GOKIGENRADIO

バーボングラス片手のロックな毎日

V系バンドとバンギャル

2016-05-27 01:49:19 | MUSIC/TV/MOVIE
面白い本を見つけた。「バンギャルちゃんの日常」。
バンギャルという女の子達について、元バンギャル(現おバンギャル)の作者が書いた本。漫画でバンギャルの生態を見事に描いてるから、バンギャル入門の指南書として読んでもいいし、往年のバンギャルがノスタルジックを揺り起こしながら読んでもいい本だ。

バンギャルって言葉自体、ほとんど一般的には知られてないと思うが、街中でちょっと変わった(特殊な)格好で、キャリーバックをゴロゴロ転がしてる女の子と言えばわかるだろうか。「あぁそういや新大阪駅で見た」とか「城ホール周辺で見た」と目撃証言される人たちのことだ。
そう、彼女らはバンドギャル。簡単に言えばビジュアル系バンド(ヴィジュアル系=以下V系)の追っかけだ。
基本アマチュアのV系バンドのファンだが、メジャー昇格後も根強く参戦してくれる場合が多い。

この「ライブに参戦する」って言い方も今ではポピュラーだが、元々は彼女らバンギャルの言葉だ。
彼女らにとってライブは戦場。
コスにヘア・メイク・ファッションをキメ、ライブ会場にいち早く乗り込み入り待ち。ライブではヘッドバンキングをかまし、振りをしたり花を咲かせたりジャンプを決めたり、盛り上がるとモッシュやダイブまで。ライブ後の出待ちではもはやボロボロ状態。まるで日頃溜め込んだストレスをこの日に一気に爆発させてるかのようなキレっぷりは、「参戦」と言うに相応しい。
彼女らにとってライブは鑑賞ではなく、戦場である。さらに全国のライブに遠征し、下手すりゃ全通してくれる。バンドにとってはありがたいお客様。

って、ここまで書いて思ったが、音楽業界やバンギャルの世界には「これって世間一般で通用されてる言葉?」ってのが多種多様あります。どれが一般的に通じる言葉で、どれが特殊な業界用語なのか俺には区別がつかないし、いちいち説明するのも面倒なので、このブログもそのまま書きます。用語やバンド名などわからない場合は「なんとなくコレのことかな?」って想像して読むか、この本を買って読んでください。または周りの「元バンドマンだとか言ってたな」って人とか「カラオケでマイナーバンドの曲をよく歌ってるな」って人に聞いてみてください。

さて、このバンギャル。ビジュアル系バンドの追っかけと書いたが、正確には違う。この言葉が出来たのは90年代以降。それ以前はただの「追っかけ」とかもっと古くは「グルーピー(グルーヴィー)」と呼ばれてた。
だいたい、ビジュアル系って言葉自体が無かった。80年代のNOVELA(ノベラ)を筆頭に、ROSA LUXEMBURG(ローザ・ルクセンブルグ=後のボ・ガンボス)やWillard(ウィラード)のように、独自の世界観を演出するバンドを全部ひっくるめて、お化粧系とか壮美系とか言われてた。特徴としては中世貴族やジプシーのような衣装と化粧ね。



44マグナム、アースシェイカー、ACTIONなどハードロック、STLIN、INUなどのパンク、MODSやLOOSTARSなどのガレージロックなどにもそれぞれ、今でいうバンギャルがいたが、当時のライブハウスは金髪革ジャンの男の世界で、女の子はよほど一本キレてるような子じゃないと危なくてって世界だったからね。
チキンジョージ、磔磔、鹿鳴館、バーボンハウス、ブロウダウン、キャンディホール、拾得・・・。そんなところに来てる女の子はどっか退廃的な感じの子が多かった。普通の子が来ても浮くだけだ。メジャーの忌野清志郎のRCサクセションとかが、すでにホールでライブしてて女の子も来てたが、やっぱり普通の学生はコンサートに行きにくかったと思う。ましてやライブやGIGなんて。

それを変えたのが、BOOWYとXじゃないかな。
メジャーに昇格したら「もう終わった」と言われる中、この二つのバンドはメジャーにおいても世界観を裏切らなかった。もちろん「インディーズ時代のやつらは」なんて語る往年のファンはいるのは仕方ない。メジャーだとライブの会場も広くなるし、スタイリストやヘアメイクもローディーもスタッフも付く。インディーズ時代とは金のかけ方が違ってくるからね。

メジャーデビュー後のBOOWY(ジャパンレコード時代暴威)の衣装はゴルチェになり、メロディも音も聞きやすくなってしまったけど、普通の女の子が今のようにライブに行けるようになったのは、彼らが夜のヒットスタジオやテレビの音楽番組にどんどん出始めたからだろう。武道館ライブの時「ライブハウス武道館へようこそ」と氷室が叫んだのは「会場がでかくなってもやることはライブハウスと一緒だぜ」ってメッセージだったのかもしれない。ライブをGIGとしてたのも特徴的だ。
そしてX(海外進出後はX-JAPAN)。楽曲と演奏力のクオリティの高さ。それまでの「うるさい」「何言ってるかわからない」「やたら声が高い」など言われてたハードロックを、ヒットチャートに送り込むという偉業。それ以前はLAZY(LOUDNESS)くらいじゃないか。
Xジャンプがバンギャルの定番となるジャンプ発祥だと思ってる。


BOOWYにしてもXにしても、曲の構成、メンバーの演奏テクニック、パフォーマンス、全て高いクオリティだったから、うるさい音楽評論家ってやつらも黙るしかなかった。彼らによって、パフォーマンス、ファッション、世界観がそのままメジャーの世界に持ち込まれるようになった功績はすごいと思う。
それによって、多少前後するが、LUNA SEA、BUCK-TICK、黒夢、MALICE MISER、La'cryma Christi、L'Arc~en~Ciel 、SHAZNAなどが次々とメジャー進出。彼らがのちのビジュアル系と言われるのだが、彼らのパフォーマンスをTVで見れるようになるとはちょっと驚きだった。MUSIC STATIONとかにも出てたからね。がっかりしファンと歓喜したファンがいるだろうな。

当時のバンドマンはイメージを壊さないためにTV出演の際はあまり喋らなかった。常にクールに決めてたな。
MODSはTV初出演の際、メンバーが誰も喋らなくて唯一Vo.の森山達也が、司会者の「今まではどんな活動をしてたんですか」って質問に「音楽活動」って答えてた。
STREET SLIDERSも蘭丸がなんとか喋ったが、HURRYはほぼ無言。「TVの前のファンに一言」って振られて「ヴォリュームアーップ」って答えてた。
V系バンドも同じく、MALICE MISER(マリス ミゼル)時代のGacktなんかは低い声でボソボソしか喋らなかったし、L'Arc~en~Ciel(ラルク アン シエル)のHYDEも常にクールに決めてた。

まさか、GACKTが今みたいにバラエティに露出するようなるとか想像もつかなかったし、hydeが「マシューベストヒットTV」という藤井隆が深夜司会してた番組で、頭に金タライ落とされるシーンを見た日にゃ、我が目を疑ったよ。
そんなこんなでどんどんメジャーデビューするV系を、バンギャル達も一喜一憂しながら見守ってたね。
CDTVの20位から100位までの紹介コーナーで、わずか5秒しか映らない映像を必死で見てたってバンギャルもいる。

さて、そのバンギャル。
特徴を簡単に書いておこう。もちろんこれに当てはまらないバンギャルはいっぱいいるので、あくまでもイメージだと思ってくれ。

まずファッション。
コスプレと呼ばれるものを着ている人が多い。熱狂的なファンや追っかけはジャニオタでも宝塚ファンでも同じようにいるが、コンサート会場ではなくライブハウス会場前でコスプレしていれば間違いないと思ってくれていい。
ナース、ゴスロリ、ゴシック、ロリータ、制服、パンク、姫ギャル・・・色々いるが、バンドの世界観に合わせてたり、メンバーと同じ格好をしてる「コスさん」と呼ばれる人たちもいる。自作の場合もある(以外と多い)。制服は髪型とかに気をつけないとアキバ系とか本物に間違えられやすく、デコラはアメ村に多数存在してる。パンクは漫画「NANA」の影響で結構気軽に来てる人多いよね。昔はBLACKとかでしか売ってなかった。ロリータやゴシックはかなり気合入ってて近寄りがたい雰囲気。こちらは楠本まきの漫画の世界から抜け出してきたような人と言ったらわかりやすいか。(この人の漫画を知ってる時点でこんな説明など要らないとは思うが)


難しい言葉と難しい漢字好き
V系バンドにしろハードロックやパンクのバンドにしろ、退廃的な言葉、語句を好み、やたらと難しい漢字や言葉を使いたがる。ここら辺は厨二病とあまり変わらない。
薔薇、憂鬱、廃墟、虚無、蜘蛛、蠍・・・。もちろんバンギャルは書ける。暴走族と変わらない。
ただしバンドによってはフランス語やイタリア語、古代ラテン語なんてのも平気で使う。愛とか死をやたら難しく表現するのが好きだったりする。

バンギャルは、ニワカ(新規)と区別したいのか、それとも連帯感が欲しいのか、独自のファン名をつける。
LUNA SEAファンはSLAVE、Die an Grayファンは虜とか。
これは、ジャニーズファンのジャニオタでも嵐のファンは「ARASIC=アラシック」、KinKi Kidsファンは「図書委員」、関ジャニ∞「eighter」と自らを呼ぶのと一緒かも。ももいろクローバーZファンの「モノノフ」ってのもあるな。ここら辺は一緒だな。

まぁ、いろいろ書き出したらきりがないのだが、もしあなたが街でキャリーバックを引いてコスを決めてる女の子を見かけたら、温かい目で見守ってあげて欲しい。
彼女らの最大の特徴は、学校では友達がいないって事が共通点だったりするのだから。


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