新しいリコーダー奏法

吉嶺史晴によるリコーダー奏法解説ブログです。上達してゆくための全般的な考えかた・生き方のヒントについても書いています。

J.S.バッハ ソナタBWV525 第1楽章

2021年03月12日 | タンギング


こちらでJ.S.バッハ ソナタBWV525 第1楽章の冒頭部分約2分間を聴くことが出来ます。

この曲は16分音符のパッセージが多いので少し練習が必要ですが、ヘンデルやレイエ、マルチェロやバルサンティのソナタがある程度まで吹けるようになった方ならばこのような曲に挑戦してみてはいかがでしょうか。

このような曲では鍵盤楽器奏者が奏するのは通常の通奏低音ではなく、右手が旋律楽器と同等の重要性を持っているのでたった二人だけのアンサンブルでトリオソナタを演奏することが可能です。

この曲は全部で6曲からなるシリーズのうちのひとつです。
6曲全部をアルトリコーダーと鍵盤楽器用、あるいはテナーリコーダーと鍵盤楽器用、そしてリコーダー三重奏用(A.T.B)に編曲した楽譜を作っています。

今までの水準からひとつ上を目指したいリコーダー愛好家の方々に是非お勧めします。

予約制作(クラウドファンディング)の御案内

予約制作(クラウドファンディング)の御案内

2021年03月12日 | weblog
J.S.バッハのオルガンソナタBWV525~530を原曲としてリコーダーと鍵盤楽器、そしてリコーダー三重奏用に編曲、楽譜と録音を作るプロジェクトを進めています。

バロックのリコーダーソナタのようなものをある程度、吹けるようになったリコーダー愛好家の皆様に是非お勧めします。
もともとはオルガン奏者がひとりでトリオを演奏できるようにとの意図のもと、バッハの息子フリーデマンのための教育的な意図をもって書かれた作品と言われています。

リコーダーと鍵盤楽器用の編曲ではピアノまたはチェンバロを想定して編曲しました。リコーダー三重奏用ではアルト、テナー、バスリコーダーを想定しながら編曲を進めています。

テナーリコーダーとMIDIチェンバロで実際の録音も作ります。
完成形の録音に加え、リコーダーパートだけを抜いた伴奏音源も準備しますのでどうぞご覧ください。

今のレベルからステップアップしてみたいリコーダー愛好家の皆様に是非お勧めします。

予約制作(クラウドファンディング)の御案内

寒い時期は要注意

2021年02月02日 | 音色について
寒い時期はやっぱり要注意です。
水がたまりやすいのが一番の原因です。
気をつけたいのはそれぞれの楽器によって個性があるということです。

ウィンドウェイに水がたまってもある程度までは良い音で鳴ってくれる笛もあれば、少し水がたまるだけですぐに鳴りが弱くなってしまう楽器もあり、また、寒い時期であってもある程度持つ楽器もあれば、持たない楽器もあり、はたまたその日によって楽器の調子が異なるので、「木と相談しながら」音を出すというのはやはり大事になって来ます。

同じメーカーの同じ型番であっても、違いがあるので、このあたりは難しいところでもあり、面白いところでもあります。

ウィンドウェイの水だけではなく管体それ自体の水の有無も音色に違いを作る要因になるので、録音など細かい作業をしている際には気をつけるべき点になります。

ある程度の長い曲であれば、曲のでだしと終わり部分で音色が違ってしまうこともあり、やはり要注意です。

古い楽器でも「慣らし」をする

2021年02月02日 | 音色について
古い楽器でも「慣らし」をすることが有用に働くと実感します。
締め切りのある録音作業などはどうしても楽器を酷使してしまい勝ちです。
あきらかに限界を超えてしまった場合には全く演奏不能になりますが、それよりも少し前の段階であればなんとか音は出ます。

しかしこのような使い方をしていると楽器に変な癖がつきます。
そんな時には数日おいてからまるで新品の楽器に対するかのように「慣らし」の作業をします。

主に低音域(ダブルホールの音も含めて)をゆっくり吹きます。
ひっくり変えるギリギリのところまで吹きます。
速い息、遅い息、さまざまな息でやります。

こんな簡単なことですが、これで楽器が生き返ります。
古い楽器であっても、やっぱり木が大きく変化することの証です。

今、2021年の2月です。
一年で一番寒い時期です。

慣らしの前には楽器を暖めておきたいです。
ホカホカカイロが必要になることもあります。
便利なものですが、やりすぎると楽器によくありません。

表面の塗装がべたべたに溶けてくることがあります。
要注意です。

あいうえお

2021年01月31日 | 音色について
日本語の母音、「あいうえお」
これで音色の違いが出ることがあります。(吹く人によって個人差があります)

いつも高音域で「シュー」という雑音が入ってしまう。
そんな悩みの人に「喉を開いて、(お)という母音の形で音を出してみてはどうですか」と提案したら、見事に高音域の雑音が大幅に低減したことがあります。

これは人によって効果が違うので一概に正解と言えるものでもありませんが、音色に悩みをかかえている人にはお勧めの方法です。

ただし、音色という点では有利に働くけれども、口のなかの容積が大きくなってしまうので、舌が動く範囲も広くなり勝ちです。
舌が必要以上に沢山動いてしまうと、効率的なタンギングと言う点で不利です。

実際はこのあたりの点も考慮しながらうまく、一番よさそうなやりかたを決めるということになります。

意図的に「きたない」感じの音色を出す方法もあります。
ここでは詳しく書きませんが、リコーダーの音色というものは実は奏者の側でかなりの度合いで変化させることが出来ます。
そのためのひとつの方法に母音を変えてみるということがあります。

木製の楽器は変化します

2021年01月10日 | レッスンのなかの言葉
木製の楽器は変化します。
特に新品の楽器。
変化というのはふたつの方向しかありません。
良い方向と悪い方向。
良い息を入れれば良くなるし、悪い息を入れていれば悪くなります。

ここではウィンドウェイに水がたまりにくく、なおかつ全音域(特に高音域)で雑音の少ない音を出せるような息を「良い息」と呼ぶことにします。

16分音符のパッセージを速いテンポで吹ける技術を持った人が「良い息」を備えているとは限りません。

意外かもしれませんが、いわゆる「速吹き」(私はこの言葉が好きではありませんが、文脈の都合上、とりあえずこの言葉を使います)と、「良い息」を吹き込む技術とはまた別のものです。

むしろ演奏上、第一に必要なのは「速吹き」ではなく「良い息」です。
とりもなおさず「良い息」とはどんな息なのか、ということを探求するココロ。

木製の楽器は水がたまりにくいです。それは一般的にそのような傾向があるというだけの話であって、「良い息」を備えていない人は木製の楽器であってもやっぱりすぐにウィンドウェイに水がたまります。
逆に「良い息」を備えている人はその人がプラスチックの楽器を吹いてもなかなかウィンドウェイに水がたまりません。(この点、とても重要です。リコーダー演奏に関する本当に重要な部分です)

「グリーンスリーブス」練習方法

2021年01月07日 | 実際の楽曲について演奏法解説
プロのリコーダー奏者が吹いてみた「グリーンスリーブス」(オリジナル編曲)



グリーンスリーブスの練習方法についての解説です。
リコーダーの基本的な指使い、タンギング等の知識がひととり備わっているけれども、この曲程度のものを演奏するのは初めてという水準の方を対象に解説します。

■技術的な事柄

*どの曲を演奏する際にも大切なことですが、まず全部の音を均質な音色で出せるようになることが大事です。(発展した段階では敢えて不均等な音色を出すということもやりますが、ここではそれは取り扱いません)

*そのためにはまずそれぞれの音域で全ての音をメゾフォルテ程度の音量で出せるようにすることです。

*リコーダーの場合、低音域、中音域、高音域で実際に出せる絶対的な「メゾフォルテ」の音量は異なります。低音域では楽器の物理的な構造上、大きな音は出ません。高音域ではその逆となり、大きな音は出しやすいですが、小さな音を出すのは非常に難しくなります。
中音域では大きな音も小さな音も比較的、自在に出すことは出来ますがそのかわり、ピッチ(音の高さ)がそれに応じて変わってしまいます。(ピッチを変えないで音量を変化させる技術も存在しますが、ここではそのような技術については言及しません)

*タンギングについて
より進んだ段階では曲の様々な箇所に応じた変化のあるタンギングをすることが求められますが、初級から中級の始め程度ではこのようなことは出来ませんので、全ての音を明瞭なタンギングで出すことを意識しましょう。

音の始まりはもちろんタンギングで始まりますが、長い音の終わり、あるいは短い音であっても、その次に来る音との間に、音のない時間を作る場合にはタンギングが必要です。

これは特に初級、中級の奏者には意識されにくい点ですので大事です。
つまり、リコーダーの場合は音の始めもタンギング、音の終わりもタンギング、ということです。

*楽器の持ち方
まだ経験の少ない人の場合、よくあるパターンとして右手の親指の位置が高すぎるということがあります。
テナーリコーダーの場合には中指のま後ろよりも少し下、アルトリコーダーの場合にはほぼ中指の後ろまたは後ろよりも少しだけ上、というあたりが目安になります。
右手親指の位置が高すぎると右手薬指や小指の操作が難しくなりますので要注意です。

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

■実際の「グリーンスリーブス」練習にあたって注意したいこと

*この曲はテーマ、そして14の変奏から成り立っています。

*ここのでの編曲においては曲全体で大きく終わる箇所は2箇所あります。ひとつめは主題が終わった後、つまり8小節めです。ここで大きく終わって次から始まる変奏との区切りを明瞭にします。
そして次の大きな区切りは56小節めの終わりです。ここまでが曲の前半です。後半は8分音符のパッセージが始まり、曲がいよいよ盛り上がって来ます。前半を静かに終えることが後半を盛り上げるための大事なポイントです。

*57小節めからいよいよ速いパッセージが始まりますが、難しい場合にはテンポを遅くして練習しましょう。練習する時間には限りがありますので効率的にやることが必要です。1回ゆっくり練習して、9回速く練習するよりも、9回ゆっくり練習して1回速く練習するほうが効果的な場合が多いです。
10回とも速いテンポで練習していい加減な音しか出ないのはよくありません。
かといって10回とも遅いテンポで練習するというような在り方もよくありません。

速いパッセージをメトロノームで練習するための方法としては大きくふたつの方法があります。;
*メトロノームをひとめもりずつ速くしてゆく
*メトロノームを遅いテンポで何回か練習し、いきなり速くする

とっつきやすいのは前者です。後者はある程度、経験のある人向けの練習法です。いずれにしても遅いテンポで練習している時に自分で自分の苦手な箇所を見つけることが大事です。このことが出来さえすればその箇所を重点的に練習すれば良いだけです。


高い音を出すために注意したい点は以下の通りです。
*左手親指に作る隙間の分量(多すぎても少なすぎてもうまくゆきません。ちょうど良い隙間の量を見つけ出しましょう)
*親指の形(間接を内側に曲げる方法と外側に曲げる方法があります。私自身は内側に曲げる方法を推奨しています。左手親指の爪で穴のふちをこすりつけることのない角度を探し出していつもその角度を使うようにすると穴の縁がすりへることはほとんどありません)
*息の角度(上の歯をうまく使って角度を調節する方法、または顔全体を使って角度を調節する方法があります)
*息のスピード(速い息が必要です。この段階としては大きな音になってもかまいません。繊細な美しい音を出すというイメージを持つのは大事なことですが、まず音そのものがしっかり出ることが大事です)


注意すべき点
*この曲は二短調(アルトリコーダーの場合)として書いてありますが、シの音がそのままフラットとして出てくる箇所とシの音がナチュラルになる箇所があります。もし指使いに自信がない場合には指使いの表などで確認しましょう。

*低いドのシャープについては要注意です。市販のプラスチック製リコーダーに付属してくる指使いの表ではこの音が正しく出ない場合があります。ほとんどの場合、この指使いでは右手の薬指の穴はダブルホールをひとつだけふさぐ、というようになっていますが、それでは高すぎる場合がほとんどです。この曲で出て来るドのシャープの音はラの音を根音とする長三和音の第三音として出てきますので、平均律よりも低くする必要があります。
低いドのシャープでは右手薬指はふたつ並んでいるダブルホールはその両方ともふさぐことを推奨します。

重みをつける8分音符とそうでない8分音符の区別
*重みをつけたい場合には息で少し押し出すと同時にその音をほんの少しだけ長めに出します。そのことによって同じ8分音符でも重みのある8分音符とそうでないものの区別をつけることができます。

この曲に中に出てくる特有の点は以下の通りです。
*低いシのナチュラルとそれよりも長2度高いドのシャープ、そしてその1オクターブ上。これらの指使いの連結。
*高音域全般

*この曲のなかで特にテヌート(ポルタートと呼ばれることもあります)が必要なのは49小節、ならびに113小節からはじまる変奏です。いずれも前半のまとまりの最後をしめくる変奏、そして113から始まるのは曲全体をしめくくる変奏です。いずれもすべての4分音符をテヌートで演奏します。それぞれの音をぎりぎりいっぱいまで長く保ちなが演奏します。タンギングはしっかり行います。タンギングがなくなってしまったり、タンギングが柔らかくなりすぎるのはよくありませんので、よく注意しましょう。

*この曲の後半に出てくるパッセージと同音反復(57小節、65小節、97小節)の箇所ではダブルタンギングを使います。使いにくい人は無理をして使うことはありませんが、出来そうな人は是非挑戦してみましょう。
ここではトゥク、トゥクあるいはティキ、ティキ、あるいはテケ、テケ、というようなタンギングシラブルを使うことにします。私自身は個人的にはティキティキというやりかたをよく使います。この辺りは個人差があるので、自分に一番使いやすい方法を選んでも良いです。
口の中で動く舌の距離を最小限に短くするような工夫があると良いです。

*それぞれの変奏はいずれも長いレの音で終わっています。フレーズの終わりの音ですので、終わった感じ(落ち着く感じ)にしたいのですが、ピッチが低くなりすぎないように気をつけましょう。

*楽譜にはスタカートの記号がありますが、全てのスタカートを同じように短くする必要はありません。音楽的な文脈に応じて、本当に短いスタカートや、長めのスタカートなど様々な在り方が可能です。自分なりに工夫してみることも面白く練習するための方法です。




演奏の秘密・バルサンティ リコーダーソナタハ長調第1楽章

2020年12月16日 | weblog
演奏の秘密・バルサンティ リコーダーソナタハ長調第1楽章


音楽における様々な局面ということで解説動画を作ってみました。

アルトリコーダー(旋律楽器)とピアノのためのアメージング・グレース

2020年11月26日 | 実際の楽曲について演奏法解説
(アルトリコーダー・ピアノ伴奏)アメージング・グレース


先日アップロードした「アメージング・グレース」についての演奏法解説です。

内容は以下の通りです。
*この曲の構造
*実際の演奏法

まず構造について。
この曲は前奏に始まり、まず1コーラスめ。そして2コーラスめ。ここでは旋律が1オクターブ高く奏されます。
そして1回目の間奏を経て3コーラスめになります。ここはビバップの様式によって即興的な効果を狙ったものになっています。
2回目の間奏を経て最後のコーラスです。主な旋律はこの編曲のなかで計4回奏されます。
そして後奏があってこの曲は終わります。

実際の演奏法について
この曲に限らず現代的な作品あるいは編曲作品ではルネサンス、バロックでは通常「使い道がない」と判断されてしまうような音の使い方が可能です。

それらについて書きます。
その前にルネサンスやバロックの音楽ではどのような音を良い音とし、どのような音を悪い音あるいは使い道のない音として来たのでしょうか?
このことを考えること、そして考えたことを実践することによって、リコーダー演奏に新しい局面を切り開いてゆくことが可能です。

*音程の悪い音
*あまりにも息のスピードが遅すぎて不安定になってしまった音
*タンギングが強すぎて音の立ち上がりが重音になってしまった音

これらの音は元来、伝統的な西洋音楽のなかでは悪い音として看做され、練習の際はもちろん、本番でこのような音を使うことは禁じられて来ました。

私の編曲または作曲作品においてはこれらの音を実際の作曲作品、そして演奏に活かすということを意図的に行っています。

しかし、今回の「アメージング・グレース」は全体としては伝統的な西洋音楽の様式に則って書かれたものではありますが、それらの効果を意識的に狙うことによって演奏そのものにより深みを与えることが可能となります。

例えば2回目の間奏を経て最後のコーラスでの部分ですが、ここではフレーズの音を終わらせるために意図的に不安定な音と看做される音を使ってみました。
このような音を入れることによって歌を模倣するという効果もあわせ持たせることも出来ます。

ここが面白いところです。
つまり、やっていることは表面的には「新しい」ことに見えるのですが、実際に生まれる効果は何百年も前に規範とされたことと同じことが起きるという現象です。

理屈で考えてみると、ここで行われたことはリコーダーという楽器で「使っても良い音色」を拡張したということになります。

つまり伝統的なリコーダー教育では「あまりにも不安定なので実際の曲の中では使えない」と看做されてきた音を敢えて使った、とうことです。

このような考え方は、そのような訓練方法が意味のあることとして疑いなく受け入れられていた時代の音楽を演奏する際には有用ですが、現在(2020年)には必ずしもそうでありません。

今回の編曲アメージング・グレースのみならず、新しいレパートリーではこのような奏法を試みる余地があります。
これからのリコーダー演奏の新しい可能性を開く一端がこのあたりにあるのではないでしょうか。
楽譜はこちらで販売中です。
http://nangokurecords.com/amzinggracepagenihongo.html

吉嶺史晴 無伴奏テナーリコーダーのための「ララバイ」演奏法解説

2020年11月22日 | 実際の楽曲について演奏法解説
Music for tenor recorder "Ashura" (2020)


"Lullaby" for tenor recorder version2016 F.Yoshimine


"Lullaby" for tenor-recorder version2013 F. Yoshimine



この曲には3つの版があります。
2013、2016、そして2019です。2019の版は無伴奏テナーリコーダー曲「阿修羅」のなかの中間部として用いられています。

それぞれの版の違いは以下の通りです。

2013年版
オリジナルの状態となっている版です。間奏部分が長く全体としても3つの版のなかで最大の規模となっています。

2016年版
3つの版のなかではもっとも簡素な構成となっています。間奏が短く、楽譜自体は1ページでおさまっています。

2019年版
最新の版です。これ以上、新しく版を重ねることは今のところでは考えられません。2013年版、2019年版はいずれも手書き譜でしたが、ここでは浄書ソフトによって出力されたものになっています。この版が以前のふたつの版ともっとも違うのは再現部における装飾と簡素な間奏です。
これらの要因により作曲者自身は2019年版がもっとも完成された版として考えています。
(リンクのユーチューブでは6分42秒~11分41秒が「ララバイ」となっています)

*補足
実際に2013年版、または2016年版を演奏する奏者が楽曲の再現部において作曲者の想像を超える装飾を施す可能性は在り得ます。その場合、作曲者自身の「2019年版が最も完成されている」との認識は必ずしも正しいものとは言えません。

::::::::::::::::::::::

具体的な演奏法について

いずれの版も基本的な構成はAABAの二部形式の形が間奏をはさんで2回繰り返されるという形となっています。
基本的な考えかたとしては「歌」を模倣するということです。

楽器で歌を模倣するための方法として有効なのはグリッサンドを有効に使うことです。リコーダーの場合、キーがないのでそれぞれの指穴に隙間を作ったり、あるいは指をかざしたりすることによって楽器自体が備える音律を奏者の好みによって変化させることが出来ます。

このようなリコーダーの性質を使って、「歌」を模倣する、ということを試みてみましょう。

「歌」の場合には楽器のように12個ある半音を厳密には出ないこともあります。
あるいは思いもかけず喉がつまってうまく声が出ない場合もあるでしょう。
高い音域や低い音域が入れ替わる際に声が「ひっくり返る」ようなことも起こり得ます。

ここで言う「歌」というのは高度に訓練された歌手の「歌」だけではなく、ごく普通の人がなにげなく歌っている「歌」でもあります。

そのような「歌」の特性をリコーダーという楽器で模倣してみるのです。

例えばフレーズの終わりの音をどこまで減衰させることが出来るのか、ということに挑戦してみましょう。その際にある点を超えて、さらに減衰させようとすると非常に不安定な音になることが避けられません。

指の助けを借りてピッチが下がり過ぎることのないように留意することは問題ありません。

通常、ルネサンスやバロックの曲では使い道のないような極端な弱音領域というものがあります。ここまで減衰させてみるとどのような効果が生まれるでしょうか?

あるいは音によって、わざとマルチフォニックのような効果を狙うことも可能です。
いわゆる「重音奏法」はフォルテの箇所だけに使われるものとは限りません。

このような表現を全て楽譜に書き込むということは不可能でした。

これらは全てこの曲を演奏する奏者に任されています。

::::::::::::::::::::::::::

演奏に際して陥りやすい点

このようなキャラクターの曲を演奏する際に特有の問題があります。
それは感傷的になり過ぎる、ということです。
その結果、テンポや拍子が不明瞭になり、演奏者がひとりよがりになってしまうということがあります。

この曲だけに限らず、このような叙情的な楽曲を演奏する際、演奏者自身は極めて客観的な態度で演奏に臨む必要があります。

それでも、そこから聴き手に届かざるを得ない叙情性があるか、ないか、その辺がこの曲の演奏に当たる奏者に問われる点ではないかと作曲者は考えています。