二人はテーブルの前のソファに、向かい合って腰を下ろした。翔平の大学当時の友人が、信楽焼を趣味に焼いていた。翔平は熱湯のジャーで、ティーパックのほうじ茶を信楽焼の大振りの湯呑みに注ぎ、両手に持って運んできた。
三歳違いで容貌は似ているところがあったが、体型はこれで兄弟かと他人が見たら思うほど、まるで違っていた。翔平は恰幅のある、七福神の大黒を髣髴とさせるタイプで母親譲りであったが、宮本は祖父、父親譲りの痩身だった。宮本はこうやって一緒に食事していると、あまりの違いが滑稽に思えてくることがあった。が性格は体型を裏切っていて、翔平は鈍重でもなく何事も鋭敏に判断し、迅速に行動する男だった。
「それで祗園か木屋町でええおなごでも見つかりましたかな」
翔平は前から宮本の再婚を促していた。
「そんなんと違うのや。東寺の仏像を見てきたのや」
「おなごでなく仏像ですか。近頃、兄さんはますます抹香臭なってきたのと違いますか。あれでっせ、いまは男も平均寿命が七十五歳を超えてます。兄さんかってあと十五年、人生楽しめまっせ。それを兼好法師のように一人で暮らしはるんですか」
「吉田山でぶつぶつ随筆書いてか。そらァちと侘びしすぎる」
「英恵がな、兄さんにええ女性世話すると息巻いてまっせ。教会の毎月のバザーを一緒に世話している女性。五年前にご主人亡くしはった五十二歳の女性でな、女学院の英文科出やそうな」
「神戸女学院か」
「そうや。結婚してからは主婦やったから、特別語学を活かしたわけやないけど、上品な才女で、いまは趣味のフラワー・アレンジメントの教室をやってはる」
「生花か」
「生花もそうやけどドライフラワーもしてはるので、フラワー・アレンジメント」
「そうか。まあ歳は五十二でも不足はないけど、フラワー・アレンジメントやと謎のない女性ということになるな」
「何ですか、その謎とは」
「謎のある女のほうが魅力あるやろ」
「あれぇ、いつからそんな贅沢なこと考えるようになったんですか。英恵に話したら腰抜かしますぜ」
翔平は大柄な肩を揺すって笑った。
「なんや隅におけんことを思案してるな。どこぞにそないなおなご隠してはるのかいな」
「いや、そんなんはおらんけどな。あと十五年も生きなあかんとなったら、一緒にな、謎解きするひとのほうが退屈せんやろ」
「ますます困ったこと言いよるな。英恵には内緒にしとこ」
「侑子がな、あないな死に方しよったのはな、ぼくがな、あれと一緒に謎解きせんかったからや」
「ふうーん」
「違う言い方すると、同じ汽車に乗ってなかったということや。最初は一緒の汽車に乗っていたかもしれん。しかしいつの間にか二人とも違う汽車に乗り換えてたんやな」
「言うてることわからんこともないけど、もう侑子さんのことは卒業しなさいな。啓治も立派な医者になってるのやで」
「あんたがちゃんと育ててくれて感謝してる」
「そないな話と違います。再婚ですがな」
翔平はじっと宮本の眼を見て、釘を刺すように言った。
三歳違いで容貌は似ているところがあったが、体型はこれで兄弟かと他人が見たら思うほど、まるで違っていた。翔平は恰幅のある、七福神の大黒を髣髴とさせるタイプで母親譲りであったが、宮本は祖父、父親譲りの痩身だった。宮本はこうやって一緒に食事していると、あまりの違いが滑稽に思えてくることがあった。が性格は体型を裏切っていて、翔平は鈍重でもなく何事も鋭敏に判断し、迅速に行動する男だった。
「それで祗園か木屋町でええおなごでも見つかりましたかな」
翔平は前から宮本の再婚を促していた。
「そんなんと違うのや。東寺の仏像を見てきたのや」
「おなごでなく仏像ですか。近頃、兄さんはますます抹香臭なってきたのと違いますか。あれでっせ、いまは男も平均寿命が七十五歳を超えてます。兄さんかってあと十五年、人生楽しめまっせ。それを兼好法師のように一人で暮らしはるんですか」
「吉田山でぶつぶつ随筆書いてか。そらァちと侘びしすぎる」
「英恵がな、兄さんにええ女性世話すると息巻いてまっせ。教会の毎月のバザーを一緒に世話している女性。五年前にご主人亡くしはった五十二歳の女性でな、女学院の英文科出やそうな」
「神戸女学院か」
「そうや。結婚してからは主婦やったから、特別語学を活かしたわけやないけど、上品な才女で、いまは趣味のフラワー・アレンジメントの教室をやってはる」
「生花か」
「生花もそうやけどドライフラワーもしてはるので、フラワー・アレンジメント」
「そうか。まあ歳は五十二でも不足はないけど、フラワー・アレンジメントやと謎のない女性ということになるな」
「何ですか、その謎とは」
「謎のある女のほうが魅力あるやろ」
「あれぇ、いつからそんな贅沢なこと考えるようになったんですか。英恵に話したら腰抜かしますぜ」
翔平は大柄な肩を揺すって笑った。
「なんや隅におけんことを思案してるな。どこぞにそないなおなご隠してはるのかいな」
「いや、そんなんはおらんけどな。あと十五年も生きなあかんとなったら、一緒にな、謎解きするひとのほうが退屈せんやろ」
「ますます困ったこと言いよるな。英恵には内緒にしとこ」
「侑子がな、あないな死に方しよったのはな、ぼくがな、あれと一緒に謎解きせんかったからや」
「ふうーん」
「違う言い方すると、同じ汽車に乗ってなかったということや。最初は一緒の汽車に乗っていたかもしれん。しかしいつの間にか二人とも違う汽車に乗り換えてたんやな」
「言うてることわからんこともないけど、もう侑子さんのことは卒業しなさいな。啓治も立派な医者になってるのやで」
「あんたがちゃんと育ててくれて感謝してる」
「そないな話と違います。再婚ですがな」
翔平はじっと宮本の眼を見て、釘を刺すように言った。
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