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倶楽部 月世界

わたくし月世(げっせい)の短歌と句(俳句&川柳)、ブックレビュー、育児、グルメなどを綴ります・・・

岩井 志麻子 ・ その2

2006-05-13 12:21:19 | 本読み
新作『べっぴんぢごく』。
今回もカバー装画は「甲斐庄楠音」で、<女人像>。
内容とおそろしいほどピッタリの絵で、
またしても美し・妖し・怖い の三拍子。
これは新潮社装幀室、いいお仕事

 *****「書いてはいけないものを、書いてしまった」
 作家・岩井志麻子にそう言わしめた、女という生き物の哀しみに
 臨界点まで迫る暗黒大河小説 ******

ということだが。確かに、「こんな本、読んでしまった・・・」
という気分の本。『ぼっけえ、きょうてえ』とも似てる。
ねっとりと土着感ありの、旧い時代感ありの、
重苦しくえげつない命とか死とか、美と醜。

どこかでこんな風なモノ、読んだなあと思い出したのが
「中上健次」だった。似てる。
この息苦しいまでの性愛。タブーっぽい絡み。
脈々と息づく因縁、因習・・・

読んでいて重い気分になるのに、
何故だか、やめることが出来なかった作品。




小川 洋子 ・ その2

2006-04-24 23:27:32 | 本読み
引き続き、小川洋子を読んだ。
今回は「薬指の標本」。 へんなタイトル・・・
標題のものと、もう一篇「六角形の小部屋」が収録されている。

感想から言うと、二篇とも小川ワールド全開の、
不可思議・あやふや・幻想的、そしてそこはかとない淋しさ漂う作品。
で、とても楽しく読めた。 楽しい、作風ではないのだけれど。

どちらも「標本技術士」「標本室」←(研究所でも展示室でもなく、
ただ標本を作るだけが商売の所)、「語り小部屋」などという、
よく分からない職業やら、生業が出てくる。
よくこんな物事を創造出来るよなあ、と感服。
ま、作家だから当然なのか・・・

「薬指の標本」の方は、これまたいつものひそやかな情愛も描いていて。
主人公が、相手である標本技術士のことを
「そばにいたいなんて、なまやさしいことじゃなくて、
もっと根本的で、徹底的な意味において、彼に絡めとられてるんです」
というところが非常に印象的。

どうやら私も小川洋子ラビリンスに入り込んでしまったようだ
決して読後感が心地よい、という作風でないものが多いのに。
私こそが、「絡めとられて」しまったのかもしれない・・・

くだんの小川氏は我が市に在住。
ひょっとして市立中央図書館に調べ物になんて
来たりしないかしら??





伊坂 幸太郎 ・ その4

2006-04-15 15:02:41 | 本読み
少し前に読んで、ほったらかしだった「魔王」。
期待が大き過ぎた、ってことかも。

伊坂にしては珍しく政治色の匂いがする小説。
といってもいわゆる政界物ではなくって、主人公(毎度のことながら青年)が
政治的思考やナショナリズムとかファシズムとかにすこうし触れて、
色々と不思議な現象が起こって、というお話。

前半はすごくおもしろくって、「おお、伊坂やるやん!」って
思った 正直。先が楽しみで。
ファシズム政権のその先が読みたかったのに、
なのにいきなり主人公死なせてしまいますかぁー!って。

案の定、後半は失速。
語り部が弟の彼女(妻)に代わってからトーンダウン。
企画の意図なのか、それとも作者の力量不足なのか。
この女の子の語りに逃げてしまうのではなく、
ファシズム政権の首相のその後をきちんと書くべきだったと思う。
このあたりが不満

小川 洋子 ・ その1

2006-04-14 14:59:36 | 本読み
「岩井志麻子」に少々読(どく)あたり?したので、
一服の清涼剤を求めて読んだのが小川サン。
彼女のは「博士の愛した数式」ネタで、以前に少々触れたけど
レビュー書くのは初めてなので、いちおう その1。

「余白の愛」 タイトルに惹かれた。
画像は文庫本だけど、私が読んだのは絶版になっているハードカバー。
山本容子の挿画がいい感じだったのになあ。もったいない・・・


独特の透明感あふれる、繊細かつ柔らかな、世界。
この作者特有のはかなげで、あやうくて、不思議な物語。

指、耳、といったディテールとあやふやな関係、記憶と現実
といったものが織り成すなんとも分からないお話。

この分からなさでOK、なんだろうね、多分
おもしろかったからすぐに読んでしまった。訳が分からないまま。
丁寧に読み返すのはこのファンタジーを壊す、掟破りのようで・・・

どなたかに解説をお願いしたいところである。


岩井 志麻子 ・その1

2006-04-06 23:15:11 | 本読み
岩井志麻子の「ぼっけえ、きょうてえ」を読んだ。
第6回日本ホラー小説大賞の受賞作である。
このへんてこなタイトルは、岡山地方方言で「とても、怖い」の意。らしい。

カバー絵からして、美しこわい(甲斐庄楠音「横櫛」)

読み始めてすぐ、「なあんか、いやな本読み始めちゃったかな」と思った。
ホラー大賞だけあって、当然怖いんだが、
そのこわさが、嫌な怖さ。
土俗的な怖さ、昔の地方の重苦しくオドロオドロしい雰囲気と、
臭いのするような方言で語られる寝物語・・・

読んでて寒さを覚えたので、思わず床暖房入れたぐらい。
ほんといやあな怖さ

そのくせ、途中で投げ出すとそれはそれで消化悪そうで、
結局タイトル以外の短編も含めて一冊読みきってしまった。
どれも貧しさとか昔の地方のおんなの哀しさ、みたいなのがプンプンで
泥の臭いが漂ってきたよ

でもそれって筆者の力量なのだろう。

他のものも試したくなってみて(こわいもの見たさ)
「嫌な女を語る素敵な言葉」も読み始めた。
これは現代が舞台で、標準語で書かれている。ホ。
しかし、タイトルどおりやはりいやあな話三昧。
この筆者って一体・・・

「べっぴんぢごく」予約してあるんだけど、
もう立ち読みであらかた判っちゃってるんだよね、いやあな怖さ。

伊坂 幸太郎 ・ その3

2006-02-09 00:00:55 | 本読み

「チルドレン」に続き、「アヒルと鴨のコインロッカー」を先日完読。
最近、伊坂本以外読んでないんとちゃうか?ってぐらい
彼の本を読み倒している

今読み始めてるのは、直木賞候補にもなった「死神の精度」。

「チルドレン」はあっさりとした味で、つながりのある短編。
「陽気なギャングが地球を回す」の下敷きだったりするのかな。
ちょっと物足りなかったかも。

「アヒルと鴨のコインロッカー」は(以下少々ネタバレあり)
おもしろかった。んだけど。
大どんでん返しがちっと、それは無理があるんじゃないかい
と突っ込みたくなるのだな。

これは「ラッシュライフ」でも感じたんだけど。
このどんでん返しは、この本のキモでもあるのだろうけど、
あるだけに、少しは微妙な伏線を張っといて欲しかったな。

ここでこうやられると、ちょっとアンタ読者を舐めとんのかっ
って怒っちゃう、堪忍袋が切れやすい人だっているわけだしさ。

中には、「いやあ、気持ちよく騙されましたわいっ」ってな人も
いるだろうけどね。

このどんでん返しに力を注ぎすぎたがために、
結末が取って付けたみたいになっていて残念。
ボブ・ディランも乱発。

描いてる世界がごくせま~い範囲内なので、
ちょっと息苦しくなったし。

またしても結構おもしろく読んだ割には
難癖を付けてしまった・・・





伊坂 幸太郎 ・ その2

2006-01-20 23:22:47 | 本読み
今年に入って、「グラスホッパー」、「オーデュボンの祈り」
に続いて「チルドレン」を読み終えた。
大体、一週間で一冊のペース。ふむ。

かれこれ、この作者の本は6冊は読んだことになる。
今、手許には未読の「アヒルと鴨のコインロッカー」があり。
これも多分すぐに読んじゃうだろう。
やはり読み進めやすいのね。

の三冊の中では、「グラスホッパー」が一番面白かったかな。
ヤバイ職業の人が色々出てきて、ほっほう~って感じで。

にしても、にしても、伊坂氏の文中セリフの語尾は、
同じ表現の多用が気になる

「~だろうが」、「~っての」、「~って」、「~っつうの」
「~だってば」などなど・・・
ちょと勘弁してよってぐらいの多用だな

*用法としては、
「こんな同じ語尾ばっかじゃ、しまいに読者に飽きられるだろうが」とか
「そんなことぐらい、俺だって分かってるつうの」とか
「ま、来年ぐらいは、直木賞余裕だって」とか
「そんな人の言葉尻捉えてるぐらいなら、俺の本買えっての」
って感じでしょうか・・・・

すんません、伊坂サン。

なんだかんだ言ったって、しっかりこの人の本、読んでんだもんね、私

来年、獲ってくだされ、直木賞

伊坂 幸太郎 ・ その1

2005-12-16 23:12:53 | 本読み
の本を、最近立て続けに三冊読んでしまった・・・。

別に話題の「魔王」に触発されたわけではないんだけれど。
おもしろかった順に「ラッシュライフ」「陽気なギャングが地球を回す」
「重力ピエロ」。

どの本もどこかしらテイストが似ている。
んでもって、同じ職業の人がよく出てくる。
地方公務員、泥棒(職業っていうのか?)などなど。

作者が好きだという、ジャズやら映画のコネタがよく登場する。
作者は犬好きのようでもある。

それはまあ、さておき、結構おもしろくサクサク読めたので
週に一冊ぐらいのペースであったのは満足である

知ってる知識のひけらかし系は村上春樹のようであり、
人物描写の上手さや、親近感を抱きそうな登場人物の描き方は
宮部みゆきのようであり、
ストーリーテーリングの妙は桐野夏生に近い と言えなくもない。 
ってこれは多分褒めてるね。

そこにまだどこか作りの幼さ(!)というか、
ゆるさを感じさせるのが憎めないところで。
んもう、ま、フィクションやし、と突っ込みたくなること多々。
でも、この彼を見守りたいってわけさ