立ち退き料に影響する事情 (賃料が相場よりも安い場合の立退料)
賃料が相場よりも安い場合の立退料の金額について
1)賃貸人として
今まで安い賃料で借りられたのだから大人しく退去してほしい
・長期間契約が続き、その間、周辺の賃料相場が上昇したが、次第に建物も古くなってきたので、賃料の据え置きをしているうちに賃料が安くなってしまったという場合。
・賃借人の収入が不安定になったので、一時的に賃料を下げてあげたのに、その後元の賃料に戻してもらえない等。
2)賃借人として
現在の物件と同じ賃料で同じような物件を探すことができない。
そのため、ここを借りなければならない理由がある
立ち退き料は、基本的には、移転に伴う経済的損失の補償が基本なので、同じ条件の他の物件に移転した場合に賃料が高くなれば、賃借人にとって経済的な負担になるので、その補償を求めたい。
3)裁判所の判断
・特別な場合以外は、同じ条件の物件を借りるための賃料差額を、立ち退き料額に加える傾向にある。
移転前の賃料が特に安い賃料の場合、移転先では同じ条件の物件は賃料額が高くなり、その差額補償が立ち退き料に加算されるという理屈である。
賃料が増加するという負担は、移転先の物件を借りている間、ずっと発生することになるが、立ち退き後(移転後)2年分くらいを賃料差額補償として、立退料に加える場合が多い。
これは、賃貸人にとって何らかの正当事由があり、賃借人の経済的負担を全て補償する必要はない、ということが理由である
・特別な場合とは
(安い賃料が、賃貸人側の有利な事情(立ち退き料が低額になるとした判例)
海外出張から帰国したら自分で使うのでその時には退去してほしい、ということを、契約を結ぶ段階から賃借人に説明し、そのため、賃料を安くしていた、という事情があったケースでは、賃貸人に有利な事情と判断された。
しかし、このような事情がある場合は、定期借家契約を利用できるので、今後も同じような判決が出るとは限らない。(ただし、住居を貸そうとする場合、定期借家ではなかなか借り手がつかない現状もある)。
賃貸人側からすると納得できないかも知れませんが、賃料差額は補償するのが原則というのが裁判所の傾向だということです。
同じ条件とは、同じ環境、同じ広さが基本である。
古い建物だったからと言って、同じような古い建物に移転せよとは求められません。建物の老朽化が移転を求める理由になっている場合に、同じような老朽物件に移転したのでは、またまた移転を求められることになってしまうからである。
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