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バーボングラス片手のロックな毎日

教場と3年A組

2020-01-10 20:50:08 | MUSIC/TV/MOVIE

いやぁ、面白かった。

木村拓哉主演の新春ドラマ『教場』。

 

「何をやってもキムタク」と比喩されるほどいろんな職業役をこなしてきた木村拓哉が、警察学校の冷酷な教官を演じた。

これが従来の木村拓哉ではないのだ。

抑えた演技。これがいい。

今まではどちらかというとはっちゃけた型破りって役、そしてそれに翻弄される周りの人たち、そして最後は大団円ってのが多かったのだが、今回は違う。

義眼で白髪(銀髪?)で感情を表に出さないクールさ。そして相手が逃げられないと諦めてしまうような冷酷さ。そして人をコントロールしていく怖さ。見事なり。

 

今回の『教場』は、菅田将暉主演のドラマ『3年A組-今からみなさんは、人質です』に通じるところがある。高校か警察学校かの違い。次々と生徒の秘密を暴いていき、追い詰める。告発させ、泣かせ、わめかせ、そして改心させる。まるで自己啓発セミナーのような教育のところは一緒。

 

『3年A組〜』では一見冴えない教師の菅田将暉が、卒業式前に生徒を人質に立てこもり、自殺した生徒(上白石萌歌)が何故死んだのかを生徒たちに考えさせるというテーマ。サイコパス化したかのような菅田将暉が川栄李奈、片寄涼太、今井悠貴、今田美桜、福原遥、森七菜を追い詰めるシーンは見てて辛くなるほど迫力があって圧巻だった。

そして今回の『教場』では警察学校の冷酷な教官・木村拓哉が、川口春奈、林遣都、葵わかな、井之脇海、大島優子、三浦翔平、そして工藤阿須加といった世代の違う生徒を追い詰めていく。

警察学校は警察官にふさわしいかどうかを選別するところだから、嫌ならいつだって辞めていい。そしてそれは強化、明日か、それとも今か。退所届を渡された生徒はあるものは踏ん張り、あるものは去っていく。

菅田将暉が熱く生徒に説いたのに対し、木村拓哉はあくまでも冷静。おふざけもコメディもお色気も一切なし。キムタクドラマ定番の顔アップも、キザなセリフも、かっこいいポーズもそこにはない。ただ淡々と、それでいて目が離せないシリアスなドラマ。「義眼の右目はなんでもお見通し。」なんていうところだけはちょっと厨二病をざわつかせるエッセンスだがね。

今回前後編のドラマだったけど、これは映画でも良かったのではないのかね。

 

原作もいいんだろうけど、脚本がいいのだ。そして演出がいい。余計なものを入れないで、そして説明的なセリフはほとんど入れず、役者の演技力だけで勝負するドラマ。

もちろんこのドラマを見て「時代錯誤だ」「パワハラだ」とか、「なんとかハラスメント」だとか甘っちょろいクレームを入れる奴もいるかもしれない。しかし教育って本来こうあるべきなのだ。それはゆとりもサトリも団塊もバブルも、どの世代でもね一緒。

ましてや将来の警察官を育てる学校。ここが自由で生徒の自主性に任せてなんて甘っちょろいこと言ってたら、その後とんでも無いことになってしまうのよ。それ分かった上でクレーム入れてね。

 

木村拓哉の新境地と言っても過言で無いくらいすごかったのだが、他の役者、林遣都も葵わかなも井之脇海も三浦翔平もさらに一つ上のステージに上がったかのような演技。工藤阿須加は残念ながらいつもの工藤阿須加だったけど(いや、彼はすでに完成されてる感があるからね)、特筆すべきは川口春奈と大島優子。

 

川口春奈は以前このブログでもボロカス書いたくらいだったのだが(『99.9』や、先日の沢尻エリカの代役決定の際もろくなこと書いてない)、今回の教場の演技は見事だ。出だし(前編)ではいつもの川口春奈だなぁ、またこれかって思ってたのだが、後編での富田望生とのやりとりからの演技は「う~っむ・・・」と感心してしまった。これは富田望生がうまいから引っ張られたのか、それとも木村拓哉の役者魂に感化されたのか、それとも俺が気づかなかっただけで彼女は実は潜在能力の高い女優だったのか。

そしてもう一人、大島優子。

彼女も同じく今まで一度も褒めたことがない。っていうか元AKB、アイドルが卒業後役者になった(子役出身だから正確には役者に戻っただけど)くらいにしか思ってなかった。(推しの人ゴメンね)

『マジスカ学園』、『ヤメゴク』、『東京タラレバ娘』・・・、可もなく不可もなく。

ところが一体どうした、何があった。今回の教場では見事な演技なのだ。今までのなんかもやっとしたものは一切取り払われ、「役者の神様が憑依したのか」といっても過言ではないくらいの演技力なのだ。アメリカで演技の勉強してきたのか?

NHKの朝ドラ『スカーレット』は見ていないが、こちらはどうなんだろう。もしこのレベルで演技をしているのなら彼女は今後、素晴らしい女優になるかもしれない。

 

『3年A組』が若手役者の羽ばたきのドラマだとしたら、この『教場』、これからの中堅を担う役者の一皮を剥くドラマだ。

それを引き出した木村拓哉。

恐るべし・・・。

 

あ、ついでのようになっちゃったけど、富田望生は良いねぇ。彼女はどちらのドラマにも出てるけど、彼女のおかげで両方のドラマが締まってるのは事実。特に今回の『教場』における彼女の演技はかなりいい。手話をしながら一瞬躊躇した表情をみせるところ。川口春奈を目覚めさせるため、実習であえてキツくあたる迫力ある迫真の演技。倒れた兄の為になりたかった警察官を諦め旅館を継ぐ決意と悔しさを表現する演技力。ホンマ、うまいです。

 



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