関西ミドル 雑記帳
不動産賃貸業 元ゼネコン勤務
 



http://www.jil.go.jp/jil/kikaku-qa/jirei/08-Q04B1.htm

 通勤災害は労災保険による保険給付の対象となることが定められていますが、業務上の災害ではありませんので、たとえばこれにかかる療養期間は、労基法19条において、解雇禁止対象とされている「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間」には含まれません。通勤災害と認定されるためには、まず、災害を被ったのが「通勤」の途上でなければなりません。そこで労災保険法にいう「通勤」と認められるためには、「就業に関し」、「住居と就業の場所との間を」、「合理的な経路および方法により往復」していたことが認定されなければなりません。また、原則として中断や逸脱があってはならず、業務の性質を有するものも除かれます。

第一に、通勤災害であると認められるためには、就業との関連性がなければなりません。つまり、業務に就くために、あるいは業務に就いたために住居と就業の場所との往復がなされていなければなりません。ここでいう業務とは、日常従事している業務そのものだけではなく、会社が主催する運動会に参加する場合や、タイムカードの押しわすれの為に一旦会社を出てからもどるような場合も通勤に含まれます。また、終業後、自宅に帰るまでに他の場所に寄った場合でも、たとえば業務に関連する会合に参加して、その後短時間の懇親会に出席した後の帰宅途上の災害が通勤災害と認められた例もあります(仙台地判平成9.2.25 大河原労基署長(JR東日本白石電力区)事件 労判714号35頁)し、また就業から帰宅までに一定の時間の経過があっても、行政解釈は「社会通念上就業と帰宅との直接的関連性を失わせると認められるほど長時間」に至らない場合は、就業との関連性は失われないとしています。

 第二に、通勤は、住居と就業の場所との往復でなければなりません。住居とは、労働者が居住して日常生活をしている家屋などの場所、つまりは本人の生活の拠点を言い、就業の場所とは、業務を開始し、または終了する場所をいいます。厳密な意味での就労場所だけでなく、得意先への届け物をしてから自宅に直接帰る場合届け先も、また会社の運動会の会場なども就業の場所に含まれます。

 第三に、合理的な経路及び方法については、社会通念によって判断されることになりますが、行政解釈では、定期券に表示され、あるいは会社に届けてある鉄道・バスなどの通常利用する経路、経路の道路工事やデモ行進など当日の交通事情の為に迂回してとる経路、マイカー通勤者が貸し切りの車庫を経由してとる経路などが合理的経路としてあげられています。

 第四に逸脱・中断ですが、これがかなりやっかいな難問です。まず逸脱とは、通勤の途上で通勤とは無関係な目的のために合理的な経路をそれることをさし、また中断とは、通勤の途上で通勤をいったん中断して通勤と関係のない行為をすることをいいます。ただ、逸脱や中断があっても、それが「日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のもの」である限り、その後の往復行為の途上での災害は通勤災害に該当します。夕食の買い物を、途中のスーパーですることなどがそれにあたります。

 また、労働者が通勤の途上で行う「ささいな逸脱・中断」はここでいう逸脱・中断にはあたりません。たとえば、途中の売店によって新聞やたばこを買ったり、公衆便所によったり、立ち飲みのコーヒーを短時間で喫したりする場合などです。

 逸脱や中断について、非常に厳しくあつかわれるのが逆方向へ向う場合です。裁判例では、女性労働者が、帰宅途上に、方角からすると自宅からは反対方向に位置する店で、その日の夕食の材料を購入するために、交差点から約40メートルほど進んだところで交通事故に会ったという事案について、これは通勤のための合理的経路を逸脱している途中で起こった事故であって、通勤災害とはいえないとしたものがあります[札幌高判平成元.5.8 札幌中央労基署長(札幌市農業センター)事件 労判541号27頁]。
東京学芸大学教授 野川 忍)



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労働者災害補償保険法第七条 (Unknown)
2005-11-18 09:53:23
第七条 この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。

 一 労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」という。)に関す

  る保険給付

 二 労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(以下「通勤災害」という。)に関

  する保険給付

2) 前項第二号の通勤とは、労働者が、就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的

 な経路及び方法により往復することをいい、業務の性質を有するものを除くものとする

 。

3) 労働者が、前項の往復の経路を逸脱し、又は同項の往復を中断した場合においては、

 当該逸脱又は中断の間及びその後の同項の往復は、第一項第二号の通勤としない。ただ

 し、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものを

 やむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の

 間を除き、この限りでない。

 
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