(1)原発は安価・クリーン・安定した優れた電源か?
· 政府試算では、原発コストは5.3円/kwhと最も安い→国費からの資金投入分、原発事故に伴う被害と補償費用は含まれていない。“隠されたコスト”を明らかに!
· 原発建設費14.5兆円、原子力関係の国費投入額16兆円(いずれも現在価格換算)。再処理費用・廃炉コストなど“バックエンド費用”も総額18.8兆円にのぼる。10.68円/kwhとの試算も(大島堅一立命館大学教授)。「安い」どころか「高い」電源だ。
· 福島第一原発事故による大規模な放射能汚染が、福島県民はもとより全国民の健康・生命・財産を侵害し、営業と雇用、地域経済や地域社会を破壊。どこが「クリーン」な電源か(高放射能地域でも福島市内だからと見捨てられる渡利・小倉寺地区)。なぜ、地域ごと避難対象地域に-ならない???
· 電力の供給不足により電力制限令を発動。この10年間を見ても、地震・事故・トラブル隠しでたびたび停止。安定した電源とはいえない。
· 新成長戦略に基づく“トップセールス”の原発輸出やめよ―日本でも世界でも信頼失った
(2)「地域独占」と「総括原価方式」に守られた “ブラックボックス”の電気料金
電力供給は、全国10の電力会社が発電・送電・配電を「地域独占」。その上、発電に要する費用(原発建設コスト、アメリカから買っている核燃料のコスト、運転のコスト、維持・点検のコスト、将来の廃炉コスト、再処理コスト…等々)は「総括原価方式」により全て原価として計上し、そこに3%の「適正利潤」を加えたものをすべて電気料金として徴収できる仕組みとなっている(つまり原価が高ければ高いほどもうかる仕組み。原発村の維持管理費用・大学等への研究補助金等はみな、国民の払う電気料金の原価に含まれている。)。
· 今年4月から太陽光発電の買取費用「太陽光発電促進付加金」が電気代に転嫁されるようになった。再生可能エネルギー固定価格買い取り法案による買い取り費用“賦課金”が最大0.5円/kwhの想定。
· 料金明細には内訳が記載されていないが、再生可能エネルギー買取コストを大幅に上回る“原発付加金”がすでに徴収されている→標準世帯(300kwh/月)で電源開発促進税112円、バックエンド費用107円含まれている。「隠されたコスト」を明らかに―「ブラックボックスをあけて光を当てる」(海江田経済産業大臣)
(3)再生可能エネルギーの豊かな可能性、爆発的普及で原発から撤退を―地域経済の振興と結び付けた「地産地消」のエネルギー
· 地震列島に原発立地の異常―USGS「世界の地震地図」とWANO「原発地図」を重ねると異常さが明らか。
· アメリカ・ボデガベイ原発は建設計画後、震源域の存在が明らかになり、計画破棄(それでも日本が原発を主張するのは、アメリカから買わされている原発用核燃料を買い続けるため?)。
· 浜岡原発は東海地震震源域の真上。もんじゅ・敦賀原発・美浜原発は活断層から1km以内に立地。東海・東南海・南海地震が連動するとM9を超える想定が必要だが、政府の想定はM8.7(浜岡)。
· 日本のエネルギー自給率はわずか4%。化石燃料・濃縮ウランを輸入に頼っている。一方、再生可能エネルギーに目を向ければ、地熱で世界3位の資源量、世界平均2 倍の降水量を小水力発電に、国土面積の7 割が森林…等。「資源のない国」ではない。
· 再生可能エネルギー買取法案の修正案提起―再生可能エネルギーの爆発的普及と、電気料金への転嫁の抑制、負担軽減の両立は可能。
· 電力会社の「接続義務」強化を―北海道電力や四国電力が再生可能エネルギーによる電力買取に上限を設け、法制定後も買取契約の上乗せを拒否する、との報道があるが、これは「再生可能エネルギー買取法案」第5条の『接続義務」違反だと指摘→「系統可能量を増やすことは可能」(細野エネ庁長官)
「前衛」2011年8月号にインタビュー記事掲載。
「原発利益共同体」とは何か/政官財癒着の構造
海外メディアから“なぜ東京電力や日本政府は秘密主義がひどいのか”とよく聞かれます。そのとき答えるのは「原発利益共同体」の仕組みです。
「原発利益共同体」のトップに立つのが電力会社です。東電の会長が経団連など財界団体のトップや役員に就任するなど、電力会社の財界支配には“歴史的伝統”があります。
電力会社に巨額の利益をもたらす要因の1つが地域独占です。東電は関東向けの発電と送配電を独占し、基本的に他社との競争はありません。
2つ目は、電気料金のもとになる「総括原価方式」です。全コストに「適正利潤」を加えた「総括原価」を、企業や家庭ごとの電気使用量に応じて電気料金として割り振っているので、必ずもうかる仕組みです。
銀行も建設も
原発建設でもうかるのが、原子炉など原発システムのメーカーやゼネコン(総合建設会社)の業界です。
原発メーカーは、沸騰水型原子炉なら東芝や日立、加圧水型なら三菱重工と特定メーカーが決まっており、事実上の「1社指定」です。付帯工事はゼネコン各社が「共同企業体」を組んで受注します。
原発の計画から運転開始までの約10年間に必要な資金はメガバンク(大手銀行)から調達します。不良債権にならず、確実に利益が入ってきます。
財界の中枢が「原発利益共同体」を構成しているのです。
電力業界や建設業界、原発メーカーなどが、原発建設を推進する政党や政治家に政治献金を配り、献金をもらった政党、政治家は官僚に原発推進のため“法律をつくれ”“予算を出せ”と圧力をかける。官僚は、退職してから電力会社などに天下りします。天下りが“汚職の先物取引”といわれるゆえんです。
大手マスメディアには電気事業連合会(電力会社の集まり)から多額の広告費が流れています。これにのみ込まれたマスメディアは「安全神話」に立った原発推進の論調を掲げてきました(これって、すべて電力料金に上乗せされて、我々国民が払わされている)。
補助金と差別
原子力に関係ある大学や研究機関には電力会社からの研究費や政府の補助金が流れます。学者が原発推進に取り込まれるだけでなく、“あなたの学生は来年3人うちで引き受けましょう”“うちは2人受けましょう”という関係が昔からできています。
科学的立場で原発の安全性に疑問を投げかけたり、安全管理の不備を告発する日本共産党員などの良心的な社員は、原発の現場や電力会社の中枢からは徹底して排除されます。
私も大学は原子核工学専攻ですから、電力会社への就職を考えていましたが、できませんでした。就職しても、昇格を差別されたり、他の労働者から隔離されるような人権抑圧は枚挙にいとまがありません。東電や関西電力などで労働者の権利をめぐる多くの人権訴訟があったのはそのためです。
原発からの撤退、自然エネルギーヘの転換を目指す運動のなかで、「原発利益共同体」の癒着構造の打破は「ルールある経済社会」をつくるたたかいの重要な一部です。
(聞き手 林信誠)
(2011.7.18、赤旗)
再生可能エネルギー普及へ 電力「全量買い取り制度」
再生可能エネルギー普及へ 電力「全量買い取り制度」/共産党、2年前から提起
菅直人首相が、太陽光や風力などの再生可能エネルギー普及促進の「再生可能エネルギー電気調達特別措置法案」の成立に意欲を示しています。同法による電力の「全量買い取り制度」について、日本共産党の吉井英勝衆院議員に聞きました。
ドイツで導入
――電力の全量買い取り制度とはどんなものですか。
吉井 家庭などが太陽光や風力などで発電した電気について、電力会社に、固定
価格での全量買い取りを義務付けるものです。再生可能エネルギーの爆発的普及に
とって大きな力となるものです。
ドイツなど諸外国ではすでに導入されており、日本でも2年前に太陽光発電の余剰分に限って導入されました。
しかし、このときの法案(非化石エネルギー関連法案)は、石油や石炭など化石エネルギー以外のエネルギー源の利用促進をはかると称して、原発推進を含めていることや、買い取り費用は電気料金に上乗せして利用者から徴収することを認めるなど大きな問題点を抱えたものでした。
そのため日本共産党は2009年6月、修正案を発表しました。
(1)原発抜きで、すべての再生可能エネルギーの固定価格での買い取りを義務付ける。原発推進に使われている電源開発促進税(年間約3500億円)などを利用して、電気料金に転嫁させない。
(2)政府・経産省まかせになっているエネルギー基本計画で決められる太陽光など再生可能エネルギー源ごとの供給目標について、国会承認事項とする―というものです。
残念ながらこのときは、政権党の自民、公明はもとより、民主党も原発推進の立場から日本共産党の修正案に反対したため否決されてしまいました。
――今回の政府案にも全量買い取りが盛り込まれています。
吉井 政府が法案を出してきたのは、再生可能エネルギーの導入を求める国民世論や日本共産党のたたかいに押されたものです。
日本共産党は、原発撤退を決断し、原発ゼロへ5年から10年の期限を決めたプログラムを策定するよう政府に迫るとともに、再生可能エネルギーの爆発的普及をすすめることで原発に依存しないエネルギーの実現を主張しています。そのために、固定価格で全量を買い取る制度の実現めざし全力をあげます。
太陽光の買い取りコストは現在、「太陽光促進付加金」として電気料金に上乗せして徴収されています。
2年前にも提起しましたが、電源開発促進税などを利用して電気料金に転嫁させないこと、太陽光など再生可能エネルギー源ごとの供給目標について国会承認事項とするように求めていきます。
新たな仕事も
再生可能エネルギーの本格的導入は、地域の商工業者や農林水産業者らにとって新たな仕事と雇用が生まれ、地域経済の振興と内需主導の日本経済への大きな力にもなります。
エネルギーの「地産地消」によって地域分散型エネルギーを確立し、その地域で発電したものはその地域で消費する仕組みをつくるために取り組みます。
――再生可能エネルギー普及のためには多くの人々が力を合わせることが大切ですね。
吉井 私も、超党派の国会議員や専門家、市民らが参加する「エネシフ(エネルギーシフト)」と呼ばれる勉強会の呼びかけ人の一人になるなど立場の違いを超えて取り組みをすすめてきました。
先日、そうした市民集会に菅首相が参加し、「この法案を早く通せば、私の顔をみなくてもいいことになる」と発言をしたことが話題になっています。
原発をやめて再生可能エネルギーを爆発的に普及させることは、文字通り国民的課題です。特定の政略的立場からこの問題を利用するなどということはあってはなりません。私は国会議員ですから、政府が出している法案を早く通してくださいと政府にお願いするのではなく、徹底審議などを通じて、よりよい制度が実現するよう全力をあげる決意です。