goo blog サービス終了のお知らせ 

歩けば楽し

楽しさを歩いて発見

  思い出を歩いて発掘

   健康を歩いて増進

人工血液による救命に動物実験で成功

2019-11-01 | 科学・技術
 早稲田大学、防衛医科大学、奈良県立医科大学の共同研究チームは、人工血液を用いて、大量に出血させたウサギの救命に成功した。研究チームの木下学・防衛医大准教授は「離島など十分に血液を準備できない地域もある。人工血液でこれまで救えなかった命を救える」と話している。尚、論文は輸血学雑誌Transfusionに2019年7月1日付(現地時間)でオンライン掲載された。
 血液に含まれる傷口をふさぐ血小板と体細胞に酸素を運ぶ赤血球の二つが出血で失われると死に至る。保存期間は血小板が固まらないよう揺り動かして4日間、赤血球は低温で20日間ほどで、血液型ごとに大量に準備する必要がある。輸血には患者の血液型を調べる必要があり、救急救命士などは輸血できない。
 人工血液
 研究チームが使用したのは、酸素運搬ナノ粒子(人工赤血球)と止血ナノ粒子(人工血小板)と呼ばれるもの。共に、ナノサイズ(1nmは1mmの100万分の1)のカプセルで、リン脂質という私達の細胞膜と同じ材料でできている。
 研究チームはこのカプセルのなかにヒトヘモグロビンとアデノシン2リン酸を入れた。ヒトヘモグロビンを詰め込んだものが酸素運搬ナノ粒子で、アデノシン2リン酸を詰め込んだものが止血ナノ粒子である。この酸素運搬ナノ粒子には赤血球と同等の酸素運搬能力があるという。また、止血ナノ粒子は、それ自体が傷口に集まって止血すると共に、アデノシン2リン酸の働きによって血小板による止血を促進する働きもある。酸素運搬ナノ粒子の開発は奈良県立医科大学が中心になり、止血ナノ粒子の開発は早稲田大学が中心になった。
 実験内容
 研究チームは、血小板を少なくして出血を止まらなくしたウサギの肝臓を傷つけて大量に出血させた後に、上記の人工血液を輸血した。その結果、10羽中6羽の救命に成功した。ちなみに通常の輸血の場合には10羽中7羽が救命された。ただし、特に処置を施さなかった場合には1羽も救命されなかった。人工血液の輸血によって通常の輸血と同等の救命効果が得られたと研究チームでは考えている。
 輸血用の血液の保存は非常に難しい。赤血球だと最適な温度(2~6度)で保存しても20日程度しかもたない。血小板に至っては、最適な温度(20度~24度)で激しい振動を加えながら保存しても4日程度しかもたない。そのため交通事故等で緊急に大量の輸血用の血液が必要な場合には、赤血球、特に血小板が、不足しがちだ。
 しかし、酸素運搬ナノ粒子は常温にて1年以上保存可能で、しかも、血液型を問わずに輸血できる。また、止血ナノ粒子も常温で1年間保存できる。研究チームでは、交通事故等で緊急に大量の輸血が必要な場合等に、輸血用の血液の不足を人工血液によって補うことで、救命率の向上につなげることができるのではないかと期待している。

 今日の天気は晴れ~曇り。
 畑に植えた色々な菊、咲き始めた。先頭に咲き出したのは、”フウシャギク(風車菊)”。筒状花の先がスプーンの形で、頭花が風車の様な姿の、スプレー菊である。スプレー(Spray:小枝状)菊とは、主茎から数本以上の側枝が伸びて円錐形の草姿で、沢山の頭花が咲くのが特徴である。
 ”フウシャギク”は園芸種である。アメリカで1940年代に作出され、日本に1970年代に導入された。中国の2種の菊(チョウセンノギク、ハイシマカンギク)の交雑によって作られたと言う。
 因みに、”風車菊”の花言葉は、「清浄」・「高潔」・「おぼろげな思い出」。菊は10月27日の誕生花である。
 フウシャギク(風車菊)
 学名:Dendranthemaxgrandiflorum cv.[spray mum]
 キク科キク属(デンドランセマ属)
 耐寒性宿根草
 開花時期は10月~11月
 花色は白・赤・ピンク・紫・黄色など


軽量で安全な水素キャリア材料<室温・大気圧において光照射のみで水素を放出>を開発

2019-10-27 | 科学・技術
 東京工業大学物質理工学院材料系の河村玲哉修士課程2年、宮内雅浩教授、筑波大学の近藤剛弘准教授、Nguyen Thanh Cuong(ニュエン タン クオン)研究員、岡田晋教授、高知工科大学の藤田武志教授、東京大学物性研究所の松田巌准教授らの共同研究グループは、ホウ素と水素の組成比が1:1のホウ化水素シートが室温・大気圧下において光照射のみで水素を放出できることを発見した。研究成果は10月25日”Nature Communications”に掲載。
 ホウ化水素シートは「ボロファン」という通称名で理論的に存在が予測されていた二次元物質で、2017年9月に本研究グループが初めて合成に成功した。ホウ化水素シートは軽元素のホウ素と水素からなり、その質量水素密度は8%以上と極めて高く、爆発のリスクある水素ガスボンベに代わる軽量で安全な水素キャリアとしての応用が期待されていた。
 今回、見出した現象はホウ化水素シートに紫外光を照射する単純な操作で、室温・大気圧という穏やかな条件で水素を取り出すことができる。これを応用することで爆発性のある水素の運搬を、高温や高圧を要する従来手法よりもはるかに安全に達成することが期待できる。さらに本研究では、計算科学によって電子構造の観点から、光照射による水素放出のメカニズムを解明することに成功した。
 発表のポイント
 〇ホウ化水素シートが常温・常圧条件で光照射のみで水素を放出
 〇水素放出のメカニズムを計算科学による電子構造から解明
 〇安全・軽量なポータブル水素キャリアとしての応用に期待
 研究成果
 本研究グループの第一原理計算によると、ホウ化水素シートではホウ素の結合性軌道から反結合性軌道への遷移(a→b)、ならびに水素の反結合性軌道への遷移(a→g)が起こることが示唆された。特に水素の反結合性軌道への遷移は紫外線のエネルギーに相当する。すなわち、光エネルギーでg軌道に電子を遷移できれば水素の結合を弱められ、常温・常圧で紫外線の照射のみで水素が放出されるのではないかとの仮説を立てた。
 これを検証するため、2種類の光源を用いてホウ化水素シートから放出されるガスの分析をおこなった。可視光の照射はホウ素の結合性軌道から反結合性軌道への遷移(a→b)を起こすことができる一方、紫外線照射は水素の反結合性軌道への遷移(a→g)を起こすことができる。この結果、第一原理計算の予想通り、紫外線の照射で水素が生成することが確認できた。また、紫外線を照射したときの水素生成量を定量したところ、ホウ化水素シートの質量の8 %にあたる水素を放出できることがわかった。
 従来の水素吸蔵合金における質量水素密度は、高いものでも2%程度だった。また、シクロメチルヘキサンのような有機ハイドライドも有望な水素キャリアとして知られているが、その質量水素密度は6.2%で、水素放出には300℃以上の加熱が必要だった。今回、宮内教授らが報告するホウ化水素シートは、既往の水素キャリアと比べて極めて大量の水素を、光照射という極めて簡便な操作で放出できることがわかった。
 今後の展開
 現行の車載用燃料電池には高圧水素タンクが搭載されているが、本研究成果により、安全・軽量・簡便なポータブル水素キャリアとしての応用が期待できる。
 ◆用語説明
 〇ボロファン
 ホウ化水素シート。ホウ素と水素の組成比が1:1のナノシート状物質。
 〇水素キャリア
 水素を貯蔵・輸送するための担体。高圧水素ガスボンベ、液化水素、アンモニア、有機ハイドライド、水素吸蔵合金などが知られる。
 〇グラフェン
 炭素原子一層あるいは数層分の厚さからなるシート状物質。
 〇第一原理計算
 実験データや経験パラメーターを使わない基本的な原理に基づく計算。
 〇結合性軌道および反結合性軌道
 分子同士を結合させるために働く軌道、および、分子同士の結合を開裂させるように働く軌道。

 今日の天気は曇り。風が少し強く、少し冷たい。
 数日前から”キンモクセイ”の花が咲いている。花が咲き始めるころ、蕾のころから香る・・とても良い香り。
 花から強い芳香を放つ庭木の代表格は、
  キンモクセイ(金木犀)
  ジンチョウゲ(沈丁花、花期2月末~3月始め)
  クチナシ(梔子、花期6月~7月)で、「花の三香木」と呼ぶ。花と香りが楽しみ。
 ”キンモクセイ(金木犀)”は雌雄異株。日本には雄株のみの渡来(中国が原産)、なので結実しない、稀に雄株もあると言う。名(キンモクセイ:金木犀)の由来は、黄色(金色)の花を付け、樹皮がサイ(犀)の皮膚に似ているからと言う。
 キンモクセイ(金木犀)
 学名:Osmanthus fragrans var. aurantiacus
 モクセイ科モクセイ属
 常緑小高木
 江戸時代初期に渡来(雄株のみ)
 開花時期は9月下旬~10月中旬
 花は淡いオレンジ色、花径は数mm程度
 枝にビッシリと大量に咲く
 散った多量の花びらがオレンジ色の絨毯の様に地面に広がる


有害赤潮ラフィド藻シャットネラの遺伝子配列を解読

2019-10-25 | 科学・技術
 水産研究・教育機構瀬戸内海区水産研究所の紫加田知幸主任研究員らは、自然科学研究機構基礎生物学研究所の内山郁夫助教らと共同で、有害赤潮ラフィド藻シャットネラ・アンティーカからRNAを抽出し、次世代シーケンサーを用いて大量の遺伝子配列を解読することに成功した(10月16日発表)。独自に開発した遺伝子解析プログラムなどを用いて、赤潮の発達・衰退に影響する光合成、光受容、栄養塩の取り込み、活性酸素産生などに関与する遺伝子の配列を明らかにした。得られた情報は、遺伝子の発現量を指標として赤潮藻の生理状態を診断し、赤潮の発達・衰退を予測する技術開発の基礎となる。本成果は、令和元年7月31日に”Frontiers in Microbiology”誌より公表された。
 研究の背景
 西日本の沿岸域を中心に赤潮が頻発しており、養殖業に甚大な被害が発生している。長年、世界中で赤潮藻を直接駆除する方法が検討されてきたが、未だ実用的な技術は開発されていない。赤潮の発生予測に関する研究開発も長年進められてきたが、実用レベルには到達していない。赤潮の発達を予測するには、赤潮藻の増殖や遊泳力を知る必要があるが、これらを常時物理的かく乱のある現場において簡便に計測する技術はいまだ確立されていない。また、赤潮藻の増殖や遊泳力には長期的な環境履歴が大きく影響すると考えられるため、水温や栄養塩濃度などの外部環境だけからこれらを正確に推察することも困難である。このため、赤潮藻の増殖や遊泳力を推定する新しい技術を開発することが課題となっている。
 研究の成果
 瀬戸内海区水産研究所・有害有毒藻類グループは、赤潮藻シャットネラ・アンティーカの遺伝子配列を次世代シーケンサーによって網羅的に解読した。大量のデータを用いることにより、他の赤潮藻を対象として行われた先行研究と比べて、完成度の高いデータを得ることができた。また、これらの遺伝子の中から、シャットネラの赤潮発生に関連する遺伝子の候補を探索した。これまでの研究によりシャットネラの赤潮発生に重要と考えられている生理特性として、窒素やリンが豊富な環境で活発に増殖すること、特定の波長の光を感知して日周鉛直移動を行うことで昼間は表層で光合成を行い、夜間は底層の栄養塩を吸収することができること、活性酸素を大量に産生して他の微生物の増殖を抑制することが知られている。本研究により、窒素やリンの取り込みや代謝、光シグナルの受容、光合成、活性酸素の産生などに関わる遺伝子配列を同定した。
 さらに、それらの遺伝子配列を他の藻類を含む様々な生物と比較することにより、シャットネラ遺伝子固有の特徴を持つかどうかを検討した。その結果、いくつかの興味深い遺伝子を見いだすことができた。その代表的な成果として、シャットネラの魚毒性に関与すると考えられている活性酸素を産生する酵素NADPHオキシダーゼ(NOX)が挙げられる。シャットネラで同定されたNOX遺伝子群は、他の生物における相同遺伝子とは区別されるグループを形成し、酸素分子を還元する膜貫通領域を多数有していた。同様の特徴は、同じく赤潮を形成して魚をへい死させる別系統の藻類(渦鞭毛藻)であるカレニア・ミキモトイのNOXにおいても認められた。
 今後の展望
 今回得られた情報は、遺伝子の発現量を指標として赤潮藻の増殖、遊泳力および魚毒性を推察する技術開発の基礎となる。今後、生理状態の指標となる可能性のある遺伝子について、異なる環境条件下で分裂速度、遊泳の速度や方向および曝露した魚の致死量と同時に発現量を計測することなどにより、検証および絞り込みの作業を進めていく。また、取得データは専用のwebサイトを開設して、バイオインフォマティクスの専門家ではない研究者でも簡単に閲覧・検索できる形式で公開した。これによりたくさんの研究者がシャットネラについて様々な角度・視点で解析を行い、本生物の理解が深化することが期待される。
 ◆用語解説
 〇シャットネラ・アンティーカ
 シャットネラとは、海水中に生息し、赤潮の原因となる植物性プランクトンのこと。海産ミドリムシや、ホルネリアとも言われていた。光合成によって海の栄養素を吸収し、通常1日1回分裂して増殖している。
 条件がそろって大量発生することで赤潮を引き起こし、高密度のシャットネラが鰓に影響を与えた結果、呼吸機能が低下して窒息死させる。ブリやシマアジ、ハマチなどの生息を脅かし、例年6月~9月ごろに魚類養殖業に度々大きな被害を与えている。水温が20℃以上になると活発に活動し、八代海や有明海、播磨灘などでシャットネラによる赤潮が発生。漁業被害は数十億円にのぼることもある。
 現在の赤潮発生予測は、海水中のシャットネラの増減で判断し、一定水準を超えると警報を発令しているが、最近発見された、シャットネラが発芽する前段階である種細胞(シスト)の海底分布状況の監視を続ければ、赤潮が発生しそうな海域を特定できる可能性があると期待している。事前に養殖業者などに早期出荷を呼び掛ければ漁業被害を軽減できる可能性もある。
 〇次世代シーケンサー
 ランダムに切断された大量のDNA断片の塩基配列を同時並行的に決定することができる機器。
 本研究ではシャットネラから抽出したRNAをcDNAに変換後、基礎生物学研究所の次世代シーケンサーIllumina Hi-seq 2000を用いて解読した。
 〇活性酸素
 酸素分子がより反応性の高い化合物に変化したものの総称。スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素、一重項酸素などが含まれます。シャットネラは活性酸素を大量に産生する能力を持っており、魚毒性にも関与すると考えられている。
 〇NADPHオキシダーゼ
 細胞膜や食胞膜上に存在し、酸素分子を還元して活性酸素の一種であるスーパーオキシドを産生する酵素。

 今日の天気は曇り。こちらはまだ雨が降っていない・・夕方から強い雨の予想。
 梅田川沿いの堤防が散歩道。川岸の堤防・道路に”セイタカアワダチソウ”が密集し、花が咲き始めている。昨年に見た場所から少し移動したようだ。良く繁茂している。
 ”セイタカアワダチソウ”は明治末期に渡来した北アメリカ原産の帰化植物である。多年草で種子や地下茎で増える。地下茎から種子発芽を抑制するアレロパシー物質を分泌するので、純群落を形成して繁茂する。この物質は他種も、自らの種も、発芽も抑制するので、他種植物の侵入も、自己の連作も、困難となる。
 急速に広がったのは第二次世界大戦後で、養蜂業者の蜜源植物として種子の散布説がある・・どこからでたのか不明。花粉症の元凶かと言われた時期があったが、その後関係は薄いと嫌疑は晴れたが悪いイメージは残っている。
 セイタカアワダチソウ(背高泡立草)
 学名:Solidago altissima
 キク科アキノキリンソウ属
 多年草、種子や地下茎で増える
 北アメリカ原産、明治末期に渡来した帰化植物
 河原・埋立地などの荒れ地で見る
 丈は1.0m~2.5m
 開花時期は10月~11月
 花は茎上部に多数集まって付く、花径は数mmと小さい



温度に応じて太陽光の透過光量を自律制御できる液晶複合材

2019-10-23 | 科学・技術
 産業技術総合研究所構造材料研究部門光熱制御材料グループ山田保誠研究グループ長、垣内田洋主任研究員は、神戸市立工業高等専門学校、大阪有機化学工業株式会社と共同で、液晶と高分子の複合材料を開発した。これは、二枚のガラス基板の間隙に混合原料を満たし硬化させて作製することができ、構造が単純で作製が容易であるため、調光ガラスなどに応用可能である。この複合材料は、温度変化によって透明度が切り換わり(低温で透明、高温で白濁)、同時に光の前方散乱強度が変化する性質がある。これにより、近赤外領域を含む光の全透過量を可逆的に20%以上変えることができる。
 ポイント
 〇温度変化による相転移を利用して透明と白濁を切り換えられる液晶複合材料を開発
 〇新規の液晶複合構造の開発により、前方への透過光量の制御に成功
 〇建物や移動体の窓に貼り付けることで、暖冷房負荷低減に貢献
 近年、省エネが求められる中、住宅やオフィスビルなどの建物の暖冷房負荷の低減にも注目が集まっている。とくに、温暖地での暖冷房負荷の低減には窓から入る太陽光透過量の制御が有効である。調光ガラスは、外部からの刺激で太陽光透過を制御するガラスである。
 液晶を用いた調光ガラスは、電気で制御するタイプが既に上市され、フィルム化もされている。また、温度によって自発的に透明と白濁が切り換わる、熱応答型の液晶複合材料も報告されている。しかし、透明と白濁の切り換え特性を活用して、光の全透過率を制御するという試みは、これまで成功していなかった。単に白濁状態のみを実現するには、入射光を透過側に散乱(前方散乱)させるだけでよく、そのような材料は比較的容易に作製できる。しかし、これだけでは全透過率は下がらないので、プライバシーガラスとしては使えるが、省エネ用途には適さない。省エネ用途では、白濁時に全透過率を下げる必要があるが、それには光を入射方向とは反対の方向に散乱(後方散乱)させる、内部構造を有する材料を作らなければならない。しかし、温度によって後方散乱が変化する熱応答型の液晶複合材料の開発は格段に難しかった。
 研究の内容
 高分子ネットワーク液晶(PNLC)と呼ばれる液晶と高分子からなる複合材料を、二枚のガラス基板ではさんだ構造の調光ガラスを開発した。この調光ガラスは、液晶、モノマー(高分子の原料)、重合開始剤の混合原料を二枚のガラス基板の間隙に満たし、紫外光を照射して重合させて作製される。今回開発したPNLCは、高分子の網目の中に液晶が満たされている構造で、生活温度付近で、温度によって透明と白濁が切り換わり、同時に全透過率が大きく変化する。低温では、液晶分子が配向し、液晶相と高分子相の屈折率が一致するので、PNLCは光学的に均一となり透明になる。一方、高温になると、液晶分子の配向が乱れて屈折率が変化し、光学的に不均一になるため、光散乱が生じて白濁する。この時、光の散乱方向を入射側に向けることができれば、その分だけ全透過率を下げられる。
 今回、光重合で形成されるPNLCの微細な構造を詳しく調べて、白濁状態では後方散乱が生じて、透明と白濁の切り換えによって、全透過率が大きく変化するPNLCの構造を見出した。全透過率は、試料前方に散乱した全ての光を検出した際の透過率で、今回開発したPNLCは20%以上の変化幅を示した。この変化幅は、既に実用化されている液系の調光ガラスと比べても引けを取らない。全透過率は、窓を想定した場合、窓への太陽光の全照射量に対する室内入射量の相対値に相当し、透明時と白濁時での全透過率の差が省エネの指標となる。また、透明状態での直進透過率は、従来の熱応答型の液晶複合材料並みの70%を上回る値を達成した。直進透過率は、入射光と同じ直進方向(ここでは拡がり角10度の範囲)の光強度をもとに算出した透過率で、透明さ(白濁の少なさ)の指標となる。本PNLCの直進透過率は、太陽光を受けた際の窓ガラスの昇温速度に十分追従して変化できる。例えば、今回のガラス基板で挟んだ材料の温度を30℃から50℃に上げると、直進透過率は30秒以内に80%以上から10%以下に下がる。
 従来の液晶を用いた調光ガラスは、白濁現象を利用したプライバシーガラスとしての用途が主だったが、今回開発した全透過光量も制御可能な熱応答型のPNLCは、暖冷房負荷低減に有効な生活温度(今回の試料では35℃)付近で調光が可能であるため、ガラスへ組み込めば省エネ窓ガラスとして期待できる。また、作製工程や動作原理が単純であるため、製造・施工・運用の面でも有利である。さらに、固相の薄膜として扱うことができるため、既築の建物などに後貼り施工できるプラスチックフィルム基板への展開も可能であり、調光フィルムへの応用など、一層の普及が期待される。
 今後の予定
 実用化に向けて、全透過率の変化幅の拡大と耐久性の向上に取り組む。また、今回実現したガラス基板を用いた調光ガラスは、新築建物などの窓ガラス施工が想定されるが、今後は、窓ガラスへの後貼り施工ができるプラスチックフィルム基板を用いた調光フィルムの作製技術開発に取り組む。
 用語の説明
 ◆調光ガラス(フィルム)
 電気や光、熱などの外部刺激によって光の透過量や反射量を制御できる層を有するガラス(プラスチックフィルム)。
 ◆前方散乱、後方散乱、全透過率、直進透過率
 光を吸収しない対象物が散乱を生じ白濁している場合、対象物に入射した光は、四つの形態で伝播していく。まず、対象物をそのまま通過する直進透過光と前方に散乱して通過する前方散乱光、そして、反射して後方に戻る直進反射光と後方に散乱する後方散乱光である。これら四つの伝播光の強度の比率は、入射光強度に対する光強度として表され、それぞれ直進透過率(Td)、拡散透過率(Ts)、直進反射率(Rd)、拡散反射率(Rs)と呼ばれる。全透過率(Ttotal)は、直進透過率と拡散透過率の和となる。なお、拡散反射率は白濁度(ヘイズ)と呼ばれ、透明度の低さの指標となる。
全透過率については、省エネ窓ガラスを想定する場合、太陽光強度が分布する(図3(a)の灰色のスペクトルで表現)波長域で考える必要がある。直進透過率は、本研究では、図3(b)中に示すように、拡がり角10度の範囲の光強度を検出した際の透過率とした。
 ◆生活温度
 慣用的に認められた用語でないが、ここでは、日常生活で経験しうる温度として定義。気温だけでなく、窓や外皮などの表面温度も含める。
 ◆高分子ネットワーク液晶 (PNLC)
 液晶と高分子の二相からなる微細構造を持つ複合材料。電気制御型の研究開発が多くなされ、窓だけでなく、表示機器や情報処理素子への応用が見込まれている。

 昨日(10月22日)は、「即位礼正殿の儀」が行われた。
  おめでとうございます

 今日も晴れた。気温が段々と低くなり、散歩には上着が必要となる。
 塀に”ワイヤープランツ”が植えられている。細い茎は赤茶色で光沢があり細かく枝分かれ、タマゴ型の葉っぱは1cmほどで、濃緑色で光沢がある。茂ると緑のカーテンの様で綺麗だ。塀だけでなく、観葉植物として鉢植えや寄せ植えで楽しめる。
 所々で花が咲いる。花は小さく透明感のある緑色。開花時期は春~秋と長いけど、余り目立たない。実はまだ見えない。
 名(ワイヤープランツ)の由来は、赤茶色の細い茎が針金のように見えるから。
 ワイヤープランツ
 別名:ミューレンベッキア
 学名:Muehlenbeckia axillaris
 タデ科ミューレンベッキア属
 匍匐性常緑低木
 原産地はニュージーランド
 開花時期は4月~11月
 花は5弁花(5裂花)、ベルの様な実が成る



複数の原子からなる高次の物質の周期律を発見、新たな周期表の誕生

2019-10-21 | 科学・技術
 東京工業大学科学技術創成研究院の塚本孝政助教、春田直毅特任助教(現京都大学福井謙一記念研究センター特定助教)、山元公寿教授、葛目陽義准教授、神戸徹也助教らの研究グループは、コンピューターシミュレーションを用いた理論化学的手法に基づき、分子などの微小な物質(ナノ物質)が持つエネルギー状態を記述する「対称適合軌道モデル」を開発した。このモデルは、ナノ物質が持つ様々な幾何学的対称性に着目することで、それらの形状や性質などを正確に予測する。さらに、この理論モデルにより、複数の原子からなる高次の物質の間にも元素のような周期律が存在することを発見し、この周期律を元素周期表と類似の「ナノ物質の周期表」として表すことに初めて成功した。本成果は、2019年8月19日発行の英科学雑誌「Nature Publishing Group」の「Nature Communications」オンライン版に掲載。
 要点
 〇分子などの形状と性質を予測する新たな理論モデルを開発
 〇複数の原子からなる高次の物質の間に新たな周期律を発見
 〇まだ確認されていないナノ物質の存在を予見
 現在までに、118種類もの元素が発見され、元素周期表に加えられている。この周期律の起源は、原子の電子配置にあることが明らかになっている。
 従来の周期表では、単一の原子の性質が扱われているが、複数の原子からなる高次の物質でもこのような周期律が発見されれば、物質科学の世界において非常に有用な指標となる。しかし、このような原子より大きなスケールの物質では、その性質を支配する原理や法則は見出されていなかった。原子とは異なり、大きさ・組成・形などの様々な要素を持っており、単純には分類できないためである。
 研究成果
 研究グループは、微小な物質(ナノ物質)が持つ幾何学的対称性(形)に着目し、コンピューターシミュレーションと群論を応用することで、様々なナノ物質のエネルギー状態(電子軌道)を正確に予測する「対称適合軌道モデル」を開発した。このモデルに基づき、ナノ物質を評価することで、形状・性質・安定性などの系統的な予測が可能となった。
 この取り組みの中で、ナノ物質の持つ複数の電子軌道が幾何学的対称性ごとにある一定の法則に従うこと、つまり周期律があることも明らかになった。原子の場合と同様に、ナノ物質の性質も電子配置(すなわち電子軌道の埋まり方)によって決まる。今回発見された新たな周期律を、ナノ物質が持つ要素(原子数・電子数・元素種など)ごとにまとめることで、元素周期表に類似した「ナノ物質の周期表」として表すことに初めて成功した。この「ナノ物質の周期表」は、従来の元素周期表に現れる「族」「周期」に加え、「類」「種」という新たな軸を持つ多次元の周期表で、既に知られている実在の化学物質や天然物に加えて、未発見のナノ物質も含まれている。こうした高次の周期表は、ここに示すものだけでなく、ナノ物質の持つ幾何学対称性ごとに異なるものが存在する。
 ナノ物質を構成する原子の個数や元素の種類、元素の比率には、無限大の組み合わせが存在する。今回見つかった「ナノ物質の周期表」を指針とすることで、その無限大の組み合わせの中から、今まで検討されてこなかった未知の物質や新たな機能材料の発見が期待できる。
 ◆用語説明
 〇理論化学的手法
 数学や物理学、コンピューターシミュレーションなどを駆使することで、実験室で実験を行うことなく、物質の性質を明らかにする方法論のこと。実験で得られるデータを精緻に解釈したり、新たな化学現象を予測したりするのに用いられる。
 〇エネルギー状態
 原子や分子などの物質は、正電荷を持つ原子核と負電荷を持つ電子の集まりで構成される。各電子は、原子核の周りに広がる軌道に収まる。軌道には様々な形があり、それぞれが異なるエネルギーを持つ。このように軌道は、電子がとりうる各エネルギー状態という意味を持つ。2個の電子までが同じ軌道に入ることができる。
 〇対称適合軌道モデル
 ナノ物質が持つ幾何学的対称性に着目し、群論を応用することで構築された理論モデル。ナノ物質のエネルギー状態を予測し、また特定の形や性質を持ったナノ物質の設計を行うこともできる。
 〇幾何学的対称性
 物質が持つ対称性は、左右対称といった幾何学的な性質で測られることから、幾何学的対称性と呼ばれる。正四面体・正八面体・正二十面体などの形をした物質は、特に幾何学的対称性が高い。最も高い幾何学的対称性は球対称(球)であり、物質を構成する最小単位である原子は球対称である。一方で、分子などのナノ物質は複数の原子から構成されるため、球対称よりも低い幾何学的対称性しか持つことはできない。
 〇元素周期表
 元素の物理的・化学的性質は、原子番号に従ってある一定の周期で変化することが知られている。これを基に、「族」と「周期」という二つの軸を持たせて、元素を分類・配置したものを元素周期表という。1869年にロシアの化学者メンデレーエフにより提唱された。
 2019年は、元素周期表の発見からちょうど150周年であり、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)により「国際周期表年(IYPT2019)」として宣言されている。
 〇ナノ物質の周期表
 「対称適合軌道モデル」から見出される、大きさ・組成・形に関する周期律に基づいて、ナノ物質を分類・配置した表。「族」「周期」「類」「種」という複数の軸を持つ、多次元の周期表である。従来の周期表と同様に「族」「周期」はナノ物質の電子配置を識別し、加えて「類」はナノ物質の構成原子数、「種」は構成元素種を識別する。ナノ物質の幾何学的対称性(形)ごとに異なる周期表が存在する。
 〇電子配置
 元素固有の性質は、原子が持つ軌道にどのように電子が入るかによって決まる。これを電子配置と呼び、元素の性質に周期性が現れる要因ともなっている。一方で、ナノ物質の性質も電子配置によって決まるが、物質によって電子軌道の持つエネルギーが大きく異なるため、その性質に周期性は現れない。
 〇群論
 代数学の概念の一つである「群」を取り扱う学問。「群」とは、ある条件を満たす数学的集合のことで、フランスの数学者ガロアにより着想された。群論は数学の世界にとどまらず、物理学や化学をはじめとする幅広い分野で応用されている。
 本研究では、ナノ物質の持つ幾何学的対称性と電子軌道との関係について、群論を用いて考察することで、ナノ物質の新たな分類に成功した。

 天気は晴れ。散歩では朝晩の寒さが見に染む・・大げさなかな・・最高気温19℃・最低気温10℃。
 散歩で見つけた、季節外れに成りかけの花。散歩道沿いの畑の隅で、”ムラサキツユクサ”が咲いている。蕾が沢山見え、これから蕾が順次咲く、花は一日花である。
 ムラサキツユクサ(紫露草)
 ツユクサ科トラデスカンチア属(ムラサキツユクサ属)
 多年草
 原産地は北アメリカ、日本には明治時代に渡来
 開花時期は6月~10月
 花は径3cm位の3弁花、花弁は丸い
 花の中央の雄蕊(おしべ)が目立つ
 花色は紫が基本で、赤紫・白色などがある


死んだふり(死にまね)を制御する遺伝子群を発見

2019-10-19 | 科学・技術
 岡山大学の宮竹貴久教授らの研究グループは、東京農業大学生物資源ゲノム解析センターの矢嶋俊介教授、玉川大学農学部の佐々木謙教授との共同で、「死にまねの長さ」を制御する遺伝子群を探索し、チロシン代謝系のドーパミン関連遺伝子が関与することを世界で初めて明らかにした。本研究成果は、日本時間9月30日午後6時に英国のオンライン科学雑誌「Scientific Reports」(Nature Publishing Group)に掲載された。
 死にまね(死んだふり)は哺乳類、魚類、鳥類、両生類、爬虫類、甲殻類、ダニ類、昆虫と動物に広く普遍的にみられる行動で、天敵による捕食を回避するために動物が進化させた防衛戦略である。ファーブルが「昆虫記」のなかで、死にまねは生物が陥る一種の仮死状態であり、適応的な意味はあるのかと疑問を投げかけている。研究グループは、2004年に死にまねが適応的であることを発表して以来、死にまねの研究で世界をリードしている。
 研究グループは、米・小麦類の世界的重要害虫であるコクヌストモドキにおいて、少しでも刺激を与えると死んだふりを長くしつづける系統と、どんなに刺激を与えても死にまねをしない系統を20世代以上育種した。これら育種系統間で次世代シークエンサーを用いた解析(トランスクリプトーム解析)を行った。その結果、系統間では518の発現の異なる遺伝子の存在が判明。系統間では脳内で発現するドーパミンの量が異なり、ドーパミンを体内に摂取あるいは、注射すると死にまね時間が短くなった。さらに、系統間ではチロシン代謝系に関与するドーパミン関連遺伝子の発現が著しく異なることを明らかにした。
 今回の研究により、脳内で発現するドーパミンに左右される、死にまねをする・しないという行動の差がゲノムレベルでも解明された。この発見は人の挙動に関する疾患についても重要な示唆を与えるとしている。

 雨が深夜から降り続いている。午前は少し強く、午後からは小雨となる。気温は低く、最高気温は18℃、最低気温は16℃。
 雨が降る前の散歩。近所の”ザクロ”の木に実が付いてる。木の葉はまだ沢山残っており、実も幾つか付いている。
 ”ザクロ”は花より果実が有名である。球状の果実は花托の発達したもので、熟すと赤く硬い外皮が不規則に裂け、赤く透明な多汁性の果肉(仮種皮)の粒が現れる。ザクロの実が割れる様が語源と思われる、「ザックリ」があるとか。
 名(ザクロ)の由来は良く分かっていない。二千年前、ペルシャ北部の安石国から中国に伝わり、果実が瘤の様だったので、安石榴・石榴(ジャクリュウ)と呼ばれた。これが”ザクロ”の名の由来説がある。
 ザクロ(石榴、柘榴、若榴)
 学名:Punica granatum
 ザクロ科ザクロ属
 落葉小高木、およびその果実
 雌雄同株。雄花と両性花がある。
 原産地は西南アジア、日本には平安時代(10~11世紀頃)渡来。
 多くの品種・変種がある。
  一般的な赤身ザクロの他、白い水晶ザクロ・果肉が黒いザクロなどがある
 開花時期は6月~7月
 花は5cm位の筒状をした6弁花、花色は鮮紅色。
 果実は花托の発達したもので、球状となり、秋に熟すと赤く硬い外皮が不規則に裂け、赤く透明な多汁性の果肉(仮種皮)の粒が沢山見える。果肉一粒の中心に種子がある。
  多くの男性の中にいる一人の女性を指す「紅一点」の語源は、
  中国の詩人・王安石(11世紀)の「万緑叢中紅一点」で、青葉の紅いザクロ花の咲く様子、を詠んだ


低電圧駆動で超高輝度のペロブスカイトLED(PeLED)を開発

2019-10-18 | 科学・技術
 東京工業大学 元素戦略研究センターの沈基亨大学院生、金正煥助教、細野秀雄栄誉教授らは、近年、新たな発光材料として注目を集めているペロブスカイト型ハロゲン化物を用い、低電圧駆動で超高輝度のペロブスカイトLED(PeLED)の開発に成功した。電極からのキャリアの注入と発光層内での移動の両方を促進するという新たなアプローチでLEDの高性能化を達成した。研究成果は、7月30日(現地時間)に米国応用物理学会「Applied Physics Reviews」に掲載された。
 要点
  高性能ペロブスカイトLED実現に向けた新概念を提案
  新アモルファス酸化物半導体で、励起子をペロブスカイト層内に閉じ込める
  5Vで500,000 cd/m2の緑色発光素子を実現
 開発したアモルファスZn-Si-Oは、CsPbX3の伝導帯下端よりも浅い位置に伝導帯下端を持つことで励起子の閉じ込めが可能で、しかも高い電子移動度により効率的な電子注入が期待できる。この指針により作製されたCsPbBr3の緑色発光素子は2.9 Vで10,000 cd/m2、5 Vで500,000 cd/m2に及ぶ低電圧超高輝度を実現した(電力効率は33 lm/W)。さらに赤色発光素子では20,000 cd/m2の世界最高輝度が得られた。この成果はPeLEDの実用化に向けた新たな方向性を提案するものである。
 CsPbX3は発光中心となる励起子の束縛エネルギーが小さいので、非発光型遷移が起こりやすく、低い発光効率の原因と考えられていた。そのため量子閉じ込め効果を持つ低次元の発光材料が専ら研究されてきた。しかし、低次元材料は電子や正孔が動きにくく、電流注入での発光効率が高くなりにくいという問題が生じる。今回の研究ではCsPbX3を発光層とし、これに適した電子輸送層を用いることで、電極からのキャリア注入と発光層内での移動の両方を促進する新たなアプローチでLEDの高性能化を狙った。
 ◆用語説明
 〇ペロブスカイトLED(PeLED)
 ペロブスカイト構造を持つCsPbX3発光材料からなるEL素子のこと。
 〇CsPbX3(X=Cl、Br、I)
 通常のぺロブスカイト構造をとる物質で、太陽電池材料としてよく研究されている。
 〇cd/m2
 カンデラ毎平方メートル、国際単位系(SI)における輝度の単位。
 〇lm/W
 ルーメン・パー・ワット。全光束を消費電力で割った数値。1ワットあたり、どれだけの光束を発生させることができるかを示す特性値。
 〇非発光型遷移(消光)
 子と正孔が再結合すると発光するが、欠陥や不純物があると、再結合のエネルギーが発光以外のエネルギーとなり発光に至らない。
 〇量子閉じ込め効果を持つ低次元の発光材料
 電子、正孔、あるいは正孔と電子が対になった励起子が0、1あるいは2次元のポテンシャルのなかに閉じ込めることができる発光材料。電子と正孔の再結合によって発光が生じるので、高い発光効率が得られる。
 〇蛍光量子効率(PLQY)
 外部から光をあてることで発光する効率で、発光する光子の数/あてる光子の数。
 〇励起子束縛エネルギー
 励起子は電子と正孔が対をつくった状態(励起子)から電子と正孔に解離させるのに必要なエネルギー。
 〇電子親和力
 真空準位から測った伝導帯下端(最低非占有分子軌道)までのエネルギー差。
 〇エネルギー準位
 電子の軌道が持つエネルギー。
 〇0次元的電子構造
 電子の存在する場所が原子の大きさと同じくらい狭い領域になっており、「点」と見做すことができるような構造のこと。
 〇Cs3Cu2I5
 発光するサイトであるCu-Iが0次元的に閉じ込められている結晶。青色発光し、90 %という高い蛍光量子効率を示す。
 〇エネルギーアライメント
 真空準位を基準に伝導帯の底と価電子帯の頂上のエネルギーを様々な物質で並べたもの。異なる物質を接触したときに電子や正孔がどちらに移動するかが判断できる。
 ◆ペロブスカイト構造
 ペロブスカイト構造は、結晶構造の一種である。ペロブスカイト(perovskite、灰チタン石)と同じ結晶構造をペロブスカイト構造と呼ぶ。例えば、BaTiO3(チタン酸バリウム)のように、RMO3 という3元系から成る遷移金属酸化物などが、この結晶構造をとる。
 理想的には、立方晶系の単位格子をもち、立方晶の各頂点に金属Rが、体心に金属Mが、そして金属Mを中心として、酸素Oは立方晶の各面心に配置している。酸素と金属Mから成る MO6 八面体の向きは、金属Rとの相互作用により容易に歪み、これにより、より対称性の低い斜方晶や正方晶に相転移する。
 これにより、この結晶の物性が劇的に変化する。例えば、対称性の低下により、モット転移を起こし、金属Mのサイトに局在していた価電子がバンドとして広がることができるようになったり、金属Mのサイト同士のスピン間の相互作用による反強磁性秩序が崩れ、常磁性に転移したりする。この歪みによる相転移は、温度の上昇による金属Rのイオン半径の増加や、金属Rサイトに不純物原子を導入することなどでコントロールすることができる。
 マントル内部のペロブスカイト
 数十GPaを超える超高圧の環境では、ペロブスカイト構造は非常に一般的な構造である。この構造には、原子を稠密に詰め込むことができるためである。地球内部における主要な化学組成である MgSiO3 は、地下約660kmから約2,700kmのマントル下部において、ペロブスカイト構造をとっていると考えられる。この MgSiO3 を、125GPa、2,500Kという超高圧高温環境下におくと、ポストペロブスカイト構造と呼ばれる、より原子が稠密に詰め込まれた相に転移することが明らかにされた。地下約2,700kmより深いマントル最下層では、MgSiO3 はポストペロブスカイト構造をとっていると考えられる。

 今日の天気は曇り、時々晴れ。夕方から夜に雨の予想。この雨が大災害の雨となりません様に。
 散歩道沿いのお庭で”ハマギク”が咲いている。花はマーガレットに似た白花である。茎は木質化して越冬し、春先に新しい茎を伸ばし、秋にやや大柄な白い花を咲かせる。葉はやや肉厚でへら型、表面には光沢がある。
 ”ハマギク”は、1属1種の日本特産種であり、学名は、”Nipponanthemum nipponicum ”、英名は「Nippon daisy」である。自生地は、青森県から茨城県にかけての太平洋側の海岸と言われる。花壇綱目(江戸時代初期の園芸書)に、”ハマギク(浜菊)”の名があり、その頃から栽培されていたと思われる。
 ハマギク(浜菊)
 別名:吹上菊(ふきあげぎく)
 学名:Nipponanthemum nipponicum
 英名:Nippon daisy
 キク科ハマギク属
 耐寒性多年草 、茎・枝は木質化する
 葉は肉厚で艶があり、縁に波状の鋸歯がある
 丈は30cm~90cm
 開花時期は9月~11月
 花はやや大きめ(径6cm位)で、日本的な清楚な白い花
 ◆花壇綱目
 江戸時代の園芸家水野元勝の著書。3巻、1664年脱稿、1681年刊、1716年に再版。
 日本最初の園芸書。花卉(かき)200余種についてその形状や栽培法を記述したもの。



広い温度範囲での形状記憶効果を示すハイエントロピー合金を開発

2019-10-17 | 科学・技術
 物質・材料研究機構(NIMS)はソウル国立大学と共同で、形状記憶効果を示すハイエントロピー合金を開発した。従来の合金よりも広い温度範囲で形状記憶効果が得られ、チタン・ニッケル合金よりも高温での形状記憶効果が示された事で、今後、高温用アクチュエータなどへの応用が期待される。本研究成果は、「Scientific Report」誌の2019年9月11日オンラインe版に掲載された。
 研究内容と成果
 Jein Lee ICYS 研究員らは最も良く知られたfcc系ハイエントロピー合金であるCrMnFeCoNi合金(通称カンター合金)に着目し、その周辺で組成を変化させた時のfcc相とhcp相のギブス自由エネルギーをCalphad法により計算し、その結果NiをCoで置換する事でfcc相とhcp相のエネルギー差が非常に小さくなること、また約1000K以上で広いfcc相安定組成域が存在する事を見いだした。
 この計算結果に基づいてCr20Mn20Fe20Co40-xNix (x = 0~40)という一連の合金を作製し、特性を調べた結果、特にx=0, 5 の合金が可逆的なfcc-hcpマルテンサイト変態を示す事、さらに室温で変形後、加熱する事で元の形状が回復する形状記憶効果を示す事を見いだした。
 形状記憶合金としてはすでにNiTi合金、Fe-Mn-Si合金などが知られており、これらの既存の合金は形状回復温度の範囲が限られているが、今回見いだされたハイエントロピー合金では広い組成域でfcc固溶体が得られるため、形状回復温度を低温から高温まで幅広く変えられる可能性がある。またCr30Mn10Fe20Co40合金ではNiTi合金では373Kが上限である形状回復温度を700Kまで向上する事ができた。NiTi合金について高温で形状記憶効果を得るにはPd などの貴金属やHfなどの希土類元素の添加が必要であったが、開発合金は比較的安価な遷移金属元素のみからなっており、材料コスト的にも有利と考えられる。
 今後の展開
 今後はさらに詳細な研究、特に熱処理や微細組織制御により形状記憶特性や繰り返し特性の向上に向けた研究開発を進める必要がある。
 ◆ハイエントロピー合金
 ハイエントロピー合金とは5種類以上の元素を等モル比で混合して得られる固溶体合金、)およびその周辺組成の合金の総称である。この様な組成の合金では自由エネルギーの配置のエントロピーが大きくなるため、規則合金に比べて固溶体が安定になる事が予想される。
 これまでの合金探索は1種類の元素を主要元素とし、それに少量の異種元素を添加した合金が殆どであった。ハイエントロピー合金では多元系かつ高濃度の合金組成を持つ合金であり、これまでに開拓されてこなかった組成範囲を探索するもので、これまでに無い優れた特性や新たな機能の材料の発見が期待されている。
 ◆用語解説
 〇固溶体合金
 結晶内で複数の成分の原子が均一かつ無秩序に分布している単相の固体。
 〇規則合金
 結晶内で異なる成分原子が規則正しく配列している合金。
 〇マルテンサイト変態:
 合金において結晶格子中の各原子が拡散を伴わずに連携的に移動することにより新しい結晶構造となる相変態。
 ◆形状記憶合金(英:Shape memory alloy;SMA)
 形状記憶合金は、ある温度(変態点)以下で変形しても、その温度以上に加熱すると、元の形状に回復する性質を持った合金で、この性質を形状記憶効果(SME)という。
 このような合金の性質が確認されたのは1951年のことで、1970年代頃から利用が研究され始めた。しかし実用化が始まったのは1980年代に入ってからのことで、以後機械工学分野から医療分野にまで応用されている。
 温度で制御可能な形状記憶合金の他に、磁性による制御が可能な強磁性形状記憶合金もある。

 雲多いが晴れ。気温は、最高気温は21℃、最低気温は8℃、朝昼晩の温度が大きい。
 散歩で、”イヌサフラン”の花を見つけた。花は彼岸花の様に葉を付けずに地面から出現し、茎先に花のみが付いている。この花姿から”裸の貴婦人”とも呼ばれる。花の咲く時期は、春咲き・秋咲き・冬咲きがあり、日本では主に秋咲きが普及している。
 球根・種に毒(コルヒチン)があり、その毒(コルヒチン)は痛風発作予防薬として使われる薬である。新聞記事で、高齢女性が自宅で栽培していた”イヌサフラン”を生で食べて食中毒で死亡した、とあった。
 厚生労働省の植物性自然毒 高等植物の説明では、
 イヌサフラン(別名:コルチカム)
  分類:ユリ目 Liliales、ユリ科 Liliaceae、イヌサフラン属 Colchicum
  (APG 分類体系ではユリ目、イヌサフラン科、イヌサフラン属 )
  学名:Colchicum autumnale L.
  英名:autumn crocus
  生育地:ヨーロッパ中南部~北アフリカ原産の球根植物
   日本には明治時代に渡来し、園芸植物として広く植えられる
  形態:多年生の球根植物
    球根は径3~5cmの卵形で、9月~10月に花茎を 15cm ほど伸ばし、
    アヤメ科のサフラン Crocus sativus L. に似た花をつける。
    室内に放置した球根からも開花する。翌春に 20 ~ 30cm ほどの葉を根生する。
    耐寒性が強く、何年も植えたままで開花する。
  毒性:全草に毒性あり
  毒性成分:アルカロイドのコルヒチン( colchicine )
    種子には 0.2%~0.6%、鱗茎には0.08%~0.2%含まれる
  鎮痛薬として使用されるが、嘔吐・下痢などの副作用を示す 。
  中毒症状:嘔吐、下痢、皮膚の知覚減退、呼吸困難、重症の場合は死亡することもある。
    ヒトの最小致死量は体重50 kgの場合、コルヒチンとして4.3mg程度。
 イヌサフラン
 別名:コルチカム
 学名:Colchicum autumnale
 ユリ科(イヌサフラン科)コルチカム属
 球根草(自然分球で殖える)
 原産地はヨーロッパ、北アフリカ
 開花時期は9月~10月
  (秋咲き)
 花色は淡い藤色・濃い藤色・白色など
 花姿は春に咲くクロッカス(アヤメ科)に似ている


サリドマイドが手足や耳に奇形を引き起こすメカニズムを解明

2019-10-14 | 科学・技術
 東京医科大学ナノ粒子先端医学応用講座(現・ケミカルバイオロジー講座)の半田宏特任教授(東京工業大学 名誉教授)および伊藤拓水准教授、東京工業大学 生命理工学院の山口雄輝教授、イタリアミラノ大学のルイーサ・ゲリーニ(Luisa Guerrini)博士らの国際共同研究グループは、サリドマイドの深刻な奇形がp63というタンパク質の分解によって引き起こされることを明らかにした(10月8日発表)。
 要点
 〇サリドマイドは胎児に催奇形性を示す薬剤ですが、サリドマイドはp63というタンパク質の分解を誘導することで手足や耳の発生を阻害していることがゼブラフィッシュのモデル実験系により明らかとなりました。
 〇サリドマイドは本研究グループが以前に同定したサリドマイド標的タンパク質、セレブロンに結合し、セレブロンの働きを乗っ取ることで、p63の分解を誘導します。
 〇本成果により、サリドマイド催奇形性の詳細なメカニズムが判明しました。本研究の知見を活かして、サリドマイドの副作用を軽減した新薬が開発されることが期待されます。
 本研究で得られた結果・知見
 イタリア・ミラノ大学のルイーサ・ゲリーニ博士は長年にわたって手足や耳の発達を担うp63タンパク質の研究を行ってきた。東京医科大学と東京工業大学の研究グループとゲリーニ博士はp63とサリドマイド催奇形性の関係を検証するために国際共同研究を開始した。
 ヒト培養細胞を用いた研究により、サリドマイドによってp63の分解が誘導されることや、この分解にはセレブロンによるp63のユビキチン化が関わっていることなどを明らかにした。次に、p63が実際にサリドマイドの催奇形性に関与するかどうかについて、ゼブラフィッシュを用いた解析を行った。p63には大小2つのタイプ(TAp63とΔNp63)が存在するが、サリドマイドに耐性を与える点変異をもった変異体タンパク質をゼブラフィッシュに強制発現させたところ、TAp63変異体の発現はサリドマイド処理による耳の奇形を抑制し、ΔNp63変異体の発現はサリドマイド処理による胸びれ(手足に相当)の奇形を抑制するという結果が得られた。
 過去の研究結果から、TAp63は聴覚の形成に関わることが知られていたが、本研究によりサリドマイドはTAp63の下流にある聴覚形成関連因子Atoh1の発現を抑制することが分かった。一方、ΔNp63は手足・胸びれの形成に必須な増殖因子、Fgf8の発現を制御しているが、本研究によりサリドマイドはΔNp63の下流にあるFgf8の発現も抑制することが分かった。以上の結果から、手足や耳の奇形は、サリドマイドと結合したセレブロンがTAp63とΔNp63の分解を誘導することにより引き起こされるという結論が得られた。
 今後の研究展開および波及効果
 本研究はサリドマイドの催奇形性に関わるセレブロンのネオ基質がp63であることを明らかにしたものであり、サリドマイド催奇形性に関する長年の謎の解明を一層推し進めるものである。近年、サリドマイド骨格をもつ医薬品の研究開発が精力的に進められており、例えば米国セルジーン社が開発した抗がん剤レブラミドとポマリストは合わせて年間1兆円の世界売上をあげている。しかしこれまでは副作用に関与するネオ基質が不明だったため、催奇形性のない薬剤の開発は困難であった。本研究の成果により、p63の分解を誘導しない安全なサリドマイド系新薬の開発が今後期待される。
 ◆用語説明
 ユビキチンリガーゼ
 ヒトが誕生し成長し死を迎えるように、タンパク質にも合成から分解に至るまでの一生がある。生命活動を行っていく上で、個々のタンパク質の分解は合成と並んで大変重要である。この分解過程に関わる酵素の一種がユビキチンリガーゼである。この酵素は、分解すべきタンパク質にユビキチンと呼ばれる廃棄処理用の目印をくっつける役割を果たす
 ◆サリドマイドの催奇性
 サリドマイド (thalidomide) は1957年にグリュネンタール社から発売された睡眠薬の名称である。副作用により多くの奇形児が誕生し、一時的に販売中止となった。現在はアメリカ合衆国等でハンセン病治療薬として市販されている。
 市販のサリドマイドには光学異性体があり、等量のR体とS体が混ざったラセミ体として合成される。開発された当時の技術では分離が難しく、ラセミ体のまま発売された。後にR体は無害であるがS体は非常に高い催奇性をもっており高い頻度で胎児に異常をひき起こすこと、さらに流産防止作用もあるとの報告があった。四肢の発育不全を引き起こし手足が極端に未発達な状態で出産、発育する(アザラシ肢症)のが主な症状であるが知覚や意識、知能に影響はほとんど見られない。
 光学異性体が原因か
 現在の技術ではR体・S体の分離(光学分割)、および一方のみを選択的に合成(不斉合成)することも可能である。2001年、不斉合成の研究で野依良治氏がノーベル化学賞を受賞している。しかし、R体のみを投与しても比較的速やかに(半減期566分)生体内でラセミ化することが解っている。このため単純にR体が催眠作用のみを持ち、S体が催奇性だけを現すという当初の報告は疑問視されている。
 もともとはてんかん患者の抗てんかん薬として開発されたが、効果は認められなかった。その代わりに催眠性が認められたため、睡眠薬として発売された。当初、副作用も少なく安全な薬と宣伝されたことから妊婦のつわりや不眠症の改善のために多用されたことが後の被害者増加につながった。
 サリドマイドの毒性が確認された後、薬に対しての副作用、安全性、妊婦および胎児への影響の調査が強化された。しかし、深刻な薬害の発生はその後も続いている。また製剤の中には鏡像異性体を持つものも多いため、これについても注意が払われるようになった。

 今日の天気は曇り。夕方から雨の予想。気温は低く、最高気温19℃とか、散歩に上着がいる。
 今日のお花は、先日(10月1日)旅行に行った「遠野伝承園」の庭の”イチイ”の赤い実。
 「遠野伝承園」
 岩手県遠野地方のかつての農家の生活様式を再現し、伝承行事、昔話、民芸品の製作・実現などが体験できる。園内には国の重要文化財旧菊池家住宅、「遠野物語」に話者であった佐々木喜善の記念館、千体オシラサマの御蚕神堂(オシラ堂)などがある。
 赤い実がなるのは雌株、”イチイ”は雌雄異株である。赤い実と言ったが、赤いのは外側の多汁質の仮種皮で、中には黒い丸い種子がある。赤い仮種皮は甘く、小さい頃には良く採って食べた。その頃は”オンコ”と呼んでおり、この名はアイヌ語(onko)からで、東北地方の方言・・らしい。黒い種子に有毒アルカロイドのタキシンが含まれており、食べられない・・食べても固くて苦い。
 ”イチイ”は庭木や生垣で良く使われる常緑針葉樹である。
 名(イチイ:一位)の由来には、古代(一説には仁徳天皇の時代)に高官の笏の材料にこの木が使われたからとの説、この木を使って笏を作った人が一位を賜ったとの説などがある。これらの説の様に木材として、緻密で狂いが生じにくく加工しやすく、光沢があって美しく、工芸品・天井板・鉛筆材など使われる。岐阜県飛騨地方の伝統工芸「一位一刀彫」が有名。
 イチイ(一位)
 別名:笏の木(しゃくのき)、蘭(あららぎ)、おんこ
 英名:Japanese yew
 学名:Taxus cuspidata
 イチイ科イチイ属
 常緑針葉樹
 寒さに強く、北海道までの寒冷地帯でも育つ
 開花期は3月~4月
 果実は10月頃に熟す


紫外線照射で純氷にマイナスの電気が流れることを発見

2019-10-13 | 科学・技術
 北海道大学低温科学研究所渡部直樹教授らの研究グループは、真空中で極低温の純氷を作製し、そこへ紫外線と電子を照射することで氷中にマイナスの電気が流れることを発見した。また、その電流は紫外線のオン・オフで鋭敏にコントロールできることが分かった。本研究成果は、2019年10月3日公開の”Chemical Physics Letters”誌に掲載。
 氷は金属とは異なり、その内部に自由に動き回れる電子(マイナスに帯電)を持たないため、電子の流れによる電流をほとんど通さないと考えられていた。
 研究グループは、この現象を説明するために理論計算を行い、紫外線を照射することにより氷表面の水分子(H2O)が分解し、OHが生成され、そのOHが氷内で電子を運ぶマイナス電気のキャリアとなって動き回ることを明らかにした。発見した現象は、氷内に電気を流すための電解質の不純物を一切必要としない。
 氷はその内部にもともと微量に存在する動き回れる陽子(プラスに帯電)が水分子の間を移動することにより、わずかながらプラスの電気が流れるため、半導体としての性質を持つことが知られている。しかし、陽子の移動には熱エネルギーが必要なため、およそマイナス80℃以下では電流が流れないことがわかっている。研究グループはマイナス220℃以下でも温度に依存することなくマイナスの電気が流れることを確認しており、本研究で発見したマイナス電気の移動には熱エネルギーを必要としないことを示した。
 本研究では,従来全く想像されていなかった以下の3つの知見が画期的といえる。
 ①氷中にマイナスの電気が定常的に流れうることを発見した。
 ②マイナスの電気の流れは紫外線でコントロールできる。
 ③従来知られていた氷中のプラス電気の流れとは異なり、極低温でも電気が流れる。
 今後は,この現象をより幅広い温度領域で,氷の構造,紫外線強度などを変えて調べていく予定である。水や氷は、これまで長年様々な分野で研究されてきた、いわばありふれた物質である。本研究は、そうした氷にもまだ知られていない側面があることを示しており、水や氷の科学のさらなる展開のきっかけになると期待される。
 ◆用語解説
 グロットゥスメカニズム(Grotthuss mechanism)
 ドイツの化学者 グロットゥス が 1800年初頭に提唱した、氷中を陽子が移動するメカニズムのこと。
 氷中 に微量に存在する プラスの電気を帯びた 過剰 陽子が水分子と結びつくことで H3O+というプラスイオンを作り、そのイオンが隣に存在する他の水分子に陽子を受け渡すことで、プラスの電気が移動する。氷に電気が流れるメカニズムとして広く受け入れられている。

 台風19号が仙台を通過した。午前1時~3時頃が雨・風とても強かった。朝は雲が少ない晴天、でも風は少し強い。
 台風が来る前に郊外に出かけた。圃場の畔を見たら、”イヌタデ”の花が咲いている。花に見える赤いツブツブ、赤い花弁(はなびら)ではなく咢(がく)である。だから花が枯れずに何時までも咲いている様に見える。
 名(イヌタデ:犬蓼)の由来は、辛味がなく香辛料には使えない、”タデ”から”イヌタデ”である。「イヌ」とは、似るが違う・役に立たないものに付けられた。”タデ(蓼)”と言うと、”ヤナギタデ(柳蓼)”を言い、これには茎・葉に苦味がある・・これを好んで食べる虫(蓼虫:たでむし)もいる。ことわざに「蓼食う虫も好きずき・・・人の好みは様々との例え」がある。
 因みに、”イヌタデ”は食用にできると言う。辛味がないので香辛料にはならないが、花の咲く前なら煮物・油炒め・揚げ物でも食べられる、らしい・・食べたことはない。
 イヌタデ(犬蓼)
 タデ科イヌタデ属
 一年草
 茎先に付く花穂は長さ数5cm
 花期は6月~10月
 別名にアカマンマ(地方で)
 アカマンマとは赤飯のこと、ままごと遊びに使った


出芽酵母の細胞内で起こる新たなO-結合型糖鎖の代謝経路を発見

2019-10-06 | 科学・技術
 理化学研究所開拓研究本部鈴木糖鎖代謝生化学研究室の平山弘人研究員、鈴木匡主任研究員、岩崎RNAシステム生化学研究室の岩崎信太郎主任研究員らの共同研究グループは、出芽酵母の細胞内で起こる新たなO-結合型糖鎖の代謝経路を発見した。
 出芽酵母やヒトを含む多くの真核生物のタンパク質は、ブドウ糖(グルコース)のような単糖が複数個連なることで形成された糖鎖による修飾を受けている。このタンパク質への糖鎖による修飾は、結合するタンパク質内のアミノ酸残基の違いにより、主にアスパラギンの側鎖アミドの窒素原子を介して結合するN-結合型糖鎖(Nは窒素)と、セリンまたはトレオニンの側鎖ヒドロキシ基の酸素原子を介して結合するO-結合型糖鎖(Oは酸素)の2種類が存在することが知られている。また糖鎖修飾は、タンパク質自体の機能や安定性の向上に寄与するだけでなく、合成されたタンパク質の品質管理、細胞内輸送、シグナル伝達などさまざまな生命現象に関わっていることが知られている。
 これまでの研究により、N-およびO-結合型糖鎖の細胞内での生合成経路の詳細や、生物学的機能について多くのことが明らかになっている。しかし、糖鎖の分解、代謝機構については、不明な点が多くあった。
 研究手法と成果
 共同研究グループは、さまざまな炭素源(グルコース、ガラクトース、マンノース、グリセロール等)のうち1種類だけ含む培養液で出芽酵母を培養し、それぞれの条件下で細胞が生成する遊離糖鎖の代謝量に違いがあるか調べた。その結果、炭素源について、通常の培養に用いられるグルコースと比較してガラクトースやグリセロールで培養した場合は、代謝量に若干の変化が見られたものの、大きな違いはなかった。しかし、マンノースで培養したときのみに、複数の構造未知の遊離糖鎖が大量に生成されることを見いだした。
 これらの遊離糖鎖の構造を詳しく解析したところ、マンノースと呼ばれる単糖が2つから5つまで連なった構造をしており、かつ出芽酵母のタンパク質を修飾しているO-結合型糖鎖と構造が一致することが分かった。この“O-結合型糖鎖と構造が一致する遊離糖鎖が溜まる“という現象は、タンパク質に結合している糖鎖から切り出されてできるほかに、細胞内に存在するばらばらのマンノースを基質として、糖タンパク質のO-結合型の生合成と同じ機構でマンノース糖鎖として伸びるという二つのうちのいずれかによって起こる。
 そこで、さまざまな出芽酵母の変異体を用いて実験を行ったところ、(1)O-マンノースの量が減る変異体では遊離O型糖鎖の量も減ること、(2)マンノース誘導体と一緒に培養してもその化合物を基質としてマンノース糖鎖が延長しないことから、前者の可能性がより高いことが分かった。
 以上のことから、当該遊離糖鎖は、タンパク質を修飾しているO-結合型糖鎖から、出芽酵母の細胞内に存在する未知の酵素によって、タンパク質と結合している根元から切り出されて生成されている可能性が強く示された。このような酵素は、全ての生物においてこれまで全く知られていなかったため、共同研究グループは「エンドO-マンノシダーゼ」と名付けた。
 今回発見された遊離O型糖鎖の生成は、マンノースを炭素源とした培養条件でのみ観察されていることから、エンドO-マンノシダーゼをコードする未知の遺伝子の発現は、通常用いる炭素源であるグルコースからマンノースへ変化するときに活性化するのではないかと考えられる。
 そこで、細胞の炭素源変化に伴い、遺伝子の転写を調節する転写調節因子群の中に遊離O型糖鎖の生成に影響を与える因子があるか解析した。その結果、Cyc8と呼ばれる転写抑制因子を欠損させた酵母を、マンノースを炭素源とした条件下で培養すると、野生型と比較して約10倍以上の遊離O型糖鎖を生成し、強い生育阻害を示すとともに、細胞壁の恒常性を撹乱する薬剤に対して感受性が示された。また、正常株とCyc8欠損株を比較したところ、正常株では転写抑制因子Cyc8依存的にエンドO-マンノシダーゼの遺伝子発現量を介して調節されている一方Cyc8を欠損させた酵母ではエンドO-マンノシダーゼの発現が抑制されることなく恒常的に活性化することにより細胞壁を構成する糖タンパク質から多くのO-結合型糖鎖が切り出されて細胞壁が脆弱となり、細胞壁の恒常性の低下および生育阻害を起こしている可能性が示された。
 これらの結果から、出芽酵母の細胞内において、エンドO-マンノシダーゼによるO-結合型糖鎖の代謝機構は、炭素源変化によって誘導されること、およびO-結合型糖鎖の代謝は遺伝子の転写レベルで厳密に制御されていることが明らかになった。
 今後の期待
 本研究により、これまでほとんど分かっていなかったO-結合型糖鎖の代謝機構の一端を、出芽酵母をモデル系として明らかにした。今回発見したO-結合型糖鎖の代謝機構(エンドO-マンノシダーゼ)は、他の生物種ではまだ見つかっていない全く新しい糖鎖代謝機構である。また、これまで全く報告がないエンドO-マンノシダーゼ活性を持つ酵素が出芽酵母に存在し、タンパク質を修飾しているO-結合型糖鎖を切り出していることが強く示唆された。ヒトにおいて、O-マンノース糖鎖の合成不全は、さまざまな遺伝性筋ジストロフィー疾患を引き起こすことが知られている。
 今後の解析により、エンドO-マンノシダーゼをコードする遺伝子が単離されれば、O-マンノース結合型糖鎖の代謝機構の詳細が明らかになるだけでなく、本酵素をコードする遺伝子からエンドO-マンノシダーゼタンパク質を大量に生産することで、O-マンノース結合型糖鎖をタンパク質から切り出す実験ツールとして利用でき、ヒトの病気に関わるO-マンノースの糖鎖構造解析への応用が期待できる。
 ◆補足説明
 〇出芽酵母
 出芽によって増える酵母。パン酵母やビール酵母などが知られている。パン酵母は、細胞生物学や遺伝学実験のモデル生物として広く使われている。
 〇エンドO-マンノシダーゼ
 O-マンノース糖鎖を結合しているタンパク質の根元から遊離する酵素。糖鎖の末端から2糖以上の糖を遊離する酵素をエンドグリコシダーゼと呼ぶことから、今回存在が予想される全く新規の酵素を、O-マンノース糖鎖を遊離するエンド酵素という意味でこのように命名した。
 〇真核生物
 動物、植物、菌類、原生生物など核膜で囲まれた細胞核を持しその中に遺伝情報を有した染色体を持つ生物。
 〇転写調節因子、転写抑制因子
 遺伝子の発現(転写)を調節する因子のことで、タンパク質あるいはそれをコードする遺伝子を指す。通常DNAに結合し、遺伝子の発現を活性化あるいは抑制する。遺伝子の発現を活性化するものを転写活性化因子、抑制するものを転写抑制因子と呼ぶ。

 今日の天気は、雨~曇り、時々晴れ。気温は秋、最高気温は21℃・・平年並みなのかな。
 旅行先の、「賢治先生の家」で、お庭に”ススキ”が生い茂っている。”ススキ”がどうして植えられているのか、は不明。
 ススキ(芒、薄)
 別名:尾花(おばな)、茅(かや)
 尾花は穂を動物の尾に見立た
 茅は屋根材・炭俵用に使われた
 イネ科ススキ属
 多年生草本(丈は1m~2m)
 株を形成し多数の花茎を立てる
 秋の七草のひとつ


 「賢治先生の家」
 1926年、農学校を退職した賢治が農民たちを集めて農業技術や農業芸術論などを講義するために設立。
 1928年に病気になるまで、賢治はこの建物で自炊生活をしていた。
 1969年、現在地(県立花巻農業高等学校地内)に移築復元された。


世界で最も黒い物質が発見される

2019-09-29 | 科学・技術
 米マサチューセッツ工科大学(MIT)のブライアン・ウォードル教授や上海交通大学の崔可航准教授らの研究チームによって光吸収率99.995%の世界で最も黒い物質が発見された。
 これまで最も黒い物質とされてきたベンタブラック(光吸収率99.965%)よりも0.03%黒い99.995%以上の光をあらゆる角度から吸収する。研究成果は、9月12日、アメリカ化学会(ACS)の学術雑誌「アプライド・マテリアルズ・アンド・インターフェース」で公開。
 電気的特性や熱的特性の高いカーボンナノチューブをアルミホイル上で成長させるにあたり課題だったのは、アルミニウムが空気にさらされると、酸化層がアルミニウムを覆い、電気や熱を遮断してしまうことであった。
 研究チームでは、アルミホイルを塩水につけることで、酸化層を除去することに成功。さらにアルミホイルを無酸素環境に移して再酸化を防ぎ、化学気相成長(CVD)法により、オーブンに入れてカーボンナノチューブを成長させた。酸化層を除去することで、より低い温度でカーボンナノチューブを成長させることができたという。成長したカーボンナノチューブは、電気的特性や熱的特性が著しく高まっただけでなく、明らかに黒くなっていた。
 崔准教授は「成長させる前、カーボンナノチューブの色がどれくらいの黒さであったかを覚えています。成長後の色のほうが黒くみえました」と実験の様子を振り返っている。現時点では、なぜこの物質がこれほどまでに黒くなったのかはわかっておらず、ウォードル教授は「さらなる研究が必要だ」と述べている。

 私事、明日から旅行に行ってきます。暫くブログを休みます。

 早朝は雨だった。朝からは曇り、時々晴れ。朝晩は少し寒いが、今日の最高気温は26℃と夏日。
 畑の”ナスタチューム”、花が咲いている。赤と濃赤だ。昨年に植え、出来た種が出たようだ。残念ながら、昨年の黄色花は出なかった。
 ”ナスタチューム”の花は大きくて綺麗な花だ。そして、食べるために作られた花、エディブル・フラワー(edible flower)でもある。
 ”ナスタチューム”は、”キンレンカ(金蓮花)、ノウゼンハレン(凌霄葉蓮)”と呼ばれ、その由来は、黄色や橙色の花がノウゼンカズラに似て、葉はハスに似ることから、と言う。
 園芸品種として沢山出回っており、多彩な品種がある。つる性種とわい性種、花の一重や八重、葉には緑の他に斑入り・・などである。
 ナスタチューム
 別名:金蓮花(きんれんか)、凌霄葉蓮(のうぜんはれん)
 英名:Nasturtium
 ノウゼンハレン科キンレンカ属(ノウゼンハレン属)
 一年草
 原産地はメキシコ~南米、江戸末期に渡来
 つる性種と矮性種があり、最近は園芸種として矮性種が多い
 開花時期は6月~11月(初夏と秋)
 花色は鮮やかな橙色・黄色など
 エディブル・フラワー(葉・花は鑑賞するだけでなく食べる)
  葉はワサビの様な刺激がある・・ワサビ代り
  花は料理の彩りに・・花も食べる
  種子は潰して薬味に


ギ酸と重水を原料として重水素を選択的に作り分ける

2019-09-27 | 科学・技術
 大阪大学大学院工学研究科の森浩亮准教授、山下弘巳教授らの研究グループは、独自に開発した触媒を用いて、安価なギ酸(HCOOH)と重水(D2O)を原料とし、高価な重水素(D2およびHD)を選択的に作り分けて製造することに成功した(9月25日発表)。
 研究の背景
 水素(H2)は次世代のエネルギー資源として期待されている。その同位体化合物である重水素(D2およびHD)は、化学・生物学の実験研究用試薬として、また、半導体、光ファイバーなどの製造工程でも使用される高価な特殊ガスである。現状D2はD2Oの電気分解により、HDはH2とD2の接触同位体交換法(理論最大収率50%)によりそれぞれ合成されている。いずれもエネルギー多消費型のプロセスのため、市販品は極めて高価である。また、日本ではそのほとんどを海外からの輸入に頼っているため、触媒技術を用いた簡便な合成法が望まれていた。
 研究の内容
 ギ酸(HCOOH)は安価で安全(非可燃性、非爆発性、毒性が低い)な液体であり、かつ水素貯蔵密度が高いことから、次世代のエネルギーキャリアとして近年非常に注目されている。これまで当研究グループでは、塩基性シリカに数ナノメートルの大きさの微細なPdAg(パラジウム-銀)合金ナノ粒子を担持した触媒が、ギ酸を分解して水素を製造する優れた金属触媒となることを世界に先駆け報告してきた。今回、この触媒を重水(D2O)中でのギ酸分解に用いると、高価な重水素(D2)が高効率で生成することを発見した。さらに興味深いことに、表面の塩基性を変えるだけで、重水素(HD)を任意に作り分けることに成功した。特に、弱塩基性フェニルアミン基を修飾した触媒では、D2が87%の選択性が得られ、強塩基性トリエチルアミン基で修飾した触媒はHDの選択性が80%に達する。本研究成功の鍵は、固体(触媒)表面上でのH-D交換反応を塩基性の違いを利用して制御できた点にある。
 本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
 今回開発した触媒は、調製が極めて簡便である、安定性が高く分離・回収の容易な固体触媒である、塩基性を制御することで目的の重水素を任意に得られる、など実用化に不可欠な基盤要素を兼ね備えている。これにより、今後の世界的な需要拡大が予想される重水素の製造に対応できる低コスト製造法として期待される。また、今回発見した触媒反応は、特定の条件では量子トンネル効果に支配されていることを、速度論的な解析および理論計算を用いて証明しており学術的な意義も極めて高いものである。
 研究者のコメント
 高価な重水素の作り分けにおける触媒の開発は未開拓領域ですが、本研究で開発した新規触媒は実用化に不可欠な要素を含んでいるため、産業界における今後の発展の基盤技術に成り得ます。一方でその発現機構の完全解明と、量子トンネル効果の関与という学術的にも重要な知見を得るに至っています。したがって、産学の両研究者に興味を持っていただければ幸いです。
 ◆用語解説
 〇ギ酸(HCOOH)
 化学式でHCOOHからなる、無毒・爆発性のない液体である。工業的には酢酸生産時の副生成物として産され安価である。最近ではCO2とH2から合成する技術も開発され、水素を効率よく貯蔵・輸送できる物質「再生可能な水素キャリア」として注目されている。
 〇重水(D2O)
 水素の同位体である重水素(2H Deuterium)2つと質量数16の酸素によりなる水である。D2Oは通常の水(H2O)よりも電気分解の速度が遅いという性質の違いを利用して、重水をわずかに含む天然の水から濃縮、分離して得られる。
 〇同位体化合物
 同一原子番号を持つものの、中性子数が異なる核種の関係をいう。
 水素の同位体としては、重水素(2H Deuterium)、三重水素(3H Tritium)がある。
 〇PdAg(パラジウム-銀)合金ナノ粒子担持触媒
 特定の化学反応を促進させる物質。この場合、PdとAgの2つの元素からなる数ナノメートルの粒子が触媒の活性点であり、塩基性シリカ上に高分散で担持(固定化)されている。
 〇量子トンネル効果
 一般的な化学反応は、反応物が活性化障壁(化学反応を起こすために必要なエネルギー)を乗り越え進行する。そのため、高温ほど速く、低温では遅くなる。しかし、水素(H)など質量の小さい粒子の場合には、物質の波動性が顕著になり、エネルギーが無くても活性化障壁を透過することで化学反応が進む場合がある。

 朝から雲少ない晴れ。お日様が昇るとグングンと気温が上昇。最高気温は25℃程。
 敷地のコーナーに”ハナゾノツクバネウツギ”が植えられている。お花は最盛期を過ぎたのかな、少し減ってきた。近づくと少し甘い香りがする。
 名(ハナゾノツクバネウツギ)の由来は、花の残った5枚の咢の形が”羽根衝きの羽根”に似ており、木の姿が”空木(うつぎ)”に似ていることから。衝羽根(つくばね)とは正月に遊ぶ羽根つきの羽である。これを、”アベリア”と呼ぶことがある。”アベリア”とは、スイカズラ科ツクバネウツギ属の属名(ラテン名)であり、特定の種の事ではない。この園芸種(ツクバネウツギ属の常緑低木の交配種:Abelia × grandiflora)が多用され、学名も和名も長いので、短い”アベリア”が使われるようだ。
 ハナゾノツクバネウツギ(花園衝羽根空木)
 別名:アベリア
 学名:Abelia×grandiflora(アベリア・グランディフロラ)
   幾つかのアベリア属の交配から作られた園芸種
 スイカズラ科ツクバネウツギ属
 常緑性の低木(寒冷地では落葉)
 開花時期は6月~11月(開花時期が長いのが特徴)
 花は小さいロート状(径2cm位)
 花色は白やピンク
 花の様に見える咢(がく)は薄紅色


狭帯域の高エネルギーテラヘルツ波の強力発生技術を開発

2019-09-26 | 科学・技術
 分子科学研究所の平等拓範特任教授とドイツ電子シンクロトロン(DESY)、ハンブルグ大学、ELIビームラインなどの共同研究グループは、物質の非破壊検査などに応用されているテラヘルツ波を強力に発生させる技術を開発した。この新しいテラヘルツ波発生は、体育館ほどの大きさを実験室のベンチサイズほど小さな次世代粒子加速器の開発につながる画期的な方法である(6月25日)。
 テラヘルツ波は電磁波の一種であり、赤外線とマイクロ波の中間に位置している。テラヘルツ波は粒子加速器の小型化にも寄与しており、テラヘルツ波の波長は現在の粒子加速器で使用されている電波の約1000分の1である。これは、加速器の構成要素の大きさも約1000分の1になることを意味する。
 ただ、十分な数の粒子を加速するためには、狭帯域で強力なテラヘルツ波が必要である。本研究により、これが可能となった。ハンブルグ大学のMaier氏はテラヘルツ波の発生方法について「テラヘルツ波を発生させるために、2発の強力なレーザーパルスを、わずかな時間差をつけて「非線形光学結晶」(分子科学研究所が開発した特殊なLA-PPMgLN)と呼ばれる物質に入射します」と説明している。ここで用いるレーザーパルスには色のグラデーション(チャープ)が付けてある。つまり、1発のパルス中の前方と後方で、色が異なっている。このグラデーションの付いた2つのパルスを2発、わずかな時間差をつけてその結晶に入射することで、2つのパルスの、色が異なっている部分が重なることになる。Maier氏は「この色の違いが発生するテラヘルツ波のエネルギーに対応している。結晶”LA-PPMgLN”はこの色の違いを、テラヘルツ波に変換する」と述べている。
 この方法では、2発のレーザーパルスを正確に同期させる必要がある。そのためには、元々1つだったパルスを2つに分けて、そのうち1つを少し迂回させて、再び重ねる。こうすると迂回したパルスはわずかに遅れることになる。ここで、元々のパルス内部の色変化が直線的であれば、2つのパルスを少しずらして重ねたときの色の違い(エネルギー差)は常に一定になります。しかし実際には色の変化は曲線的で、最初ゆっくり、その後速く変化するようになっている。
 「これは、高エネルギーのテラヘルツ波パルスを発生させる上での大きな障害であった。本当はパルスの色変化を直線的にしたいのであるが、これはとても大変なのである」とMaier氏は述べている。この問題に対して、共著者のNicholas Matlis氏は、一方のパルスの色変化を少し引き延ばす、という重要な着想を得ました。引き延ばしても色の変化を直線的にすることはできないが、もう1つのパルスの色変化と「同じ曲線的変化」にすることはできる。そうすれば色の違い、つまりエネルギー差は常に一定になる。「一方のパルスに加えるべき変更は最小限で、驚くほど簡単である。短い特殊ガラスをレーザービームの経路に挿入するだけ。すると突然、テラヘルツ波出力は13倍強くなった」とMaier氏は述べている。ここで研究グループでは、分子科学研究所でしか作れない、非常に大きく特殊な非線形光学結晶”LA-PPMgLN”を用いる事で強力なテラヘルツ波の発生が可能となった。
 Kartner氏は「これらの手法を組み合わせることで、0.6ミリジュールのテラヘルツパルスの発生に成功した。これは従来、光学的手段によって発生された、狭帯域(単色)テラヘルツパルスの10倍以上の値である。本研究は、この方法を用いれば、小型粒子加速器を実現するための、十分に強力で、狭帯域(単色)なテラヘルツパルスが発生可能であることを示している」と述べている。そして、この新発想を実現するためには分子研が創り出した特殊な非線形光学結晶”LA-PPMgLN”が不可欠との事で共同研究が実施された。

 朝から雲多いが晴れ。朝晩はコートが必要な程だが、日が昇ると暑くなる。最高気温は24℃程。
 駐車場に植えられている”フヨウ”に白い花が咲きだした。今時分に咲く同じ仲間(アオイ科フヨウ属)の”ムクゲ”と良く似ている。”フヨウ”は”ムクゲ”より葉が大きく、沢山付いている。”フヨウ”の花の印象は、葉の緑に点在する花である。花は1日花であるが、蕾が待機しており、日々次々と開花する。
 フヨウ(芙蓉)
 アオイ科フヨウ属
 落葉低木(丈は2m~3m)
 開花時期は8月~10月
 花径は10~15cm、花色はピンク・白色
 樹形は、ムクゲは上に伸びる直線的な形、フヨウは枝分かれのある横広の形
 ムクゲ(槿)と似た花であるがメシベの先が曲がっている


マイクロ波を電力に変換する高感度ダイオードを開発

2019-09-25 | 科学・技術
 富士通株式会社の河口研一事業部長付と首都大学東京の須原 理彦教授らは、微弱なマイクロ波を電力に変換できる高感度のナノワイヤバックワードダイオード整流素子を開発した。本研究成果は、ポーランド・クラクフで開催中の国際会議「European Solid-State Device Research Conference(ESSDERC)」で2019年9月26日に発表される。
 本格的なIoT時代の到来に備え、センサーネットワークのバッテリーレス化を実現する環境電波発電が注目されている。しかし、従来の整流素子は、微小電圧における整流特性や素子サイズにより、環境電波の多くが該当するマイクロワット(μW)以下の微弱電波を電力に変換することが難しく、高感度なダイオードが求められていた。
 本研究グループは、小さな電圧領域においても優れた整流特性を持つバックワードダイオードを髪の毛の約1000分の1の細さにまで微細化したナノワイヤの形成に成功した。開発したナノワイヤバックワードダイオードは、従来のショットキーバリアダイオードの10倍以上の感度を世界で初めて達成した。
 本技術により、100ナノワット(nW)レベルの微弱なマイクロ波を電力に変換し、センサーなどの機器を駆動させることができる。今後、ダイオードと電波を集積するアンテナの設計を最適化し、定電圧化のための電源制御を追加することにより、環境電波発電の実現が期待される。即ち、携帯電話基地局などから放射されている環境電波から電力を生み出す環境電波発電に役立つ技術として期待される。
 研究の背景と経緯
 本格的なIoT時代の到来に備え、センサーネットワークのバッテリーレス化を実現するために、近年、身の回りの微小なエネルギーを電力に変えるエネルギーハーベスティング技術が注目されている。その1つとして、通信に利用するために携帯電話基地局から放射され、空間に遍在する微弱な電波(マイクロ波)を電力として再利用する環境電波発電があげられる。
 環境電波発電に用いる装置は、電波を集めるアンテナと、その電波を整流する整流素子(ダイオード)からなる電波発電素子で構成される。ダイオードのマイクロ波に対する応答性能(感度)は、整流特性の急峻性とダイオードのサイズ(容量)に大きく依存する。一般的に電力変換用途のダイオードには、金属と半導体の接合構造で生じる整流性を用いたショットキーバリアダイオードが使われている。しかし、微小電圧においての整流特性が緩慢で、かつ素子サイズが数マイクロメートル(μm)以上あり容量が大きいため、マイクロワット(μW)以下の微弱なマイクロ波への感度が十分ではなく、環境電波を電力へ変換することが困難だったため、ダイオードの高感度化が求められていた。
 研究の内容
 本研究グループは、異なる2種類の半導体を接合することによって整流性が生じ、かつ従来のショットキーバリアダイオードとは異なる原理(トンネル効果)で電流が流れることにより、ゼロバイアスでの急峻な整流動作が可能なバックワードダイオードを微細化・低容量化することで、より高感度なダイオードを実現すべく開発を進めてきた。これまでバックワードダイオードは、積層された化合物半導体薄膜をエッチングによりディスク状に加工して形成されていたが、加工による損傷を受けやすい材料のため、サブミクロンサイズまで微細加工してダイオードを動作させることは困難であった。
 本研究グループは、接合される半導体材料の構成元素の割合(組成)および添加不純物濃度の精緻な調整により、バックワードダイオード特性に求められるトンネル接合構造をn型のインジウム砒素(InAs)とp型のガリウム砒素アンチモン(GaAsSb)からなる直径150nmのナノワイヤ内において結晶成長させることに成功した。さらに、そのナノワイヤの周囲を絶縁素材で埋め込む加工およびワイヤの両端に金属で電極膜を形成する加工において、ナノワイヤを傷つけることなく実装する新技術を活用した。これらにより、従来の化合物半導体の微細加工技術では困難だったサブミクロンサイズのダイオードの形成が可能になり、従来のショットキーバリアダイオードと比較して10倍以上の感度を持つナノワイヤバックワードダイオードの開発に世界で初めて成功した。
 現在の携帯電話用の通信回線規格4G LTE/WiーFiで利用されるマイクロ波周波数2.4GHzで検証した際の感度は、従来のショットキーバリアダイオードの感度(60kV/W)に対して、約11倍(700kV/W)である。これにより、100nWクラスの微弱電波を効率よく電力に変換することが可能となり、携帯電話基地局から環境に放射されたマイクロ波を、従来と比べて10倍以上の広さのエリア(携帯電話通信が可能なエリアの10%に相当)で電力変換でき、センサー電源としての活用が期待される。
 今後の展開
 将来的には、今回開発したナノワイヤバックワードダイオードを応用することで、5G通信における豊富な環境電波エネルギーを活用し、安定的にセンサーを駆動させるなど、構造物や建造物などのインフラのモニタリングに用いられるセンサーの電源フリー(バッテリーレス)化への貢献が期待できる。
 本研究グループは今後も、さらなるダイオードの高感度化とダイオードを集積するアンテナの最適化を行い、定電圧化のための電源制御を追加することにより、環境電波を利用した発電がどこでも可能になる技術の実現を目指す。
 ◆用語解説
 〇バックワードダイオード
 従来のショットキーバリアダイオードとは異なり、トンネル現象を利用して動作するダイオード。従来のダイオードでは十分な整流性が得られない小さな電圧領域においても優れた整流動作が可能。
 〇ナノワイヤ
 幅がナノメートル(nm)単位の極めて細いワイヤ状の半導体。エッチングなどのトップダウン加工ではなく、結晶成長によってボトムアップ形成ができる。
 〇ショットキーバリアダイオード
 金属と半導体の接合によって発現するショットキー障壁というエネルギーを整流作用に用いたダイオード。
 〇ゼロバイアス
 電圧がゼロであること。環境電波発電では、動作電圧の調整のために電力を消費できないため、ゼロバイアスでの動作が求められる。

 今日は朝から晴れ、雨の予想は!なし!。朝晩は少し寒さを感じるが、最高気温は26℃と夏日。
 早朝に畑に出かけた。梅田川の水位観測所を取り巻くように”アレチウリ”が繁茂している。花だけでなく、実も付いている。
 ”アレチウリ”は雌雄同株であるが、雌雄異花(雌花と雄花が別々)で、両者が見える。雄花は雌花より2~3倍程大きく、10個位集まる合弁花である。雌花序は淡緑色の雌花が球状に20個位密集している。花や葉は”ウリ”であるが、果実は小さく毛が密集し、これが沢山纏まっている。
 ウリ科のツル植物で1年生草本、北アメリカ原産の帰化植物である。繁殖力が旺盛であり、生態系に大きな影響を与える(他の植物を覆い、枯らす)特定外来生物に指定され、日本の侵略的外来種ワースト100(日本生態学会)に選定されている。
 因みに、クズ(葛、マメ科クズ属のつる性の多年草)は、根を用いて食材の葛粉や漢方薬が作られ、秋の七草の一つである。非常に繁殖力が強く、他の植物を覆ったり、巻きついたりして生長を妨げる。クズは、「世界の侵略的外来種ワースト100」に名前があがっている。
 アレチウリ(荒れ地瓜)
 ウリ科アレチウリ属
 雌雄同株であるが、雌雄異花(雌花と雄花が別々)
 つる性一年草
 北米原産の帰化植物
 開花時期は8月~10月
 両花とも球形に纏まった花序(かじょ、枝での花の配列状態)
 雄花は径1cm位、雌花は径3~4mm位
 果実1つは長さ1.5cm~2.0cm程で白い毛に覆われた小さな金平糖様