茨木のり子さんの詩です。
はっきりとした意味は私の頭脳ではわかりません。
出逢いも不純で、あるアニメのラストで使われていたものです。
でも、なんだか好きな詩なんです。
「魂」
あなたはエジプトの王妃のように
たくましく
洞窟の奥に座っている
あなたへの奉仕のために
私の足は休むことをしらない
あなたへの媚(こび)のために
くさぐさの虚飾に満ちた供物を盗んだ
けれど私は一度も見ない
暗く蒼いあなたの瞳が
湖のように ほほえむのを
睡蓮のように花ひらくのを
獅子の頭のきざんである
巨大な椅子に座をしめて
黒檀色に匂う肌よ
ときおり私は燭(しょく)をあげ
あなたの膝下(しつか)にひざまずく
胸飾りシリウスの光を放ち
シリウスの光を放ち
あなたはいつも瞳をあげぬ
くるいたつような空しい問答と
メタフィジックな放浪がふたたびはじまる
まれに...
私は手鏡を取り
あなたのみじめな奴隷をとらえる
いまなお<私>を生きるこのとない
この国の若者のひとつの顔が
そこに
火をはらんだまま凍っている