文字に宿る力

2005年11月06日 | 随想
先日、旅先で知り合った人から、
こんな内容のメールを頂いた。




メールにHPのアドレスが書いてあったので、
さっそくのぞかせてもらいました。
びっくりというか、感嘆しました。
こんなときに「すごい」という言葉しか出てこない
私の語彙の乏しさが悲しいです。
あなたの文章のうまさを、
文字だけで伝わるそのエネルギーを、
見習いたいと思いました。




このメールを頂いて、素直に嬉しかった。しかしその一方で、
「はたしておれの文字には力が宿っているのであろうか」
と自問してしまうのだ。

10代後半。
人生に迷っていた僕は、狂ったように本を片っ端から読み漁った。
その勢いは、今から考えてもおそろしい程だった。

語彙は飛躍的に蓄積され、歴史上の偉人の格言や箴言をすらすらと暗誦できるようになった。
そんな自分に自惚れていたころ、友人にこう言われた。

「君は確かに知識は豊富だけれど、それを知恵として生かせていないね」と。

その言葉は、僕にぐさりと突き刺さった。
そしてそのときに、決めたんだ。

「もう、他人の言葉を着飾るのはよして、どんなに拙くても自分自身の言葉を紡いでいこう」と。

語彙をいくら蓄積しても、実感が伴わない言葉は空虚なだけだった。
そのことに気がつくまでずいぶんと時間がかかったけれど、決してムダなことじゃなかった。
今では素直に、そう思えるようになったよ。

僕の紡いだ文字が誰かの力になるのなら、
これからもきっと、書き続けてゆける。




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コメント (2)
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