図17 日本脂質介入試験(J-LIT)
コレステロール値220 mg/dl以上の41,801名(35-70歳)にシンバスタチンを6年間投与した(M. Matsuzaki ら (2002) Circ J 66:1087-95)。
横軸はスタチン投与後のコレステロール値による群分け。
スタチンによりコレステロールを下げると冠動脈心疾患、脳血管疾患、癌の死亡率および総死亡率が上がる
わが国で最初に行われたスタチンの大規模臨床試験は日本脂質介入試験(J-LIT)であった(図17 )。
コレステロール値が220㎎/dL以上の人に低用量のシンバスタチンを6年間投与した(スタチン非使用の対照群なし)。スタチンは比較的即効性であり速やかにコレステロール値は下がるが、図17の横軸はスタチン投与後のコレステロール値で群分けがされている。
結果はゆるいU字型を示しており、コレステロール値が220mg/dLから下がるにつれて、冠動脈心疾患(CHD)、脳血管疾患、癌の死亡率および総死亡率が上がっている。
この結果は原著者らにより種々に解釈されているようであるが、「コレステロール値が220mg/dLより下がるにつれて、心疾患死亡率が上がっている」ことは明白であり、スタチンが心疾患を増やした様相を反映していると解釈できる。
なおこの集団にはFHという遺伝因子をもつ人が一般集団の12倍ほど含まれていた。
投薬後の高コレステロール値群の総死亡率や心疾患死亡率は高いが(図17 )、この亜集団のFHの割合が他群より高く、その結果を反映している可能性がある。
ブログ著者補足
コレステロール260以上の高コレステロール側には、若い世代の遺伝性疾患の家族性高コレステロール血症FHの人の割合が多く、一般集団の12倍含む。
この人たちは若くして高コレステロール血症となり、心疾患を10倍以上発生して若死にしやすいので、高コレステロール側の心臓病の発生率・死亡率が高くなるのは、遺伝性疾患の家族性高コレステロール血症FHが原因である。
FHではない一般人では、高コレステロール側の心臓病の発生率・死亡率の上昇は起きない。
この点に関しては、詳しくは次の記事を参照:
「コレステロール濃度と心臓病の発生率・死亡率」
https://blog.goo.ne.jp/gadamski/e/5e9d30df5165014260d0b0ef0bd3eb24
出典:
日本脂質栄養学会
コレステロール低下医療に関する緊急提言
http://jsln.umin.jp/pdf/topics/Teigen140820-1.pdf
2014 年8 月25 日
提言者
奥山治美 名古屋市立大学名誉教授、日本脂質栄養学会 元会長、金城学院大学
浜崎智仁 富山大学名誉教授、日本脂質栄養学会 元理事長、富山城南温泉第二病院
大櫛陽一 東海大学名誉教授、大櫛医学情報研究所 所長
浜 六郎 NPO 法人 医薬ビジランスセンター(薬のチェック) 代表
内野 元 医療法人 内野会 理事
責任者:奥山治美、〒458-0812 名古屋市緑区神の倉1-89