リニエンシー
独占禁止法の改正により、課徴金減免制度(リニエンシー制度)が2006年1月4日より導入されました。
課徴金減免制度の導入
改正法の施行に際し,最もマスコミに注目をされたのが,課徴金減免制度が日本企業によってどの程度利用されるかでありました。
課徴金減免制度は,公正取引委員会による事件審査開始前の申請であれば,
第1 番目の申請者には100 %,
第2 番目の申請者には50 %,
第3 番目の申請者には30 %
課徴金を減額するというものであります。
審査開始後においては,3 番目までの申請者であれば30 %の減額が受けられることになります。
この制度は,海外ではリニエンシー制度と呼ばれており,できるだけ企業が利用しやすいようにいろいろな配慮が加えられております。
具体的な情報を供する前に,リニエンシーを受けられるか否かが明確になっていること,順番は客観的に決められることなどです。
また,事件の処理結果が出る前に申請企業名が外部に明らかになる場合には,いろいろ審査活動への悪影響等を生ずるおそれがありますから,課徴金減免申請に
係る情報の取扱いには,最大限の配慮が必要とされています。
徴金納付命令を受けたことのある企業が再度カルテル行為を行った場合には,5 割増の課徴金算定率が適用されるという点です。
これを繰り返しの違反行為に対する加重制度と呼んでおります。これには,改正法施行前に課徴金納付命令を受けた場合も含めることが法律で明記されておりますので,課徴金納付命令を受けたことのある企業は,その後10 年間は,公正取引委員会により厳しい措置を受ける立場に置かれる..
また,当該企業の経営責任者としては,再度カルテル行為を行った場合には5 割増となることがあらかじめ分かっているので,格段の再発防止策を講じていない場合には,株主からその責任を追及されるおそれがあるということになります。
過去去10 年間で,課徴金納付命令を受けたことのある大企業は,延べ550 社くらいあります。これらの大企業は,潜在的に15 %の課徴金を課される可能性があることになります。
また,繰り返し違反行為を行った企業であれば,カルテルから途中離脱をしても,2 割軽減という措置の適用を受けることができません。カルテル参加者が全員でカルテルを解消することとした場合においても,繰り返し違反行為を行った企業だけは5 割増の算定率を適用されてしまただし,そのような企業であっても,課徴金減免の申請をすることはできます。
これは,まさに,課徴金が通常の算定率よりも高くなることが減免申請のインセンティブを高めることになりますので,このような取扱いとされたものです。
通常,大企業は業務が多角化しているので,ある部門でカルテルが発覚した後,それとまったく別の部門でカルテルが発覚する可能性がないとはいえません。
この点も,繰り返し違反行為を行った企業においては,コンプライアンス努力の格段の強化が必要とされる理由の1 つであります。 なお,まだ,5 割増の算定率の適用を受けた企業はありません。