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倶楽部 月世界

わたくし月世(げっせい)の短歌と句(俳句&川柳)、ブックレビュー、育児、グルメなどを綴ります・・・

玉岡かおる 『お家さん』

2008-10-08 00:02:49 | 本読み

玉岡かおるの書き下ろし上下で、トータル640ページの長編小説。
ふぅ~。読み応えあったぁ

明治~大正~昭和初期の神戸に実在した、かつて日本一とも謳われた巨大商社と
それを率いたこれまた実在の女性=お家さん のお話。

一時期は三井、三菱をもしのぎ、世界各地にその名を轟かせていたという。

でも、今は「鈴木」の名はどこにもない。
神戸製鋼、日商岩井(現:双日)や帝人の祖とも言える会社なのであるが。

お家さんとは、関西の立派な商家の女主人のことを指したらしい。
そんな昔に、5千人を超える従業員を束ねる頂点に女性が座っていたとは
非常に驚きである。

経済モノ大河ロマン小説とでも言おうか。
日清・日露戦争、第一次世界大戦、米騒動、関東大震災などなど。
近代日本史の教科書で見たような事柄が次々と、
ヒロイン=お家さんやら、個性あふれる登場人物たちと
共に繰り広げられる。

正直、最初はなんだか読むのが苦痛だったが、
いつの間にやら止まらなくなっていた

舞台が神戸というのも取っ付き易かったかな。
両親共に神戸の街中の生まれ、という生粋の神戸っ子を自認している
ワタクシだけど、
非常に馴染みのある地名・場所もいっぱいで。

通っていた「神戸幼稚園」の記述もあってびっくり
(そんな昔からあった園だったとは・・・JR元町駅北に今もアリ)

なんだか宮尾登美子の小説にありそうな題材なんだけどね。
NHK大河小説か、朝の連ドラにピッタリな大作であった。
ドラマ化望む




松井今朝子 『仲蔵狂乱』 

2008-09-16 21:39:59 | 本読み

今朝子女史、本領発揮の歌舞伎モノ
(第8回時代小説大賞受賞作)

江戸時代の不世出の歌舞伎役者、初代中村仲蔵の波乱万丈の物語ナリ~。
「中村座」「市村座」「森田座」に、四代目市川団十郎やら、
四代目幸四郎やらが登場し、まさに歌舞伎の歴史もん小説である。

歌舞伎の世界ほど門閥のキツ~イ所はない、とよく言われるけれど、
それは江戸の昔から変わらず。

よって、この物語の主人公仲蔵は、孤児である上に名門のサラブレッドとは
異なる駄馬であるが故に、下積みの苦労に苦労を重ね、
努力で浮き上がれば、すぐに妬みやっかみ、足の引っ張り、
いじめ、私刑の待つ世界・・・

延々とこれの繰り返し。それでも天賦の才と底知れぬ努力によって
役者の頂点を極めるのだから、かなりの根性物語だ。

歌舞伎好きにはたまらないお話かもしれない。
田沼政権の光と影をも盛り込まれており、
豊富な歌舞伎知識と歴史を味わいつつも、
う~ん、仲蔵の境遇の哀れさやらお人よしさ加減に
少々うんざり・・・ で、マンネリ・・・

丁寧な人間模様をも描いているのだが、
私は主人公が女性だった既読の二冊の方がサクサク読めたなあ。


松井今朝子 『家、家にあらず』 

2008-08-28 17:07:34 | 本読み

『吉原手引草』で今朝子ワールドにハマってしまい、
二作目に突入

期待通り!おもしろかったぁ
今朝子女史、あなたに附いて行きます って感じ。

やはりお江戸モノ。
さる外様大名の奥御殿に務める女たちのお話。
江戸城の大奥にも似た、男子禁制の女だけの特殊な世界が舞台。

吉原遊郭も一般社会とは異なるアナザーワールドだったけど、
こちらもそうだな。

で、江戸モノとは言っても単なる時代小説でもなければ、
単なる御殿女中のドロドロ世界、というのでもなく。
ヒロインの出生にまつわる秘密が明らかにされながら、
御殿奥で次々におこる事件。
といった具合の時代劇サスペンス&ヒューマンタッチな女性ドラマって
ところかしら。

やはり、作者の豊富な時代モノ知識が散りばめられていて、
フィクションなんだけど、すごうく丁寧な読み物で
大名御殿奥にどっぷり浸れることうけあい

ヒロインの出生に関わるナゾは、かなり最初に分かってしまったけど
女だらけの世界にしては、結構「動」のお話なので
まったく退屈知らずで、どんどん読み進めてしまう。

タイトルの『家、家にあらず』は、
『風姿花伝』の「家、家にあらず、継ぐをもて家とす。
           人、人にあらず、知るをもて人とす。」
からきているようだ。

桐野夏生 『東京島』

2008-08-18 22:46:26 | 本読み

最近読んだ本のひとつ、桐野女史の『東京島』。
やや暑苦しいながらも、夏らしい三好和義撮影の表紙。
それでもって、中身は無人島モノ

桐野サンの作品は9割方読んでいるけれど、
このひとのヘヴィでダークでスパイシーなオハナシは結構好き

この『東京島』は無人島が舞台、と言っても冒険ハラハラのロビンソン・クルーソモノでもなければ、
サバイバル~な生死のドラマ というのとも違う。

場所がたまたま無人島なだけで、いつもの桐野節健在の
人間ドロドロモノ、と言えばいいのだろうか。

帯や広告のコピーから想像するような、エロいものでもなく。
どんな場所にも色んな人間がいるよな、と妙に納得してしまえるのが不思議。
殺人、発狂エトセトラ。
無人島が有人島になった瞬間、そこに生まれるもの・・・

結末があれでいいのかい?と思ってしまったんだけども
小説を読みましたぁ 的なトコロでは丁度いいのかしら。

あ。これ読んで桐野サンは絶対に出産経験ないなあ、と確信。
(もし違ったら失礼・・・)

それにしても。
絶対にトカゲだの蛇だの食したくないし、
海で遭難して無人島に漂着 は避けたいものだわ

松井今朝子 『吉原手引草』 

2008-08-03 00:52:57 | 本読み

第137回直木賞受賞作。
松井今朝子著『吉原手引草』。

花街モノは、昔から結構好きで。
宮尾登美子のものは、大学生の時に読破。
川柳(古川柳)でも、江戸・吉原は外せないものね。
この本は吉原は花魁モノ。
といっても、ベタベタの女郎モノでなければ、春画もどきの?エロイ小説でもなく。

ひとことでいうなら、時代劇ミステリ なんだろうな。
う~ん、おもしろかったすごく。
この松井サンって方、京都祇園の生まれで、歌舞伎の企画・制作に携わっていたという、
バリバリの時代モノのオーソリティ

それなのに、知識のひけらかし 的な厭味のない、とっても読みやすく、
かつエキサイティングな文章で
直木賞受賞もむべなるかな。

ある、トップ花魁(お職と呼ばれる)の「葛城」の失踪が主題。
といっても、当の本人は直接は登場せず、
引手茶屋、遣手、床廻し、幇間、女衒、女芸者といった吉原で働く人々の
語りによって、すべて進行するというスタイル

物語の進行と同時に、読み手が吉原という異界の案内を受けている、
といった塩梅。

先が気になって、気になって、あっという間に読んでしまうでありんす。
わちきも、少々お江戸にトリップしたようでありんす


小川 洋子はご近所さん・・・・?

2007-01-21 11:38:47 | 本読み
私の好きな女流作家のひとり、小川洋子サン。
我が家と同じく2002年から芦屋市内にお住まいで、
身近に感じているのも愛読の理由のひとつ

同じ市内とは言っても、狭いようで広い。
村上春樹「風の歌を聴け」の描写で言うと
<前は海、後ろは山、隣には巨大な港街がある。ほんの小さな街だ。>というぐらい。

というわけで、市内のどの辺りにお住まいかは存じ上げておらず、
図書館やメゾンアンリでの邂逅でもない限りは、
お目に掛かれないだろうと。

しかし、2007年1/1付けの市の広報誌。
第42回谷崎潤一郎賞を女史が受賞した際の、記念講演の要約が掲載されていた。
作品は「ミーナの行進」 。
芦屋が舞台なのと、谷崎記念館が市内にあるということで
特別講演会が昨年催されたのである。(参加すればよかったなあ)

記事を読んでみると・・・・
「(住んでいるのは)谷崎潤一郎記念館から、自転車ですぐのところですので・・・・」
とあるではないか

う、うちもそうなんですよぅ~、小川サン
そう、我が家も↑からとっても近い。歩いてもすぐのところだけど。
ちなみに記念館の両隣に美術博物館と中央図書館もアリ。
図書館で小川サンをお見掛けしたら嬉しいのに・・・

となると、お住まいのエリアは大体想像がつく。
可能性としては、あそこから西で、ココから南、こっちよりは東だろう、などと。
ひょっとすると同じご町内という可能性もなくはない。
まああ

俄然?センセイの著作を読む気が増進し、
立て続けに「完璧な病室」「揚羽蝶が壊れる時」「冷めない紅茶」
「ダイヴィング・プール」「沈黙博物館」を読破
当然近所の図書館の所蔵本である

オットは「偶然見掛けた時、サインしてもらう為に、いつも(小川)本を
持ち歩いたら?」って言うけど、
センセイは派手な御風貌ではないので、気が付かないかもしれないよね。






「ミーナの行進」 (小川 洋子)

2006-10-21 11:27:17 | 本読み
作者が市内在住、小説の舞台が当市ということもあって、
この小説は市立図書館で、随分待ってようやく貸りられたモノ。

小川本はもう結構読んだけれど、コレは彼女独特の
(いい意味での)「クセ」が少なめ。
主人公とその相手がまだ少女期?であることもあって、
全体にほんわかとして、家族と家のぬくもりの一種のホームドラマ。
珍しいかもしれない。

もちろん、いつもの「淡々と」「ひそやかに」感はあるものの、
1970年代前半の、まだ今よりもゆったりとした時代の「ぬくさ」を感じる。

芦屋の山の手にある洋館が舞台。かつては庭に動物園があったという、
広い庭や、カバを飼っていたりと奇想天外。
おまけに、そのカバに乗って小6の身体の弱い美少女は通学するのだ

どこか浮世離れしつつも、現実的な描写(ミュンヘンオリンピックのテロや
市立図書館のことなど)もあったりで、引き込まれることしかり。

さすがに地元、よく知ってる場所やお店が出て来てそれも興味深い。
洋菓子店Aこと、アンリシャルパンティエや
ベーカリーBこと、ビゴの店 など今でも芦屋を代表する有名店が登場。

ちなみに、小説内の図書館は現在は「打出分室」となって
市立図書館本館は別の場所に存在する。

少女ふたりの友情をベースに、小さなこと、大きなこと、色々な事があった
一年でしたね。という回想録なのだが
さすがの筆者の力量、温かみがありながらも軽いだけのものではない

語り手の主人公の少女が、後に図書館勤務をしているといのは
筆者のサーヴィスのひとつかも(市立図書館に対して)






伊坂 幸太郎 ・ その6

2006-08-21 23:59:24 | 本読み

2006年3月発行の新刊。
彼お得意の、つながりのある短編集~が長編小説になってるモノ。

「何年かすると地球が小惑星と衝突し、人類は滅亡ス」
という、SFもどきの設定のもとで、人類滅亡の日を三年後に控えた
仙台郊外のマンションで暮らす様々な人間の日常を描く。

読み進むにつれ人間関係がつながっていく構成で、(今までもコレあったなぁ)
それぞれの短編につけられた韻を踏んだタイトルも、
登場人物にまつわる意味のあるものになっている。という仕掛け。

ストーリー展開がおもしろい。
死の恐怖やら、喪失感やら、過去の呪縛やらに襲われつつ、
人と人とが濃厚に関わってくる。
タイムリミットが迫っているからこそ、の独特の世界観が織り成す人間模様。

これまでの伊坂作品と比べると、随分肩の力が抜けているし、
上っ面だけのセリフ回しや、薀蓄語りに流れていないところも良い。

楽しく読めたな。


伊坂 幸太郎 ・ その5

2006-05-28 23:36:57 | 本読み

長編青春小説、「砂漠」。 青春ってねぇ・・・
作者の母校、東北大学と思われる、仙台の国立大生達のお話。

ところどころに、麻雀の話や、牌の図柄が挿入されている。
(まるで「麻雀放浪記」ですな)
おまけに主人公=北村をはじめ、周りが「東南西北」がつく苗字だったり、
「イー・ソー」(ソウズの1)の牌の代わりに、飛んできた鳥で上がったり、
と芸が細かいんだか、どうでもいいんだか・・・
世界平和を願って、「平和ピンフ」ばかりに拘る男とか。

いや、決して麻雀小説ではない。
大学時代を通しての、仲間を通しての、なんやかかんやを
おもしろおかしく、いつもの薀蓄を交えて、麻雀を交えて
描いている。

深みはない。
感動もさしてない。
けど、こういう学生生活も悪くないのかもね、
と自分を振り返って思ったりもした。
麻雀は別にしなくてもいいけど。

そんな感じで楽しく読めた。
クセのある登場人物が多いのは毎度。
ようやく、「~っつうの」「~ってば」の言い回しが
消えたようだ。
そろそろ、飽きたか?伊坂。


「ハルカ・エイティ」

2006-05-17 23:29:33 | 本読み

姫野カオルコの新作 『ハルカ・エイティ』。
今まで読んだこの作者のとは作風が違うっと思った。
エロ変な、あの文体は一体どこへ行ったのだ??

ある魅力的な、80歳の女性の人生を綴った物語。
(作者の実の伯母がモデルのようだ)
主人公ハルカを通しての、戦前~戦中~戦後の女性史 といった感じか。

大阪弁、京都・滋賀弁で構成されているので
読みやすくはあった。
が、ところどころで入る、作者のつっこみ(200X年の日本ではこうだ、ああだと)
がどうも気になる。

それなりに面白かったが、尻切れトンボのように終わったのが残念。
現在のハルカが魅力的である、その故をもうすこし描写しなければ・・・