かるい散歩

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はやしだみきのブログ

『シーモアさんと、大人のための人生入門』

2016年10月03日 23時40分05秒 | イーサン・ホーク



もう日本公開は無いかも、、、と、
私が海外版DVD『Seymour: An Introduction』を見始めたのが、
昨年の12月中旬だった。

もちろんサラーっと観られる訳もなく、
テキストを書き出しググって、辞書使って、確か1週間半ほどかかった気がする。
よく分からなかった部分も、今回日本語字幕で観られて、
10月1日公開に合わせてイーサンの電話インタビューがあったり嬉しすぎるー!
http://globe.asahi.com/cinema/2016092900002.html
シネマニア・リポート Cinemania Report [#15] 藤えりか
イーサン・ホーク、40代の悩みを映画で語る~『シーモアさんと、大人のための人生入門』

結局、私の心を打ったところは、日本語でも英語でも同じだった。

NYでこの作品を見た友人が、
「シーモアさんの英語はすごく分かりやすいよ」と言ってたり、
2014年トロントやニューヨーク映画祭のQ&Aや予告は見ていたので、
あらすじのようなものは分かっていた。

以下はネタバレというか内容に触れます。
私はクラッシック音楽に詳しくないし、
だいたいが役者の視点でイーサンファンとして観るわけで、
かなーり偏ってるとは思うけど。
この映画がトロント映画祭で上映されることを知った時
「なんでイーサンがバーンスタイン?」って、
え?あのバーンスタインってレナード?じゃなかったったっけと、
誰だシーモアってとググったくちですから。

どこまでなら分かるかしら、、とDVDスタート。

オープニングシーン。
シーモアさんは練習をしている。
当時84歳だったピアノ教師がだ。
「うわっ、練習から始まっちゃったよ」だ。
練習をしなければ、おそらくそれは追求と言ってもいいのかもしれないが、
つかみ取れないものがあると言うことだと始まって1分しないで思った。

大好きな映画ビフォアシリーズのイーサンもジュリーも
"即興でしょと言われるけど、あれは練習練習練習"と言っている。
準備することの大切さもよくイーサンが話してる。

練習=準備である。

シーン変わって生徒を教えるシーモアさんが何度も口にするのは
"never stops"
ジョギングみたいじゃないんだと。
グルの読経のようにうぉぉぉ〜〜〜〜と。
スタッカートだとしてもペダルを使うんだと。
途切れ途切れじゃないんだと。

"pulseはnever stops"なんだと。

「あーもうこれは生きる話だ。
 音楽とか練習とかそーゆう題材だけど、いつか死ぬまで終わらない話なんだ」と、
3分しないうちに思った。

pulseは脈も鼓動もあったよな、、、と思いつつ調べると、
脈拍、鼓動、(光線・音響などの)波動、振動、律動、拍、(生気・感情などの)躍動、興奮、動向、意向、(…で)脈打つ、鼓動する

この作品に流れる素というか核が、
単語の意味するところに丸ごとあった。
それが止まることは決して無いのだ。と。

最初にそう思っちゃったもんだから、
私が観る視点が定まった。(狭まった?!笑)

とはいえ、
シーモアさんの話しは楽しく、優しく進む。
時に「あ、覚えておこう」「なるほど」と感じさせながら。


が!
彼が話すことは、彼がつかみ取ってきたものだ。

演奏家になるために練習し、デビューし、プレッシャーや緊張と戦い、
更に練習し、50歳「自分自身で満足するような演奏が出来た時に」表舞台を去り、
ピアノ教師として、創作するための生き方を母親にも言わずに自身で選ぶ。

師匠クリフォード・カーゾンがなぜSirの称号を与えれてないんだろう?と思った時に、
何人がすぐさま女王に手紙を書くだろう?
戦争の最前線で「クラッシックなんて兵士は聞かないよ」と言われた時に、
何人が「演奏会をやらせて欲しい」と頼み、トラックでピアノを人生で初めて運ぶだろう?

居ないとは思わない。
シーモアさんはやり抜けてきたのだ。
音楽と向き合う情熱と真面目さがそうさせるんだと思う。

気持ちを表して行動をする。
音楽家なら鍵盤に音として表現なのかもしれないけど、
これなら普段の生活でも真似出来る。
(部屋をきちんと片付けるのもそうだ。。)

自分の中にあるものが幸せに導いてくれるはずだから。
誰かじゃない、自分自身に聞くんだと。
普段の生活と音楽家(シーモアさんの場合は)としての自分を二つに分けるのではなく、
それはそれで不協和音はあるけれど、
一体にしていくことで解決にもなるんだから。


何回かカフェで教え子マイケルと話しをする場面が挟まれる。
終盤「あなたが表舞台を去ったのは逃げではないか?」というようなやり取りがある。
デビューの時から演奏会での緊張、恐怖を持ち、
思い通りの演奏が出来るようになったと感じた50才以降の生活に、
幸せだという先生に対して、
「あなたは安全な場所に自分を置いているが、
 才能のある生徒である演奏家達には何か社会に貢献することがあると言う。
 でもあなたは表舞台から去り、自分自身の芸術家としての責任はあるのか?」
と、いうようなことを問われる。

シーモアさんは、
「私には素晴らしい答えがある。君に注いだんだよ。」
I have a wonderful answer. I poured it into you.


誰かに教えてもらうことは、
その人自身をまるごともらってるんだ。
シーモアさんを見て初めて分かった。
オープニングの練習シーンでキュっと感じてたのが、
ふわっとゆるんだようになり涙が止まらなかった。

で二人で練習しちゃって。again again。
この時の曲が5歳マイケルがふっとよぎるようなかわいい曲なんだ。
DVD英語字幕には[cheerful piano music] 陽気なピアノ曲 とある。

自分でも気がついてない感情は誰でも持っている。
そこへ問いかけて、何かをし、何かを選び、
やるんなら練習して、、、。そして、それは止まらない。
芝居もですよね。はい。もうそのまんま。

自分に問いかけるべきだ。
ではなく、
シーモアさんの優しい語り口は
自分に問いかけていいんだよ。あなたの感情でいいんだ。
と許して、ん、違うか、認めて、ん、許してか、くれてる気がする。
ジーン。


シーモアさんの言葉や眼差し、
画面を通して手を差し伸べてくれるような感覚は、
助けになり励まされた上で、
「じゃあ、あなたはどうしますか?」と突きつけても来る。
私にも真摯な姿勢と、継続と、情熱のありどころを問いかけてくる。

その上で、答えは自分の中だと。
あやふやなものではないんだと痛感する。

そしてイーサンも「出来る。出来る」と。
シーモアさんへ言うでもなく、
自分自身へだけでもなく言うやわらかい「I can. I can」


戦争へ行った初めての日。
朝お腹が空いてピーナッツを食べていたら、
子鹿が出てきて、私の手からそのピーナッツを食べた。

"誰かから誰かへ"

このシーンの後、演奏会へ。

シーモアさんは「イーサンの為にやりたかった」と言い、
イーサンは「誰かにこれを知ってほしい」と映画を撮り、
あの演奏会の窓の向こうに映る名前も知らない人々は、
私たちのようでもあり、閉じられたカーテンではなく
窓の景色をすり抜けてこの映画が私たちに届いたような気がする。

演奏会のピアノはブラームスのほうが好き。
細い糸を辿るようにスゥーっと身体に入ってきて、
純粋さと透明感、そして独りのいとおしさみたいなものにブルブルする。
美しい旋律や音の中に包み込まれる浸る感じ。
この作品を見てる中での解決かなぁ。

ラストのシューマン幻想曲第3楽章の始まった時に、
can"t stop と言う。練習し始めたら最後まで止められないんだと。
演奏が終盤に差し掛かったところで、
「ここから先はマークがない。誰ひとり同じ演奏をしない。」
そして
「ソフトにwhimper(くんくん泣く)ように弾く人も居るけど、 
 私は反対にintensityに弾く」
intensity
強烈、激烈、猛烈、厳しさ、熱烈、強さ、強度

I just keep the intensity going.
とここでは「うわぁぁーーーー」と声が出て唸った。
正確に言うとintensityを辞書で調べてその意味が分かってうわーっです(笑)

シューマンの曲は先へと背中を押してくれる気がする。



止まらない選んだ強さ。
で、
練習があって。
この両手で空に触れることを決して夢に見たりはしてこなかった。
I never dreamt that with my own two hands,
I could touch the sky.

DVD終了。


1番好きなシーン。
演奏会のピアノを選んで「299」と決めたところ。

シーモアさんイーサン二人で
「4月5日だよ」「どお?」「上まで持ってくんだよ?」「ねえ?」
「どう思う?」「4月5日だよ」

スタインウェイの方に
「その日に使えないピアノなら見せないし」って。
↑この方の顔!

「もうお前たちったら」具合がね。

二人の「どうしても」「なにがなんでも」「絶対に」
この無邪気な情熱にフっと笑いつつも、
あーーー素はこの情熱なんだなとワクワクする。
ジーンと温かさも感じるんだけど、同時にワクワクもするんだ。

たとえ限られた人達の前だとしても、
35年ぶりに演奏会を行うことはシーモアさんにとっては大きなことだったはずだ。
しかも撮影までしてて。
ご本人もNYデビューの時と同じくらい練習したそうだ。
イーサンの舞台恐怖症の話しはこのQ&Aで話してる。
長い英語のインタビューだけど最後にシーモアさんはブラームスを演奏してるし、
二人が抱き合う姿にグっとくる。
手もよく見えるので演奏家の方には興味深いかも。

NYFF52 An Evening with Ethan Hawke
https://www.youtube.com/watch?v=M3DOOOikack


やっぱり映画館で観られる喜び♪
美しいピアノの響きももちろん楽しみました。
映画館で観るとあたらに感じることもあるけど、
「299」と「注いだ」「ピーナッツ」からの〜ブラームスは
鉄板のブルブルポイントです。

最初の1回目が
英語という壁があって、お勉強体勢にも似た感じで観たので、
ちょっと理屈っぽいですよねえ。
ただただふわ〜とあのピアノの音に浸るように眠りながら1回映画館で見たいなぁ。

誰か音楽家の方が、
曲の解説してくれないかなぁ〜あの曲はこんな風に生まれた曲とかさ。
きっとそれぞれの曲にはなんか理由があるんだろうなと思ってるんだけど深読みか(笑)

あ!あと市川純子さん。
日本人のピアニストの方がこの作品に出演されてるのが、
すごく嬉しい。
市川さんは87才だったかシーモアさんのお誕生日に、
"The Hawke,"というシーモアさんがイーサンに送った曲を
カーネーギーホール(だったと思う)で披露されたんですよ〜。
↓これはシーモアさんの演奏。
"The Hawke," composed and performed by Seymour Bernstein.


パンフレットにはプロデューサー木藤幸江さんがコメントを書かれてて、
『痛いほどきみが好きなのに』からのおつきあいだとか。
嬉しいし、う、う、らやましい(笑)

日本で発売になるのはDVDかブルーレイか、
特典の演奏会も絶対入れてくださいお願いします!!


さ、ブルーに生まれついて も近づいてきました♫
イーサンが「I can. I can.」と言ってくれて本当に良かった。

シーモアさんと撮った事はブルーの助けになった。
と何度も何度もイーサンは言ってる。

二つは繫がってるんだよー。

あ、そうだ。
monkはイーサンファン、ビフォアファンとしては
「仙人」じゃなく「修道士」ですよね♪

『ブルーに生まれついて』を待ち望んでいる方も、
「シーモアさんと、大人のための人生入門」見ておいたほうがいいよー!

と思ってたらビックリニュース!
新宿武蔵野館で行われる特集上映「リンクレイター青春3部作」
リチャード・リンクレター最新作「エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に」
とともに「バッド・チューニング」11月5日から11日まで。
「6才のボクが、大人になるまで。」は11月12日から18日まで上映。

なんとっっ。
東京でのことですが、
6才〜まで公開にって、すごい。大忙し。
イーサン祭いよいよ最高潮かも♪





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