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映画「バイス」

2019-08-03 10:06:06 | 映画
映画「バイス」第91回アカデミー賞で作品賞ほか8部門にノミネートされ、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した。
監督アダム・マッケイ、これまでも数々の作品で肉体改造を行ってきたクリスチャン・ベールが、今作でも体重を20キロ増力し、髪を剃り、眉毛を脱色するなどしてチェイニーを熱演した。妻リン役にエイミー・アダムス、ラムズフェルド役にスティーブ・カレル、ブッシュ役にサム・ロックウェルとアカデミー賞常連の豪華キャストが共演。

ジョージ・W・ブッシュ政権でアメリカ史上最も権力を持った副大統領と言われ、9・11後のアメリカをイラク戦争へと導いたとされるディック・チェイニーを描いた社会派エンタテインメントドラマ。
1960年代半ば、酒癖の悪い青年だったチェイニーは、後に妻となる恋人リンに叱責されたことをきっかけに政界の道へと進み、型破りな下院議員ドナルド・ラムズフェルドの下で政治の裏表を学んでいく。やがて権力の虜になり、頭角を現すチェイニーは、大統領首席補佐官、国務長官を歴任し、ジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領の座に就くが……。


稀代の悪徳政治家を、変化球の演出で相対化した喜劇監督アダム・マッケイの矜持 (映画.com 高森郁哉)
まず、タイトルが巧い。「vice」は、「vice president(副大統領)」のように役職の前に付く場合は「副;代理」を意味するが、単独の名詞としては「悪徳;悪玉;欠陥」といったネガティブな意味。本作の主人公、ディック・チェイニーに備わる複数の属性を一語で表している。

クリスチャン・ベールが20キロもの増量と特殊メイク、圧巻の演技力で体現した。ラムズフェルド役のスティーブ・カレル、ブッシュ役のサム・ロックウェル、パウエル国務長官役のタイラー・ペリーなど、他の米首脳に扮する面々も思わず吹き出すほどの再現度だ。

本作は、ブッシュを影で操りイラク権益で私腹を肥やしたチェイニーを、憎むべき絶対悪として糾弾する映画ではない。むしろベールの熱演とマッケイの自在な演出により、複雑で繊細で好感さえ覚えてしまうキャラクターになっているのが皮肉でもある。稀代の悪徳政治家を喜劇の手法で相対化する試みは、物事の見方が一面的になりがちな現代への問題提起であり、怒りや憎しみではなく知性とユーモアで真っ当な世界を取り戻す戦いなのだ。
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