関西ミドル 雑記帳
不動産賃貸業 元ゼネコン勤務
 



 
 建設企業の社会的責任評価
   
  ○ 企業評価とCSR
 建設会社の企業評価に関わる課題として注目されるひとつは、企業の社会的責任(CSR)に関する評価を公共調達制度にどう入れ込むかです。現在一般に議論されるCSRの内容は、たいへん広いもので、「質のよい製品・サービスの供給」以下、「法令・企業倫理の遵守」、「コーポレートガバナンス」、「環境への配慮」、「社会貢献」等々広範に亘っています。公共調達制度でこれらCSRの内容全般を体系的に評価する仕組みは、今後の検討課題とされています。
(現行制度では)
 経営事項審査制度のW評価点においては、これまで労働福祉の状況、工事の安全成績、営業年数、公認会計士等の4つを評価項目としておりました。また、地方公共団体等発注者の主観的評価項目として、指名停止などの経歴、障害者雇用の状況、 ISO14000S(環境)の取得状況などが対象になっている場合がみられます。本年5月から経営事項審査では災害協定の締結を評価項目に加えることになりましたが、このほかCSRの内容とされる幅の広い項目を今後どのように扱うのか注目されるところです。

○ 建設産業と社会
 ここであらためて社会と建設産業の関わりを整理しておきましょう。建築物にせよ土木構築物にせよ人々の日常生活、経済活動を日々支え、しかも耐用年数が長期にわたり、まさに生活経済インフラとして機能しているのです。建設産業というのは、それだけ社会との接点が深くまた長期になる特徴をもっています。 CSRの観点からとくに重要と思われる点をいくつか挙げてみましょう。
(品質と効率)
 第一は、建設生産の品質と効率性です。この点はどの産業も同じですが、企業活動の原点であり社会への責任の第一ということに異論は少ないでしょう。とくに建設生産物が長期にわたり利用されるために、数年あるいは数十年という長期間にわたる顧客あるいは社会との接点が存在し続けるということは、企業経営にとって大きな負担あるいはリスクでもあるし、また、そこに企業の社会的な存在価値があるともいえるのです。
(コンプライアンス)
 第二には、法令、企業倫理の遵守(コンプライアンス)を挙げたいと思います。施工現場における安全管理、下請代金の適正支払い、法定福利費の支払い等々。また、建設業法規、労働関係法規の遵守さらには入札談合など競争阻害行為への関与阻止。社内的には公正な就業環境づくりや差別禁止、そしてコンプライアンスへの対応体制など。建設産業の社会との関わりの広さのゆえに多様な要求に応える必要があります。
(環境への配慮)
 第三は、環境への配慮です。建設廃材のリサイクルの徹底、地球温暖化対策への寄与などですが、膨大な建設物のストックが更新、建て替えの時期を迎えることから、廃材のリサイクル、適正処理は、社会的にもたいへん注目されています。すでに、かなり多くの建設会社が毎年「環境報告書」を公表するようになってきています。企業価値を世間にアピールするうえで「環境」がきわめて重要なキーワードになっていることがわかります。
(地域社会への貢献)
 第四は、地域社会への貢献です。建設会社と地域社会との関係はたいへん多彩で深いものがあります。建設工事を円滑に進めるためには、その周辺地域の理解を得ることが重要であり、さらには、出来上がった建設物が日々利用されていくなかで、適切な維持修繕など地域との関係は続くことになります。会社が地域に必要な存在になることが、企業経営上大きなメリットとなると思われます。

○ リスク管理の基本
 近年、社会的責任への組織的対応が不十分であったがために、企業経営上深刻な事態を招いた事例は枚挙にいとまがないほどです。輸入牛肉に絡む補償金不正請求事件(雪印食品)、鳥インフルエンザ大量死事件(浅田農産)、西武鉄道株の不正売却、六本木ヒルズ回転ドア事故、三菱自動車のリコール隠し等々挙げられますが、事故の発生そのものに加えてその後の対応において、責任者の不在、行動の時期的遅れ、情報開示と説明の不十分さ等々が企業の誠実さを疑わせてリスクを倍加してしまい、結局のところ企業の存続を危うくした点に着目しなければなりません。 CSRへの組織的対処は、企業のリスク管理の基本であると考えられるのです。

○ CIICの対応
 以上のようにCSRの評価は建設企業評価の重要な構成要素となることは疑いないと思われます。当CIICとしても、建設企業のCSRの評価のあり方について問題を整理し実現性を探るという役割を自覚しており、このたび(財)建設経済研究所の協力を得て調査委員会(委員長:谷本寛治一橋大学大学院教授)を設置しました。今後さまざまな角度から調査研究をしていく予定です
 
 



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