欠な化学物質である。またH2O2は燃料電池発電のための燃料として使えるため、近年、再生可能エネルギーの貯蔵・輸送を担うエネルギーキャリアとして注目されている。しかし、従来のH2O2合成は、H2とO2を多段階で反応させるエネルギー多消費型のプロセスにより行われている。
これに対して光触媒では、太陽光エネルギーにより水とO2からH2O2を製造する(H2O+1/2O2→H2O2)ことが原理的には可能であり、省エネルギープロセスとして期待されている。しかし、通常の光触媒では、水の四電子酸化(2H2O→O2+4H++4e?)と、O2の選択的な二電子還元(O2+2H++2e?→H2O2)を同時に進めることは困難である。また、通常、光触媒として用いられる金属酸化物半導体では生成したH2O2が分解してしまう。そのため、新しい光触媒の開発が求められていた。
研究の内容
RF樹脂は、レゾルシノールとホルムアルデヒドが縮合した汎用の合成高分子であり、塗料、接着剤、鋳型として幅広く利用されている。この樹脂を一般的な合成温度(~100℃)よりも高い温度(>200℃)で水熱合成することによってRF光触媒樹脂を開発した。開発した触媒は、600nmを超える長波長の光を吸収し、太陽エネルギー変換効率で0.5%以上という、一般植物による天然光合成(~0.1%)を大幅に上回る非常に高い効率でH2O2を合成することができる。光触媒による太陽エネルギー変換では、水分解による水素製造(H2O→H2+1/2O2)などが古くから研究されているが、この0.5%という変換効率は、これまでに報告された粉末光触媒による太陽エネルギー変換反応としては最大の効率である。
さらに、RF樹脂の光触媒活性が高温水熱合成により飛躍的に向上する原因を明らかにした。高温水熱法では、レゾルシノールのベンゼノイド体(電子ドナー)とキノイド体(電子アクセプター)が連結したドナーアクセプター(DA)対が形成され、これらが積み重なることにより半導体バンド構造を形成する。光触媒樹脂の価電子帯および伝導帯バンド準位は、それぞれ、水の酸化(2H2O→O2+4H++4e?)と、O2の還元(O2+2H+2e?→H2O2)に適切な準位であるほか、有機高分子であるため、生成したH2O2の分解には低活性である。これらの特徴により、非常に高いH2O2合成活性が実現されることが明らかになった。
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
太陽エネルギーの化学エネルギーへの変換は古くから研究されているが、貴金属の使用が不可欠であった。本光触媒樹脂は、汎用高分子であるRF樹脂を“簡便な高温水熱法により処理するだけ”で合成できる。金属は一切含まれず、汎用の原料から高活性な半導体光触媒を調製することができる。樹脂を水に懸濁させて空気存在下で太陽光を照射するだけの簡便な操作により液体燃料を製造できる特徴は、太陽エネルギー変換に対する考え方を革新する新材料となるはずである。また、今回の光触媒設計を応用することで、さらに高活性なH2O2合成触媒を創製できると期待できる。開発した光触媒樹脂は、1μm程度の球状粒子であるほか取り扱いも容易なため、さまざまな加工により社会実装が期待できます。現在、企業と連携しながら、(1)生活環境における高機能材料やデバイス(抗菌殺菌機能を持つ塗料や容器など)、(2)エネルギーキャリアとしてのH2O2の製造・貯蔵・輸送による水素エネルギー社会の構築に向けて社会実装を進めている。
研究者のコメント
RF樹脂は、本来、“絶縁体”であるため半導体光触媒の候補として考えられたことはなかった。今回の「常識はずれ」な発見は、汎用の材料を半導体光触媒として、太陽光、水、空気から液体燃料を製造できる可能性を示すものであり、太陽エネルギーの化学エネルギーへの変換に対する新しい考え方を導くものと考えている。産官学の力を集結し、エネルギー製造技術の革新を進めることができれば幸いです。
◆用語解説
注1)エネルギーキャリア
エネルギーの輸送・貯蔵のための化学物質。特に、アンモニアや有機ハイドライド、ギ酸、H2O2など、海外など再生可能エネルギーが豊富な地域で得た電気エネルギーを化学的に変換して消費地まで貯蔵・輸送するのに用いられる化学物質を指す。
注2)光触媒
光を吸収することにより生ずる正孔と励起電子により、それぞれ酸化・還元作用を示す物質。代表的な光触媒として、二酸化チタン(TiO2)が知られている。本研究で開発したRF光触媒樹脂は、正孔による水の酸化(2H2O→O2+4H++4e?)と励起電子によるO2の還元(O2+2H++2e?→H2O2)によりH2O2を生成している。
注3)レゾルシノール-ホルムアルデヒド(RF)樹脂
レゾルシノールとホルムアルデヒドを、室温~100℃程度の温度で縮合させて合成する合成高分子。1989年に初めて合成され、現在でも接着剤、塗料、鋳型として幅広く利用されている。
注4)高温水熱法
密閉容器内での熱水中により行われる化合物の反応。通常の水熱反応は~100℃の温度で行われるが、本合成法では200℃以上の温度で行うことを特徴としている。
注5)太陽エネルギー変換効率
太陽光または疑似太陽光により照射した光エネルギーのうち、化学エネルギーに変換された割合。
注6)半導体バンド構造
半導体において、電子で占有されたバンドを価電子帯、空のバンドを伝導帯といい、それぞれのエネルギー準位が物質を酸化、還元するために重要である。なお、価電子帯と伝導帯の幅の大きさをバンドギャップという。
天気は雲が多い晴れ。早朝にパラパラと小雨があった。気温は、最高気温18℃、最低気温13℃とこの季節としては暖かい。
早朝の散歩で、空き地の”イヌホオズキ”を見つけた。花が咲いており、実も付いている。実はまだ青く、黒く熟していない。
”イヌホオズキ”には、これに似た”アメリカイヌホオズキ””テリミノイヌホオズキ””オオイヌホオズキ”があり、これらの区別はとても難しい。花・葉・果実の付き方・果実の照りなどで区分するが何れも微妙なのだ。私は果実の付き方で区分する。”イヌホオズキ”の実は房になり、果柄が少しずつずれて付いている。
名(イヌホウズキ:犬酸漿)の由来は、”ホウズキ”に似ているが液果は黒く、これを包む赤橙色の萼がなく、使い道がないからと言う。別名でバカナスと呼ばれる。因みに、全草にソラニン(ナス科の植物に含まれるステロイドアルカロイドの1種)を含むので食べられない。
イヌホウズキ(犬酸漿、犬鬼灯)
別名:バカナス(馬鹿茄子)
学名:Solanum nigrum
ナス科ナス属
1年草
史前帰化植物だと考えられている
(史前帰化植物とは稲と随伴して渡来し、帰化した植物)
開花時期は7月~10月
花は径6mm位、5裂して裂辺は尖る
果実は未熟な場合には青く、小さいトマト様
熟すと径7mm~10mmの黒色の果実となる
果実には光沢がない
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます