弁護士太田宏美の公式ブログ

正しい裁判を得るために

訴訟提起が不法行為との判決の事後検証ーその2

2022年05月03日 | 裁判・法律

その1(ここ)での原告(アブラハムプライベートバンク。現ヘッジファンドダイレクト(株))
の言い分は法律無視の自己都合なもの。
被告として反論したいことは、まとめるとつぎのようなもの(判決から)
アは原告の訴え(本訴)に対する直接の反論(契約をしたことはない)。
イ~エは、その背景にある常識では考えられない原告の真の意図、狙いを暴くもの。
イは会員規約に対する同意と投資助言契約締結の申出とは別物。
ウは原告の投資助言契約は消費者契約法10条違反の無効契約。
エは原告のサービスは投資助言ではなく、ファンド販売(原告が金融庁から処分を受けた違反理由そのもの)。

そして、被告の方から提起(反訴)したことはつぎのとおり(判決から)。
多分、新聞・テレビ等で耳にしたことがあると思うが、原告の訴訟提起は、架空請求・訴訟詐欺というのが
被告の言い分。”架空請求・訴訟詐欺”と聞くと、如何に悪質かがわかると思う。
そして、裁判所は被告のこの言い分を認めてくれたというわけ。
なお、イは慰謝料請求。

ちょっと話が逸れるが、今日は憲法記念日。というわけで、最高裁長官の記者会見があった。
ネット上での中傷投稿を巡る裁判について、個人の尊厳と表現の自由との対立について話があったようだ。
その中で「裁判では論争がかみ合っているかをみていくことが求められる」と話したとあった。
そう。裁判では、双方の論争がかみわないと、とんでもない判決が出ることになることがしばしばある。
論争をかみ合わせる、四つに組むには、
要するに、判断を求める事項・対象を一義的に明確にさせるということである

話を戻すと、イ~エは、契約をした場合でも争い得るものである。
どうしても訴訟詐欺を裁判所に認めてほしい(反訴のア)、これが最優先であった。
そのためには、本訴のアで勝つことが前提である。
最後のまとめで争点を「本訴のア及び反訴のア」と明確にした。イ~エに確信があったし、
特に原告の投資助言契約については、公益的見地から無効を明らかにすべきとの思い入れがあったので、
断腸の思いではあったが、論理的にも、「本訴ア及び反訴ア」に一本化するのが順当な判断だった。

攻撃の的は、フロー図(甲2。会員規約を含む)がメインである。
なお、ここでいう攻撃とは、「最善の防御は良い攻撃だ(The best defense is a good offense)」の意の「攻撃」のこと。

フロー図は偽造(裁判用に虚偽作成したもの)というのが、被告の主張。
被告は原告のPCを使ったことはない、そもそも完全なるでっち上げの訴訟というのが被告の主張。
提出の甲2(フロー図。ここ)をみると、矛盾は明らか。
(なお、甲というのは原告提出の証拠につける。被告提出は乙を使う。)
フロー図(甲2)が虚偽作成(偽造)という主な理由はつぎのようなもの。
1 全頁のページアドレスが同じ(あり得ない)
2 入会ステップ1が最初のページであり、お客様情報はこのページで入力するというが、
  フロー図を見る限り、ステップ1は入力済情報の確認画面にすぎない。
  真正のものなら、前段階として、入力画面がなければおかしい。 
3 入会ステップ2及び確認画面の不自然さ(不要)
4 登録完了画面の原告会社住所は、当時(2010年)のものではない(2011年以降)。
5 その他

原告は、被告の指摘を受けて、訴訟途中から証拠ではなく資料と言い出した。(原告の準備書面から)
往生際が悪い。サンプル文書のことなど何もいっていない。
原告は当初から甲2、つまり原告の2番目の書証として提出していた。
「資料」と言い出したのは、上記のような弁解の余地のない虚偽作成の指摘を受けたからだ。
「資料」など裁判にとって何の意味もない。
要するにフロー図は証拠でないことを、原告自身認めたということである。
そうすると、原告の主張する「契約をした」という証拠は存在しなくなったわけだ。

・・・・・

なぜ、こういうことを長々と論じてきたかというと、裁判所は明らかに原告の主張を認めていたからであった。
被告も、よくよく、検討して、はじめて甲2は嘘の証拠と分かったのである。
たとえば、4の住所の違いも、裁判所の先入観?を何とか崩す方法は、さもなければ、反訴認容どころか
本訴棄却もあり得ないからだった。
それでも、まだ油断禁物だった。

なぜなら、原告が契約書の記載された会員規約として証拠提出されたものの末尾には
被告の情報の記入があったからである。いかにも契約書が存在するかのように。
なお、会員規約はここ

裁判は簡単には勝たせてくれないのである。

今日はここまで。

 



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