GOKIGENRADIO

バーボングラス片手のロックな毎日

近畿大学のアニメ講義がすごい

2016-04-24 03:19:08 | BOOK/COMICS
一昔前なら大学の入学式に親が出席するなんて笑いものだった。
親離れしてないの?マザコン?冬彦さん?そう言われて笑われたもんだ。

先日某大学の総務をされてる方とお話ししててびっくり!近年は入学式は親が参加する前提で行われてるらしい。
最近は受講内容や方針に、すぐ親が出てきて文句を言うらしいから、親のための説明会があったりするのも当然らしい。
モンスター・ペアレンツは、口出しやクレーム入れるのに慣れてしまって、子供が通う大学ででも、少しでも自分の意にそぐわないと騒ぐから、予防線張ってるのかね。

偏差値教育・受験戦争のど真ん中世代に大学に行ってない俺は、大学の仕組みや用語がよくわからない。第一あの頃は大学へ行く目的や必要性がわからんかった。
「大学受験はしない」と高校一年生の時から言っているのに、なぜか高校三年の時は進学クラスに入れられてた。クラスのメガネ率高し。自習時間も勉強してるし、学校が終われば皆さん塾や予備校に行ってた。夏休みとかはどうしてたのかは知らん。
周りでは「スウサンブツリカガク」「英文法とリスニング」「国文学」などの単語が飛び交う。おかげで授業はほとんどサボってた。三学期に「お前このままやったらまた留年するで」と脅されて慌てたくらいだ。授業欠課時数は出身校で未だに藪らえてないらしい(ちょっと自慢)。よく卒業できたもんだ。

俺が、休み時間にタバコを吸ってる時にまめたんで英単語を覚え、俺が喫茶店で怠惰な時間を過ごしてる時に図書館でレポートを作り、単車に乗って走り回ってる時には参考書片手に数式を解いてた彼ら彼女らを見て「何のために大学を目指してるんだろう?」って疑問を持っていた。
「大学に何しに行くんだ?」とか「何のために大学目指してるんだ?」って聞いても「親が行けって言うし」とか「大学行っておかないと後で苦労しそうだから」「考えたことがない」って奴が多かった。「今」という時間を勉強で犠牲にして「もったいない」とか思わないのか?大学に入ってから遊ぶのか?
その頃の俺は、イソップ童話【アリとキリギリス】のキリギリスでいいよって思ってくらいだから、わからんかったね。

でも現実、高校ではヒエラルキーが存在する。偏差値教育世代だからね。国公立や有名私立を目指す頭のいい奴が頂点で、その下に関関同立やその他の大学受験をする奴ら(元運動部も含)。ヤンキーは底辺ね。通称「オチコボレ」だ。気にしない。
しかし、俺らヤンキーと同じヒエラルキーの底辺にいた奴らが、もうひとグループいた。
それがオタク。

今でこそ「日本を代表するもの、それがアニメ」「クールジャパン」とか言って、それを支持するオタクの地位も確立されたが、当時のオタクは昔は肩身が狭かった。
クラスで目立たず、かといって勉強ができるわけでもない。根暗でよくわからない。休み時間も同じような奴らとアニメや漫画、プラモデルの話をしてるから、「キモい」とか言われてた奴もいた。
ヤンキーだったら彼らをパシリにしたりいじめてたんじゃないか?ってよく言われる。それは大きな間違いだ。ファッションは違っても同じヒエラルキーの底辺にいる同胞だ。だから補習時間とかには結構話をしたりしたね。アニメや漫画は俺も含めヤンキーは好きだったし、プラモデル(俺らは単車とか車)の綺麗な作り方や彩色の方法を色々教えてくれた。とにかく知識が半端ないの。普段は地味なくせに自分の得意分野だからか、それとも話したくてうずうずしてたのかはよくわからんが、話し(語り)だすと長い。
※卒業後に一人の元オタクに聞いたら、俺らと会話することで、彼らはいじめられることもなかったって。そりゃそうだわな。だって俺らがついてるんだもの。下手に手出ししたら大変だと思うわな。オタクって結構小賢しかったのね。

本来、オタクって言っても、漫画・アニメ・映画・鉄道・プラモデル・音楽それぞれの分野にいるのだが、今はオタク=アニメってカテコライズされてしまっている。しかしこのアニメオタクにも、美少女系・SF系・BL系等多種多様のいろいろなジャンルに分かれ、さらにフィギュア系、同人誌系、BD系など枝分かれしている。

そのアニメオタクにもってこいの大学がある。近畿大学だ。
マグロの養殖で成功して一躍全国区の知名度になった近畿大学。通称近大。今や受験者数・生徒数全国一のマンモス大学だ。
この近大の「映像・芸術論1」がすごい。文芸評論家・町口哲生さんの講義で、目標は「複数の系(セリー)によって「アニメ」を読解する能力を身につけること。」
簡単に言えば、一つのジャンルだけじゃなくていろんなジャンルのアニメを知り、そこから複合的に考えられるようにしようって講義だな。

そうなんだよ。最近若い子で「アニメ好きです。結構ヲタです」って奴と話しても「えっ?これくらいしか知らないの?」ってのが多い。掘り下げたり広げたりしないのよ。それでオタクって言ってたら本物のヲタに怒られるぞって。これじゃぁ【ニワカ】とか【リア充オタク】って奴らも出てくるはずだわ。

で、講義内容は、主に2000年代以降のアニメ潮流を整理しながら重要作を解析。
「STAR DRIVER 輝きのタクト(ネオセカイ系)」「コードギアス 反逆のルルーシュR2(サヴァイブ系)」「らき☆すた(空気系・日常系)」「デュラララ!!(群像劇)」他多数。一般人はほとんど知られてない、その世界では有名作のオンパレード。

で、すごいのがここ。
この講義の注意書きというか課題というか、これを必ず守ることってのがこれ。

第1に、深夜枠を中心に週に20本以上「アニメ」を視聴しておくこと。 
第2に、本は月10冊以上読むこと。特に講義中に紹介した参考書は購入する、もしくは図書館等を利用すること。
第3に、リアルタイムかつ過去に遡りできるだけ多くの「視覚文化」(映像・芸術)に触れておくこと。
第4に、インターネットやソーシャル・メディアを使いこなすことができるようにすること。
※注意:とくに第1は受講の前提です。

簡単にスルーしたらえらいことだ。「とくに第1は受講の前提です」って。おいおい、これって大変だぞ。深夜アニメの放映時間を1作平均20分として単純計算しても、週最低400分が必要。週7時間くらいはとられる。
そして本は月10冊読め。さらに昔のアニメや漫画も見ろ。ネット・ツイッター・FBもしろよ。
普通のオタだったら喜びそうな講義だが、この課題は結構しんどそうだ。アニメ見るのが好きでーすくらいのレベルでは絶対無理。
大学受かってせっかく引きこもり(ヒッキー)から脱出できたのに、下手すりゃまた部屋からでられなくなったりして。

しかも近大は炎上防止を兼ねて親への配慮も忘れてない。

※注意:アニメや漫画などのコンテンツに詳しい人向けの講義です。
オタクや腐女子などの言説を普通に使いますので注意してください。

アニメへの理解やオタク言葉を知らない親へのクレーム防止だね。
これで「うちの息子はせっかく近大に受かったのに、毎日深夜までアニメを見ている。大丈夫か?」って心配されなくて済むね。

幅広い見聞からどんどん掘り下げていく。
そういうことを今の子はしないから、こういった講義は他のジャンルでもぜひ取り入れてほしいな。
前述の俺らの時代のアニメオタクは、もっと深く広く語ったぞ。銀河鉄道999の劇場版はテレビ版とどう違うか、さらに原作漫画版との違い。絵コンテは誰とか、この構図の素晴らしさとか。監督よりも知ってるんじゃないかってくらいの知識。そこから松本零士の他の作品や、監督、脚本の過去の作品とかも見ている。そこまで行って初めてオタクだ。

音楽で言えば「Bump Of Chicken大好きです。ファンです」って言いながら、CDを一枚しか持ってないとか、コンサートも行ったことがない、って人もいるが、これでファンと言われてもねぇ。「好き」って語るんだったら、全7枚ともCDを持ってる(またはiPhoneに全曲入れてる)とか、コンサートは必ず行くとかは最低限。さらに「メタリカも聞くんです」とか、「ハイラインレコーズの誰々も今後売れそうだ」とか「ライブのSEにボレロが使われてる」とか語ってほしいところだ。飼猫の名前にニコルってつけてるとか語れば最強だ。(バンプファン以外の方はわからないネタですいません)。
嵐とかジャニオタの方がよっぽどヲタだよ。(ただし彼女らも広げて聞いてたり掘り下げてたりはしてない人が多いが)

入口はどこからでもいい。ぜひ見聞・知識を広げて、そして語ってくれ。
あれ?あんまりジャンル広げるとそれはもうオタクと呼べなくなってしまうのかな。