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倶楽部 月世界

わたくし月世(げっせい)の短歌と句(俳句&川柳)、ブックレビュー、育児、グルメなどを綴ります・・・

『さようなら、オレンジ』 岩城 けい

2015-09-25 18:10:01 | 本読み

第29回太宰治賞受賞作品。

第8回大江健三郎賞受賞でもあるし、第150回の芥川賞候補でもある。

大好きな小川洋子氏の絶賛もあり、(三浦しをんも)読んでみた。


両氏の推薦文の通り、心揺さぶられる作品。

つんとこみあげてくる箇所もいくつか。

強く生きること、人と言語、異国、交流、夢、絶望、人として、女として・・・

そんなことが地の文と手紙文とで綴られている。

非常に読みやすく、一日半で読破。


この作品は非常に評価が高く、私もそう感じた。

しかし、在豪の作者ならではのこの作品を超えるものを、彼女が今後も書けるかどうかは

懐疑的な意見が多数であり、私も賛成せざるを得ない。

逆に言えば、この「彗星の如く」のような本作は それぐらい素晴らしいのである。




皆川 博子 『蝶』 ・ 『少女外道』

2011-05-29 22:15:01 | 本読み

お初の皆川女史の御本。(「御」というのが本当に相応しい)

格調高く、幽玄華麗、幻想、静謐、狂気、エロスとタナトスetc.・・・

そんな単語が浮かんでは消え。 私の持ち語彙ではこのような凡々たる言葉しか出ては来ない・・・


この二冊はどちらも短編集。

短くて、濃く深いお話ばかり。

今度は長編も読んでみようと思う。

皆川ワールドに どっぷりと浸りつつ・・・















本ヨミ備忘録~『ニシノユキヒコの恋と冒険』:川上弘美/ 『チャイ・コイ』:岩井志麻子 他

2011-04-25 21:52:23 | 本読み

川上弘美の短編連作集『ニシノユキヒコの恋と冒険』。

その中の『パフェー』より・・・

『 恋とはなんだろうか。人は人を恋する権利を持つが、人は人に恋される権利は持たない。

わたしはニシノさんに恋をしたが、だからといってニシノさんがわたしに恋をしなければならないということにはならない。

そんなことは知っていたが、わたしがニシノさんを好きであるほどはニシノさんはわたしを好きでないことがつらかった。

つらかったので、ますますニシノさんを恋しくおもった。』・・・

 ↑ by:夏美さん


おなじく『おやすみ』より・・・

『 ユキヒコがわたしに傾斜したのは、どのくらいの期間だったろう。

「マナミがいないと、僕は困る」と、ユキヒコは言った。ぜんぜん嬉しくなさそうに。しんそこ困惑して。

「いつもわたしはユキヒコのそばにいるよ」わたしは答えた。』 ・・・

・・・・中略。

『 答えながら、わたしは鼻をかんだ。涙がひとつぶかふたつぶ、出たのである。

ユキヒコがもうわたしに傾斜していない、ということがわかって、わたしはパニックに陥っていた。』・・・

 ↑ by:マナミさん


するり、と女性たちのこころに入り込んでしまうニシノユキヒコ。数多くの恋をしながらも常に「なめらかな上の空」で

やさしく、無邪気で、残酷で、淋しい。ほんとうの愛をおそれて、なのにほんとうの愛をもとめるオトコ、ニシノ。

なんとも微妙でかつ、魅力的な小説 さすがは川上女史。


おなじく『しんしん』より・・・

『 ・・・ニシノくんのことを私は愛しかけていた。今にも愛してしまいそうだった。

けれど、ニシノくんのことは愛さない。絶対に、愛さない。そう、私は決めていた。』

・・・・中略。

『 「もしかして、ちょっと、本気」私が聞くと、ニシノくんは目を伏せた。

「よくわからないんだ」ニシノくんは答えた。

「僕は、これまでそういうことにならないように、気をつけてきたから」

気をつけてきた、というニシノくんの言葉に、私は笑った。こんどはニシノくんも笑った。

私はそろそろとニシノくんから身を離した。今ニシノくんに近づいてはいけない。

本能が私にそう警告していた。今ニシノくんに近づくと、そのままほんとうにニシノくんを愛してしまう。

そして、もしかしたらニシノくんも、私のことをほんとうに愛してしまうかもしれない。』・・・

 ↑ by:エリ子さん



岩井志麻子『チャイ・コイ』。

非常に官能的であり、同時に淡々とした筆で性愛が書かれている。とてもやらしいのだが、またある意味やらしくない。

ベトナム、サイゴン川の熱気とどこか乾いた心情とエロスとが混じり合う、オトナの女性向けの小説。


以下 備忘録。(2010.11~2011.04)

*『ズームデイズ』/ 井上荒野

*『ひどい感じ 父・井上光晴』 / 井上荒野

*『眼の皮膚・遊園地にて』 / 井上光晴

*『不格好な朝の馬』 / 井上荒野

*『ヌルイコイ』 / 井上荒野

*『贖罪』 / 湊かなえ

*『永遠の朝の暗闇』 / 岩井志麻子

*『自由恋愛』 / 岩井志麻子

*『ルームメイト』 / 今邑彩

*『場所』 / 瀬戸内寂聴

*『夏の終わり』 / 瀬戸内寂聴

*『花芯』 / 瀬戸内寂聴

*『学園のパーシモン』 / 井上荒野

*『ひそやかな花園』 / 角田光代

*『雉猫心中』 / 井上荒野

*『空中庭園』 / 角田光代

*『女ともだち』 / 角田光代、井上荒野、栗田有起、唯野未歩子、川上弘美

*『蜜と毒』 / 瀬戸内寂聴

*『龍宮』 / 川上弘美

*『女徳』 / 瀬戸内寂聴

*『もう切るわ』 / 井上荒野

*『いつか陽のあたる場所で』 / 乃南 アサ

*『コトリトマラズ』 / 栗田 有起

*『蛇を踏む』 / 川上弘美

*『溺レる』 / 川上弘美

*『Nのために』 / 湊かなえ

*『ベッドの下のNADA』 / 井上荒野

*『対岸の彼女』 / 角田光代

*『東京ゲスト・ハウス』 / 角田光代

*『無傷の愛』 / 岩井志麻子

*『予定日はジミー・ペイジ』 / 角田光代




見事に女流作家ばかり。











『少女』/ 湊 かなえ ・ 『ベーコン』/ 井上 荒野 他

2010-11-19 22:31:25 | 本読み

 ここ最近の読んだ小説の備忘録。


【湊 かなえ】

 *『少女』 ↑ スマッシュヒットの出世作『告白』越えは、やっぱり難しいかのう・・・



【井上 荒野】 
 
 *『切羽へ』

 *『誰よりも美しい妻』

 *『しかたのない水』

 *『潤一』
 
 *『つやのよる』

 *『夜を着る』

 *『だりや荘』
 
 *『森の中のママ』

 *『静子の日常』

 *『ベーコン』



 ↑ この短編小説、『ベーコン』に収められている『煮こごり』。

この作品の中に、チラリと印象に残った箇所あり。



『・・・・疲れすぎていたからというより、鵜飼という男の磁力に、あの最初のときから自分はとらわれていたのだ、

と晴子は思う。だから一緒に車に乗った。そうして、私たちははじまった。

 あるいは鵜飼は、十五夜の月みたいな男だった。

 十五夜の月、つまり旧暦の八月十五日にのぼる月は、満月とはかぎらない。

昔のひとが、八月十五日を「中秋の名月」としたのは、

満月よりも、満月に少し欠ける月のほうが美しいことを知っていたからだ。

そんなふうなことを晴子に教えてくれたのも、ほかならぬ鵜飼だったが、よくわかる、と晴子は思ったものだった。

 鵜飼ほど魅力にあふれた男を、晴子は知らない。しかしやっぱり、鵜飼にも微かな欠けがある。

欠点などではない。針の先ほどの空白のようなもの。それが何なのかは謎だった。

自分がこうまで鵜飼に焦がれるのはそのせいとも思えたし、あるいは焦がれるということは、

相手の中にそのような空白を図らずも見つけてしまうということなのかもしれない、とも考えた。

 そのことと、鵜飼に妻子があるということとは、何の関係もない。その事実を知ったのは、

出会ってからひと月経たないころだったが、晴子はすでに鵜飼に強く焦がれていたから、

鵜飼を愛するのをやめることはできなかった。

・・・・(中略)・・ 鵜飼は打ち明けた。僕はそういうだめな男なんだ。

だめなくせにあんたをこんなに好きになってしまった。』





【吉田 修一】 
 
 *『うりずん』

 *『7月24日通り』
 
 *『長崎乱楽坂』

 *『横道世之介』
  



【宮木 あや子】

 *『太陽の庭』

 *『春狂い』




【今邑 彩】 

 *『よもつひらさか』

 *『そして誰もいなくなる』



【山本 文緒 ・伊藤 理佐】 

 *『ひとり上手な結婚』












『つやのよる』 井上荒野

2010-10-15 22:24:44 | 本読み


最近よく読んでいる 井上荒野サン。

まだ読み途中の『つやのよる』。

様々な人間が「艶」という女性について語る。


その中で 印象に残った一文・・・


「・・・自分がこの世で何よりも嫌いで、それを避けるためだけに日々を費やしてきたと言ってもいいのに、

結局いつでも避けられないのはこのことなのだ、と湊は思った。

一人の男を知り、そして彼があるとき知らない男になること。」



ま 印象に残る。と申しましても、恋愛小説ジャンル上ですので、この程度(笑)








宮木 あや子『雨の塔』

2010-08-05 22:48:21 | 本読み


最近結構はまっている、宮木あや子さんの小説。

『雨の塔』もよかった

「四人の少女たちが織りなす愛と孤独の物語」 「大人のための"少女小説"」

などと、簡単に表現されてしまっているが、そんな少女マンガちっくな(ちっくと言えばちっくか・・・)小説ではなかった。

少女と言っても、中高生ではなく 女子大生である。

「雨の塔」 の語感通り、ストーリー全体が湿っぽく、そして重い。

決して 明るく軽い乙女なお話ではないのに 誤解されがちな作品かも。

この手の小説をお好みの向きには、強くオススメ致したい小説。


 ココロに 軽く刺さった文言もいくつか・・・


『・・・誰かの心の中で一番必要な人になるのは、どうしてこんなにも困難なのだろうか。』




『・・・身体の中でチリチリと燃えるような音を立てて崩れてゆくものが何なのか判らない。

人を大切だと思って、一緒にいたいと思うことが、これほどの苦痛を伴うものだとは思わなかった。

苦痛に対しての涙は出ない。けれども胸の中に暗い洞ができ、ひたひたと海水が満ちていた。』







姫野 カオルコ『リアル・シンデレラ』 / 桐野 夏生『IN』 他

2010-07-10 16:30:56 | 本読み

第143回直木三十五賞候補作品。姫野カオルコ『リアル・シンデレラ』。

小説の中身よりも何よりも、私は、

表紙のポール・デルヴォーの絵に めちゃめちゃ惹きつけられたのである
(本当の絵は、全身の裸婦画である)

シンデレラストーリーって、よく言われるけれど それって何よ?

シンデレラってどうよ? 本当のシンデレラってのは? 真の幸せって何ぞ?

みたいなことを突き詰めて、あるひとりの女性を第三者たちからの視点で描いたお話。

「しみじみとした多幸感が物語を流れる」 とか、「言葉にならない熱い感情がこみあげてくるクライマックス」

とかの書評があふれているのだが・・・

おそらくは、私という人間が歪んでいるのだろう、ねじまがっている性分なのだろう、

ヒロイン「倉島泉(せん)」の生き方に ?記号を持ち続け、持ち続けたまま

エンディングとなってしまった・・・。

「ねたむことなく、人の幸せを我が幸せと感じて生きるー」

素晴らしい。美しすぎて、私には どうも なんだかキツイ。

でも。直木賞受賞して欲しい。良い作品だと思う。 姫野女史のファンだし。


桐野夏生女史の『IN』。 ↓



『OUT』の続編か、その絡みかと思っていた、実は。

まったくそうではなかった。 人間の深層をえぐるストーリーは、女史の毎度であるし。

評はあまり高くないようだけど、私は面白かったと思う。

小説家がヒロインで、作中作品もあったり、桐野女史の一小説家としての苦悩や視点のようなものが垣間見れた(と思わせるような)一面もある作品。


 備忘録。ここ2.5ヶ月で読んだ小説を列記ス。




↑ 宮木 あや子『花宵道中』 ★★★★☆



↑ 宮木 あや子 『セレモニー黒真珠』 ★★★★☆



↑ 宮木 あや子 『野良女』 ★★★☆☆

とにかく、笑えた・・・! 結構お下品なお話でもあるのだが、
ハッキリ言って、声出して笑っちまいました、私。 男性は読んではイケナイ(笑)




↑ 吉田 修一 『最後の息子』 ★★★★☆




↑ 吉田 修一 『女たちは二度遊ぶ』 ★★☆☆☆




↑ 吉田 修一 『東京湾景』 ★★★☆☆




↑ 吉田 修一 『熱帯魚』 ★★★☆☆




↑ 山本 文緒 『アカペラ』 ★★★★☆

山本女史、病から復活 であります。



↑ 姫野 カオルコ 『コルセット』 ★★★☆☆



↑ 姫野 カオルコ 『整形美女』 ★★★☆☆



↑ 姫野 カオルコ 『サイケ』 ★★☆☆☆



↑ 姫野 カオルコ 『受難』 ★★★★☆



↑ 姫野 カオルコ 『H アッシュ』 ★★★☆☆



↑ 姫野 カオルコ 『終業式』 ★★★★☆



↑ 宮木 あや子 『群青』 ★★★☆☆



↑ 高田 郁 『花散らしの雨~みおつくし料理貼』 ★★★★☆



↑ 高田 郁 『出世花』 ★★★★☆


イチオシは、高田郁さんの『みおつくし料理貼シリーズ』。二巻まで読んだ。

それと、宮木あや子さんの『セレモニー黒真珠』。 彼女をメジャーにした出世作、『花宵道中』も

エロ儚げでよろしいが







今月の言葉。「恋は・・・」(笑)

2010-05-25 22:19:12 | 本読み


最近、よく読んでいる女流作家、「高田 郁」サン、「宮木 あや子」サン・・・

特に、高田郁さん作品は、たくさん読んだので、また改めて本読みレビューをば


その高田郁さんの小説『花散らしの雨~みをつくし料理貼~』。

作中の、一文を・・・

(この小説、恋愛モノではなく、江戸時代の女性料理人が主役の 人情味とお料理の香りでいっぱいのお話)



「あんたはまだ、恋、という厄介なものを知らない。女は恋を知ると変わるんですよ。

良い方にも、悪い方にもね」


(中略)


「厄介ですとも。楽しい恋は女をうつけ者にし、重い恋は女に辛抱を教える。

淡い恋は感性を育て、拙い恋は自分も周囲も傷つける。

恋ほど厄介なものはありゃしませんよ」



ううむ。

もっと、早くに この文章を目にしておくのであった・・ (爆)




『夫は既に・・・』

2010-04-01 22:21:05 | 本読み


年度始め である。

April fool でもある。

だからという訳でも、なんでもなく、

最近読んだ小説、読み返した小説で、ちょいとばかり。 な一文を

備忘録代わりに列記ス。



『夫は既に私の一部である。他人でないので会っても淋しさは紛れない。

淋しさを紛らわしてくれるのは「他人」であることを私は知った。』


 山本 文緒『紙婚式』より ↑




『どうか、神様。いや、神様なんかにお願いするのはやめよう。

どうか、どうか、私。

これから先の人生、他人を愛しすぎないように。

愛しすぎて、相手も自分もがんじがらめにしないように。

私は好きな人の手を強く握りすぎる。相手が痛がっていることにすら気がつかない。

だからもう二度と誰の手も握らないように。

諦めると決めたことを、ちゃんときれいに諦めるように。

二度と会わないと決めた人とは、本当に二度と会わないでいるように。

私が私を裏切ることがないように。他人を愛するぐらいなら、自分自身を愛するように。

そこで私は足を止めた。また、ぽつぽつと雨が落ちてきたのだ。』


 山本 文緒『恋愛中毒』より ↑



『「果ては自分が崩壊すると、そいつはそいつで思ったんだよ。あんたの環境とはちがう、

そいつなりの環境で。彼女への裏切りじゃなく自分への裏切りなんだ。

きょくたんに言えば、そいつには自己保身しかなかったんだよ、とのときは。

人には人の、それぞれの時間が流れて環境をつくっているんだから」

 大西さんは鰯を食べながらつづけ、

「自己愛は自己保身と似てるけど、ちょっとちがう」

いつも俯瞰している人間と自己愛の強い人間は一見、とても似ているのだと言った。

「自己愛ってのはなあ、だれだってあるんだけどなあ、わざわざ自己愛というほどの

やつは・・・」

 恥ずかしがらないやつだよ。そういうやつとヤれ、と大西さんは、

さいごに会った時に言った。』


 姫野 カオルコ『レンタル(不倫)』より ↑








『美丘』 ~石田 衣良~

2010-03-07 01:18:56 | 本読み



『誰かを愛することは、その人の命の責任をとることだ。』

主人公、太一のことば。

ヒロインが不治の病で消えゆく、という純愛小説の王道。

お涙頂戴モノのド・ストレートライン。おまけに 青春小説。


たまたま、入ってる読書コミュでこの作品が上がっていたので

借りて読んでみた。 買う程のものではなかったので、丁度よろし。

ほんと ありがち~なお話で、ちょっと読んでいて気恥ずかしくなったぐらい


なのに。

「泣かせたれ、泣かせたれ~」 の作者の思うツボにちょっぴり入り込んでしまって

少々 視界が霞む・・・

美丘。 ヒロインの名前。

美しい丘、というよりは 「嵐が丘」とも言うべき奔放で破天荒な女の子。


だけども。

こんな風に 全身全霊でもって、全速力で、全力で

誰かを愛してみたい と そう思った。

こんな風に 全身全霊でもって、全速力で、全力で

誰かに愛されてみたい と そう思った。


作品的には、読み返し不要。 のレヴェル。