関西ミドル 雑記帳
不動産賃貸業 元ゼネコン勤務
 



 


6-5 労働災害と業務上疾病の損害賠償について

業務上の事故により負傷をし、労災扱いで療養したが、現在、労災は打ち切りとなっている。
しかし、現在も後遺症が残り通院している。
後遺症が残ったことは精神的にも苦痛であり、業務上の負傷をしたことに対する損害賠償を請求したい。

回答      
労働災害について、使用者に安全配慮義務違反があれば、債務不履行を理由とする損害賠償請求ができる。
 労災保険ではカバーされない慰謝料や、実際の損害額と労災保険給付との差額については、民事上の損害賠償を請求することができる。
  
 労働災害について、使用者に「安全配慮義務」違反があれば、債務不履行を理由とする損害賠償を請求することができます(民法第415条)。
 また、使用者に故意・過失があれば、不法行為責任を追及して損害賠償請求が可能です(民法第709条、715条)。
現在では、債務不履行責任の場合には消滅時効が10年となっていることなどから(不法行為は3年)、前者の債務不履行の追求が多いようです(債務不履行と不法行為責任の両方を追求する方法もあります)。
 この場合の使用者の安全配慮義務について、「使用者は、労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体を危険から保護するよう配慮すべき義務」を負っている(最高裁昭59.4.10 川義事件)とされています。
 事例の、精神的苦痛を癒すための慰謝料については、労災保険ではカバーされていないため、民事上の損害賠償の中で請求していくことになります。
 さらに、労災保険給付では、損害項目の一部しか給付されないため、将来の逸失利益の補償などについて、実際の損害額と労災保険給付との差額を請求したい場合も、民事上の損害賠償請求を行うことになります。
 なお、一つの労働災害に対して補償された額が実際の損害額を上回ることはできないため、労災保険給付と損害賠償の両方を請求したとしても、その合計額は実際の損害額までとなり、調整されることとなります。
 具体的な損害賠償請求の方法については、法律的に難しい問題も含んでいますので、弁護士に相談した上で、よく検討するのがよいと思われます。
  
 訴訟となった場合、次のような点について判断されると考えられます。
① 負傷や疾病、死亡の原因が労働者の従事した業務にあると認められなければなりません(従事した業務と負傷、疾病、死亡との間に相当因果関係が必要)。
 この業務起因性が認められるかどうかが重要です。
② 使用者に安全配慮義務違反や過失(注意義務違反)が存在しなければなりません。
③ 労働者に過失がある場合には、その分、過失相殺がされます。

 

「労働相談Q&A」
 



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