事業継続計画(BCP)の国際標準規格(ISO)化に対する日本の動き
BCPが国際標準規格(ISO)化されようとしており、日本からも意見を提出する動きがある。
米国での9.11テロ事件、スマトラ沖地震/インド洋津波、ハリケーン・カトリーナなど、相次ぐ大規模災害を受けて、今まで特に国際標準規格が存在しなかったBCPもいよいよISOとして制定される動きが活発になってきている。
どこの国がリーダーシップを取って、何をベースに規格化を検討するかということは、過去の経緯、政治的な話も含めて色々あるようである。
日本に対する影響は以下のとおり。
経済産業省担当者の私見
●BCP国際標準化の影響(可能性)
1. BCPが国際標準化すると・・・
-欧米企業との取引条件になる
・グローバルサプライチェーンに入るための必須条件になる恐れ
・取引企業による第二者認証を要求される、または、
第三者認証取得が取引条件になる可能性あり
-企業格付けに影響する
・株価、与信枠、利子率、保険料率などに影響する恐れ
・CSR文書、有価証券報告書等への記載が要請される
2. さらに、欧米主導で国際標準化すると
-日本企業の防災対策が評価されない
・単なる地震対策ではBCPとは言えない
・何らかの認証を要求される
-文化的に馴染みの無い制度の導入が必要に
・個別企業の序列化が必要
・緊急時のサイト放棄と配転を計画
・トップマネジメントの責任増大
これに対し、(財)日本規格協会内に設置された事業継続計画作業グループでは次のような骨子を日本提案に盛り込むこととなった。
趣意書(案)の提案概要
(1) 継続的な改善を行う仕組みを取り入れた規格とすること。規格には、第三者による認証制度を採用しない。
(2) 災害発生直後における、公的組織(警察、消防、自衛隊等)が第一義的に担う災害救助や社会インフラの復旧などの活動の業務の事業継続計画(緊急時対応)を策定することを主眼とした規格としない。
(3) 対象とするリスクは、各組織が認識したリスクや事業形態を十分に踏まえて、各組織が合理的な基準に基づき自主的に選択できるものとすること。
(4) 広域災害においては、被災した地域の復旧計画との連携・調整に留意し、個別組織が、可能な範囲で地域に貢献することは推奨される。同様に、サプライチェーンを構成する取引先と人的・物的面で相互に支援することも推奨される。このような地域貢献に留意することを明記すること。
2006年4月 イタリアで緊急事態対応・事業継続計画に関するISOの国際ワークショップ
2006年5月 スウェーデンでTC223(Civil Defense)の第1回総会
日本の意見がどこまで反映されるかは予断を許さないが、BCPがISO化されるのは間違いないと思われる。
最終的なISO規格として制定されるには数年を要する模様。
BCPを策定する企業・団体側も数年かけて段階的に構築していくことになる。