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分子動力学(MD)シミュレーション専用計算機「MDGRAPE-4A」の開発に成功

2019-12-16 | 科学・技術
 理化学研究所生命機能科学研究センター計算分子設計研究チームの泰地真弘人チームリーダーらの研究チームは、分子動力学(MD)シミュレーション専用計算機「MDGRAPE-4A」の開発に成功した。本開発は、「情報計算化学生物学会2019年大会」(10月24日)で報告された。本研究成果は、インシリコ創薬の可能性を大きく拡げるものと期待できる。
 〇MDシミュレーション
 MDシミュレーションは、水溶液中で変化し続けるタンパク質構造を解析するために、タンパク質を構成する原子や周囲の水分子に働く力を計算し、コンピュータ内でタンパク質を「動かす」手法である。大きなタンパク質の解析には、汎用スーパーコンピュータ(スパコン)でも膨大な時間がかかるため、分子シミュレーションを高速で行う専用スパコンの開発が待たれていた。
 研究チームは、自ら設計・開発した専用の大規模集積回路(LSI)を512個搭載し、システム全体として約1.3ペタフロップス(1秒間に1,300兆回)の計算能力を持つMDGRAPE-4Aを開発した。MDGRAPE-4Aは、タンパク質と水分子からなる10万原子系のシミュレーションを、1日の計算で最高1.1マイクロ秒(1マイクロ秒は100万分の1秒)進める性能を持つ。これにより、サブミリ秒(~100マイクロ秒)のタイムスケールで起きる水溶液中でのタンパク質と薬剤の分子間相互作用の解析が、現実的な時間で可能となる。
 〇背景
 細胞のさまざまな機能は、タンパク質などの分子が相互作用することにより制御されている。この仕組みを利用した分子標的薬の開発では、がん細胞や病原体が持つ標的タンパク質に結合し、その機能を阻害する化合物を探索することが基本になる。しかし、生体内(溶液中)のタンパク質の構造は柔らかく、ゆらゆらと常に変化している。このような構造変化は、X線結晶解析など通常の構造解析の手法で解析することは困難である。そこで近年、スーパーコンピュータ(スパコン)を用いた分子シミュレーションにより標的タンパク質の構造変化を再現し、それに結合する化合物の候補を膨大な仮想化合物ライブラリーの中からスクリーニングする「インシリコ創薬」が注目されている。
 タンパク質の構造変化のシミュレーションでは、タンパク質を構成する数千個以上の原子間に働く力や、これらの原子とタンパク質を取り囲む数万個の水分子との間に働く力を、時間刻みで計算する。この計算結果から全ての原子の動きを求めることを繰り返すことで、タンパク質全体の動きをあたかも映画のコマを1コマ1コマ進めるようにシミュレーションする。これは分子動力学(MD)計算という手法で、膨大な時間がかかるのが特徴である。
 生体分子の計算では、2フェムト秒(2×10-15秒)程度の動きを1コマとして計算する。生体内でのタンパク質の大規模な構造変化は、マイクロ秒(100万分の1秒)からミリ秒(1000分の1秒)、あるいはそれ以上のタイムスケールで起きると考えられており、例えば1コマ2.5フェムト秒(2.5×10-15秒)で10万原子系の100マイクロ秒間(1×10-4秒)の動きを再現するには、400億(4×1010)コマの計算が必要となる。現行の汎用スパコンでは1コマあたりの計算に最短でも約1ミリ秒(1×10-3秒)秒かかるため、400億コマの計算に必要な時間は最短で4000万秒(4×107秒、約1年3カ月)となる。スパコンの性能が上がっても、1コマあたりの時間をミリ秒以下にすることは汎用計算を行う設計上困難であるため、分子シミュレーションを高速で行う専用スパコンの開発が待たれていた。
 〇研究手法と成果
 研究チームは、MD計算で必要な粒子間の力の計算に特化した加速装置を大型集積回路(LSI)に組み込み、このLSIを512個実装したMDシミュレーション専用スパコン「MDGRAPE-4A」を開発した。MDGRAPE-4Aでは、タンパク質と水分子からなる10万原子系のシミュレーションを、1日の計算で最高1.1マイクロ秒間進める性能を持つ。これにより、100マイクロ秒間の動きに必要な計算時間は91日間となり、汎用スパコンで最短でも1年3カ月かかっていたシミュレーションを約3カ月で完了することができる。
 これまで理研が開発してきた専用計算機では、計算の一部のみを専用化し、残りは通常のコンピュータで計算していた。しかし、専用計算機が高速になるにつれ、この方式では通常のコンピュータの部分で性能が頭打ちになるようになってきた。そこで、MDGRAPE-4Aではこれまでの専用計算回路に加え、汎用計算部分やネットワークなど計算の全てを一つのLSIに統合した大規模な「システムオンチップ(SoC)」とすることで、ボトルネックの解消を図っている。この実現には、多くの新しい技術開発が必要となった。
 主要なものとしては、
(1)遠くの原子間に働く力の計算を加速するための、専用計算機に適した計算アルゴリズムの開発とハードウェア実装。
(2)近くの原子間で働く力を計算する高速の専用回路。
(3)512個のLSIを光ファイバーでつなぐ高速・低遅延のネットワーク。
(4)RISC-V[10]をMD計算向けに変更したプロセッサ。
(5)演算器やデータ管理回路を埋め込んだメモリ。
(6)FPGA(プログラム可能な集積回路)による超高速な3次元FFTの実装。
 こうした個別の工夫に加え、LSIに実装された多くの要素全てを連携させて高速に動作できるよう、ハードウェアとソフトウェアの共設計を進めた。さらに512個のLSIをシステムとして組み上げることにより、システム全体として約1.3ペタフロップス(1秒間に1,300兆回)の計算能力を持ち、高速に計算を行うことができるシステムの動作を達成した。本システムは、RISC-Vをベースとした実用大規模システムとしては世界初である。
 〇今後の期待
 インシリコ創薬の技術は、候補分子の構造式を用いて実施できるという大きな利点を持ち、ほとんど無制限ともいえる数の化学構造式をスクリーニングの対象にできる。MDGRAPE-4Aによる長時間シミュレーションを実行すれば、候補分子とタンパク質とが実際に結合するときの構造変化を探索し、より高精度な予測が実現できる。また本計算手法は、タンパク質の「形」だけではなく、「動き」を制御する分子を開発する上でも有望であり、創薬の可能性を大きく広げるものと期待できる。さらに将来的には、創薬以外の広い分野での産業・アカデミアへの共用に供していきたいと考えている。
 計算機開発の面では、半導体の性能向上を支えてきた「ムーアの法則」が終焉を迎える中、専用計算システムの役割がますます重要になると考えられる。MD計算において、ハードウェアとソフトウェアの両面で「深いレベルの統合」を行った開発を現在進めているのは、米国のD. E. Shaw研究所と理研の本研究チームのみであり、今後もMD計算のさらなる加速に加え、人工知能への応用等、専用回路と汎用回路の結合による大規模システムの開発を推進していく。
 ◆用語説明
 〇分子動力学(MD:Molecular Dynamics)
 原子間に働く力を計算し、運動方程式を繰り返し解くことで、分子の動きを追跡する方法。分子動力学法の基礎の開発について、2013年のノーベル化学賞が授与されている。
 〇MDGRAPE-4A
 1990年より開発が進められている天文学分野での重力(GRAvity)多体問題の計算に特化した専用計算機GRAPE(GRAvity PipE、重力パイプライン)の、分子動力学(Molecular Dynamics: MD)バージョン。MDGRAPE-4Aはその5作目に当たる。なお、MDGRAPE-3は高性能計算科学の賞であるゴードンベル賞を受賞している(2006年)。
 〇インシリコ創薬
 細胞生物学的、生化学的な手法を主とする創薬候補物質の探索に対して、コンピュータ(シリコンチップ)の中で行う創薬をインシリコ(in silico)創薬と呼ぶ。
 〇汎用スーパーコンピュータ
 さまざまな用途で高速計算を行えるコンピュータ。スーパーコンピュータ「京」やその後継機「富岳」は、汎用スーパーコンピュータの例。
 〇大規模集積回路(LSI:Large Scale Integration)
 特定の演算機能を持たせるために、多数の素子を一つにまとめた電子部品を集積回路(Integragted Circuit, IC)といい、素子の集積度が1,000個~10万個程度のものを大規模集積回路(LSI)と呼ぶ。
 〇原子系
 物質を、力学法則に従う粒子(原子)の集合として捉えた系。水溶液中の一般的なタンパク質は、タンパク質を構成する数千個の原子と、周囲の数万個の水分子からなる10万原子系と見なすことができる。
 〇分子標的薬
 特定の疾患に関与する分子だけに作用する薬剤。例えばがん治療においては、増殖中の細胞が一般的に持つ性質を利用する従来の抗がん剤に対して、がん細胞の増殖に特に関与する分子を標的とする薬剤を開発することにより、副作用の軽減が期待される。
 〇X線結晶解析
 構造生物学の手法の一つ。タンパク質の結晶を作製し、その結晶にX線を照射して得られる回折データを解析することにより、タンパク質の内部の原子の立体的な配置を調べる方法。この方法によって、タンパク質の形(立体構造)や内部構造を知ることができる。
 〇システムオンチップ(SoC)
 演算処理を担うCPUのみを集積した回路に対し、メモリや信号処理を含めたシステム全体を一つのチップに載せたもの。
 〇RISC-V
 カリフォルニア大学バークレイ校を中心に開発されているコンピュータの命令セットアーキテクチャ(Instruction Set Architecture: ISA)の一つ。RISC-Vは完全にオープンであり、RISC-VのISA使うためのライセンス料は不要。
 〇FPGA(プログラム可能な集積回路)
 製造後に購入者や設計者が構成を設定できる集積回路。FPGAはField-Programmable Gate Arrayの略。
 〇3次元FFT
 計算機上で離散フーリエ変換を高速に計算するアルゴリズム。信号処理などで頻繁に用いられている。例えば2次元FFTは、よく使われている「JPEG」フォーマットでの画像データ圧縮の基礎である。FFTは、Fast Fourier Transform(高速フーリエ変換)の略。
 〇ムーアの法則
 世界最大の半導体メーカーIntel社の創設者の一人であるGordon Moore博士が1965年に経験則として提唱した、「半導体の集積密度は18~24カ月で倍増する」という法則。
 〇D. E. Shaw研究所
 計算機科学研究者でありヘッジファンド創設者のD. E. Shawが創設した米国の私設研究所。分子シミュレーション専用計算機の開発に際して、集積化したチップの搭載を世界に先駆けて実現した。

 天気は朝から晴れ。
 塀の上に飛び出した”シロヤマブキ”の黒い実を見つけた。”シロヤマブキ”は白花の”ヤマブキ”ではない。”シロヤマブキ”はバラ科シロヤマブキ属であり、”ヤマブキ(山吹)”はバラ科ヤマブキ属である。 ”ヤマブキ”の花色は黄色(山吹色)で5弁花。”シロヤマブキ”は4弁花。葉の付き方は、”シロヤマブキ”は対生、”ヤマブキ”は互生である。
 ”シロヤマブキ(白山吹)”の名は、花の様子が”ヤマブキ(山吹)”似の白花から付けられた。因みに、実がなるのは”ヤマブキ”も”シロヤマブキ”も花が一重(ひとえ)だけ。
 シロヤマブキ(白山吹)
 学名:Rhodotypos scandens
 バラ科シロヤマブキ属
 落葉低木
 開花時期は4月~5月
 花は花弁4枚(径3cm~5cm)で白色
 果実は痩果で、1花に光沢がある黒色の実が4個付く
 4個の実は熟すと黒色となる


膵臓がんの実験モデルをショウジョウバエで作製

2019-12-10 | 科学・技術
 北海道大学遺伝子病制御研究所の園下将大教授らは、ショウジョウバエを使って膵臓(すいぞう)がんの実験モデルを作製した。膵臓がんに深く関わるとみられている4つの遺伝子を変異させた。膵臓がん患者に特徴的な4遺伝子、「KRAS」「TP53」「P16」「SMAD4」である。
 実験モデルをマウスでの4遺伝子変異は、時間とコストがかかってしまう。米国ではショウジョウバエを使った探索から、抗がん剤開発につながった例もあることから実験モデルをショウジョウバエで作製した。既存薬や新薬候補物質から膵臓がん治療に適した薬の選別に活用する。
 研究が順調に進み治療薬候補が見つかれば、2021年以降に北大病院と連携して臨床研究に乗り出す。
 ◆膵臓がん
  膵臓がんは難治がんの代表で、早期発見や手術、放射線治療が難しい。将来的には肺がんに次いで死亡者の多いがんになると予想されている。
 膵臓がんの5年生存率は、他のがんの5年生存率と比べると非常に低く、全症例のデータをみると、膵臓がんの5年生存率は9.0%である。

炭素-炭素単結合を持つ安定な化合物の創出に成功、新たな材料開発の進展が期待

2019-12-08 | 科学・技術
 興味深い記事を見つけた。1年以上前の2018年3月9日発表の技術記事である。
 北海道大学石垣侑祐助教・大学院生の島尻拓哉氏・鈴木孝紀教授らの研究グループは、通常の結合長より17%も長い炭素-炭素単結合を持つ安定な化合物の創出に成功した。今回の成果は、世界記録の更新に留まらず、化学結合の極限状態で生じる現象の解明につながるもの。例えば、1.8Aを超える「超結合」は、外部刺激に柔軟に応答する可能性を秘めており、新たな材料開発への応用が期待され、新たな材料開発の進展が期待される。
 ポイント
 〇1.8 A を超える炭素-炭素単結合を有する安定な化合物の創出に世界ではじめて成功。
 〇通常の結合長より17%も長いにもかかわらず、このような結合が存在することを実験的に証明。
 〇市販の化合物からわずか3工程で合成可能であり、新たな材料開発の進展に期待。
 背景
 有機化合物は炭素や水素・酸素・あるいは窒素といった原子で構成され、これらの原子同士が互いに結合することで有機分子を形作る。この「化学結合」は、物質を創る最も基本的な要素であり、その本質を理解することは極めて重要な研究課題である。中でも炭素-炭素共有結合は有機分子の基礎となる結合であり、ほぼすべての化合物で単結合長は1.54 A という決まった値をとる。これらの結合を組み合わせることで数多くの分子が創られているが、1.7 A を超える炭素-炭素結合長を有する化合物の報告例は限られたものしかなかった。世界一長い炭素-炭素単結合の創出は、単なる数字の追求だけではなく、化学の本質解明に向けた至上命題ともいえる。
 研究手法
 研究グループは、以前に1.791(3) A の結合長を有する化合物を報告しており、通常の結合よりもはるかに長いが故に弱い結合(コア)をいかにして安定化させるかが、記録更新への課題であった。今回の研究では、本来不安定なコアを大きく剛直な骨格(シェル)で保護するような分子設計戦略を採用して、二つのジベンゾシクロヘプタトリエン骨格を有する新たな化合物を設計した。理論計算化学により分子構造を予測したところ、大きな二つのシェルが非対称に折れ曲がり、中心の結合を効果
的に保護するような「分子内コア-シェル構造」が確認された。その特異な構造によって長い炭素-炭素結合の存在も予測されたことから、市販の化合物から3工程で得る効率的な方法を考案し、実際に合成した化合物を用いて検討を行った。その結果、X線結晶構造解析によって結晶中での結合長を明らかにし、結合の存在を裏付ける結合電子を観測した。また、炭素-炭素結合に特徴的な伸縮振動をラマン分光法によって直接観測することで、実験的に結合の存在を証明することに成功した。
 研究成果
 新たに合成した化合物のX線結晶構造解析を低温(-73℃)で行ったところ、計算により予測された構造とよく一致し、中央の炭素-炭素結合は1.7980(18) A と従来の記録を超える結合長が明らかとなった。通常の単結合は強固であるため温度によって値が変化することは稀であるが、このように長い結合は結合エネルギーが小さく、伸縮性があると考えられる。そこで、様々な温度(-173~+127℃)で測定を行ったところ、高温では結合が長くなり、+127℃において1.806(2) A という世界一の炭素-炭素結合長を示した。高精度の解析が可能な実験を行うことで、結合電子対の存在を確認することもできた。また、ラマン分光法によっても結合の伸縮振動が理論予測と一致して観測され、世界で初めてとなる1.8 A を超える結合を実証した。
 特筆すべき点はこの物質の安定性である。一般的には結晶状態で安定でも溶液中では分子の運動が大きくなり、結合が切断したり分解生成物が生じたりする可能性もあります。そこで、溶液中での安定性についても確認したところ、+127℃の高温下でも全く分解は見られず、大気中室温で100日放置しても安定だった。以上の研究結果から、本分子設計指針である「分子内コア-シェル構造」の有効性が確かめられ、「世界一長い炭素-炭素単結合の創出」に成功した。
 今後への期待
 今回の研究によって,1.8 A を超える炭素-炭素単結合を創出し、その存在を実験的に証明することができた。このような「超結合」の伸縮振動はラマン分光法によって明らかにされ、通常の結合エネルギーより著しく小さいことが特徴的である。これにより、本来強固な化学結合に柔軟性が付与され、圧縮や引張といった機械刺激に応答する新規材料の創出につながると考えられる。
 ◆用語解説
 〇コア-シェル構造
 中心の核(コア)を外殻(シェル)が覆うような集合体のこと。本研究においては、長く弱い結合(コア)を剛直な骨格(シェル)が保護していることを意味する。
 〇A(オングストローム)
 0.1 nm(ナノメートル)、即ち1 ミリメートルの1/1000 の更に1/10000の長さ。
 〇結合エネルギー
 二個の原子がばらばらに存在するときのエネルギーと、共有結合を形成して安定化しているときのエネルギーの差のこと。結合エネルギーが小さいということは、外部からの刺激などで結合が切断してしまいやすく、不安定であることを意味する。
 〇超結合(hyper covalent bond)
 1.8~2.0 A の範囲にある長い炭素-炭素結合のことで、石垣助教らはこのような共有結合を「超結合」と呼ぶことを提唱している。通常の共有結合には見られない「伸縮性」や「応答性」の発現が期待される。
 〇理論計算化学
 コンピューターを用いて分子の構造を予測したり、反応経路を解析したりする手法のこと。本研究では,密度汎関数(DFT)法と呼ばれる手法を用いて,結晶の最適化構造やエネルギーを導いている。この方法は電子密度から計算するものであり、有機化合物に広く用いられている。
 〇X 線結晶構造解析
 試料(単結晶)にX 線を照射し、結晶構造を明らかにする解析法のこと。分子の構造を確認することで、結合長や結合角といった情報を取得できる。
 〇伸縮振動
 結合がバネのように伸び縮みする現象のこと。結合の強さと原子の質量によって検出される波数が異なる。
 〇ラマン分光法
 レーザーを照射し、ラマン散乱光を検出することで、分子内の伸縮振動などを検出できる測定法のこと。

 今日は雲多いが晴れ。風は穏やかで微風程度。
 散歩道沿いで、赤い実・黄色の実が沢山付いた”ピラカンサ”を見つけた。まだ鳥に食べられていない・・綺麗だね、自宅の”ピラカンサ”の実は殆どない。
 ”ピラカンサ”は、バラ科トキワサンザシ属(Pyracantha) の種類の総称である。日本では赤色の実の”トキワサンザシ:常磐山査子”、黄色の実の”タチバナモドキ:橘擬”、赤色の実の”カザンデマリ:花山手毬”の3種類が多く栽培されており、これをピラカンサと一括りで呼んでいる事が多い。赤いこの実は、”トキワサンザシ””カザンデマリ”・・どちらかかな。
 ピラカンサ
 バラ科トキワサンザシ(ピラカンサ)属
 常緑低木
 開花時期は4月~6月
 花は小さく、白い5弁花
 果実は径2cm位で赤・橙・黄色に熟す、見頃は10月~12月
 ピラカンサと呼ばれる
  タチバナモドキ(橘擬)
   学名:Pyracantha angustifolia
    果実は橙(黄)色
  トキワサンザシ(常盤山櫨子)
   学名:Pyracantha coccinea
    果実は鮮紅色に熟す。カザンデマリと相似し区別しにくい
  カザンデマリ(花山手毬)
   学名:Pyracantha crenulata
    果実は赤い。別名ヒマラヤトキワサンザシ


高温で瞬時に約2千倍硬くなる高分子ゲルを開発

2019-12-07 | 科学・技術
 北海道大学大学院先端生命科学研究院の野々山貴行特任助教、グンチェンピン教授らの研究グループは、高温で瞬時に約2千倍硬くなる新規高分子ハイドロゲルを開発した。本研究成果は、2019年11月18日(月)の「Advanced Materials」誌に掲載。
 ポイント
 〇加熱すると瞬時に2,000倍近く硬さがジャンプする高分子ゲルを開発。
 〇一般的な高分子の性質とは逆の,低温で柔らかいゴム状態,高温で硬いガラス状態を示す。
 〇温度に応答して硬くなるスマートプロテクター等の応用に期待。
 一般にペットボトルなどの高分子材料は低温で硬く(ガラス状態)、高温で柔らかく(ゴム状態)なる。研究グループは、温泉源などに生息する好熱菌の100℃以上の高温でも変性しないタンパク質構造に着目し、一般の高分子とは逆に低温で柔らかく高温で硬くなる高分子ゲルを作製した。食品添加物にも使用されるこの高分子ゲルは、汎用性のある安価で無毒な原料から簡単に作製できる。室温付近の比較的低い温度では柔らかく伸びやすいが、ある温度以上で急激に硬くなる。これは、柔らかい食用ゼリーが硬いプラスチックへ瞬時に変わるほどの劇的な変化だ。冷やすと元の柔らかい状態へ戻り、急激な硬化を何度でも繰り返せる。
 この高温で硬くなる性質を利用して本高分子ゲルとガラス繊維布を複合した材料は、交通事故やスポーツのアクシデントの際に発生する大きな摩擦熱に応答して硬くなり、身体を保護するスマートプロテクターとしての応用が期待できる。実際に、アスファルト表面に荷重を掛けて高速で引きずったところ、ゲル繊維複合体が摩擦熱で硬くなり、ほとんど壊れないことが実証された。また、硬くなる際に大きな熱吸収を伴うため、本高分子ゲルは昨今の酷暑対策となる熱吸収材としての応用も期待できる。窓ガラス等に本高分子ゲルを貼っておくと、太陽からの熱の一部を吸収し、室内の温度上昇を抑える効果が確認された。

 今日の天気は、青空が見えない曇り空、雨や雪は降ってない。風は弱く、寒いけど暖かい?。
 久しぶりの散歩。歩いて気が付いた、”ヤツデ”に白い球状に集まった花が咲いている。
 ”ヤツデ:八手”は名の如く大きく裂けた葉が特徴である。花は雄性先熟で、一つの花が始めに雄花(雄花期)となり、次に花弁と雄しべを落として雌花(雌花期)となる。一つの枝で雄性期と雌性期が同時になる事は少なく、雄性期と雌性期をずらして自家受粉を避けている。始めに咲く雄花には花弁が5枚と長い雄しべが5本あり、雌花は短い雌しべが発達し、雌しべのみの花となる。(写真には雄花と雌花がある。)
 原産地は日本。葉が掌状に7~11裂する葉を「手」に見立てた命名。「八」は”数が多い”という意味から。学名:Fatsia japonicaの”Fatsia”は日本語の”八”で、”八”は古い日本語の発音では「ふぁち」・「ふぁつ」とF音を使っていた。例えば、「母」の発音は「ふぁふぁ」・「ふぁわ」だった。”japonica”は日本産を意味する。
 ヤツデ(八手)
 別名:天狗の葉団扇(てんぐのはうちわ)
 学名:Fatsia japonica
 ウコギ科ヤツデ属
 常緑低木(丈は1.5m~3m)
 開花時期は11月~12月
 小花が枝分かれした柄の先にまとまる


貴金属使わずアンモニア合成触媒となる新物質を発見

2019-12-06 | 科学・技術
 東京工業大学物質理工学院材料系の鯨井純(修士課程1年)、元素戦略研究センターの北野政明准教授と細野秀雄栄誉教授らは、貴金属を使わずに低温でアンモニア合成活性を示す物質を発見した。研究成果は米国科学誌「Journal of the American Chemical Society」オンライン速報版に11月22日付で公開。
 ●ポイント
 〇BaCeO3の酸素の一部を窒素と水素に置き換えた新物質を低温で合成。
 〇ルテニウムなどの貴金属を使わずに高いアンモニア合成の触媒活性を発見。
 〇窒素イオンと水素イオンが活性点として働く新しい反応メカニズムを提唱。
 ●ルテニウム(Ru)を使う触媒でアンモニアを合成
 農作物など植物の生育には窒素(N)が必須で、その供給源としてアンモニア(NH3)が使われている。世界の人口は70億人を超え、この人口増加を支えるのが農作物の安定供給である。これには窒素肥料が必要で、肥料原料はアンモニアである。最近では、燃やしても窒素と水しか生成されないため、再エネと組み合わせた水素貯蔵媒体としても期待されている。
 アンモニア合成には高温・高圧を必要とし、エネルギーを大量に消費する。一般的には、アンモニアの生産は「ハーバー・ボッシュ法z(HB法):1906年ドイツで開発」と呼ぶ技術で、400℃~600℃、数百気圧の条件で水素と窒素を反応させて作る。
 早稲田大学関根泰教授・中井浩巳教授らは日本触媒と共同で、化学肥料や医薬品の原料になるアンモニアを合成する新手法を開発した(H29.6)。研究チームはルテニウム(Ru)を使った触媒に直流電圧をかけると、水素イオンと窒素分子が反応し、同200度、9気圧程度でも効率よくアンモニアができることを突き止めた。この反応の原因を電子顕微鏡観察や赤外分光分析などを用いて解析した結果、直流電場中での水素イオンのホッピングが反応を誘起していることを突き止めた。この際、N2H+が中間体となっていることを明らかにした。
 しかしルテニウムは高価な貴金属であり、豊富に存在する安価な金属を利用し、温和な条件下で作動する触媒の開発が望まれていた。
 ●研究の内容
 北野准教授らの研究グループはペロブスカイト型の混合アニオン材料に着目し、新たな合成方法を見いだした。
 近年、ペロブスカイト型酸水素化物など酸素サイトの一部をヒドリドイオン(H-)に置き換えたような混合アニオン化合物がいくつか報告されており、その一部はアンモニア合成触媒として機能することが報告されている。通常、ペロブスカイト型酸化物の合成には900℃以上の高温での加熱処理が必要であり、酸素サイトの一部をヒドリドイオンに置き換えるために、CaH2(水素化カルシウム)などと550℃付近の温度で一週間程度加熱する多段階の合成プロセスとなっている。またペロブスカイト型酸窒化物の合成も光触媒などさまざまな分野で合成が行われているが、ペロブスカイト型酸化物をアンモニア雰囲気中で800℃以上の高温で加熱することにより合成されている。これは、ペロブスカイト型酸化物の酸素が非常に安定であり、ほかのアニオンで置換することが困難であることに由来している。
 北野准教授らはCeO2(酸化セリウム)とBa(NH2)2(バリウムアミド)を直接反応させることにより、ペロブスカイト型酸窒素水素化物(BaCeO3-xNyHz)の一段合成に成功した。これまでこの物質は合成例がなく、新物質であることも明らかとなった。
 原料であるBa(NH2)2は200℃程度の低温から分解するためCeO2とよく反応し、ペロブスカイト構造を形成すると同時に、酸素のサイトにBa(NH2)2由来の窒素および水素が導入される。この手法を用いると、ペロブスカイト構造が300℃という非常に低温から形成され550℃でほぼ均一な材料が得られる。
 これは一般的なBaCeO3の合成温度(約1000℃)と比べてもかなり低温で合成できていることが分かる。一方、BaCeO3をアンモニア雰囲気、900℃で加熱しても酸素のサイトにほとんど窒素が導入されないことも分かった。これらのことから、北野准教授らが開発した合成方法が、ペロブスカイト型混合アニオン材料の合成に有用であることが分かる。
 このペロブスカイト型酸窒素水素化物(BaCeO3-xNyHz)はルテニウムなどの金属ナノ粒子を固定しなくても安定したアンモニア合成活性を示すことが分かった。一般的にBaCeO3などの金属酸化物は全くアンモニア合成活性を示さないことから、アニオン(陰イオン)サイトに導入された窒素イオンや水素イオン(ヒドリドイオン)が触媒活性に寄与していることが分かる。
 さらに、BaCeO3に鉄やコバルトを固定した触媒では、ほとんどアンモニア合成活性を示さないのに対し、BaCeO3-xNyHzの表面に鉄やコバルトを固定すると、既存のルテニウム触媒よりも低温で優れたアンモニア合成活性を示すことも明らかとなった。窒素や水素の同位体ガスを用いた実験から、BaCeO3-xNyHz中の窒素および水素イオンがアンモニア合成に直接関与するユニークなメカニズムで反応が進行することも明らかとなった。
 ●今後の展開
 開発した触媒は低温低圧条件下で優れたアンモニア合成活性を示し、貴金属フリーなアンモニア合成触媒として極めて有望な材料であることが示された。今後、触媒の調製条件などを最適化することでさらなる活性向上が見込まれ、アンモニア合成プロセスの省エネルギー化に大きく貢献することが期待される。
 ◆用語解説
 〇ペロブスカイト型
 化学組成がABX3の無機化合物に見られる結晶構造の1つであり、AやBは金属カチオンでXは酸素などのアニオンからなる。Aが単位格子の中心に、Bが各格子点に、Xが各稜の中心に位置した構造である。
 〇ヒドリドイオン
 負の電荷を持った水素イオン(H-)であり、ほかに水素は電荷を持たない原子状水素(H0)や正の電荷を持った水素イオン(プロトン、H+)の形態を持つ。
 〇エネルギーキャリア
 エネルギーを貯蔵、輸送するための担体となる物質。例えば、アンモニアは窒素分子1つに水素分子が3つ付いており、多くの水素を貯蔵できる。さらに、水素と比べて簡単に液化できるため、水素の貯蔵、輸送を行うために便利な物質として注目されている。
 〇混合アニオン材料
 例えば、金属酸化物の酸素サイトの一部が窒素や水素などの異種元素で置換され、複数のアニオンが存在する物質。

表示部を巻き取れる有機ELディスプレー、シャープとNHK共同で開発

2019-12-02 | 科学・技術
 シャープは、表示部を巻き取れる有機ELディスプレーをNHKと共同で開発したと発表した(11月8日)。
 30型で高精細な4K映像を表示できるディスプレーを開発した。赤・緑・青の各色に発光する素子を使った巻き取れる有機ELディスプレーとしては、世界最大との事。信号処理技術やパネルの駆動技術などでNHKと協業し、画面の明るさの均一性や鮮明度を向上させた。柔軟性の高いフィルム基板の活用で半径2cmと小さく収納できる。
 因みに、巻き取れるディスプレーは、韓国のLG電子が巻き取り式テレビの開発を発表している。シャープは折り畳める有機ELディスプレーについては、既に開発を発表済み
 実用化の時期などは未定。オフィスでのモニターや家庭用テレビなどでの実用化を視野に検討を進める。

 今日の天気は晴れ、午後から曇り~雨、、夜には強い雨の予想。
 所要があり、郊外に出かけた。郊外のお家のお庭に”ヒイラギ”が植えられており、花が咲いている。開花時期は11月~12月だ。良く似た”ヒイラギモクセイ(柊木犀)”の開花時期は10月頃だから、少し遅れて咲く。
 ”ヒイラギ”は古くから邪気を払う木(縁起木)とされ、庭に植える習慣がある。葉に鋭いトゲ(鋭鋸歯)があるから。名(ヒイラギ)の由来も、固くてギザギザ(さわると痛い)した葉に触れると「ひいらぐ(疼く、ひりひり痛む)」から、ひいらぎぎ(疼木)→ひいらぎ、となった。
 ”ヒイラギ”は雌雄異株である。雄株の花は2本の雄蕊が発達し、雌株の花は花柱が長く発達して結実する。写真の花は雄株の花かな。
 ヒイラギ(柊、疼木・柊木)
 学名:Osmanthus heterophyllus
 モクセイ科モクセイ属
 常緑の低木
 雌雄異株
 原産は日本を含む東アジア
 開花時期は11月~12月
 花にはキンモクセイに似た芳香がある
 花冠は4深裂し、径5mm程。花弁は強く反り返る
 果実は長さ12~15mmになる核果で、翌年6月~7月に暗紫色に熟す


海水中で素早く強力に接着し、繰り返し使用可能な新規接着剤を開発

2019-12-01 | 科学・技術
 北海道大学創成研究機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)・同大学院先端生命科学研究院のFan Hailong(フアン ハイロン)研究員、同研究拠点・同研究院・同大学国際連携研究教育局の剣萍(グン チェンピン)教授らの研究グループは、海水中で素早く強力に接着し、繰り返し使用可能な新規接着剤を開発した。本研究成果は、2019年11月12日公開の「Nature Communications」誌に掲載。
 ポイント
 〇海水中で素早く強力に接着し、繰り返し使用可能な新規接着剤の開発に成功。
 〇本接着剤の化学構造は、海洋付着生物であるイガイの接着タンパク質を参考に設計。
 〇海中作業における接着剤やシーリング材、また海中でのコンクリート硬化剤として期待。
 イガイやフジツボなどの海洋付着生物は、「接着タンパク質」と呼ばれる接着剤を分泌することによって、海水中で岩に強固に接着する。一方、ほとんどの人工的な接着剤は空気中では材料に強く接着するが、水中や海中では使用出来ない。
 研究グループは、イガイの接着タンパク質中では+に帯電したカチオン性部位と芳香環と呼ばれる部位が隣り合って並んでいることに着目し、カチオン性部位と芳香環部位が隣同士に配置された高分子化合物を合成した。得られた高分子化合物は海水中で接着剤として働き、石・ガラス・プラスチックなどの様々な固体を強く、素早く接着させることが出来た。その接着強度は最大で約60kPa(接着面1m2あたり6tもの重さに耐える)と非常に丈夫であり、また剥離と再接着を何度も繰り返すことも出来る。一方で、カチオン性部位と芳香環がランダムに配列した高分子化合物では、上記のような強い接着は見られなかった。すなわち本化合物による海水中での強い接着は、カチオン性部位と芳香環が隣同士に配列した構造に由来することがわかった。
 本研究は、海水中において繰り返し使用可能な接着剤の開発を報告する世界初の例になる。本材料は、海水中において仮止め剤や破損の修復剤として使用可能であるほか、本技術を活かした海水中でのコンクリート製造なども可能になると期待される。

 今日の天気は、雲が多い晴れ。早朝に畑に行ったら、霜が降りていた。寒い朝だった。
 小さなお花畑で、まだ”マリーゴールド”の花が咲いている。八重花が多い。
 ”マリーゴールド (marigolds)”のマリーとは聖母マリア様のこと。聖母マリアの祭日に、この花が咲いていたことから”聖母マリアの黄金の花”が名前の由来。
 ◆聖母マリアの祭日
 最も名高いものとしては、最古のマリアの祝日とされる8月15日の聖母被昇天の大祝日がある。
 マリーゴールドには幾つかの種(約50種)があり、代表品種としてはフレンチ・マリーゴールド(French marigold)、アフリカン・マリーゴールド(Aflican marigold)、メキシカン・マリーゴールド(Mexican marigold)など。よく見かけるのは、フレンチ・マリーゴールド、かな。
 マリーゴールド(marigolds)
 別名:紅黄草(こうおうそう)、孔雀草(くじゃくそう)、万寿菊(まんじゅぎく)
 学名:Tagetes patula
 キク科タゲテス属(マンジュギク属)
 一・ニ年草
 原産地:メキシコを中心とする中米
  江戸時代前半に渡来したと言われる
 開花時期は5月~11月
 多くの種があり、花姿(咲き方)は一重・八重・カーネーション咲きなど


フィルム状の曲がる超薄型電池開発、ウエアラブル端末に

2019-11-25 | 科学・技術
 山形大学工学部森下正典産学連携准教授が、超薄型のやわらかく曲がるリチウムイオン電池を開発したと発表した(11月3日)。
 従来の液体に代わり固体化したゲル状の電解質を使用した。フィルム状にすることで1ミリメートル以下の薄さを実現し、折り曲げて使用できる。これまでフィルム状の電池の開発事例はあったが充電が十分にできなかった。ゲル素材を工夫することで実用化レベルに到達した。
 リチウムイオンはプラス極とマイナス極の間を動くことで電気を発生する一方、動き過ぎると発熱してショートする。現在の一般的な電池は電極と、イオンが動く媒体となる電解質(液体)に加え、プラス極とマイナス極の間に微小な穴の開いたセパレーター(樹脂製)を置き、イオンの過剰な動きを抑制している。しかし、液体の電解質は液漏れの可能性があるほか、セパレーターとともに燃焼しやすく、スマートフォンの発火事故などが報告されている。
 今回の次世代型は電解質をゲル化し、粘着性を持たせることでイオンの動きを調整するセパレーターの役割も担わせたのが特徴。液体の電解質を使う既存のリチウムイオン電池の課題であった発火や液漏れの恐れがなく、フィルムを切断しても使用できる。正極と負極を分けるセパレーターに電解質を練り込みフィルム状にした。開発は4年がかりで、当初2年間は企業と共同研究したが、その後は自ら研究を続けて実用化につなげた。蓄電能力を維持しつつ、曲げに強く、熱で収縮しても燃焼せず安全性も高いという。
 腕時計型端末のベルト部分に使うなど、様々な用途を開拓できる、(森下准教授)としている。

 早朝(深夜からかな?)から濃霧。小雨が降っているのかな、と思う程に湿度が高い。
 10時ころより晴れ、快晴に近い・・。


隕石から生命を構成するリボースなどの糖分子を検出、宇宙にRNAの材料となる糖の存在を証明

2019-11-23 | 科学・技術
 東北大学の古川善博准教授、中村智樹教授、阿部千晶(卒業生;当時博士課程前期2年生)、北海道大学の力石嘉人教授、海洋研究開発機構の大河内直彦上席研究員、小川奈々子主任技術研究員、NASAゴダード宇宙飛行センターのDaniel P. Glavin研究員、Jason P. Dworkin研究員の研究グループは、2種類の炭素質隕石から、リボースやアラビノースなどの糖を初めて検出した(11月19日発表)。
 ポイント
 〇隕石から生命を構成するリボースなどの糖分子を初めて検出した。
 〇宇宙に生命を構成する糖分子が存在することを初めて証明した。
 〇地球外で非生物学的に作られた糖分子が地球にもたらされていた直接的な証拠を発見した。
 〇地球外で形成された糖分子が、原始地球で生命誕生の材料に使われた可能性を示す。
 説明
 隕石からはこれまでに、多くの有機物が検出され、タンパク質に含まれる一部のアミノ酸や核酸に含まれる一部の核酸塩基など、生命の原料になりうる有機分子も見つかってきた。核酸(RNAとDNA )は、核酸塩基と、リボースもしくはデオキシリボースという糖分子が結合したもので、遺伝情報の保存とその情報からタンパク質を作る役割を担っている。このように核酸には糖分子が必要だが、核酸を形成しうる糖分子はこれまでに隕石を含む地球外由来の試料からは見つかっていなかった。
 研究グループは、独自に開発した分析手法によって、マーチソン隕石とNWA801隕石からリボースを含む複数の糖分子の検出に成功した。また、検出された糖分子の安定炭素同位体組成分析から、これらの糖分子が宇宙由来であることを確認した。これまでの研究では、生命と関係の薄いジヒドロキシアセトンという糖分子だけが見つかっていたが、今回の研究では生命の根幹を担う核酸を構成する糖分子を検出した。
 このように糖分子は40億年以上前の太陽系初期に、地球外で形成されており、生命誕生前の地球にも降り注いでいたと考えられる。当時の地球上でも糖を生成する反応は起こっていたと考えられているが、それがどのような種類の糖分子で、どれくらいの量が作られたのかを示す証拠は、残っていない。
 隕石からリボースなどの糖分子が検出されたことは、生命誕生前の地球での新たな糖分子の供給源を直接的に示す新たな証拠であり、地球外を起源とする糖分子が他の生命分子とともに生命の材料の一部となった可能性が出てた。
 リボースの発見はさらに重要な意味がある。現在多くの研究者が、初期の生命は、DNA-タンパク質が主役の複雑なシステムを持つ生命ではなく、RNAがDNAとタンパク質の両方の役割を担った単純な生命であったというRNAワールド仮説を支持している。本研究でDNAを構成するデオキシリボースではなく、RNAを構成するリボースが生物の関与しない宇宙空間で(非生物学的に)生成している証拠を得たことは、この点でも重要な意義を持っている。
 今後の研究ではNASAから新たに提供を受けた複数の隕石を分析し、地球外からどれだけの糖が地球にもたらされたのかを詳しく明らかにしていく予定である。

 今日(11月23日)は勤労感謝の日で、日本の国民の祝日である。「勤労をたつとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」ことを趣旨としている。1948年(昭和23年)に公布・施行された同法により制定された。
 今日の天気は小雨、時々曇り。
 数日前は快晴の日があった。青い空に、”サザンカ”の赤い花が綺麗だった。
 冬の季節に咲く花は少ないが、”サザンカ”は晩秋から初冬にかけて咲き始め、翌年の1月・2月までと長い間咲いている。同じツバキ科ツバキ属のツバキ(椿)は2月頃より咲き出す。
 ”サザンカ”を「山茶花」と書くが、「山茶花」は椿(つばき)の漢名、なので誤用と言う。”サザンカ”の名は、山茶花(さんさか)→茶山花(ささんか)→さざんか、からと言う・・らしい。
 因みに、”サザンカ”は同属同科の椿(つばき)良くと似ているので見分け方が難しい。”サザンカ”は葉縁がギザギザして、花びらがバラバラに散る。”ツバキ(椿)”は葉が細長と少し大きくでギザギザがなくて、花は首から落ちる。
 サザンカ(山茶花)
 別名:岩花火(いわはなび)、姫椿(ひめつばき)、藪山茶花(やぶさざんか)
 学名:Camellia sasanqua
 ツバキ科ツバキ(カメリア)属
 常緑小高木
 原産地は日本
 開花時期は10月~翌2月
 花径は5cm~7cm、花色は白・桃・赤など
 沢山の園芸品種があり、サザンカ系、ハルサザンカ系、カンツバキ系の3大グループがある


ペロブスカイト発光ダイオードの発光効率が4倍に

2019-11-18 | 科学・技術
 九州大学最先端有機光エレクトロニクス研究センターの安達千波矢教授、九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所の松島敏則准教授、Changchun Institute of Applied Chemistry(中国)のQin Chuanjiang(シン センコウ)教授は、京都大学化学研究所、Chinese Academy of Sciences(中国)、Sorbonne Universite(フランス)、CNRS-Universite de Strasbourg(フランス)と共同で、適切な有機材料を選択することによって、擬二次元ペロブスカイトLEDの発光効率を約4倍に向上させることに成功した。本研究成果は、令和元年11月12日(火)(日本時間)に「Nature Photonics」誌でオンライン公開。
 金属ハライドペロブスカイトは太陽電池の光吸収材料として注目を集めている。その光電変換効率は、シリコン太陽電池に匹敵する25.2%に到達している。また、金属ハライドペロブスカイトは発光ダイオード(LED)の発光材料としても有望である。しかしペロブスカイトLEDの発光効率には問題が残されており、発光効率を向上させる技術の確立が望まれていた。
 ペロブスカイト薄膜は簡単に作製でき、色純度が高い発光を示す。そのため、ペロブスカイトLEDは低コスト・高色純度な次世代型ディスプレイ用途として期待されている。本手法を用いればペロブスカイトLEDの発光効率を大幅に向上させることができるために、ディスプレイ産業分野に大きなインパクトがある。また、本手法を用いればペロブスカイトからのレーザー発振特性の向上も期待でき、医療や通信分野にも貢献できる。
 研究概要
 LEDの発光材料として用いた擬二次元ペロブスカイトは金属ハロゲンと有機アミンで構成される。擬二次元ペロブスカイト中で電子とホールが再結合すると一重項励起状態と三重項励起状態が1:3の比で形成される。擬二次元ペロブスカイトの有機アミンとしてナフチルアミンを用いた場合では、擬二次元ペロブスカイト中で形成された三重項励起状態エネルギーはナフチルアミンへと移動し消滅した。これは、ナフチルアミンの三重項励起状態エネルギー準位が擬二次元ペロブスカイトの三重項励起状態エネルギー準位よりも低い位置にあるためである。その結果、発光に関与するのは1/4の割合で形成された一重項励起状態のみであった。ところが、有機アミンとしてフェニルアミンを用いた場合、高い三重項励起状態エネルギー準位を持つフェニルアミンへのエネルギー移動は生じないために、擬二次元ペロブスカイトの三重項励起状態エネルギーを発光に利用できるようになった。本研究では三重項励起状態の物理を解明し、その重要性を明らかにした。
 本研究で採用したペロブスカイトLED構造は、透明陽極/有機ホール輸送層/擬二次元ペロブスカイト発光層/有機電子輸送層/金属陰極である。擬二次元ペロブスカイトに紫外線を照射すると一重項励起状態のみが形成され明るく発光する。しかし、LED構造中では発光機構が異なる。ペロブスカイトLED中ではキャリアの再結合により一重項励起状態と三重項励起状態が1:3の比で形成される。通常は三重項励起状態からの発光は観測されない。ペロブスカイトにおいては一重項励起状態と三重項励起状態のギャップエネルギーが小さいために(<20meV)、これら状態間で移動が生じやすくなる。三重項励起状態が一重項励起状態へと変換されると、効率の良い発光が一重項励起状態から観測される。ここで、擬二次元ペロブスカイトの有機アミンとしてナフチルアミンを用いると一重項励起状態に変換される前に三重項励起状態が消滅する。本研究では、三重項励起状態を消滅させないフェニルアミンを用いるとペロブスカイトLEDの発光効率が約4倍に向上することを見いだした。
 ◆用語解説
 〇金属ハライドペロブスカイト
 金属ハライドペロブスカイトはABX3型のペロブスカイト構造を示します。Aサイトとしてメチルアミン、ホルムアミジニウムアミン、セシウムなど、BサイトとしてはPb2+やSn2+などの金属カチオン、XサイトとしてはI-、Br-、Cl-といったハロゲンアニオンが用いられます。BX6八面体が頂点共有により連結されることにより3次元構造が形成されます。BX6骨格の持つ負の電荷と電気的バランスを保つためにAサイトにカチオンが配置されます。比較的大きなナフチルアミンやフェニルアミンを添加すると、金属ハロゲン層の厚みを制御することができます。このペロブスカイトのことは擬二次元ペロブスカイトと呼ばれ、高い発光効率を示すことが知られています。金属ハライドペロブスカイトは太陽電池の光吸収層、LEDの発光層、電界効果トランジスタの半導体層、レーザーデバイスの活性層などとして用いられます。
 〇電子とホール
 電子は全ての物質を構成する素粒子でマイナスの電荷を持っています。材料から電子が1つ引き抜かれると空の部分ができます。この空の部分はプラスに帯電しておりホールと呼ばれます。
 〇一重項励起状態と三重項励起状態
 電子の持つスピンには上向きと下向きの2つの状態があります。ある分子の最高被占軌道と最低空軌道のそれぞれに電子がある場合、スピンが逆向きであるのが一重項励起状態、スピンが同じ向きなのが三重項励起状態と呼ばれます。三重項励起状態から一重項基底状態へ戻る過程はスピン反転が伴うために禁制(非発光性)となります。
 〇カチオン
 正に荷電したイオンのこと。
 〇アニオン
 負に荷電したイオンのこと。

 今日の天気は曇り。雨が降らない程度に明るい、夕方から雨?。
 近くの公園には様々な木々が植えられている。その中の”ソヨゴ”に花が咲いていた(6月20日のブログで紹介)。今日の散歩で見つけた、赤い実が沢山付いていた。
 ”ソヨゴ”は雌雄異株なので、この木は雌株。
 名(ソヨゴ)の由来は、風が吹くと葉などがこすれて音をたてて揺れる(→戦ぐ:そよぐ)様から。岡山県では「ふくらしば」・「ふくらし」と呼ぶそうで、葉を熱すると膨れて音を立てて弾ける事から。
 ソヨゴ(冬青、戦、具柄冬青)
 別名:フクラシバ(膨ら柴)
 学名:Ilex pedunculosa
 モチノキ科モチノキ属
 常緑広葉樹、中高木
 雌雄異株
 原産地は日本
 開花時期は6月
 花色は白、花弁は5枚(4枚もある)で長さ2mm程
 果実は径8mm位で、秋に稔り、橙色~赤色に熟す
 果実の色に、黄色(キミソヨゴ、と呼ぶ)のものがある



3Dプリンターで石英ガラスを複雑な形状に加工

2019-11-15 | 科学・技術
 九州大学藤野茂教授の研究グループは、加工が難しく単純な形状しか作製できなかったシリカガラス(石英ガラス)を、3Dプリンタにより超複雑形状で作製する技術を開発した(10月15日公開)。
 シリカガラス(石英ガラス)は、光学的透明性、機械的強度、耐熱性、耐薬品性などの物性において優れるため、光学部品・電子部材・半導体製造工程における治具などとして活用されてきた。しかし、その強度や化学的耐久性の高さは加工を困難にするため、シリカガラスの加工製品は極めて高価になり、用途が限定されていた。
 藤野教授の研究グループは、従来の加工技術では困難な形状を容易且つ安価に作製する技術を3Dプリンタに応用することに初めて成功した。今回の応用開発により、3Dプリンタならではの、超複雑形状、オンデマンドでの石英ガラス製品が作製可能となり、優れた物性を有するもののその加工が困難なため商用化できなかった用途への展開が期待される。
 ポイント
 〇1ミリメートル以下の精度で加工できるため、健康管理に使われるマイクロチップなどの材料に使える。
 〇石英ガラスなどを溶かした特殊な液体に、紫外線を当てて形状を固める3Dプリンターの技術を確立した。
 〇光を照射した後、セ氏1000度以上の熱で焼くと透明なガラスになる。液体から形を作ることで複雑な形を実現できる。
 研究者からひとこと
 3Dモデルのデータさえあれば、これまで不可能であった形状も本手法により実現可能となります。今後、ガラスは切削・加工を行うのでなく、目的の機能と形状へと作り上げることを目指します。これにより、新しいシリカガラスの新産業創出と社会的課題解決へ貢献できればと思っております。

 今日は晴れ。気温は最高気温14℃、北海道では0℃以下が多い、暖かさに感謝。
 駐車場の隅の”ナナカマド、実が赤く綺麗だな。葉はまだ残っている。
 名(ナナカマド)の由来には諸説あり、有力な説は「堅い木で七度竃(かまど)にくべても燃えない」との説。”ナナカマド”の木は極上備長炭となる事が知られており、他の説に「7日ほど炭窯(すみがま)で焼くと良質の硬炭ができる木」からの説もある。
 ナナカマド(七竈)
 別名:山南天(やまなんてん)
 学名:Sorbus commixta
 バラ科ナナカマド属
 落葉小高木
 北海道~九州、朝鮮・樺太・南千島に分布
 開花時期は5月~7月
 枝先に複散房花序を出し、白い小さな花が沢山咲く
 花弁は5枚、花色は白
 成実期は9月~11月、球形の果実(径は数mm)


太陽光と水と酸素で過酸化水素(H2O2)を合成、RF光触媒樹脂の開発に成功

2019-11-14 | 科学・技術
 大阪大学 太陽エネルギー化学研究センターの白石康浩准教授、平井隆之教授らの研究グループは、太陽光照射下、水と酸素(O2)を原料とする非常に高いH2O2合成活性を示す新規光触媒として、レゾルシノール-ホルムアルデヒド(RF)光触媒樹脂を開発した(7月2日)。本研究成果は、英国科学誌「Nature Materials」のオンライン版にて7月1日16時(日本時間7月2日0時)に公開。
 ポイント
 〇過酸化水素(H2O2)は漂白剤や消毒剤として重要な化学物質であり、燃料電池発電の燃料となるエネルギーキャリアとしても有望視されているが、水素ガス(H2)を原料とするエネルギー多消費型のプロセスにより合成されており、地球上に豊富に存在する原料から再生可能エネルギーを用いて合成する方法が期待されていた。
 〇今回、塗料や接着剤として用いられる汎用のレゾルシノール-ホルムアルデヒド(RF)樹脂(絶縁体であるため、これまで半導体光触媒には用いられてこなかった)を、独自の高温水熱法により合成することにより、太陽光エネルギーを用いて水と酸素(O2)からH2O2を最大効率で生成するRF光触媒樹脂の開発に成功した。
 〇開発した光触媒樹脂は1μm程度の球状粒子であり、取り扱いも容易なため、さまざまな加工により社会実装が期待できる。H2O2をオンデマンドで生成する抗菌・殺菌デバイスの実現、並びにH2O2をエネルギーキャリアとする新エネルギー社会の実現に向けての社会実装が期待できる。
 研究の背景
 H2O2は漂白剤や消毒剤として不可欠な化学物質である。またH2O2は燃料電池発電のための燃料として使えるため、近年、再生可能エネルギーの貯蔵・輸送を担うエネルギーキャリアとして注目されている。しかし、従来のH2O2合成は、H2とO2を多段階で反応させるエネルギー多消費型のプロセスにより行われている。
 これに対して光触媒では、太陽光エネルギーにより水とO2からH2O2を製造する(H2O+1/2O2→H2O2)ことが原理的には可能であり、省エネルギープロセスとして期待されている。しかし、通常の光触媒では、水の四電子酸化(2H2O→O2+4H++4e?)と、O2の選択的な二電子還元(O2+2H++2e?→H2O2)を同時に進めることは困難である。また、通常、光触媒として用いられる金属酸化物半導体では生成したH2O2が分解してしまう。そのため、新しい光触媒の開発が求められていた。
 研究の内容
 RF樹脂は、レゾルシノールとホルムアルデヒドが縮合した汎用の合成高分子であり、塗料、接着剤、鋳型として幅広く利用されている。この樹脂を一般的な合成温度(~100℃)よりも高い温度(>200℃)で水熱合成することによってRF光触媒樹脂を開発した。開発した触媒は、600nmを超える長波長の光を吸収し、太陽エネルギー変換効率で0.5%以上という、一般植物による天然光合成(~0.1%)を大幅に上回る非常に高い効率でH2O2を合成することができる。光触媒による太陽エネルギー変換では、水分解による水素製造(H2O→H2+1/2O2)などが古くから研究されているが、この0.5%という変換効率は、これまでに報告された粉末光触媒による太陽エネルギー変換反応としては最大の効率である。
 さらに、RF樹脂の光触媒活性が高温水熱合成により飛躍的に向上する原因を明らかにした。高温水熱法では、レゾルシノールのベンゼノイド体(電子ドナー)とキノイド体(電子アクセプター)が連結したドナーアクセプター(DA)対が形成され、これらが積み重なることにより半導体バンド構造を形成する。光触媒樹脂の価電子帯および伝導帯バンド準位は、それぞれ、水の酸化(2H2O→O2+4H++4e?)と、O2の還元(O2+2H+2e?→H2O2)に適切な準位であるほか、有機高分子であるため、生成したH2O2の分解には低活性である。これらの特徴により、非常に高いH2O2合成活性が実現されることが明らかになった。
 本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
 太陽エネルギーの化学エネルギーへの変換は古くから研究されているが、貴金属の使用が不可欠であった。本光触媒樹脂は、汎用高分子であるRF樹脂を“簡便な高温水熱法により処理するだけ”で合成できる。金属は一切含まれず、汎用の原料から高活性な半導体光触媒を調製することができる。樹脂を水に懸濁させて空気存在下で太陽光を照射するだけの簡便な操作により液体燃料を製造できる特徴は、太陽エネルギー変換に対する考え方を革新する新材料となるはずである。また、今回の光触媒設計を応用することで、さらに高活性なH2O2合成触媒を創製できると期待できる。開発した光触媒樹脂は、1μm程度の球状粒子であるほか取り扱いも容易なため、さまざまな加工により社会実装が期待できます。現在、企業と連携しながら、(1)生活環境における高機能材料やデバイス(抗菌殺菌機能を持つ塗料や容器など)、(2)エネルギーキャリアとしてのH2O2の製造・貯蔵・輸送による水素エネルギー社会の構築に向けて社会実装を進めている。
 研究者のコメント
 RF樹脂は、本来、“絶縁体”であるため半導体光触媒の候補として考えられたことはなかった。今回の「常識はずれ」な発見は、汎用の材料を半導体光触媒として、太陽光、水、空気から液体燃料を製造できる可能性を示すものであり、太陽エネルギーの化学エネルギーへの変換に対する新しい考え方を導くものと考えている。産官学の力を集結し、エネルギー製造技術の革新を進めることができれば幸いです。
 ◆用語解説
 注1)エネルギーキャリア
 エネルギーの輸送・貯蔵のための化学物質。特に、アンモニアや有機ハイドライド、ギ酸、H2O2など、海外など再生可能エネルギーが豊富な地域で得た電気エネルギーを化学的に変換して消費地まで貯蔵・輸送するのに用いられる化学物質を指す。
 注2)光触媒
 光を吸収することにより生ずる正孔と励起電子により、それぞれ酸化・還元作用を示す物質。代表的な光触媒として、二酸化チタン(TiO2)が知られている。本研究で開発したRF光触媒樹脂は、正孔による水の酸化(2H2O→O2+4H++4e?)と励起電子によるO2の還元(O2+2H++2e?→H2O2)によりH2O2を生成している。
 注3)レゾルシノール-ホルムアルデヒド(RF)樹脂
 レゾルシノールとホルムアルデヒドを、室温~100℃程度の温度で縮合させて合成する合成高分子。1989年に初めて合成され、現在でも接着剤、塗料、鋳型として幅広く利用されている。
 注4)高温水熱法
 密閉容器内での熱水中により行われる化合物の反応。通常の水熱反応は~100℃の温度で行われるが、本合成法では200℃以上の温度で行うことを特徴としている。
 注5)太陽エネルギー変換効率
 太陽光または疑似太陽光により照射した光エネルギーのうち、化学エネルギーに変換された割合。
 注6)半導体バンド構造
 半導体において、電子で占有されたバンドを価電子帯、空のバンドを伝導帯といい、それぞれのエネルギー準位が物質を酸化、還元するために重要である。なお、価電子帯と伝導帯の幅の大きさをバンドギャップという。

 天気は雲が多い晴れ。早朝にパラパラと小雨があった。気温は、最高気温18℃、最低気温13℃とこの季節としては暖かい。
 早朝の散歩で、空き地の”イヌホオズキ”を見つけた。花が咲いており、実も付いている。実はまだ青く、黒く熟していない。
 ”イヌホオズキ”には、これに似た”アメリカイヌホオズキ””テリミノイヌホオズキ””オオイヌホオズキ”があり、これらの区別はとても難しい。花・葉・果実の付き方・果実の照りなどで区分するが何れも微妙なのだ。私は果実の付き方で区分する。”イヌホオズキ”の実は房になり、果柄が少しずつずれて付いている。
 名(イヌホウズキ:犬酸漿)の由来は、”ホウズキ”に似ているが液果は黒く、これを包む赤橙色の萼がなく、使い道がないからと言う。別名でバカナスと呼ばれる。因みに、全草にソラニン(ナス科の植物に含まれるステロイドアルカロイドの1種)を含むので食べられない。
 イヌホウズキ(犬酸漿、犬鬼灯)
 別名:バカナス(馬鹿茄子)
 学名:Solanum nigrum
 ナス科ナス属
 1年草
 史前帰化植物だと考えられている
   (史前帰化植物とは稲と随伴して渡来し、帰化した植物)
 開花時期は7月~10月
 花は径6mm位、5裂して裂辺は尖る
 果実は未熟な場合には青く、小さいトマト様
 熟すと径7mm~10mmの黒色の果実となる
 果実には光沢がない


化学反応における触媒活性を予測するための理論の拡張に成功

2019-11-13 | 科学・技術
 理化学研究所環境資源科学研究センター生体機能触媒研究チームの大岡英史基礎科学特別研究員と中村龍平チームリーダーの研究チームは、化学反応における触媒活性を予測するための理論の拡張に成功した。本研究は、米国の科学雑誌「The Journal of Physical Chemistry Letters」オンライン版(日本時間10月18日)に掲載。本研究成果は、貴金属元素を使わずに高い活性を示す、新たな触媒材料の開発につながると期待できる。
 これまでの触媒理論では、高い活性を持つ触媒を開発する上で、触媒と反応基質の吸着エネルギーを最適化することが重要であると考えられてきた。しかし、現実社会で役立つ触媒を開発するためにどうすればよいかは、平衡状態に着目した従来理論では予測できません。なぜなら、実際に触媒反応を起こすためには熱や電気などのエネルギーを与える必要があり、このことによって触媒は平衡状態でなくなるためです。
 今回、研究チームは反応速度論に基づき、エネルギーを与えた環境での触媒活性を予測する理論の構築を試みました。その結果、エネルギー投入量によって、高い活性を得るために最適な吸着エネルギーが大きく異なることを突き止めました。これは、従来理論では活性が低いとされてきた材料でも、現実社会では高い活性を示す可能性があることを意味する。したがって、本理論は、現在産業界で触媒として使われている白金(Pt)などの貴金属材料を、より豊富に存在する銅(Cu)やニッケル(Ni)などの元素で代替することにつながる。
 背景
 現代の人類社会にとって、触媒は不可欠である。例えば、石油化学製品や化学肥料を合成する化学反応は、触媒によって促進される。また、燃料電池や水素製造、人工光合成など、次世代のクリーンエネルギー技術にも触媒は欠かせない。優れた触媒の開発には、活性を予測する触媒理論が重要である。現在は、Paul Sabatierが1911年に提唱した「触媒と基質の結合の強さを表す吸着エネルギーは、大きすぎても小さすぎても良くない」というSabatier則がその役割を担っている。この法則は、触媒と基質の吸着エネルギーが大きすぎると反応が起こりにくく、小さすぎると反応が終わった基質が触媒から離れないことに由来している。したがって、その中間にある「ほど良い吸着の強さ」を持つ材料こそが優れた触媒だと考えられてきた。
 現在では、この吸着エネルギーの最適値を計算化学で求め、そのような値を持つ材料を合成することが最も効率的な触媒探索と考えられている。そして、吸着エネルギーの最適値を求める際には、計算がしやすいという理由で平衡状態に近い条件で計算が行われてきた。しかし、平衡状態では実質的に反応は起こらないため、実際に触媒が使われる環境とは大きく異なる。現実社会では、反応を促進するために熱や電気などのエネルギーを触媒に与える。これにより初めて、活発な反応が起こるようになる。ここで注意したいのは、与えるエネルギー量の大小で触媒活性が逆転するかもしれないということである。例えば、触媒Aを使う場合には、少ないエネルギーで触媒反応が起こり始めるが、エネルギーを与えても反応速度はあまり大きくならない。これに対し、触媒Bを使う場合は一度反応が起こり始めると、少しのエネルギーを与えるだけで急激に反応が速くなる。 現実社会では、エネルギーをたくさん与えたときに反応が速く進む触媒Bのような材料が必要とされている。本研究による理論では、触媒Bのような材料を実現するために必要な吸着エネルギーの条件を明らかにした。
 研究手法と成果
 研究チームはまず、吸着エネルギーに応じて触媒反応の速さがどのように変化するかを評価するために、反応速度論に基づく計算を行った。そのモデル反応として、水素酸化反応(H2→2H++2e-)を使う。水素酸化反応は、燃料電池における水素の燃焼反応として注目されていることに加えて、反応そのものが2段階で単純なため、モデル反応に適している。また、水の電気分解によって水素を作る水素発生反応(2H++2e-→H2)も反応機構が類似しているため、本研究で得られた結果は水素発生触媒にも応用可能である。
 反応速度論により、水素酸化反応の触媒活性(反応速度)を表す数式を導き出した。得られた数式により、反応速度は吸着エネルギー、触媒に与えたエネルギー、そして反応の速度定数[9]から決まる値(K)の3変数から予測できる。Kは吸着水素原子が生成しやすいかどうかを表し、K>1の場合は生成しやすく、K<1の場合は生成しにくくなる。
 導出した数式によって水素酸化反応の触媒活性を予測すると、吸着エネルギーと反応速度の関係性を表した図が得られた。この関係性は吸着水素原子のできやすさ(Kの値)によって変化するが、どちらの場合もエネルギーを与えることによって、触媒活性が青い線(平衡状態)から赤い線(実際の反応環境)に向かって変化する。赤い線が青い線の上側にあるのは、エネルギーを与えることによって触媒が活性化し、反応が速くなるためです。ここで重要なのは、赤い線と青い線では頂点の場所が変わっていることです。この頂点は反応速度が最大になる点、つまり吸着エネルギーの最適値を表しています。したがってこれらの図は、平衡状態と実際の反応環境とでは、吸着エネルギーの最適値が異なることを示しています。
 今後の期待
 今回の理論的な予測は水素酸化反応をモデルにしているが、それ以外にも触媒材料の効率化が期待されている反応がたくさんある。したがって、本研究の理論を拡張し、より複雑な反応でも取り扱えるようにする必要があると考えられる。同時に、優れた材料の予測だけでなく、そのような材料を開発することも重要である。そのことによって初めて、この研究で行われた理論的な予測の正しさを証明し、貴金属元素に依存しない、新たな触媒開発の指針を確立することが可能となる。特に、近年急速に加速している機械学習による触媒探索も、Sabatier則から予測される平衡状態の活性をもとに材料の良し悪しを判定している。したがって、本研究による触媒理論の拡張はデータ駆動型触媒探索の効率化にもつながる成果である。
 ◆補足説明
 1.触媒
 化学反応の前後で自身は変化しないが、継続的に反応を起こりやすくし続ける(反応速度を著しく大きくする)化学物質のこと。このような意味では、生物の体内にある酵素も触媒の一種と考えられる。
 2.反応基質
 反応が起こる前の化学物質を反応基質という。反応が起きると、基質は生成物に変換される。
 3.吸着エネルギー
 多くの触媒反応は、反応基質と触媒が一時的な結合を作ることで進行する。吸着エネルギーとは、このとき作られる結合の強さを表す数値である。吸着エネルギーが小さいほど結合は安定であり、大きいほど不安定となる。
 4.平衡状態
 触媒に与えるエネルギーが小さいと、反応は見かけ上起こらない。しかし、これは反応が全く起きていないわけではない。見かけ上何も起こらないのは、反応が起きているにもかかわらず、その逆反応も同じくらいの速さで起きているためである。このような、逆反応と釣り合いが取れた状態が平衡状態である。
 5.反応速度論
 化学反応がどれだけ速く起きるかを予測するための理論。反応が起きるかどうか、だけに着目する熱力学や平衡論よりも数式は複雑になるが、触媒活性についてより多くの知見を得られるという点において優れている。
 6.燃料電池
 水素と酸素を化学反応させて発電する装置。化学反応を効率的に起こすため、白金触媒が使われている。
 7.Sabatier則
 フランスのノーベル化学賞受賞者であるPaul Sabatierが、100年ほど前に見つけた法則。「触媒と基質の吸着エネルギーは、大きすぎても小さすぎても良くなく、最適値が存在する」とするもの。その提唱以降、さまざまな触媒反応でその正しさが実験によって証明されている。
 8.モデル反応
 数多くある反応の中でも、理論解析で取り上げるのに適した反応のこと。水素酸化反応は2段階で進むと考えられており、最も単純な触媒反応の一つである。このような単純な反応で起こりうる効果は、より複雑な反応でも起こる可能性があるため、単純なモデルを使う方がより広範囲の反応を扱うことにつながる。例えば、水素酸化反応で高活性領域が広がる(図4b)なら、その他の反応でも高活性領域の拡大が起きる可能性が高い。
 9.速度定数
 同じだけエネルギーを与えても、反応によって速さが異なる。この速さの違いを表す値が速度定数であり、触媒材料や反応環境によって変化する。本文中のKは、平衡状態における水素原子の吸着と脱着の速度定数の比を表している。
 10.eV(エレクトロン ボルト)
エネルギーの単位の一つで、1eVは1.6x10-19Jに相当する。一つの分子の中の結合など、非常に小さなエネルギーを表す際に使われる単位である。
 11.機械学習
 人間の学習能力と同様に、機械(コンピュータ)に学習能力を持たせる手法。たくさんのデータを与えれば、機械が自動的に法則性を見つけ出すという特徴がある。

 今日の天気は晴れ。朝晩は冷え込みが厳しく、最高気温17℃、最低気温7℃。
 駐車場の植栽地で、まだ”ホトトギス”が咲いている。ホトトギス(ホトトギス属)には幾つもの種があり、東アジア(日本・台湾・朝鮮半島)では19種が確認され、うち日本では 12種(13種説あり)が確認されていると言う。良く見かけるのは、タイワンホトトギス(台湾杜鵑)らしい。
 鳥のホトトギスは「不如帰」と書き、植物の”ホトトギス”は「杜鵑草 、杜鵑」と書く。名(ホトトギス:杜鵑草)の由来は、花弁(はなびら)の斑点が鳥のホトトギスの胸の模様に似ているから、と言う。
 ホトトギス(杜鵑草、杜鵑)
 学名:Tricyrtis hirta
 ユリ科ホトトギス属
 夏緑性多年草、雌雄同花
 原産地は日本・東アジア
 開花時期は8月~11月
 花は径数cm程で、上向きに咲き、花弁は6枚
 花弁の白地に濃紫の斑点が特徴的
 斑の入らない(純白)もの、紫色単色・黄色のものなどがある


1滴の血液でアルツハイマー病を早期診断、診断マーカーを発見

2019-11-08 | 科学・技術
 名古屋市立大学大学院医学研究科の道川誠教授ら同大学の研究メンバーのほか、大分大学医学部の松原悦朗教授や愛知県にある福祉村病院の橋詰良夫愛知医科大学名誉教授らも加わった、名古屋市立大学の研究グループが、「わずか1滴足らずの血液からアルツハイマー病の早期診断ができる可能性がある診断マーカーを発見した」と11月5日発表した。脳内細胞から出るタンパク質に着目した研究成果で、論文は米医学専門誌に掲載された。
 アルツハイマー病は認知症の半数以上を占める神経変性疾患で、決定的な治療法はまだない。高齢の認知症患者は国内で500万人以上いるとされ、今後さらに増加するのは確実とみられている。約40個のアミノ酸からなる「アミロイドベータ(Aβ)」という物質が脳内に凝集・蓄積し、これが原因となって発症するとされている。
 研究グループによると、発症の20年以上前からAβが脳内に凝集した老人斑の形成が進み、発症時には脳内に老人斑が広く存在することが明らかになっているが、発症してしまうと治療効果は限定的になる。このため発症前の早期診断が望まれており、米国国立老化研究所(NIA)などは「発症前アルツハイマー病(Preclinical AD)」を提唱している。国内でも陽電子放射断層撮影装置(PET)や、脳脊髄液を検査する方法などにより、Aβの蓄積状態を調べる試みがなされている。しかし費用が高いことや患者の負担が大きいことなどの課題があった。
 道川教授らは、脳の細胞から分泌される「フロチリン」と呼ばれるタンパク質に着目。健常者とアルツハイマー病患者、発症の前段階である軽度認知症の人、それぞれのグループの血液に含まれるフロチリン濃度を調べた。その結果、アルツハイマー病患者のグループは健常者のグループよりフロチリン濃度が平均して顕著に低かった。患者の認知機能障害のレベルはフロチリン濃度と相関関係がみられた。
 またPET検査によりAβの蓄積が確認された軽度認知症の人のフロチリン濃度も患者ほどではないものの、グループ平均で有意に低かった。しかし軽度認知症でもAβの蓄積がない人はほとんど低下していなかった。これらの人はアルツハイマー型ではない認知症とみられるという。
 研究グループは、フロチリンは血液1滴にも満たない量でも検出可能で、フロチリンを目印にした診断マーカーにより、簡便、安全、安価なアルツハイマー病の早期診断が可能になるとしている。
 ◆アルツハイマー病を早期に発見する方法
 現在、アルツハイマー病を早期に発見する方法には、髄液検査や、陽電子放射断層撮影(PET)画像を用いる方法がある。、髄液検査は患者の身体への負担が大きい。PET診断も機器と試薬が高価で実施できる施設も限られている。血液マーカーを使った研究は他にもあるが、フロチリンに着目したのは初めてで、「簡便で費用も安価」という。
 アルツハイマー病患者のフロチリンの濃度は、健常者より有意に低い。発症の前段階である軽度認知症の人でも、Aβが沈着していない人は有意な低下がみられないが、沈着している人は濃度が低下している。

 今日(11月8日)は立冬。秋分と冬至の中間で、昼夜の長短を基準に季節を区分する場合、この日から立春の前日までが冬となる。『暦便覧』では、「冬の気立ち始めて、いよいよ冷ゆれば也」と説明している。言い換えれば秋の極みともいえ、実際、多くの地域ではまだ秋らしい気配で紅葉の見時はまだ。
 郊外での散歩で、”マユミ”の赤い殻が沢山付いている・・見つけた。。殻の中の赤い実(種子)は、まだ割れてないので見えない。
 名(マユミ:真弓)の由来は、材質が白くて緻密・良く撓るので、この木を材料として弓を作ったから。こけしや将棋の駒も作る。因みに、果実は有毒(吐き気や下痢など)なので食べない。
 マユミ(真弓、檀)
 別名:山錦木(やまにしきぎ)、川隈葛(かわくまつづら)
 学名:Euonymus sieboldianus
 ニシキギ科ニシキギ属
 雌雄異株と言われる(不完全雌雄異株?)
  雌株のみでも果実は付く
 落葉小高木(樹高は3m~10m)
 原生地は日本、朝鮮半島、中国
 開花時期は5~6月
 花は淡緑色の小さな(径1cm位)4弁花
 果実は枝にぶら下がるようにして付く。10月~11月に熟す。
 果実の色は品種により白、薄紅、濃紅と異なるが、どれも熟すと果皮が4つに割れ、鮮烈な赤い種子が4つ現れる。この様子がとても可愛い。


溶剤を用いずに剥がせる塗料材の開発、ジェルネイルなどへの応用に期待

2019-11-02 | 科学・技術
 産業技術総合研究所機能化学研究部門スマート材料グループ山本貴広主任研究員は、株式会社TATと共同で、溶剤を用いずに剥がせる塗料材の作製技術を開発した(10月28日発表)。
 ポイント
 〇塗料材に液晶成分を混合することで、光で密着性を制御できる技術を開発
 〇近紫外光を当てると液晶成分の構造が変化して塗料材の密着性が大きく低下
 〇溶剤を用いずに剥がせるペンキやコーティング剤のほか、ジェルネイルなどへの応用に期待
 開発の社会的背景
 ジェルネイルは、爪を美しく装飾するだけでなく、労働生産性やQOLを向上する効果が期待されており、老若男女を問わず多くの人々に親しまれている。また近年では、スポーツ選手の爪を保護することによりパフォーマンス向上に繋げる試み(アスリートネイル)も行われるなど、ジェルネイルの利用と効果は、今後ますます拡大すると予測される。ジェルネイルは、液状の光重合性組成物を爪に塗布し、光照射により重合・硬化させて塗膜を形成して、爪に強固に密着させる。そのため、2~3週間は装飾された状態を維持できるが、剥がす際には、有機溶剤を大量に使用する必要があり、ジェルネイル利用者とネイリストの健康と安全に対する影響が懸念されていた。そのため有機溶剤を極力使用せずにジェルネイルを除去できる技術の開発が望まれており、これまでに酸性水溶液やアルカリ性水溶液などを用いる方法が提案されているが、現在のところ実用には至っていない。
 研究の内容
 従来の樹脂と液晶の混合物は柔らかく、ジェルネイルに用いるには硬さが足りなかった(硬さの指標である貯蔵弾性率が、約104 Pa)。そこで今回、光重合性組成物を含む樹脂原料を用いて、光による重合・硬化(光硬化)の際に架橋構造を導入することで、硬さの向上を試みた。樹脂原料と液晶の混合物を可視光(波長 = 405 nm、照射時間 = 3分)の照射で光硬化すると貯蔵弾性率は、これまでの千倍(107 Pa)程度まで向上させることができた。
 次に、混合物の無色化に取り組んだ。従来の樹脂と液晶の混合物は、液晶成分としてアゾベンゼン系化合物を含有しているため橙色に着色していた。ジェルネイルに応用する場合、別途さまざまな色に着色できるように、無色透明であることが望まれる。そこで、アゾベンゼン系とは異なる化合物を用いた新しい液晶成分を開発し、材料の無色化を進めた。
 光学特性と熱物性を指標に、数十種類の液晶成分を検討した結果、無色透明の混合物を得ることに成功した。この混合物に近紫外光(波長 = 365 nm、照射時間 = 10分)を照射すると、液晶成分の凝集構造が変化し、樹脂と相分離して白濁化することを確認した。この状態になると、基材(アルミ)に対する混合物の密着性が、照射前の10分の1まで低下した。なお、密着性は、混合物の弾性率測定の際に、混合物に加えるずり応力を大きくしていき、均一混合の混合物がアルミ製測定治具から外れるときのずり応力から推算した密着性を100とした相対値で評価した。
 今回の技術により、溶剤を用いずにジェルネイルを簡便に剥がせる新しいプロセスが想定される。まず、今回開発した混合物を基材とするジェルを爪に塗布する。そして、現在の施術と同様に可視光(波長 = 405 nm)を照射して光硬化させる。ジェルネイルを剥がす際は、近紫外光(波長 = 365 nm)を照射して相分離を誘起し、ジェルネイルと爪の密着性を低下させて剥がす。なお、これらの可視光と近紫外光は、既にジェルネイルの施術で広く使用されており、既存のライトを使用できる。今後、今回の技術の進展によって、溶剤を全く使用しない施術が可能となり、ジェルネイル利用者とネイリストの健康と安全の向上が大きく期待できる。
 今後の予定
 今後は、材料メーカーとの連携を進め、数年以内の実用化を目指す。
 ◆用語の説明
 〇アクリル樹脂、ウレタン樹脂
 アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体をアクリル樹脂と呼び、ウレタン結合をもつ重合体を総称してウレタン樹脂と呼ぶ。アクリル樹脂は透明性に優れ、ウレタン樹脂は耐摩耗性に優れており、さまざまなプラスチック製品の原料として使用されるほか、接着剤や塗料の成分としても使用される。
 〇液晶
 液晶は、狭義には、細長い棒、あるいは平たい円板のような形を持った分子が、重心の秩序性は無く、配向に秩序性を持って凝集することにより発現する状態であり、屈折率などの物性に異方性が生じる。また広義には、液晶状態を示す化合物を指す。これまで、薄型のテレビやディスプレイの表示材料として利用されてきたが、近年、液晶の特性を活かした新しい産業応用を目指した研究が進められている。
 〇相分離
 2種以上の物質の相溶性(分離せずに混ざり合う性質のこと)が温度や圧力などによって低下し、各成分が均一に混合している1相の相溶状態から、各成分に分離する現象。
 〇QOL
 Quality of Lifeの頭文字を取った言葉。生活の質と訳され、肉体的、精神的、社会的、経済的、全てを含めた生活の質を意味する。医療や介護、教育などさまざまな分野で注目・活用され、どれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り、人生に幸福を見出しているかということを尺度として捉える概念。
 〇アスリートネイル
 一般社団法人アスリートネイル協会( https://www.athlete-nail.com/)が推進する、アスリートのけが予防や競技力向上を目的として行う、爪をケア・メンテナンスする施術。
 〇光重合性組成物
 光の照射によって重合反応(高分子化)が進行する低分子化合物を含む組成物。
 〇貯蔵弾性率
 物質の粘弾性を記述する物理量の1つで、外力とひずみによって、物質に生じたエネルギーのうち物体の内部に保存(貯蔵)される成分であり、硬さの1つの指標となる。
 〇アゾベンゼン系化合物
 光異性化反応を起こす代表的な化合物。2つの窒素原子間の二重結合に対して、2つのベンゼン環が結合した構造を含む化合物。

 今日も晴れ。雲が少なく、風も弱い。天候が穏やかだと朝の散歩は快適だ。
 近所のお家の軒下に”ツワブキ”が植えられており、花が咲いている。数少ない秋~冬にかけて花を咲かせる草花に、”ツワブキ”がある。キク科の花なので、菊様の黄色い一重の頭花である。葉は大きくて形はフキ(蕗)に似ており、葉色はとても艶々(つやつや)している。名(ツワブキ)の由来は、このツヤ(艶)のあるフキ(蕗)の様な葉からツヤバブキ(艶葉蕗)→ツヤブキ→ツワブキとなった。葉に厚みがあるので「厚葉蕗」→ツワブキとなった説もある。最古の園芸書「花壇綱目」(水野元勝の著書、1681年刊)に庭植えが載っている。
 葉が大きくて艶があり、観葉植物となっている。が、”ツワブキ”の花も良い。葉には、斑(黄斑)が入っているものや、白斑葉、縮葉などもある。
 因みに、葉や根茎に強い抗菌作用がある成分(ヘキセナール)を含んでいるので、湿疹・切り傷・火傷などに効果がある(葉を火で炙り、刻んで用いる)と言う。他に、早春の若葉はお浸しで美味しい、とか。
 ツワブキ(石蕗、艶蕗)
 学名:Farfugium japonicum
 キク科ツワブキ属
 常緑多年草(宿根草)
 開花時期は10月~12月
  (初冬の季語になってる)
 花は菊様で、花色は鮮やかな黄色
 花が終わるとタンポポに似た種ができる